関口英子のレビュー一覧
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御伽噺・イタリア風味。シュールリアリズム系の短編集かと思ったら、予想よりずっと優しい世界だった。根っからの悪人はほとんどいないし、多少意地悪な人間も死ぬことはなく災難に逢う程度。そして善人は必ずささやかな幸福を掴むことができる。ロダーリは確かに児童文学作家ではあったが、それ故に彼の作品はただの子供騙しでは終わらない。彼は戦前からファシズムを批判し、戦時中もレジスタンスとしての地下活動を続けてきた。自国が過ちを犯していると理解する、社会への優れた先見性を持つ作家だったのだ。そんな彼が書く、やさしくユーモアに溢れた文章の中に込められた現代社会への痛烈なアイロニーは、確かに現代を生きる私たちの胸にも
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短編集で不条理を描いたもの。星新一に系統は似てるけどそれをもっと文学的にしたような。人の持つ社会的心理から返って個人が苦しんでしまう様な様を描いたものが多い。
1. 天地創造。キリスト教ネタがいくつかあって分かりにくいものもあったけど、これはシンプルで、地球にある一切は神によってデザインされたとされるが、こんな裏話があったのではないかという話。作者がいかに人間を醜いと思ってるかが一作品目で分かる構成なのが良い。
2. コロンブレ。親や世間の謂れを真に受けて信じ込んでしまった為に人生を棒に振る寓話。
3. アインシュタインとの約束。偉人に勝手に性格をあてて描くのは何だか気持ち悪かった。
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上手くいかないから不幸なのではない、貧しいから不幸なのではない、それだから不幸なのだと思ってしまう考え方が不幸なのだ。ブッツァーティの小説は読者に主人公の人生の最後に立ち会わせそれを問いかける物語だ。一元的な物の見方を否定し物事に違う観点を与える。10代の頃彼の長編「タタール人の砂漠」で頭をガツンとやられた。それと同じ感覚がこの短編集にも詰まっている。謎の怪物コロンブレに殺されまいと逃げ続けた男の話、護送大隊をたった一人で襲撃しようとする年老いた山賊の話。ラストですべての不幸が幸福に代わり、幸福が不幸に入れ替わる。この世界のことはすべて脳内で起きている。他人の視点は何の意味もない。自分の人生が
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感想は、「たのしい!おもしろい!変!」
そんな短編集です。
ユーモアがあって、ついにやにやしながら読んじゃう。
一気にだいすきな本になりました。
また数年後に読み返したい。
とにかく突拍子もない本なんです。
設定も、展開も、キャラクターが考えることも、台詞も。
予想もつかないことが起きる。
作者のロダーリは、とっても想像力豊かで、発想が自由で、人と違う視点から物事を見られる才能を持っていたんだなあと感じます。
何事も、決まった形に収まらない。
そんなところが夢があって、
わくわくして、
各所に散りばめられたユーモアに笑っちゃって、
でもぴりりと風刺も効いた本です。
とっても素敵。世界を -
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Posted by ブクログ
こういう風刺がバッチリ効いたちょっぴり
刺激の強い作品は大好きです。
まさに大人のための童話。
本当に予想もつかないことがよく起こります。
表題作はまあありえないけれども
ある種の自由への渇望が
彼らを「猫」へと変化させてしまうのでしょうね。
だけれども幸いにも主人公の男には
「自由」を渇望することはしたけれども
頼ってくる人がありました。
そして…人のせいにする人を
徹底的にあざけっている作品もあります。
そして嫉妬心の浅ましさも同時にその作品は
伝えているのです。
つまり原因が分からないのなら
それなりに努力をしろ、ということかと。
こんな面白い作家がいたことに
驚きでした。