人間の生死を他人が勝手に決めて殺していく状況に心の底からおぞましさを感じた。「選別」によって死を決定された者の描写があまりにも苦しかった。
ろくに栄養もなく、体力がなく、ものを正常に考えられない状況で、自分の死を宣告される。著者は、あまりにも疲れ切っていて、絶望などという感情も感じなくなったと記述し
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著者の言うように、彼らは逃げようとか、最後に反乱を起こして逃亡のチャンスをつくるだとか、そんな力はもうどこにも残っていなかったのだろう。
自分の身近な者の生死が不明、またはすでに死んでしまっている人が多い状況で、生きようとする本能は極限まで弱まっていたに違いない。
何らかの思想・信仰をもつものは、生き残った者が多かったという記述があった。著者自身に特に信仰はないが、文学作品の内容を思い出し、生きようという意志が奮い立ったという描写がある。
「物語の力」は本当に強い。
人間の逆境から這い上がる燃料にもなり、逆に、いとも簡単に人間を悪の道へと向かわせることもできる。