【感想・ネタバレ】マルコヴァルドさんの四季のレビュー

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Posted by ブクログ

話の内容自体はごく単純だけどシビアな表現で書かれた文章です。気分転換に気軽に楽しめるかと思って読み始めたら、意外と考えさせられることの多い短編集だった。
作者による解説によると「産業社会」というあまい夢だけでなく、「いなかの生活」というあまい夢も、攻撃の的となっているそうで、「昔にもどる」ことができないだけでなく、その「昔」自体が、じっさいには存在したこともなく、幻想にすぎないとのこと。
マルコヴァルドさんの自然に対する愛着は、都会に住む人だけが持つもの、都会で自分のことを「よそ者」と感じているマルコヴァルドさんこそ、ほんものの都会人、という作者の言葉にすごく納得できた。

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2023年07月09日

Posted by ブクログ

思っていたのと違って、すごく考えさせられる内容だった。
小さい頃読んでいたら、純粋に楽しい話で、裏の世界は見えなかったと思うけど、色々考えてしまうあたり、自分が大人になってしまったんだなーと思って、少し寂しくもあり・・・
でも、いい作家を知れてよかった!

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2015年05月05日

Posted by ブクログ

馴染んでいたせいか、前に出されたときの訳者によるものの再版でなくて、少しがっかりしましたが、マルコヴァルドさんを通して見る少し不思議な世界……おすすめです。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

「この本は、子どもの本なのでしょうか?若者むけの本?それとも、大人むけの本?」
ー作者による解説より

「マルコヴァルドさんの四季」というタイトルと表紙を見て、どんな内容のお話だと思いましたか?
私はマルコヴァルドさんという男性が四季おりおりの情景の中で何か素敵なものを見つけ、小さな幸福とふれあう物語を想像しました。
…これが遠からずも当たらず。

この本はマルコヴァルドさんとその一家が過ごす四季×5年分の20話を収めた短編集。
マルコヴァルドさんは、イタリアのどこか知らないけど都会の街で8人家族を養う大黒柱。
そしてどんな仕事をしているのかさっぱり分からないけど、低賃金労働者で家計は苦しい。
ひもじくて野生で生えてるキノコを採りまくろうとしたり、寒さに震えながら薪を買うお金がないから森で薪を調達してきたり、スーパーで他の客がパンパンにカートに商品を詰め込んでいるのが心底羨ましくて買う気はないけどカートを品物でパンパンにしてみたり。
そんなこんなで田舎から出てきたマルコヴァルドさんは、田舎の自然に思いを馳せ、都会の汚らしさにため息をつきながらも、その街で家族と暮らしていきます。

さて、その短編一話一話の展開なのですが、どれも一話ごとに起承転結がしっかりしていて皮肉と哀愁とちょっとした希望に富み、面白いのです。
ただ悲しいかな、物語の最初に街の中でマルコヴァルドさんが小さな幸せや生きがいを見つけることは、読む前の想像通りなのですが、ラストはいつも悲しい結末に突き落とされ、こちらは読みながら呆然とします。
…ええっ!?ここみんなで笑ってハッピーエンドじゃないんだ!!?
救いようがないとまではいかないけど、ちょっとつらい。
割と毎回、そんな感じ。シビアな終わり方も。
どんな展開でそうなるのかは読んでのお楽しみということにして…。
この、何かいいことを見つける→なんやかんや盛り上がりの展開がある→切ないラスト、という展開は、どうやら作者のカルヴィーノが意図的に織り成していたらしい。
完全に術中にハマる。
けれどあまり悲壮感なくページをめくり読み進めてしまうのは、マルコヴァルドさん含めマルコヴァルドさんの子どもたちがめちゃくちゃ逞しくて、次みつけた希望に目を輝かせられるガッツがあるから。
そしていつもマルコヴァルドさんが幸せだ、素敵だと思い焦点を当てるのは、街中のネオンでも喧騒でもなく、植木鉢でぐんと背を伸ばしている植物や、星が輝く夜空、きれいでおいしい空気。
そんなマルコヴァルドさんの感性は、「都会の暮らしにふさわしくない目」と解説などで表現されています。
なるほど、ふさわしくない。
たしかにそうかも。
でもそれと合わせて印象深かったのは、田舎から出てきたばかりのマルコヴァルドさんには都会の街の風景がキラキラして見えたということ。
これも対比として表現しているのかな。

個人の感想だけど、マルコヴァルドさんはちょっとなよっとした感じがあるけど、その子どもたちはめちゃくちゃパワフル。
自分たちは食うに困る生活を送っているのに、裕福だけど日々をつまらなさそうに送っている男の子を見て「恵まれない子どもだ」と感じるというタフネス。
一連の物語で輝いて主人公然としていたのは、案外子どもたちの方なのかも。
あとはこれが書かれたのは1950〜60年代初期というのに、古びた感じが一切しない。
つい去年書かれたばかりですよと言われても納得してしまいそうな新鮮さ。
マルコヴァルドさんが過ごす四季は、はちゃめちゃな展開もあるけれど、今の私たちの生活と照らし合わせて共感を呼ぶものだと思いました。
なんだかついまた読みたくなる、そんな本。
ちなみに特に好きだなーと思ったのが、
「高速道路ぞいの森」「牛とすごした夏休み」「毒入りウサギ」「月と《ニャック》」「けむりと風とシャボンの泡」「がんこなネコたちの住む庭」「サンタクロースの子どもたち」
です。


以下備忘録がてら目次をば。

春 都会のキノコ
夏 別荘は公園のベンチ
秋 町のハト
冬 雪に消えた町

春 ハチ療法
夏 土曜の午後、太陽と、砂と、まどろみと
秋 お弁当箱
冬 高速道路ぞいの森

春 おいしい空気
夏 牛とすごした夏休み
秋 毒入りウサギ
冬 まちがった停留所

春 川のいちばん青いところ
夏 月と《ニャック》
秋 雨と葉っぱ
冬 スーパーマーケットへ行ったマルコヴァルドさん

春 けむりと風とシャボンの泡
夏 都会に残ったマルコヴァルドさん
秋 がんこなネコたちの住む庭
冬 サンタクロースの子どもたち

作者による解説
訳者あとがき

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2022年12月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『梨の子ペリーナ』の再話者となっていたイタリア民話編纂の巨匠イタロ・カルヴィーノ氏の手掛けた児童書。

ズバーブ商会の倉庫の人夫として働くマルコヴァルドさん。
思いついた妙案を熟慮せずに行動に移してしまい、いつも期待していたのとはちょっと違う結末(どちらかというと失敗)にたどり着いてしまう。
妻とたくさんの子どもらを抱え、かつかつな暮らしを送りながらも自然を愛でる心に溢れ、人並みな欲はあるけれど後先見ずに突き進んで窮状を脱せない様は返って善良さが滲み出ていてにくめない。

そんなマルコヴァルドさんの春夏秋冬季節にひとつのエピソードを5周繰り返す形での連作短編集。

比較的あっさりとはしているが、へんてこエピソード達の間に、「おいおい。。。」といった呆れや忍び笑いあり、人間の心の浅ましさを垣間見るものあり、ときには一抹の切なさを感じるものありと玉手箱的作品。
挿絵がいい感じ。

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2022年11月23日

Posted by ブクログ

期待以上におもしろかった!

おもしろさの方向性で言えば、「サザエさん」のようなおもしろさだ。
登場人物たちの思考や行動が容易に予想できて、その結果も予想できてしまう。
「あ~あ、またあんなことして、もう、サザエは。」みたいな。

この本では、マルコヴァルドさんの春夏秋冬に関する短いお話がたくさん収録されていて、四季が何周もする。
四季が何周もするのに、マルコヴァルドさんは懲りない。まったく懲りない。
毎回、「マルコヴァルドさんか家族がなにかを見つける・思いつく→大喜びでそれにくいつく→うまくいかずにがっかりする」という展開だ。

個人的にとくに愉快だったのは、
スーパーの話(家族でスーパーに行ったけどお金がなくて何も買えないから、カートを押して買わない商品を入れることを楽しむ・・・)
洗剤サンプルの話(こども達が洗剤サンプルを大量にあつめて売ろうとしたが・・・)
バスを乗り過ごす話(マルコヴァルドさんが知らない停留所で降りてしまい、目的のルートに戻るために四苦八苦・・・)

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2022年09月10日

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ちょっとシュールな現代童話、といった印象。ただただ現代童話にありがちなシニカルさに偏ってばかりではなく、ひねりを効かせた笑いあり、都会ならではの物悲しさあり、「意味怖」的な話もあり…それらが豊かな描写で描き出される。後半には、今に通ずる社会問題を取り上げた話もあり、物語とは別のところでドキリとしたり…。幅広い年代で、それぞれの視点で読める良書だと思う。

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2020年12月11日

Posted by ブクログ

自然を愛でることが得意(というより現実逃避が上手い?)な貧乏子沢山のマルコヴァルドさん
児童文学の顔しながらそのじつ随所に散りばめられた皮肉とブラックユーモアに大人も楽しめるお話たち
一話が短いし繋がりもほとんどないので気が向いたときに一話、また一話と気軽に読みすすめられる

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2020年11月26日

Posted by ブクログ

カルヴィーノの作品は邦訳あるものは殆ど全部読んでたつもりだった。もしかしてカルヴィーノのファンと言っていいかもしれない。幾つかのものは再読すらしているから。「くもの巣の小道」は自分の楽しみのために、「冬の夜一人の旅人が」は若い友人に勧めるために。
しかしこれは未読だった。半世紀以上も馬齢を重ねていれば大概の小説とインド映画の筋は忘れてしまうのだが、児童向小説は比較的記憶から抜け落ちることがない。そしてこの「マルコヴァウドさんの四季」は児童向小説なのである。
子供のために書かれたからと言って、決して楽しい小説ではない。主人公のマルコヴァルドさんはトリーノを思わす工業都市に暮らす労働者だが、かれと4人の家族が惹き起こす騒動に語り手は決して同情的ではない。かれらの愚行に対する冷ややかな距離感が、全篇に独自のペーソスを行き渡らせている。
面白いのは、マルコヴァルド一家の愚行が、ほとんどの場合食べ物に対する欲望によって惹き起こされていることである。飢餓がかれらを愚行に走らせているのではない。かれらはそれなりには満ち足りているのだが、終始美味いものへの欲求があり、それが虚栄心を刺激してやまないのである。
この作品は20の短篇から成っており、5つごとに春夏秋冬に振り分けられているが、それらが厳密に時系列上に並んでいるわけではない。たぶんこの区分は上記のような「美食への渇望」を導入するために設けられたものであろう。
しかしこの小説では美食が事細かに描写されるわけではない。欲望の対象となる「美味いもの」は漠然とフンギのフリッターとかチェルヴェッラとか(チェルヴェッラというのは豚のセルヴェッソから作った腸詰めのこと)ウサギのローストとか書かれているだけである。マルコヴァルド一家がこれらにありつくことは決してないからである。
カルヴィーノには左翼的傾向があるからこの中に資本主義批判を読み取る者があっても無理ないことに違いない。しかし食いしん坊の間では消費への欲求は容易に美食への渇望へと置換される。カルヴィーノもまた自らの(胃の)中に同様の変換装置を共有していたのであろう。だからこそこれらの物語はかほども悲しいのである。同じ胃の持ち主である私にはそれがよく分かる。

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2015年12月21日

Posted by ブクログ

50年ほど前に書かれたイタリアの姿。でも現在にもいまだよくある光景がそこにある。時代差を感じる部分は、マルコヴァルドさんの貧しさくらいか。職を持っている人がなかなか食べていけないほど今の先進国は深刻ではないのではないかと思うくらいか。都市のなかで視点を変えて暮らすほのぼのとした一面があって良書であった。

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2014年07月15日

Posted by ブクログ

ファンタジー以外の児童書は滅多に読まないのだけれど、
児童文学作家の先生が描写がすごい本として挙げていて、読んでみた。
裏表紙の解説を読んで、抒情的なもっとウェットな内容を想像していたけれどとんでもない。
都会の中の自然や、季節のうつろいや音・色・香りなどに対する描写は確かに素晴らしい。
でもそれ以上に現代社会への皮肉が壮絶にこめられていて、読んでいて始終にやにやしてしまう。
子供と大人で楽しみ方が全く変わる作品だと思う。
マルコヴァルドさんやその一家が結構悪いことをするので
(それらもコミカルにユーモアたっぷりに描かれていて大変面白いが)
なかなか日本では出せない作品だなあと感じる。
他の方も書かれていたけど、これを少年文庫にいれる岩波はすごいと思った。その内容の普遍性と言い、描写の美しさと言い、実はかなり文学性の高い作品だと思う。
表紙・挿絵もとても合っていて素敵な本。

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2014年01月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ちょっぴりズレてるマルコヴァルドさんの素敵な日々。

都会の中であくせく働き、四季の移り変わりに心を寄せる。マルコヴァルドさんを紹介するとそういう人なのだが、それはこの物語の魅力とはちょっと違う。

マルコヴァルドさんは、都会の中の小さな自然を見つけては喜び、しかし物語はちょっとビターな方向に転がっていく。公園のベンチを別荘と洒落込んでも光や音や臭いのせいで眠れない。キノコを見つけたら食あたり。スーパーマーケットやネオンサインに振り回される。

でもマルコヴァルドさんは挫けない。子沢山で家計は苦しく、いつも思ったようにはいかないけど、マルコヴァルドさんはブツブツ言いながらも楽しそうだ。

生きるってこういうことなんじゃないかと、便利さに染まりきって疑問にも思わない自分を振り返る。

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2021年08月19日

Posted by ブクログ

かなり昔に読んで、児童書にしては暗い本だと思っていたが、今再び読み返すと、その暗い部分の意味がよく分かるだけになおさらやりきれない気持ちになる。文学的にはもっと高い評価をしてもいいと思うが、一筋の希望も見えない話は、やはり面白いとは言い難いので星は3つにしておく。もう少しユーモアのある風刺なら救われるのに…。しかし、カルヴィーノは大好き。

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2012年05月30日

Posted by ブクログ

子だくさんで、半地階に住み、会社と家との往復で生活に疲れきっているようなマルコヴァルドさん。そんなくたびれた中年男にも自然の四季折々はいくばくかの潤いをもたらしてくれる。真面目な気持ちで読んでいると、ずっこけてしまう。それはないだろうというオチが待っている。しかし・・・これって子どもの読む本かなぁ、首を傾げたくなる。大人の私にはそこそこ楽しめるけれど。

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2011年09月26日

「児童書」ランキング