関口英子のレビュー一覧

  • 薔薇とハナムグリ~シュルレアリスム・風刺短篇集~

    Posted by ブクログ

    どれも面白かった。ふざけてる感じの作風なんだが、読み終わるとゾッとする。当時の政治的軋轢により、自由な表現ができなかった苦肉の環境がこのように素晴らしいおどけ狂気な作品を誕生させることになったとは。明らかに変なのに、これが流行とか言われると、どうしても手に入れずにはおられなくなる女。舗装された道を歩けばいいのに、そんな自然に逆らった物など!と山道を歩いて遭難するような意固地な男など。明らかにおかしいのに、いとも簡単にその波に呑まれて流されてゆく人間の愚かさに、現代においても色あせずパンチをくらわしてくる。

    0
    2019年02月03日
  • 猫とともに去りぬ

    Posted by ブクログ

    御伽噺・イタリア風味。シュールリアリズム系の短編集かと思ったら、予想よりずっと優しい世界だった。根っからの悪人はほとんどいないし、多少意地悪な人間も死ぬことはなく災難に逢う程度。そして善人は必ずささやかな幸福を掴むことができる。ロダーリは確かに児童文学作家ではあったが、それ故に彼の作品はただの子供騙しでは終わらない。彼は戦前からファシズムを批判し、戦時中もレジスタンスとしての地下活動を続けてきた。自国が過ちを犯していると理解する、社会への優れた先見性を持つ作家だったのだ。そんな彼が書く、やさしくユーモアに溢れた文章の中に込められた現代社会への痛烈なアイロニーは、確かに現代を生きる私たちの胸にも

    0
    2019年01月14日
  • 神を見た犬

    Posted by ブクログ

    短編集で不条理を描いたもの。星新一に系統は似てるけどそれをもっと文学的にしたような。人の持つ社会的心理から返って個人が苦しんでしまう様な様を描いたものが多い。

    1. 天地創造。キリスト教ネタがいくつかあって分かりにくいものもあったけど、これはシンプルで、地球にある一切は神によってデザインされたとされるが、こんな裏話があったのではないかという話。作者がいかに人間を醜いと思ってるかが一作品目で分かる構成なのが良い。

    2. コロンブレ。親や世間の謂れを真に受けて信じ込んでしまった為に人生を棒に振る寓話。

    3. アインシュタインとの約束。偉人に勝手に性格をあてて描くのは何だか気持ち悪かった。

    0
    2018年10月19日
  • 古代ローマ人の24時間 よみがえる帝都ローマの民衆生活

    Posted by ブクログ

    イタリアでテレビキャスターや慣習の仕事を多々している科学ジャーナリストが紀元115年、トラヤヌス帝知性化のローマのある一日を通じて、古代ローマの庶民の生活を書いたもの。テレビの仕事をしている人が書いただけ合って、映像的な表現が多く、2000年近く前のローマの光景が目に浮かぶようである。

    0
    2018年10月14日
  • 羊飼いの指輪 ファンタジーの練習帳

    Posted by ブクログ

    とてもいい本です。
    結末が3つに分かれていて、読者がどれも気に入らなければ自分で作ってみよう、という形式の本。
    結末が別れていても物語は楽しめるし自分で考える楽しみがあって、ロダーリの本の中でもかなり面白い方。
    解説にあった受け手と送り手では物語のコードの受け取り方が違う、という話は目からウロコだった。
    本編もそうだが解説で引用してある「ファンタジーの文法」を読むと創作をしてみたくなる。想像力が大切であるとロダーリは語っていたようだ。
    私も本を読むばかりではなく昔のように少しは書いてみようかと思う。

    0
    2018年03月07日
  • 神を見た犬

    Posted by ブクログ

    上手くいかないから不幸なのではない、貧しいから不幸なのではない、それだから不幸なのだと思ってしまう考え方が不幸なのだ。ブッツァーティの小説は読者に主人公の人生の最後に立ち会わせそれを問いかける物語だ。一元的な物の見方を否定し物事に違う観点を与える。10代の頃彼の長編「タタール人の砂漠」で頭をガツンとやられた。それと同じ感覚がこの短編集にも詰まっている。謎の怪物コロンブレに殺されまいと逃げ続けた男の話、護送大隊をたった一人で襲撃しようとする年老いた山賊の話。ラストですべての不幸が幸福に代わり、幸福が不幸に入れ替わる。この世界のことはすべて脳内で起きている。他人の視点は何の意味もない。自分の人生が

    0
    2022年04月08日
  • 古代ローマ人の24時間 よみがえる帝都ローマの民衆生活

    Posted by ブクログ

    ローマ人の物語ですっかりハマった古代ローマ。
    権力者ではなく、実際に普通の人々の生活ってどうなっていたのか?ということを知れる本。
    ドキュメンタリーのような書き方で本当にここまで古代の生活が分かっているの?と思うほど詳細に描かれている。
    約2000年前にこれほどまでに現代に通じるような生活をしていたことに驚きを禁じ得ない。

    0
    2017年07月10日
  • 天使の蝶

    Posted by ブクログ

    SFでありながら非常に詩的で神話的で終始背中にぞくぞく来るものがあった。もうどこまでも私好み。以下激しくネタバレ。///シンプソン氏のNATCA社シリーズは、3DプリンターやVRの超すごい奴が出てきたりして、思わず私たちの「これから」に思いを馳せずにはいられない。にしても「検閲は鶏に」とか「測定される数値こそが美」とか痛快なまでの皮肉と「痛みこそ生の番人」というような真理が同居してるし、トレックで女優さんのハプニングとか細部に至るまでもう本当すごい。蜂の話とかも面白かったのに…辛いなぁ。何度でも読む。

    0
    2016年11月24日
  • 猫とともに去りぬ

    Posted by ブクログ

    感想は、「たのしい!おもしろい!変!」
    そんな短編集です。

    ユーモアがあって、ついにやにやしながら読んじゃう。
    一気にだいすきな本になりました。
    また数年後に読み返したい。

    とにかく突拍子もない本なんです。
    設定も、展開も、キャラクターが考えることも、台詞も。
    予想もつかないことが起きる。
    作者のロダーリは、とっても想像力豊かで、発想が自由で、人と違う視点から物事を見られる才能を持っていたんだなあと感じます。

    何事も、決まった形に収まらない。
    そんなところが夢があって、
    わくわくして、
    各所に散りばめられたユーモアに笑っちゃって、
    でもぴりりと風刺も効いた本です。

    とっても素敵。世界を

    0
    2016年09月07日
  • 天使の蝶

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    今の時代を見ているようで
    非常に恐ろしいように思えます。
    と、言うかこれからの人間への警告も
    含まれているのでしょうか…

    彼は化学者でもありました。
    それゆえに、これらの未来の商品に関しては
    本当に洞察力がありました。
    そのうちの一部は出てきています。

    だけれどもその中には絶対に
    日の目を浴びてはいけないものもあります。
    表題作も然り、痛みを快感に変えるそれも…

    著者はどこかに心の闇があったのでしょうか
    最後は自殺してしまいます。
    貴重な方をなくしましたね。

    0
    2015年12月04日
  • マルコヴァルドさんの四季

    Posted by ブクログ

    思っていたのと違って、すごく考えさせられる内容だった。
    小さい頃読んでいたら、純粋に楽しい話で、裏の世界は見えなかったと思うけど、色々考えてしまうあたり、自分が大人になってしまったんだなーと思って、少し寂しくもあり・・・
    でも、いい作家を知れてよかった!

    0
    2015年05月05日
  • 古代ローマ人の24時間 よみがえる帝都ローマの民衆生活

    Posted by ブクログ

    ローマ帝国の生活を追体験できて面白い。NHKのタイムスクープハンターのように、時代を超えてやってきたジャーナリストが人々の普段の生活を垣間見る内容だ。発掘調査、文献調査の成果をもとにした作品で、現地観光では見えない当時の人々の生活の様子が生き生きと表現されている。

    0
    2015年02月07日
  • 猫とともに去りぬ

    Posted by ブクログ

    鼻持ちならぬヤツでさえも、
    何故だかだんだん可愛らしく思えてきてしまう不思議。

    ファンタジーは現実逃避などではなく、
    むしろ現実と向き合う為の、知恵なりパワーなりを与えてくれるものなのだと、
    本書を読み終え、しみじみつくづく、感じたのでした。

    「ファンタジーは人間の精神・人格を形成する大切なもの」と考え、
    教訓におちいる事なく、人類愛、反差別、自由の概念を、上質な笑いと共に表現。

    この感性、是非ともあやかりたい。

    0
    2014年07月25日
  • 猫とともに去りぬ

    Posted by ブクログ

    読みながら、意味もなく楽しくなってしまう。そんな短編集。不思議で、可愛くて、悪意がなくて、ほんの短編なのにどのお話の登場人物もたまらなく魅力的。特にレギュラー化してるあの社長が出て来ると、妙にテンションあがる。
    どのお話も素晴らしい。ファンタジーでSFで、ブラックだけど童話。読み始めたら、この魅力のとりこになること間違いなし。まずは読んでみれば絶対にはまる。そしてあっという間にこの世界から離れたくなくなる。

    0
    2014年07月08日
  • 月を見つけたチャウラ~ピランデッロ短篇集~

    Posted by ブクログ

    先に読んだ天才物理学者マヨラナが愛読した小説家。普段はほとんど小説を読まないのだが、気になって、この短編集を読んでみた。いずれも不思議な世界観。おもしろい。別の作品も探して読んでみたい。

    0
    2014年06月21日
  • 古代ローマ帝国 1万5000キロの旅

    Posted by ブクログ

    読み始めるまでに大分時間がかかってしまいましたが、読み始めると写実的で生き生きとした描写にどんどん引き込まれて、最後の最後まで夢中になって読んだ良書です。お陰でトラヤヌス帝時代の文化風俗をより具体的にイメージできるようになったと思います。

    0
    2013年12月09日
  • 月を見つけたチャウラ~ピランデッロ短篇集~

    Posted by ブクログ

    当時のシチリアにおける硫黄鉱の惨状がよく描写されている。知恵が遅れたチャウラが鉱山から出てきて月を眺めるシーンはピランデッロが鉱夫に対する哀れみが感じられる。真っ暗な鉱山とチャウラを照らす月明かりの対比が印象的だった。

    0
    2013年12月12日
  • 猫とともに去りぬ

    Posted by ブクログ

    やはりロダーリは素敵だ!表題作の一行目からすぐにロダーリの世界観にハマってしまう。表題作のオチは子どもたちと一緒に考えたとか。作家だけでなく教育者としてのロダーリの一面が垣間見える作品だと思う。最近『青矢号』を読んだので「ベファーナ論」は大変興味深く読めた。ロダーリという作家がもっと日本でも広まってほしいと切に思う。ぴりりとブラックユーモアが効いた大人向けファンタジー短編集。2012/074

    0
    2013年11月13日
  • 猫とともに去りぬ

    Posted by ブクログ

    奇想天外な展開に冴え渡るユーモアセンス!多分母国語じゃないと半分ぐらいは理解できていないだろうと薄々感じながらも、読み進める内にノリが理解できてきました。久しぶりに純粋に「お話」を楽しむ本を読んだなと思います。
    翻訳も読みやすいですし、題名がいちいちステキですね。
    読みやすい長さの短編で構成されているので、枕元に置いて寝る前にちょこちょこ読むのに丁度良かったです。個人的にピサの斜塔の話がドタバタしてて楽しくてお気に入りです。

    0
    2014年03月08日
  • 猫とともに去りぬ

    Posted by ブクログ

    こういう風刺がバッチリ効いたちょっぴり
    刺激の強い作品は大好きです。
    まさに大人のための童話。
    本当に予想もつかないことがよく起こります。

    表題作はまあありえないけれども
    ある種の自由への渇望が
    彼らを「猫」へと変化させてしまうのでしょうね。
    だけれども幸いにも主人公の男には
    「自由」を渇望することはしたけれども
    頼ってくる人がありました。

    そして…人のせいにする人を
    徹底的にあざけっている作品もあります。
    そして嫉妬心の浅ましさも同時にその作品は
    伝えているのです。
    つまり原因が分からないのなら
    それなりに努力をしろ、ということかと。

    こんな面白い作家がいたことに
    驚きでした。

    0
    2013年09月20日