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Posted by ブクログ
普段は高校の国語教師をしている、イタリアの女性作家による小説。本作はイタリア版本屋大賞に選ばれるなど、33言語に翻訳されて刊行されています。そのためか、文章は平易で読みやすかったですが、ところどころ心に刺さる場面もありました。
あらすじ
第二次世界大戦後のイタリアで、南部の貧困家庭の子供たちを、比較的暮らしの安定していた北部の家庭に送り届ける”幸せの列車”が運行されていました。そんな時、ナポリに母と二人で暮らしていたアメリーゴも、7歳のときにこの列車に乗せられて、モデナの裕福な家庭に預けられることになります……。
“幸せの列車”に乗る前と後の世界の対比が、ある意味残酷ですね。食べるのに何も困らない豊かな家庭で暮らした後、母親の住む元の貧困な家庭に帰ったアメリーゴの心の変化や葛藤が痛いほどよくわかります。母親としても、子供の幸せを願ったがゆえの里親に出したのに、貧困はいろんな歪みを生じさせてしまうものだなと思いました。
終盤では、心を閉ざしたまま大人になったアメリーゴの母親を回想する呼び方や、嘘をつくのがやたらと上手になっていたのが、”あの時”に戻すことのできない時の流れの長さと、心の傷の深さがよくわかり、とても印象的でした。ラストは未来に前向きに向かって行くいい終わり方なのが救いですね。
追記:
小説はフィクションですが、“幸せの列車”自体は、実際に1946年から1952年まで、イタリアで運行されていました。本作は、Netflix で映像化もされています。
正誤(初版)
P183の6行目
その見知らぬ猫は毛を逆立て、嵐を吹くと行ってしまいました。
↓
はて? “嵐を吹く”というのは、猫が「フーッ」と興奮しながら威嚇している状態でしょうか?意味は通じるのですが、訳者は埼玉県出身なので、おそらく埼玉県や北関東辺りの方言かもしれませんね。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦後のイタリアでは
南部の困窮する家庭の子どもを援助するため
北部の裕福な家庭へ送る列車が走っていた。
主人公のアメリーゴ、友人のトンマジーノ
そして、マリウッチャの日常。
貧しいながらも子どもらしい明るさに救われる。
北部に移り温かい食事、孔のあいていない靴を与えられ
たっぷりと注がれる愛情にホッとするも
これほどの差があったことに驚く。
実写版を観て本作を手にしたので状況は把握しやすかった。
そして、翻訳家・関口英子さんの
読みやすい文章にも助けられた。
あたたかく深い愛情の込められた作品。
より多くに人の目に留まりますように。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦から間もない頃、イタリアでは共産系の人々・組織の手によって、貧しい南部の子どもたちを比較的裕福な北部の家庭が受け入れるということがあった。その子どもたちが北へ移動する際に乗った列車が「幸せの列車」などと呼ばれた。
そんな話は聞いたことがあるような気もするし、初耳でもさもありなんという取り組みだ。それにしてもこういう南北の格差ってわりと古今東西あるもので、なぜか南のほうが貧しいパターンが多いのはなぜだろう。
この本の主人公アメリーゴも「幸せの列車」に乗って北部の家庭でしばらく暮らす。そして片親の母親のもとに戻ってくるのだが、母親とのすれ違いがあったりして、家出同然に世話になった北部の家庭に再び世話になり、そのまま大人になる。時がたって母親が亡くなったことで故郷の街を初老になったアメリーゴが訪れるという物語。
生き抜くために子が親を捨てるという、自己決定をするのはいい。アメリーゴもそのおかげでけっこう著名なヴァイオリニストになった。一方で、母親に対してかたくな過ぎただろうとも思う。かたくなに母親を、故郷を拒否しなければ生きていくことができなかったのかもしれない。そもそも母親とのすれ違いというのも、アメリーゴが北部の家庭で贈ってもらったヴァイオリンを隠してしまったり、北部で世話になった人たちから来ていた手紙を隠していたことによるもので、それはひどいよと思うけど、そこに端を発して母親を拒否したが、最後には初老のアメリーゴにとっての悔いのようになってしまったことが気の毒だ。
子どものほうがかつての親への思いを悔いるって物語の定石のようなところがあるけど、それって親の深謀を賛美する社会的呪縛のような気もする。
Posted by ブクログ
戦後のイタリアで本当にあった慈善事業。
復興に差のある南から北へ
貧しい世帯の子供たちを預けるため
列車をしたてて送ったのだそうです。
ナポリでシングルマザーに育てられている
8歳のアメリーゴも、そのひとり。
母親に捨てられたのでは…という気持ちと
見たことのない都会への憧れと。
アメリーゴの他に、同じ街に暮らしていた
同年代の子供たちも行くのですが
ナポリに帰りたがる子もいれば
二度と戻らないという子もいる。
アメリーゴも「家庭」の暖かさに触れ
将来の夢まで考えることができるように。
そして、母親のもとに戻ったあと…。
受け入れてくれる里親家庭は
本当に善い人たちだけど
そこの家の子にしてみたら
ヨソからきて親の愛情を奪うわけで
そのあたりの展開は世界共通。
だんだん親密になる描写がいいな。
少し胸がキュッとする物語です。
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