関口英子のレビュー一覧

  • 「幸せの列車」に乗せられた少年

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    第二次世界大戦から間もない頃、イタリアでは共産系の人々・組織の手によって、貧しい南部の子どもたちを比較的裕福な北部の家庭が受け入れるということがあった。その子どもたちが北へ移動する際に乗った列車が「幸せの列車」などと呼ばれた。
    そんな話は聞いたことがあるような気もするし、初耳でもさもありなんという取り組みだ。それにしてもこういう南北の格差ってわりと古今東西あるもので、なぜか南のほうが貧しいパターンが多いのはなぜだろう。
    この本の主人公アメリーゴも「幸せの列車」に乗って北部の家庭でしばらく暮らす。そして片親の母親のもとに戻ってくるのだが、母親とのすれ違いがあったりして、家出同然に世話になった北部

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    2023年01月29日
  • 月を見つけたチャウラ~ピランデッロ短篇集~

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    奇妙な物語、奇妙な人たちがたくさん。

    先日読んだ『作者を探す六人の登場人物』の作者・ピランデッロ(ピランデルロ)の短編小説を集めた本。
    戯曲のモチーフになったであろう短編も色々あり、面白い。
    出てくる人たちが結構、妙な追い詰められ方をした妙な人たちが多くて、変人列伝みたいな趣がある。

    お気に入りは

    どちらかが狂人である、という二人が、町の人々に「あの人が狂人です」と主張し合う
    『フローラ夫人とその娘婿のポンツァ氏』

    急に女性に向かって「バカヤロー!」と怒鳴りつけた男が決闘をする羽目になる、その繊細な動機を描いた優しい短篇
    『使徒書簡朗誦係』

    どっちも設定が攻めてる。

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    2023年01月16日
  • 「幸せの列車」に乗せられた少年

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    物語を読む楽しさがある。洒落たウィットに富む表現に思わず道草をつまみ食いする様な心地よさを感じる。
    イタリアの南北問題、南の子供達を親子関係を一時的にも断ち切る様な人道的支援、初めて知った。
    著者の祖国の人民に寄り添う意思が根底に感じられ、たまたま読んで思いがけず拾い物に得した気分となった。

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    2022年12月14日
  • 「幸せの列車」に乗せられた少年

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    少し不穏な空気を感じながら読み進めたが、主人公の少年が北部の家族から愛されて大切にしてもらっていたことに安心しました。実の母と自分の町から離れる道を選ぶことになった心の苦しみはいかほどなのか。子どもにそんな過酷なことを強いる社会や時代に心が痛みます。
    友人の少年のようにどちらも得ることができた人生もあったのではないか、と思わざるを得ません。
    最後に、母の死と甥を通してわだかまりを解消し希望を持つことができたことに救われました。
    以前読んだ『帰れない山』の翻訳者と同じ方だと知り、もっと関口さんの訳書を読みたくなりました。

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    2022年11月25日
  • 「幸せの列車」に乗せられた少年

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     本を読めば、国語が得意になるとは思わないが、知識は豊富になる。
    戦後のイタリア、貧しいナポリから、比較的豊かな北の都市へ連れられていった子どもたち。そこでたとえ豊かな生活が送れたとしても、実の親と引き離された事実は、子どもたちの人生に瑕疵を残す。
     戦争は、今だけでなく、未来にも暗い影を残すことを私たちは忘れてはならない。

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    2022年11月19日
  • すごい物理学入門

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    新聞のコラムとして投稿した記事をまとめたもの。平易な文章で宇宙や量子力学の最前線を紹介してくれている。前著のすごい物理学講義を読んだ後だからか、大まかな内容だなと感じたけど初手としてはその魅力に触れる意味で最適かなと。

    最終講義が秀逸。著者の学問の意味、自然科学と人文学の垣根を超えたシンクロなんかを諭してくれて、人間の好奇心、探求心は果てしないし心が躍る。そう、未知のことへの挑戦は人間の性なのだ。人間も自然のほんの一部、自由意志なんてものはないのではという不安を、自然の一部である脳ニューロンの決定という自然の法則に従っている限り自由なのだと。読んでいると浮遊感がすごい。スピノザの一元論(汎神

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    2022年11月13日
  • 13枚のピンぼけ写真

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    最初は血気盛んな言葉で、すぐ戦争は終わると考える。
    いつだってそうだ。
    しかし、現実は違う。一般人も犠牲になり、自国の軍人からも謂れのない罪で投獄され、家や仕事や食べ物を失い、命を失うような思いをする。
    そのような、現実が描かれている。

    物語の中での救いは、強い女性たちや困っている人を助けようとする司祭さまや人々。

    最後は未来に向かって進む姿で終わって良かった。

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    2022年11月01日
  • 神を見た犬

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    帯には「奇想」とあるが,童話や寓話のような話が多い.またキリスト教の影響が色濃いなあ.といっても,敬虔ではなく皮相的.

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    2022年08月20日
  • すごい物理学入門

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    カルロ・ロヴェッリといえば、ベストセラー「時間は存在しない」の天才物理学者
    個人的には「科学とは何か」に次いで2冊目

    こちらは「世界一わかりやすく美しい『七つの講義』」が売り文句
    対象者は一応(ワタクシのような)初心者向け

    ついつい備忘録を書きたくなるが、本書はそんなことより圧倒的な何か大切要素が詰まっており、
    未だかつて体感したことのない不思議な感覚の理系書籍である
    何が凄くてベストセラーとなったか…について、私なりの分析を踏まえご紹介したい

    まず一番驚くのがものすごく凝縮されているのにも関わらずしっかり伝わる凄さ…だ
    そう、ギュッと凝縮しているのにバンバン伝わる
    素晴らしくコン

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    2022年08月06日
  • 古代ローマ人の24時間 よみがえる帝都ローマの民衆生活

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    紀元115年、トラヤヌス帝治世下における古代ローマの1日を再現し、その社会構造や人々の生活について解説。
    まさに古代ローマの街中を見て回っている感じで、知的好奇心を満たしてくれる一冊だった。
    人々の間の格差や都市の過密など現代社会にも通じる問題があったことや、古代ローマの社会では奴隷の存在が基盤となっていたことなど、勉強になった。なお、古代ローマでは尿で洗濯していたというのが一番驚いた。

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    2022年06月29日
  • 羊飼いの指輪 ファンタジーの練習帳

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    物語の結末を創造する。
    学校の授業で是非受けたかった。
    作者の3様の終わりのパターンを分析するだけでも、自分の想像の殻を破る助けになりそうだ。

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    2022年04月24日
  • すごい物理学入門

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    前提知識がなくても自然界の物理法則の概要がなんとなくはイメージできるようになる本。
    物理学をしてこなかった人からしたら世界の見え方がガラッと変わるだろう。
    本書の言葉でもあるが、「科学は見方」である。
    理系アレルギーみたいな人にとっては難しい理屈や数式に拒否反応があるのかもしれないが、科学とは視覚的なものであり、見方が身につくことで豊かになるものだと、感じさせてくれる。
    物理学から更なる感動を得るために、もっと勉強していきたいと思えました。

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    2022年03月31日
  • 猫とともに去りぬ

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    ネタバレ

    ファンタジー短編集。表題作は、飼い猫として暮らせる道があることを羨むべきか、猫でなければ家に居場所もないことを嘆くべきか、どうにも悩ましい。非現実をさも当然のようにすらすら描かれ、頭の柔軟性が試された。とっぴな空想の中に現実社会への皮肉も読み取れ、執筆された当時のイタリア社会が気になるところ。もはや児童文学の枠を越えていると思うが、どの話もロダーリのユーモアに溢れ、最後まで楽しく読めた。

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    2022年03月24日
  • ぼくたちは幽霊じゃない

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    生まれ育った祖国を離れ、言語も文化も違う国へ命懸けで渡る、、、それがどれだけ辛いことか、、、
    よく「難民を乗せた船が転覆」というようなニュースを目にするが、それは氷山の一角で、世の中には私たちの知らないところで命懸けで生きている人が本当に沢山いるんだと思う。

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    2022年03月19日
  • ネコの目からのぞいたら

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    個人的に信頼している訳者の関口英子さんによる翻訳。ドキドキのストーリーと、オチに至るまでが完璧な児童文学。

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    2022年01月25日
  • すごい物理学入門

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    いやループ量子重力理論についてはまったく知らなかった。ひもが主流なのだと勘違いしていた。
    細かいところは全然わからないが、量子論の自然な拡張に思える。

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    2022年01月11日
  • すごい物理学入門

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    現代物理学や量子重力理論について解説されている本。同著者の他の本と比べると、易しくてパパっと読めるエッセイ風の解説書だが、人間とは、意識とは、自由意志とは、などもテーマに取り上げられていて、興味深かった。

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    2022年01月01日
  • 猫とともに去りぬ

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    なんだか不思議な世界に誘われる短編集。
    家族共々魚になってベネチアの運河を泳ぎ回ったり、ヤマハのバイクと結婚したり。。
    一見キテレツな短編だが、皮肉や風刺がきいていて、イタリアってこんな土壌もあるんだと。
    ロダーリは、イタリアでは教科書にも載っているぐらい有名な作家。

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    2021年10月29日
  • ぼくたちは幽霊じゃない

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    アルバニアからイタリアへと命がけで渡ってきたヴィキたち家族。
    不法移民の生活を七歳の少年の目で描くため、理由がわからなく突きつけられる不遇さへの恐怖が際立ち、不安や疑問が膨らむ。
    つらい境遇の中での家族の温かさに心救われる。

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    2021年10月01日
  • 戻ってきた娘

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    妹のちょっと舌足らず的な喋り方が(訳し方?)とてもすんなり入ってきてこの小説のアクセントになっていて、すごく好き。
    個性的な兄妹や環境、主人公の心情が痛いほど伝わってきてこの作者と訳者の他の作品も読みたくなった。

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    2021年08月18日