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20歳の青年メノンをソクラテスが挑発! 「徳(アレテー)は教えられるものでしょうか?」メノンの問いに対し、ソクラテスは「徳とは何か?」と切り返す。そして「徳」を定義する試みから知識と信念、学問の方法、魂、善をめぐって議論は進んでいく――従来あまり重視されなかったことばのニュアンスを細かく読みとり、対話のやりとりと内容の微妙な関係を鮮明に浮かびあがらせた意欲的新訳。プラトン対話篇の最高の入門書。
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Posted by ブクログ
プラトン対話篇の中でまず最初に読んだら良いのは迷わず『ソクラテスの弁明』である。しかし、「プラトンとの対話」を、あるいは「プラトンの対話」を味わいたい読者に勧めたいのはメノン、それも渡辺邦夫訳のメノンである。本書は他書には見られない、プラトンに初めて出会う読者にとってあらゆる障壁を取り除く工夫がな...続きを読むされ、生き生きとした対話の様子を再現していることから、まず勧めたいと思う本なのである。 メノンは奴隷の少年が幾何学を習っていないにもかかわらず平方根を用いて問題を解くに至る様子を克明に記録した対話篇である。これは対話を通して少年が自らの内に宿している真理を見出していく様子を描き、真理が一人ひとりの人それぞれに内在していることを問いかけるのだが、この対話篇で有名な想起説が提示されるのである。メノンとソクラテスの対話の内に次々と問いかけられる、徳とは何か、知るとはどういうことか、知識とは何かと、その問いが深まっていく中で、プラトンが問いかけようとする徳の姿が明らかになっていくのである。 本書をまず勧めたいと思うことの一つに訳語の選択がある。従来「臆見」あるいは「思いなし」と訳されてきたドクサという言葉がある。本書の翻訳では「意見」といったニュアンスを含んだ「考え」という訳語が選ばれており、その理由が詳しく訳注で述べられ、かつ本文と等しい分量の充実した解説によって議論の全体の中でその訳語を選ぶ理由が知らされるのである。そしてその道行を通して読者は現在のプラトン研究の最前線へとも招かれる何とも贅沢な本なのである。 評者にとって印象的であったのはソクラテスの命題としても有名な「徳は知である」という言葉の「知」がフロネーシスであったことである。メノンという対話篇がゆたかなプラトン認識論の源泉である中、この「知」という言葉がフロネーシスであったことに非常に驚いた。たとえプラトンがこの対話篇で体系的な思考を目指していないとしてもアリストテレスが実践知として取り上げるそれとの結びつきを気づかせてくれる翻訳なのである。 古典は様々に翻訳される。一つの訳語を選べば従来の訳語と齟齬をきたすといったことは散見されることであり、アリストテレス研究に至っては日本語でも英語でも二つの言葉を巡って訳語が反転することすらある。しかしそういった中での読み解きを通して、古典の伝えようとするメッセージを読み解くこともまた哲学的営みに結び付いている。本書は古典を読むということの、古典を翻訳することの難しさと面白さを共に感じさせ、プラトンがメノンの中で読者に提示する対話そのものを生き生きと再現しているのである。繰り返し手に取りたくなる一冊である。
「徳は教えられるか」、それ以前に「徳とはそもそも何か」という問いに導かれて、 それらの問いに答えることはできるのか、そのような問いにどうすれば多少なりとも答えられるか、という方法の問題にも話題がおよぶ。 想起説、仮設の方法、行動における正しい思わく、など、色々な話題が出て来て面白かった。 また、...続きを読む岩波版の先行訳と比べると、ソクラテスのモノローグとして対話篇を読むのではなく、ソクラテスが相手に合わせて話題や議論の進行に彩をつけている部分にまで注意をはらう近年の研究成果をふまえて、解説や訳文が作られている。 そのため、先行訳とは読んだ時の印象が思った以上に変わったことに驚いた。
徳は他人から教えられるものではない。最後には結局、徳とは何であるかという問いに戻る。人生において何が大切なのか気づきを得られた。
プラトン哲学のうち、初期に書かれた戯曲。「アレテーは教えられるか?」を問う若者メノンに対し、「そもそも自分はアレテーが何かすら知らない。よって、アレテーは教えられるかを知る由もない」とソクラテスが答える。メノンにアレテーとは何か問い、反駁し続ける事で、事物の本質を自分の頭で考え、「想起」する重要性を...続きを読む読者に説いているように感じる。 この本を読み、自分の今までの学習はメノン寄りの考え、つまり川上から川下に水が流れるように、智慧者から教わるもの(正当化)に近しいものだったと感じる。プラトンはこれを否定し、生まれる前に人はあらゆる事を既に知っており、学習や経験によって想起する事が知であると解いているが、確かにそのような考えも道理だと感じた。 後半に著者による解釈が述べられているが、非常に難解でよく分からなかった。哲学に関する探究を続ける事で、少しづつ理解し、本当にそうなのか考察できる様な気がするので、頭が痒くなるが哲学本の読書は続けたい。
「プロタゴラス」で、ホメロスを引用して“2人で行けばどちらかが先に気付くことができる”と言っていてるのだけど、いいこと言うなあと思う。 プロタゴラスに引き続きアレテーについての探究。誰もいなければ歴史の中での対話に参加することができると教えてくれたのはセネカなのだけど、プラトンのおかげ。彼らは無理強...続きを読むいもせず、置き去りにもせず、待ってくれる。
とても読みやすい訳でおもしろかった。 「徳とは教えられるものか」をメノン、ソクラテスとアニュトスとのディアレクティケーにより探究していくもの。 人間でなかった時から、正しい考えが内在しており、それが質問によって呼び起こされるという「起草」の概念が興味深い。
齢50にして人生初プラトン 何より光文社古典新訳文庫の大胆な試みと訳のわかりやすさに感謝。高い値段は再読の価値ありの判断で納得です。短い内容であっても1日でプラトンが読めるなんて凄いです~ アレテー(徳)の考察は洞察に富み、過去の拙い認識を改めることができます。 哲学の入門に最適な新訳と思います。
プラトン(渡辺邦夫・訳)『メノン』、光文社古典新訳文庫。 藤沢令夫訳も以前読んでいるけど、これはまたものすごく読みやすい。 とくに「探求のパラドックス」に答える場面、 メノンの召使いの少年が任意の正方形から 二倍の面積の正方形を作図する方法を考える場面など、 たぶん誰でもすいすい読めるはず (藤沢...続きを読む令夫先生の訳は、原文に忠実に訳すあまりカクカクしてた気がするけど)。 徳とは何かを考えるというのが主旨の対話篇だけれど、 むしろメノンの愛らしさのほうに心を惹かれる。 ゴルギアスを師として弁論術を学び、 ソクラテスに議論をふっかけるメノン。 もちろん愚昧なアニュトスとつるみ、 あるいは『アナバシス』に描かれている強欲でじたばたと見苦しいメノンの姿は知っている。 しかし、なんとなくこの対話篇のメノンは、 やんちゃで自信家で自己中だが憎めない。 ソクラテスもそこをからかいながら (この「からかい」はソクラテスのディアレクティケーにおいては重要なんだけど)、 しかし愛情を持って接しているようにも思える。 「この対話篇のメノン」は、きっと地に足をつけ、 自分の足で歩けるようにいつかなるのだろう。 そして、そういう場に立ち会えることは、 どんなにクソな世界のなかであっても、やはり喜びなのだ。
「徳は教えられるものではない。」ということを、メノンという青年との対話によって延々と証明していく話。すぐれた徳性をもつ世に知れた偉大な人物の息子は果たしてすぐれた人物になっているかというとどうもそういう例はないらしいということから、いわば帰納的に、徳は教えられるものではないということを論じていく。...続きを読む騎乗の技術、文章の技術、詩作の技術のための最上の教育を彼らに施したにもかかわらず、すぐれた徳をもった人物には至らなかった。もし徳というものが教えられるのであれば、優れた徳を持った父は、子にそれを受け継がせようとしない理由があるだろうか?いや断じてありはしない。にもかかわらず、教える教師がいないということは、徳というのもは教えられるものではないということになるのである。
意外と面白かった哲学の本。哲学は自分にとって難しいが、これは比較的読みやすい方だと思う。自分は、ソクラテスの考えにはメノンのように「その通りです」とか簡単に頷けなくて、それは違くない?と思ってしまう部分もあった。だが、哲学の考え方を教養として学べて良かった。 自分の友人がソクラテスを「屁理屈おじさん...続きを読む」と呼んでいたのが面白かった。
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