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ソクラテスの生と死は、今でも強烈な個性をもって私たちに迫ってくる。しかし、彼は特別な人間ではない。ただ、真に人間であった。彼が示したのは、「知を愛し求める」あり方、つまり哲学者(フィロソフォス)であることが、人間として生きることだ、ということであった。(「訳者あとがき」より)。ソクラテスの裁判とは何だったのか?プラトン対話篇の最高傑作、ついに新訳で登場!
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Posted by ブクログ
自分の死(死刑判決)をもって自らの哲学を体現するという哲学者としての生き方がまさに「徳」と感じた。この作品から感じること、考えることを発信することは野暮な気はするが、言葉一つでここまで心を動かせることに感銘を受けた。 同世代の友達はこれを読んで何を思うだろうか。
『世にも優れた人よ。あなたは、知恵においても力においてももっとも偉大でもっとも評判の高いこのポリス・アテナイの人でありながら、恥ずかしくないのですか。金銭ができるだけ多くなるようにと配慮し、評判や名誉に配慮しながら、思慮や真理や、魂というものができるだけ善くなるようにと配慮せず、考慮もしないとは』 ...続きを読む 本編は対話形式で読みやすく、続く本編についての詳細な解説、プラトンについての解説も興味深かった。だけど、この本に書いてある文字を一通り読めたからと言って哲学的概念を理解できたとはとても言えない。 それでも、この社会の大多数に受け入れられている、年収や評判を重視する価値観にどうしても疑問を持ってしまう自分には、救われる部分があった。たとえそれによって社会にうまく馴染めなくても、とりあえず疑問を持ち続けて、考え続けていいのだと思っている。 「徳について、また私が対話しながら私自身と他の人々を吟味しているのを皆さんが聞いているような他の事柄について、毎日議論をすること、これはまさに人間にとって最大の善きことなのです。そして、吟味のない生は人間にとって生きるに値しないものです」
まず、告発に対する弁明を「古くからの告発への弁明」と「新しい告発への弁明」に分けた点に素晴らしく驚いた。純粋にすごい。ソクラテスは、裁判における告発者の他に、目に見えない告発者(偏見と思い込みによるもの)を「古くからの告発者」と定義付けて弁明をはじめる。そのうえで「新しい告発への弁明」へと移行してい...続きを読むくが、その導入部分で一気にソクラテスの弁明に引き込まれていった。 そして、ラストの裁判後のコメントにおける予言も素晴らしく感動した。ソクラテスに有罪投票をした人々は、ソクラテスの予言どおり、現代の人々にもその「生き方」を吟味され続けている。ソクラテス自身ですらこんなにも永い時代を超えて彼らに仕返しが下るとは思っても見なかったのでは…?何にせよ、ソクラテスかっこいい。 ソクラテスの問答法、そして無知の知。 自分の現状に満足して知識ある者と勘違いをせずに、常に謙虚に生きて、学ぶ意欲を持ち続けたい。 そう思える裁判傍聴体験となった。
神を信じない罪と若者を堕落させた罪で告発を受けた哲学者ソクラテスの、裁判での弁明(告発者との問答を含む)、判決、そして判決に対する「遺言」をまとめたものです。 訳者解説によればこれはプラトンが著したソクラテスに関する真実であり、裁判記録ではありません。実際、おもにソクラテス側の言い分が書かれており、...続きを読む告発者との問答も、ソクラテスがいかに反駁したかに重きが置かれているようでした。 最低限必要な知識はまえがきに書いてあり、註もあるので読み進めるのに支障はありませんでした。 読み終えて思ったのは、ひとつには神を信じていないのはソクラテスではなく告発者と民衆(裁判員)だということ。ふたつには、これを過去のこととして素通りしてはいけないということです。 都市国家では守り神を信仰するのが当たり前だったそうですが、裁判当時は形骸化していたのではないでしょうか。本当に皆が守り神を信仰していたなら、神を信じていないと告発されることもなかったでしょう。自分と同じようにソクラテスも神を信じていると実感できただろうからです。 ソクラテスがおこなった弁明や問答も、至極真っ当な内容だと私には思えましたが、裁判員には当時跋扈していたソフィストの言うことと区別がつかなかったのかもしれません。ソフィストの語は現代でも、詭弁を弄する人という意味合いで使われます。しかしその場にいる全員が神を信仰していたなら、ソクラテスの真に言おうとしていることが理解できたのではないかと思うのです。 罪をでっち上げられて告発され、有罪になってしまうことは、現代でも十分あり得ます。当時の裁判では有罪か否かを判断したあとに量刑が判断されていたそうで、告発者が死刑を求刑したのに対し、ソクラテスは当時のVIPにのみ許されていたことを刑罰として提案するなどしたため、裁判員の反発を招いてしまいます。 弟子たちの助言もあってソクラテスの主張は最終的に罰金に落ち着きましたが、それまでの悪印象を拭い去ることはできず、告発者の求刑どおり死刑が決定します。 現代でも、「心証が良くなる/悪くなる」と言います。神ならぬ身の人が人を裁く難しさは古代ギリシャの時代から少しも変わっていないのだなと、ため息が出ました。 この著作はプラトン哲学への入門書ということで、あらためてプラトンが何を言いたかったのかを考えると、ソクラテスがいかに真理の探究に熱心だったか、ではないでしょうか。それが神の意志に叶う生き方だと信じていたのです。 とはいえ自分の生き方を貫くのはとても勇気の要ることで、ともすれば日和ってしまいがちになります。プラトンは師の生き様を記すことで、自分が哲学の道を歩む際にぶれることのないよう、自身への戒めとしたかったのではないかと思いました。 解説も充実していて、本編を読み、解説を読んで、再度本編を読むといっそう理解が深まるように感じました。 プラトンのほかの著作についての案内も巻末に載っています。続編は「クリトン」と「パイドン」だそうなので、探して読んでみようと思います。
目次→訳者まえがき→本文の順で読み始めたところ、訳の言い回しがまわりくどいのか、原典がくどいのか、ソクラテスが何を言いたいのか良くわからない印象でした。 でも、解説→本文の順で読み直したところ読めるようになりました。 「徳について対話・吟味のない生は人間にとって生きるに値しないもの」と言い切るソク...続きを読むラテスはかっこいい。でも、吟味のために全てを切り捨てる必要があるのか? プラトンの他の著作も含めて哲学の歴史を辿ってみようと思います。
昔学生のころ絶対に読んだのだが。(読んだことだけは 覚えているのだが)全く覚えていないもので。 大まかな内容は当然しっているのだが、詳細は全く 思い出せなかってです。でもまた読めてよかったと思います。 光文社のこの文庫シリーズは非常にいいと思うので、 もっと多くの古典を新訳で発売してほしいと思います...続きを読む。 ソクラテスの無知の(知)恥の本来の意味合いが、 少しわかったような気がします。
知を愛し求めるかぎり、人はより良く生きている。 無知の知。 人は「死」を知らないのに、なぜ恐れるのか。 恐れはダークサイドの入り口。。。
岩波文庫版に親しんで、よく知っていると思っていたけど、それ自体がとんでもない間違い、まさに無知であったことがわかりました、この新訳と充実した解説を読んで。無限に続く真理の探究、知を愛し求める哲学の実践、飽くなき自己吟味と魂への配慮にまさに命を賭した一人の人間が、自己の生死のかかった裁判で、人々に人間...続きを読むとして生きることの意味を問い続けます。 本書はまさに人類の宝というべき古典だったのです。
難しそう、と言う理由だけで読んでいなかったのを後悔しました。講談社文庫、岩波文庫からも出版されていますが、最も現代語に近いとおもわれる光文社バージョンをまず読んでみました。(…実は講談社バージョンを最初に買ったのですが、引越しの際実家に持って帰ってどこに行ったかわからなくなってしまいました…) 難...続きを読むしいと思わずに、青年にこそ読んでほしい。ソクラテスほどの哲学者でありながら、知識、知恵に対して何と謙虚な姿勢であることか!! まずは自分の態度知識に対して恥いるばかりです…。
哲学書の古典だと身構えていたが、法廷を舞台にしたエンタメ小説かと思うくらいの読みやすさ。 特にメレトスの告発を鮮やかに論破する「新しい告発への弁明」は、日曜劇場のような爽快感。 加えてソクラテスは、彼が死刑に抗わなかった理由にまで一本の筋を通していて、さながら少年漫画の主人公のなのだ。
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ソクラテスの弁明
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