関口英子のレビュー一覧
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地に足の着いたファンタジー小品集。優しいローファンタジーではなく皮肉入りの!妙な!変な!世界にも人にも優しくない!(ブラック)ユーモア満載の!話ばかりですごく私得。魔法のバックミラーやシンデレラ宇宙ver.とだけ聞いたらガチファンタジーっぽいのに実際はそうでないんだから面白い。何となく短編モーパッサン+ハルムス(シュルレアリスム感)的に感じた。
初読時は「ヴェネチアの水位上昇を懸念して魚になった家族の話」が印象的だったのだけれど、今回は「バイクと結婚したくて家出する男の話」と「釣りの下手な男が何とかして魚を釣ろうと奮闘する話」が気に入った。後者は特に、喜劇→悲劇の転換がすばらしく巧い。前者は出オチなのにオチも付くというどこまでもおいしい作品。無機物への執着愛ってだけで個人的には大良作。カルロの話も徹頭徹尾純粋な皮肉だけで占められていてかなり好き。
ユーモアセンスがほんとに素晴らしくて、例えば
「将来の計画を話し合ううちに、また日が暮れた。日というのは、そういうものなのだ。暮れることしか知らない日の気持ちも、わかってあげてほしい。」
はくつくつ笑いが止まらなくなるくらいにツボに入った。ニューヨーカーのサーバーとはまた違った種類のユーモアで、こちらの方が若干お上品で軽やかなのもまた面白い。 -
Posted by ブクログ
ローマ帝国がその繁栄の絶頂期にあったトラヤヌス帝治世下の首都ローマの人々の一日の生活を24時間著者がレポートするといった非常に興味深い趣向の本。
当時のローマ人の生活が衣食住から始まり、裁判、教育、娯楽、果ては公衆トイレや性生活に至るまで事細かく描写されている。
それらの描写は、最新の考古学的研究の成果に基づく知識に裏打ちされており、古代ローマを題材とした小説を読むのでは得られない種類のリアリティーを感じさせる。
史料でしか知ることのできない古代ローマ人たちに血肉を与え、当時の生活の匂いまで感じられそうな程に彼らの生活を活写して見せる著者の学識とイマジネーションには驚くばかりである。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ古代ローマ人の生き生きとした描写を用いて描かれたシリーズの一冊。
高く評価する点が3つ、一つだけ低く評価する点が1つあるため、星4つとした。
高く評価するのは、次の点。
1.オウィディウスの『恋愛指南』など、当時の道徳教訓詩をパロディ展開した作品からも史料を引いているが、全体としては信頼のおける史料だ、と思われる点。
2.貴族や中流階級だけにとどまらず、貧困層の事なども調べて書いてある点。
3.当時の社会、文化における価値観を紹介し、一方で『現代の道徳』による価値判断をさしはさまないよう気をつけて書いてある点。
一つだけ低く評価する点については、紹介前に前提となる筆写の事情がある。
まず、評者の性的な嗜好は二次元限定で、男性同士、女性同士を問わず、同性愛描写ばっちこーいであり、その内容が非現実的なもの(描写やシチュエーションなど)であっても楽しめる口である。性指向(現実の人間に対する行動)に至っては非性愛(恋愛感情はあれど、性的な欲求が無い)である。
こうした前提があるため、
「同性愛を扱った項目はどのような内容だろうか?」
と、興味をもって本書を読み進めていた。
ところが、他の恋愛や性愛についての章と異なり、この項目は文章量が少なく、概論、いわゆる「さわりだけ」紹介したに過ぎない、という印象を受けた。
著者自身の性指向やホモフォビア(同性愛嫌悪)が影響したのだろうか?
疑っても詮無いことではある。
他の章での、『その場所で、生きているローマ人の背後からカメラで追っていく』ごとき生き生きとした描写が優れていただけに、この一点だけが画竜点睛を欠く、と言わざるを得ない。
総括すると、エピクロス学派の『物の本質について』や、ストア主義哲学の『自省録』といったローマ時代の哲学書とは異なる側面から、ローマ帝国の世界を見せてくれる良書であった。 -
Posted by ブクログ
ファンタジー以外の児童書は滅多に読まないのだけれど、
児童文学作家の先生が描写がすごい本として挙げていて、読んでみた。
裏表紙の解説を読んで、抒情的なもっとウェットな内容を想像していたけれどとんでもない。
都会の中の自然や、季節のうつろいや音・色・香りなどに対する描写は確かに素晴らしい。
でもそれ以上に現代社会への皮肉が壮絶にこめられていて、読んでいて始終にやにやしてしまう。
子供と大人で楽しみ方が全く変わる作品だと思う。
マルコヴァルドさんやその一家が結構悪いことをするので
(それらもコミカルにユーモアたっぷりに描かれていて大変面白いが)
なかなか日本では出せない作品だなあと感じる。
他の方も書かれていたけど、これを少年文庫にいれる岩波はすごいと思った。その内容の普遍性と言い、描写の美しさと言い、実はかなり文学性の高い作品だと思う。
表紙・挿絵もとても合っていて素敵な本。