関口英子のレビュー一覧
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ネタバレイタリアの作家ブッツァーティの短編集。「タタール人の砂漠」が非常に良かったので読んだ。「タタール人の砂漠」ほどは揺さぶられなかった。
幻想的な雰囲気が漂う作品が多い。時代設定が少し昔だったり、物語の舞台が田舎がだったりすることで、今自分がいる世界とは地続きのようだが実際に見たことはない世界のストーリーとして感じられるからだと思う。
特に「護送大隊襲撃」は、ヘミングウェイの「敗れざる者」を彷彿とさせる佳作だと感じた。
護送大隊襲撃
捕らえられた山賊の首領プラネッタが(微罪のみしか問われなかったことから)3年後に釈放される。しかし刑期に衰えた彼を昔の仲間が迎えることはなかった。一人過ごしてい -
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はじめの2作は軽快で、ピウミーニの『キスの運び屋』みたいだな、と思った。聖人が天から人の世界を見下ろして…という設定は、私はピウミーニで初めて読んだのだが、勿論ブッツァーティの方が古いので、ピウミーニが真似したのかもしれない。しかし、そもそもイタリア人は、こうしたことをしょっちゅう考えているのでは、とも思った。幼い頃から、「聖人さまがご覧になっていますよ」と戒められて育つ、とか。
告解のシーンも多く、カトリックの国の作家だなぁ、とも思う。
ロダーリやピウミーニほど明るくないし、カルヴィーノほど寓話的でもナンセンスでもないが、やはりイタリアの作家らしく、解説にあるカフカなんかとは全く違う。
「病 -
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皮肉めいたものの見方はしているけれども、刺々しさは控え目にしている気がする。結婚出来ない空想家の日常「怠け者の夢」、欲に目が眩むと大事なタイミングを見逃す「パパーロ」、取り敢えず逃げて下さい「清麗閣」、『夢幻諸島から』を思い出した「夢に生きる島」、評論家の懺悔「いまわのきわ」、『きつねとぶどう』な「ショーウィンドウのなかの幸せ」、大爆笑した蛸の死生観「蛸の言い分」、さて、今年の春の流行は?「春物ラインナップ」などイタリア文学はまだまだ金脈が沢山ありそう…とここまで来て最後に強烈な「記念碑」で掉尾を飾る。ある男の記念碑が立てられるまでの経緯に鳥肌が立った。解説にある退廃した中産階級を書いたものよ
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ようこそ、陽気で不思議なロダーリ・ワールドへ。
ロダーリのファンタジーは懐かしい。小さい頃にきいたお話のようなイメージ。それでいて、痛烈な皮肉が効いている。何かがずれている登場人物と、何かがずれているような事件。それが楽しい。度々出てくるマンブレッティ社長が、典型的やな奴で、こういう人がいるのもファンタジーの醍醐味。
「猫とともに去りぬ」家族に相手にされないから猫になる老人。そんな元人間の猫が起こす運動。猫になる、というのは人類共通の夢かもしれない。
「ピサの斜塔をめぐるおかしな出来事」宇宙人が勝手に地球の名所をくじの商品にしているとか、まるで星新一にありそうな。機転のきく行商のおじさん -
- カート
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試し読み
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イタリアの小学生ダンテ君は、ディスクレジアの障害を持つ。香港に出張中の両親に代わりおばあさんと住んでいる。小学校の卒業試験(!)のために、家庭教師の家に通うようになるが、そこで生まれたばかりの子猫を譲ってもらう約束をする。風変わりな家庭教師は、精神を集中すればネコと一緒になりネコの見ているものが見られると教えてくれる。それ以来、ダンテは、ネコと一緒にネコの見ているものを体験するようになる。
先生のおかげで無事卒業試験は合格したものの、先生悪性のインフルエンザがもとで亡くなってしまい、子猫もどこかへ行っていまう。ダンテは、ネコの見ているものからネコのいるところを捜そうとする。すると、ネコは新しい