あらすじ
自然を愛する敏感な心をもったマルコヴァルドさんが,都会のまんなかで,四季折々にくりひろげる物語.ちょっととぼけていて,どことなく憂鬱そうなマルコヴァルドさんとその家族のかもしだすユーモアは,暮らしをとりまく環境と心のバランスを失ってしまった現代人に,どんぴしゃり! 文豪カルヴィーノの傑作を新訳で.
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Posted by ブクログ
『梨の子ペリーナ』の再話者となっていたイタリア民話編纂の巨匠イタロ・カルヴィーノ氏の手掛けた児童書。
ズバーブ商会の倉庫の人夫として働くマルコヴァルドさん。
思いついた妙案を熟慮せずに行動に移してしまい、いつも期待していたのとはちょっと違う結末(どちらかというと失敗)にたどり着いてしまう。
妻とたくさんの子どもらを抱え、かつかつな暮らしを送りながらも自然を愛でる心に溢れ、人並みな欲はあるけれど後先見ずに突き進んで窮状を脱せない様は返って善良さが滲み出ていてにくめない。
そんなマルコヴァルドさんの春夏秋冬季節にひとつのエピソードを5周繰り返す形での連作短編集。
比較的あっさりとはしているが、へんてこエピソード達の間に、「おいおい。。。」といった呆れや忍び笑いあり、人間の心の浅ましさを垣間見るものあり、ときには一抹の切なさを感じるものありと玉手箱的作品。
挿絵がいい感じ。
Posted by ブクログ
ちょっぴりズレてるマルコヴァルドさんの素敵な日々。
都会の中であくせく働き、四季の移り変わりに心を寄せる。マルコヴァルドさんを紹介するとそういう人なのだが、それはこの物語の魅力とはちょっと違う。
マルコヴァルドさんは、都会の中の小さな自然を見つけては喜び、しかし物語はちょっとビターな方向に転がっていく。公園のベンチを別荘と洒落込んでも光や音や臭いのせいで眠れない。キノコを見つけたら食あたり。スーパーマーケットやネオンサインに振り回される。
でもマルコヴァルドさんは挫けない。子沢山で家計は苦しく、いつも思ったようにはいかないけど、マルコヴァルドさんはブツブツ言いながらも楽しそうだ。
生きるってこういうことなんじゃないかと、便利さに染まりきって疑問にも思わない自分を振り返る。