プラトンのレビュー一覧

  • ゴルギアス

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    声のうるさくなったこの現在が煩わしくて、時にことばにすることが億劫でもう説明することが心底どうでもよいと思うことがある。
    そんな中にあって、もう遠く離れた場所の時間も違う人間だというのに、おなじような感覚に出会うと、一周回って、あぁ、人間の歩みはこうも遅く進んでいくものなんだと思えてくる。ほんとうに生まれたての子どものように、少しずつ試し、失敗して反省しながら滅びまでの道を歩いていくことしかできない。それはどこか悲しく、どうにもならならい痛みを抱えて生きていくことだけど、この命の明滅を繰り返してひとつの線になっていくのだと思うと、それはそれで自分の魂の不滅というものが実感できる。自分の居場所が

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    2022年12月11日
  • ゴルギアス

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    説得を真髄とする古代ギリシャの技術である弁論術について、それを実践し広めるゴルギアス一派とソクラテスによる論駁の一冊。
    ある分野において専門家よりも大衆を信用させることのできる弁論術が何事にも優って善であるとされる点から、彼らの熾烈な討論が始まります。
    相手を信じ込ませるその技術に対して、それが持つ善の力を信じているゴルギアス一派と使用する人間によって異なると疑っているソクラテスは最初から対立しています。
    今まさに目の前で言い合っているような彼らの息遣いが感じられる訳と筆致によって、夢中になって読み進めることができました。
    弁論術の心得があると私生活でも仕事でも間違いなく役に立ちますが、他者へ

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    2022年07月02日
  • メノン~徳(アレテー)について~

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    「徳は教えられるか」、それ以前に「徳とはそもそも何か」という問いに導かれて、
    それらの問いに答えることはできるのか、そのような問いにどうすれば多少なりとも答えられるか、という方法の問題にも話題がおよぶ。

    想起説、仮設の方法、行動における正しい思わく、など、色々な話題が出て来て面白かった。

    また、岩波版の先行訳と比べると、ソクラテスのモノローグとして対話篇を読むのではなく、ソクラテスが相手に合わせて話題や議論の進行に彩をつけている部分にまで注意をはらう近年の研究成果をふまえて、解説や訳文が作られている。
    そのため、先行訳とは読んだ時の印象が思った以上に変わったことに驚いた。

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    2022年06月16日
  • ゴルギアス

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    人と人とをつなげる方法として、文書や資本などの技法が発展していない時代、
    顔の見える範囲で言葉をかわすことは、今とは比べ物にならないほど大きな役割を果たしていた。

    その言葉をうまく使って人々を説得し、自分が望むように人々を動かす力である弁論術が、
    劇中のソクラテスたちの会話の素材として取り上げられる。

    弁論術は説得によって何を目的として求めるのか。
    その目的を選ばせる価値観はどのようなものか。
    その価値観をいだくような人の生き方はどのようなものか。

    弁論術から始まり政治や人の生き方にまで話が及ぶ本書は、プラトンの中編著作の中では手頃なものだと思う。
    (ただし、劇中のソクラテスの議論や主張

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    2022年05月17日
  • 饗宴

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    エロスについて、ソクラテスらが語る饗宴(飲み会)。
    この饗宴で主題となるエロス(愛)とは、基本的には少年愛のことですが、語るにつれて男女の愛さらには愛智(フィロソフィア、哲学)に及んでいきます。

    エロスについて演説するのは、ファイドロス、パゥサニヤス、エリュキシマコス、アリストファネス、アガトン、そしてソクラテスの6人です。

    始めの5人は、言ってしまえばソクラテスの前座なのですが、それでも興味深いものがあります。
    中でも特筆すべきなのは、アリストファネスの人間球体説でしょう。
    その昔、人間は男女の合一した存在でした。背中合わせの2つの顔、4本の手と4本の脚。しかし、神々を冒涜したために、ゼ

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    2022年01月23日
  • パイドロス

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    後半に打ちのめされた。「饗宴の続編とも言うべき」なんてとんでもないじゃないか。

    「読むこと」によって知ろうとすることは無知ゆえに危険だろうし、愚かなことかもしれない。しかしソクラテスのような人と議論できる訳でもない場合、本以外にどんな手段が望めるというのだ。せめてプラトンが対話式で書いてくれていることが希望の救い。よくよく考えてみなければ。

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    2021年07月24日
  • 国家 上

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    なぜ今まで読まなかったんだろう。
    タイミングなのか。

    とても分かりやすく書いてある。とはいえ、対話についていくことができるということで、それを「知った」とは言えないだろうけども。

    この訳は現代的に思える(苦労しない日本語)けども、1979年が初版なんて、驚いた。

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    2021年07月12日
  • 国家 下

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    現代にも通用する政治思想のエッセンスに加え、価値の原理のルーツともいえる「善のイデア」に関して解説した壮大なる古典。これが2400年前に書かれたという驚愕の名著。

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    2021年01月06日
  • ソクラテスの弁明 クリトン

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    分量も少ないし、事前に知識も仕入れていたからかなり読みやすかった。特に『クリトン』は対話形式というのもあり、小説を読んでる感覚。

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    2024年11月06日
  • パイドン~魂について~

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    「このようなことを呪い歌のように自分自身に謳い聞かせる必要があり、それゆえに、私はもう長いこと物語(ミュートス)を語ってきたのである。」p.114

    「人間の言葉(ロゴス)は十全な真理に達するほど信頼できるものではありえない以上、哲学の探求は自己反省を加えながら、生ある限り続けられなければならない」p.313

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    2020年10月09日
  • 饗宴

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    ただお酒を飲みながら何かを話し合う日々が欲しい。素敵だなぁ。

    難しいところは、NHKの100de名著を見るとわかりやすかった!

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    2020年08月02日
  • 国家 上

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    「国家はどうあるべきか」のような明らかに答えが無い高レベルな問いに対して,つぎつぎと答えがつけられていく様は爽快.根拠は無いが指針を示してくれるものを見てスッキリしたい方にはおすすめ.

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    2020年05月03日
  • メノン

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    今までの読んだプラトンの作品に比べて、反論なく円滑に議論が進んでいくので分量も少なく読みやすい。

    「徳とは教えられるのか」についての議論だが、そもそも「徳とは何か」に議論がすり替わる。

    というのも、それがどうであるかはそれがどのような性質のものかを定義づけなければ語ることができない。これは日常的な会話にも言える。

    例えば旅について語っても、「一人なのか複数なのか」、「どこにいくのか」、「目的は何か」と性質を限定して定義づけなければ、議論は想定違いの結論を生みかねない。

    話がずれたが、本書では『パイドン』で語られていた想起説やイデア論について述べられており、合わせて読むとプラトン哲学をよ

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    2020年02月20日
  • ゴルギアス

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    プラトン一冊目。思ったより堅苦しいものではなく、所々盛り込まれいるユーモアにはクスッと笑ってしまう。

    僕は頭が良くないので、読みながら一々頭で論理を整理する必要があったため読むのにかなり時間を要した。

    早速僕の気づきをいくつか挙げてみる。

    ①現代社会での我々の会話はソクラテス(というよりはプラトン?)に注意されかねない。例えば、Aを質問されているのに、あたかもAが非難されていると認識してBの回答をしてしまうことは想像に難くないだろう。本質を捉えて簡潔に答えればOK。

    ②国家社会の政治のあり方について。
    本来「政治にたずさわる人間のなすべき唯一の仕事は、市民一人ひとりができるだけすぐれた

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    2020年02月11日
  • 国家 下

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    「洞窟の喩え」の出典でもある「国家」下巻。
    正しいものごとを理解していない人、そしてそういった人々へ真実を伝えることの難しさ、その中でどう振る舞うべきなのか。
    そういった困難を比喩の力で見事に表現しきっている。

    画家、詩人について喩えるくだりで語られる、使う人と作る人、そして真似る人。
    ここでは何にも増して、使う人の考えこそが重要であると語られる。
    これは現代社会においてもUXの重視という形で語られるものであり、普遍的な価値が語られていることの証左でもあろう。

    人物から国家に飛躍し、様々な形態の国家について吟味する。
    そして国家という粒度での議論から、当初の問題であった正義と不正、正義「の

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    2019年09月04日
  • ゴルギアス

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    プラトン初期の作品『ゴルギアス』

    初期の中でも後期にあたるこの作品の特徴は、
    それ以前の作品では、もっぱら「無知の知」で対話が終了していくのとは打って変わって、問いに対する結論が出てくるようになってくることだ。

    結局のところ何も私達はわからないというところで終始していたソクラテス的スタンスに、
    イデア論をはじめとしたプラトン思想といえるようなものが出てくるようになる。

    それは、
    プラトンがシチリアへ赴いた時に、当時の数学の権威であったピュタゴラス派と交流をもったことをきっかけにしている。
    プラトンの思想体系に変化が起こり、それ以降の作品にも変化が起こることを示している。


    プラトン40

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    2019年03月08日
  • プロタゴラス~あるソフィストとの対話~

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     2011年5月23日(月)に阪大生協書籍部豊中店にて科研費で購入。同日読み始め、25日(水)に読み終える。

     訳文も読みやすいし解説もすばらしい。これは訳者というよりも光文社翻訳編集部に対する意見だが、たしかに訳者もあとがきで書いているようにプラトンの『プロタゴラス』は藤沢令夫訳が出てからすでに50年以上経っており、「光文社古典新訳文庫」が謳う「いま、息をしている言葉」ではなくなってきているのかもしれない。だとしても、誰でも手軽に読める文庫で新訳を出すのなら、『ニコマコス倫理学』とかもっと優先度が高いものがほかにもあるような気がする。

     今度から藤沢訳と交互に読みたい。

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    2019年01月22日
  • マンガで読む名作 ソクラテスの弁明

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    2010年4月19日(月)にBOOKOFF京都宝ヶ池店で購入。定価600円のものを350円で買っている。買った日に一度読んでいるようだ。そういうわけで、今回で読むのは二度目。2011年1月16日に読み始めてその日のうちに読み終える。

    プラトンの対話編『ソクラテスの弁明』『クリトン』『パイドン』がマンガ化されたもの。よくできている。

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    2019年01月22日
  • 国家 下

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    ソクラテス先生「正義」の話をしようの巻

    「国家」という邦題が付けられているが、
    最後まで読めば解説に書かれている通り
    「正義」がこの本のメインテーマで有り、
    国家論に関しては、その一部だと分かる。

    多くの人が指摘しているが、洞窟の比喩や
    国家論の「民主制から独裁制が生まれる」
    という指摘は現代人も舌を巻く観察眼である。

    最後のエルの物語はプラトンの師への想いが感じられ、
    輪廻転生の概念がギリシアにも存在することが分かって興味深かった。

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    2019年01月19日
  • プロタゴラス~あるソフィストとの対話~

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    [高橋一生が演じているかのような生き生きとした鼻持ちならないアリストテレス]

    ソクラテスの対話編を読むのははじめて。それ以上に古代ギリシャ哲学について書かれた本を読むのもはじめて。
    しかし神業のような翻訳によって、まるで脚本 宮藤官九郎、ソクラテス 高橋一生というようなイメージで一気に読んだ。

    いきなり冒頭から、最近自分が入れあげている美少年についてのろけるソクラテス(35歳)に大笑いする。
    とにかくうざい高橋一生版ソクラテス。

    ・揚げ足とり
    ・はい、論破ー

    新進気鋭のネット番長、ソクラテス35歳が著名作家プロタゴラス(60歳)に粘着リプライを繰り返す話。

    物語のコアは、人間の徳(プ

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    2019年01月17日