風野真知雄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
耳袋秘帖シリーズ・ 眠れない凶四郎編(四)
前巻で、妻・阿久里さんの殺しの件は落着したのですが、相変わらず“眠れない”凶四郎は、源次と共に夜廻りを続けています。
そんな中、蜘蛛の巣に見立てた仕掛けによる殺人が発生し、連続殺人へと発展していきます。どうも、大坂の仕掛け小屋にいた“化け物師”が絡んでいるようですが、真相はいかに・・。
安心して楽しめるこのシリーズ。おばさん岡っ引きのしめさんや、椀田さんの姉・ひびきさんも登場します。
勿論、根岸奉行もキレキレですが、骨董の目利きが全然できなくて、松平定信に呆れられる一面もまた可愛げがあってよいですね。
今回登場した「赤月屋」は今後も登場するのでしょうか。
とりあえず個人的な希望としては、ひびきさんに幸せになって頂きたいです。宮尾さん、しっかりして! -
Posted by ブクログ
〈耳袋秘帖〉新シリーズ第三作。
夜眠れなくなった同心・土久呂凶四郎の、その不眠の原因である妻・阿久里が殺された事件がついに真相へ。
夜の化け猫騒ぎ、うなされる若旦那のおかしな手つき、動く石灯籠など…今回も奇妙な話を調べる。
奇妙な話の裏に悪事あり。凶四郎も段々と探索のツボが分かってきたようだ。
手下の源次とも呼吸が合ってきて、彼の動きも良くなってきた。ついに正式に十手を預かることになり、顔つきも変わってますます頼もしい。
シリーズを追いかけている者としては、再びしめさんが出てきたのも芸者の力丸が久しぶりに出てきたのも嬉しい。
この新シリーズでは前作からクローズアップされ始めた『鬼の会』がついに形として現れる。予想以上に大人数だし、援助している人もいるようで、不気味。
そして鬼藤が…どうなるのかハラハラしながら見守った。凶四郎の優しさが嬉しいが、純粋な者ほど怖い。
『世の中はある程度のゆるさ、ほどの良さというのが必要なんだがな』
根岸奉行のその姿勢の真意が分からない、或いは相容れない者は『鬼の会』に傾倒してしまうのかも知れない。
そして殺された阿久里の父親がやっていたことも次第に明らかになる。根岸のようなある程度の地位になるとあちらもこちらも敵や悪意ある者だらけで大変だ。
阿久里が殺された事件についてはただ悲しい。こんなことで…?な気持ちと、とりあえず区切りがついて良かったという気持ちが入り雑じる。
凶四郎にも区切りが付くと良いが、夜眠れない日々はまだ続きそうだ。
このシリーズはまだ続編があるので、『鬼の会』の残党狩りのような話になるのか、それとも新たな展開があるのだろうか。 -
Posted by ブクログ
妻を殺されてから夜眠れなくなってしまった同心・土久呂(どくろ)凶四郎は、南町奉行・根岸肥前守からどうせ眠れないならと夜の市中見廻りを命じられた。
大晦日の夜も下っ引きの源次と共に見回りをしていると、除夜の鐘の音が移動していることに気付いてその音の行方を追う…。
<耳袋秘帖>新シリーズ二作目。
主要人物は凶四郎と源次コンビだが、椀田に宮尾、栗田とその妻も登場してくれて嬉しい。栗田の娘たちも可愛らしく成長しているようだ。
今回は動く除夜の鐘、獅子舞の男が入れ替わった末に殺された事件、一晩で店前に六地蔵が並べられた酒屋、わざとまずくしたそばを出す屋台、魚河岸に時折現れる白い手という五つの謎を追う。
それぞれの謎は小粒だが楽しめた。
ちょっと切ない話、小気味よい話、なかなかの仕掛けがあった話など、それぞれタイプの違う謎が楽しめる。
前回から続く、凶四郎の妻・亜久里が殺された事件の方は大きな進展はなし。ただし、亜久里の実家・波岡家には何かありそうだ。
また前回で起きた吉原同心銃殺事件と前作ラストで起きた銃殺事件についてはどうも不気味な空気が漂う。
今回出てきた『鬼の会』が関わっているようだが、これまでのシリーズ作品にもあったように、形のないものに扇動される人々の怖さがある。
生真面目で純真な同心・鬼藤一鬼が変に感化されていなければ良いのだが。
『鬼の会』の中心にいるのは誰なのか、亜久里が殺された事件とも繋がるのか、ここが新シリーズのテーマとなるのだろうか。
このシリーズは根岸を始め、同心も岡っ引きも下っ引きも脛に傷持つ者や何かを背負っているものが多い。
清潔な人間が正義を振りかざすのではなく、何かを抱えていたり人に胸を張れないところがあるからこそ出来ることがあるというスタンスだ。
『(悪を)根絶やしにしろというやつは、この世のなりたちや、人間の本性がわかっていないのだ』
法や道義に触れることを一掃すれば真っ当で皆が幸せになれる世の中になれるのか。逆にどこまでなら許容出来るのか。そのバランスは難しい。
今作のラストがそのことを示していた。
根岸と凶四郎はその答えを求めているのかも知れない。 -
Posted by ブクログ
タイトル買いならぬ、タイトル借り。読んでみたら〈耳袋秘帖〉シリーズの新しいシリーズだった。
坂巻&栗田コンビの第一シリーズ、宮尾&碗田シリーズの第二シリーズに続くこの凶四郎シリーズ。
土久呂凶四郎という凄い名前だが中身は堅実な(過去には色々やんちゃしたらしいが)同心が、妻・阿久里を殺されて以来、夜眠れなくなってしまう。
そのことを知った根岸奉行は、眠れないなら夜回りをしろと命じ、それだけでなく様々な奇妙な事件を調べさせていく。
新シリーズだが宮尾や碗田、岡っ引きの辰五郎に女下っ引き・しめも出て来て嬉しい。謎めいた猫・鈴も元気。
狐の駕籠屋にフクロウ少年に導かれての神隠し、虚無僧たちの群れに張りぼての猫の視線が怖いなど、相変わらず奇妙な事件を調べる傍ら、凶四郎は阿久里の事件も調べる。
阿久里とは短い結婚生活だったため、彼女のことをほとんど知らない凶四郎は苦労する。それでも少しずつ阿久里の行動が明らかに。占いを受けていたらしい、女友達がいたらしい、そして…鬼。これらは阿久里が殺されたことに関係するのか。
物騒なシーンで終わるのが、この新シリーズも今後の緊張感を期待させる。阿久里の事件は意外と闇が深いのか。 -
Posted by ブクログ
時代物の倒叙ミステリーは珍しい。このシリーズは好きで読んでいたが長らく中断していた。久しぶりに新作が出たので嬉しい。
くせっ毛と冴えない風貌のせいで侮られがちな同心・亀無剣之介。だが彼はひらめきとこれと見込んだ被疑者や手がかりから離れない姿勢から「ちぢれスッポン」と呼ばれる名探偵でもあった。
第一話「裁けない同心」は、隠れキリシタンだった薬屋の息子が、キリシタンをやめたいと仲間に打ち明けるも受け入れられない。そのことで仲間を殺めてしまう。しかし何と被害者は犯人を庇うために自ら現場を離れ喧嘩の末に殺されたかのような工作すらして果ててしまう。
当然犯人は犯行の痕跡を消し去ってしまう。隠れキリシタンという特殊な関係に加えて被害者が犯罪の痕跡を変えてしまうという、こんな難しい犯罪を亀無はどのように暴くのか。
第二話「浮世絵の女」は絵描きの師匠が男女の関係にもある女弟子を殺していまい、何かしらの工作をして向かいの小料理屋に行くシーンから始まる。小料理屋から犯行現場である工房を見ると、障子窓越しに死んだはずの女弟子が絵を描いている姿が影として映っている。つまり犯人である師匠は被害者を生きているように見せかけアリバイ工作をしたのだ。その後、工房に入った別の弟子が可哀相に犯人として捕らえられてしまう。
亀無は捕まった弟子が犯人ではないと感じるが、真犯人とアリバイトリックをどう暴くのか。
亀無の捜査は至って基本的で、現場検証と聴き込みに尽きる。しかしその中で抱いた微かな違和感や見過ごし勝ちな小さな発見を疎かにせず追求していくことから真実に辿り着く。
それでも亀無が思い至らなかったところもある。上記の二話では真の動機だ。第一話では隠れキリシタンであることに耐えられなくなった末なのかと思っていたが、そうではなかった。第二話では男女の関係に不安を感じたのかと思っていたらそうではなかった。
倒叙ミステリーと言っても最初から何もかも明かされているのではなく、書かれていなかったことが最後に明らかになるところが面白い。
表題作でもある第三話は病気が治らないことに苛立つ料理屋の女将と、彼女の治療を拒む医師の姿が描かれ、その後医師が謎の死を遂げる。
状況から毒殺が一番ありそうなのだが、犯人らしき女将は医師に毒を盛る機会はなかった。一体どうやって医師を殺したのか。
この第三話では犯人は女将だろうと思われるのだが、そのトリックは書かれていない。
亀無はまたも丹念に医師が死んだ日に会った人々を捜査していくのだが、なかなか解決の糸口が掴めない。
ところがここでついに『ひらめき』が降りてくる。それを導くのが松田与力の妹で亀無が密かに思いを寄せる志保だ。
このトリックと、病が治らない苛立ちだけではない動機が最後に明らかになるのは先の二話と同じパターンだが、この話では更に犯人すら知らなかった真実も明かされて面白い。
その最後を締めくくるのが真面目なのか不真面目なのか分からない松田与力だ。見た目は役者顔負けの美形で、殺しの事件で解決出来ないものはないと言われるほどの仕事振りなのだから町民たちからも人気が高い。
しかしその事件の解決を担っているのは亀無だし、普段はふざけているとしか思えない話をするくせに最後の美味しいところは持っていってしまう。なんだか割を食ってばかりの亀無だがそれが自分の役回りと諦めている。
シリーズが再開したのだとすれば嬉しい。妻を亡くして一人娘を育てる亀無と志保の関係の行方も気になるし、松田を狙う者たちとの政争の行方も気になる。
同じ倒叙ミステリーの、大倉崇裕さんの「福家警部補」シリーズと比べるとややアッサリしているが、こちらも読みやすくて面白い。