【感想・ネタバレ】ゴルギアスのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年10月24日

2023/10/23朝日カルチャーセンター横浜の講義終了

通して「弁論術」そして「ソフィスト」とは何か(『ソフィストとは誰か?』納富.2015.ちくま学芸文庫を併読)の考察が深められたように思う。

対話相手の3者(ゴルギアスとそれに師事する二人)で、三様の結末と前者を受けての対話が連続する様、様...続きを読む々なテーマが折り重なりながらも「弁論術」の真偽を見極めんとし、政治、哲学、生き方を問いかける様が印象に残った。

結論的部分では、政治に密接にかかわる弁論術が、哲学的に意義のあるもの(良い弁論術!?)として立ち現れてくる可能性(『ポリテイア』等へ引き継がれるテーマ)が語られいた。
その場合、弁論術が想定する聞き手=大衆・民衆(デモス)との関係は、弁論術そのものの性質を左右する本質的なものではないだろうか?
また一方で、ソクラテス的対話(「不知」の地点に立つソクラテスの問いかけ)の対象である市民一人一人も、同時に大衆・民衆(デモス)でもありうるのではないか、その対話を「ありそうな(エイコス)」言説を用いずに遂行は可能なのだろうか、という考えも浮かんできた。

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Posted by ブクログ 2023年08月27日

この本が2000年以上前に書かれた書籍であるにも関わらず、その内容が示しているところは今の時代でも全く変わらず、むしろSNSの登場のせいでより増幅させてしまっているのではないかと思うほどである。
プラトンが現実の政治に対してある種の諦念や距離を置く姿勢を見せながらも、実際にどう生きるべきかということ...続きを読むを3人の相手(ゴルギアス、ポロス、カリクレス)との対話を通して鮮明になっていく様が大変印象的だった。また思った以上に読みやすいのでオススメの一冊

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Posted by ブクログ 2022年12月11日

声のうるさくなったこの現在が煩わしくて、時にことばにすることが億劫でもう説明することが心底どうでもよいと思うことがある。
そんな中にあって、もう遠く離れた場所の時間も違う人間だというのに、おなじような感覚に出会うと、一周回って、あぁ、人間の歩みはこうも遅く進んでいくものなんだと思えてくる。ほんとうに...続きを読む生まれたての子どものように、少しずつ試し、失敗して反省しながら滅びまでの道を歩いていくことしかできない。それはどこか悲しく、どうにもならならい痛みを抱えて生きていくことだけど、この命の明滅を繰り返してひとつの線になっていくのだと思うと、それはそれで自分の魂の不滅というものが実感できる。自分の居場所が空けば、この席をまたきっと同じような人間が埋めてくれる。そうして魂は明滅を繰り返して続いていく。
一体そのとき魂が何をみて、何を感じ、何を考えるか、そのとき自分はもう死んでこの世からいなくなってるからわからない。だからこそ、今の人生がたまらなく愛おしく、そして同時に今の人生の端にある死を狂おしく願う。命が尽きるその時まで自分の魂を善いものにしたい。命が続く限り考えていたい。
ソクラテスにとっての生死とはそれくらい重要で、同じくらい無頓着などうでもいいことばだったと毒杯をあおいだ彼の迷いのなさが今ならはっきりわかる。またこの自分も同じところにたどり着ける。魂はまた生まれ変わる。

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Posted by ブクログ 2020年02月11日

プラトン一冊目。思ったより堅苦しいものではなく、所々盛り込まれいるユーモアにはクスッと笑ってしまう。

僕は頭が良くないので、読みながら一々頭で論理を整理する必要があったため読むのにかなり時間を要した。

早速僕の気づきをいくつか挙げてみる。

①現代社会での我々の会話はソクラテス(というよりはプラ...続きを読むトン?)に注意されかねない。例えば、Aを質問されているのに、あたかもAが非難されていると認識してBの回答をしてしまうことは想像に難くないだろう。本質を捉えて簡潔に答えればOK。

②国家社会の政治のあり方について。
本来「政治にたずさわる人間のなすべき唯一の仕事は、市民一人ひとりができるだけすぐれた者となるようにすること」(善)である。
それに反して、ソフィストは国民の善を目指さず、快楽を目指した腐敗した存在であり、それが国家の実情そのものである。彼らは世俗的成功こそが人生の目的だという実利主義者であり、それをプラトンは批判している。

「正しさ」や「幸福」とは何か
快楽のために不正を侵しても罪を逃れることか?
これは現代の資本主義社会についても当てはまることだと思う。人に対して善にならないことで金稼ぎすることは正しいことであり、また幸福なのか?
道徳が備わっていない人間ほど、これに当てはまることを侵しているのだろう。

③プラトンはこのように哲人が政治を行うことを理想としたが、後のローマ帝国の五賢帝マルクス・アウレリウスはそれに該当するのかな?

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Posted by ブクログ 2019年03月08日

プラトン初期の作品『ゴルギアス』

初期の中でも後期にあたるこの作品の特徴は、
それ以前の作品では、もっぱら「無知の知」で対話が終了していくのとは打って変わって、問いに対する結論が出てくるようになってくることだ。

結局のところ何も私達はわからないというところで終始していたソクラテス的スタンスに、
...続きを読むイデア論をはじめとしたプラトン思想といえるようなものが出てくるようになる。

それは、
プラトンがシチリアへ赴いた時に、当時の数学の権威であったピュタゴラス派と交流をもったことをきっかけにしている。
プラトンの思想体系に変化が起こり、それ以降の作品にも変化が起こることを示している。


プラトン40歳頃のその時期からすぐ、
世界でも最も長く続いた学校の一つである学園「アカデメイア」という学園が創設される。

約700年続いた学校で、
アカデミーという語源はここからくる。



この『ゴルギアス』では、
数あるプラトンの作品対話篇の中でも
最も激烈に議論が火花を散らしてなされる。

ソクラテスの対話相手として出てくる三人の人物。
ゴルギアス、ポロス、そして最も苛烈なカリクレス。

最後のカリクレスは、
プラトンの中にあった自身の哲学思想への批判全てを背負って、プラトンの思想を共にする本の中に出てくるソクラテスに対して対峙しているように感じる。


このやり取りは、
その流れをくむこと自体が、
ただ結論を知ることよりも、
非常に価値あるものとなる。

プラトンやソクラテスが意図したように
この対話の中にこそ、「真実」がある。

結論ではなく、
問いを通じて探究を続けるそのスタンスこそが
なによりも大事なことではないか。

それを伝えたいがために、
プラトンは対話篇で全て著書を書き起こした。

いや、対話篇でなければならなかった。
その理由はそこにあるのではないか。

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Posted by ブクログ 2018年11月18日

饗宴を買いに行ったのになかったので、こっちを買う。結果的にはその順序で良かったか。これが最後というのもあまりよくなかっただろう。

対話篇としては、国家を先に読んでると、最後の方はダレてくるが、それでも、抜群に面白い。270ページを1日半で読み終えた。
哲学なんて子供のやるもんだ、大人は嗜む程度でい...続きを読むい、というようなことを、プラトン が書いているんだと思うとやはり驚く。
現実でそう言われたことがあってそれへの反論でもあるのかもしれないが、そのときに、もしかしたら本当にそうなのでは、と逡巡したということもあり得るだろう。

ソクラテスの弁明やクリトンを細かく吟味しなおす様子は、当時のソフィスト、弁論家からの反応への回答という部分があったのだろうし、そこから、国家へと続くような思想の萌芽をみせているのは、やはりソフィストや弁論術と戦うなかで、こいつらではなく、哲学こそが政治をすべき、統治すべきだ、でないと、また次のソクラテスが殺されるだけだ、という考えをプラトンが持ったのだろうと想像される。
ソクラテスの小乗から、プラトンの大乗へ、と言えるかもしれない。もちろん、ソクラテスも、自分だけ、と考えたわけではないが、あくまで、常に、対話の相手と自分、というなかで善を追求し、死後の自分をよくすることを考えていたのに対し、哲人統治によって国家を善のもとにおこうと考えたプラトンなのだろう。
また、死後に救われることを期待して善に励む、というのは、やはりそれは、より大きな快(死後の快)を目指して小さな快(現世の快)を我慢する、ということでは?ということへの疑問(を僕は感じるのだが)を少なくともプラトンはもったのではないか、と思う。

プラトンやソクラテスの語る言葉のなかに、どうしても後にキリストを待望する時代の精神を感じてしまうし、そこから、国家ではなく教会というシステムを築き上げる精神への相似なんかを、そのへんの事情はよくわからんのに感じてみたりする。
ちょっと勉強してみたいけども、どうするかなぁ、、、。

次こそ饗宴。

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Posted by ブクログ 2017年12月18日

対話を通して様々なことを考える。特に弁論術に関しての話。プラトンの描くソクラテスをどう思うかいろんなことを考えた。至善を尽くそうとすることの難しさを理解するのにもいい気がする。読むことで何かが息づく。そういう感触のあるテキストだった。

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Posted by ブクログ 2013年07月13日

・今回のソクラテス先生は、ゴルギアス、ポロス、カリクレスの3人を相手にして、弁論、徳、善悪、正不正といったプラトン哲学を語るうえで欠かせない重要な論点について対話を繰り広げる。

・まず「弁論術とは説得をつくり出すものだ」と主張するゴルギアスを、続いて「不正を行うよりも不正を受けることのほうが害悪で...続きを読むある」と持論を展開するポロスを、ソクラテスはそれぞれ論破して、本書最大の見どころであるカリクレスとの論戦に入る。

・カリクレスは「正義とは、強者が弱者を支配し、そして弱者よりも多くを持つことである」(p136)という身も蓋もない思想の持主。それだけにこの論戦も非常に興味深いのだが、カリクレスが「正しく生きようとする者は、自分自身の欲望を抑えるようなことはしないで、欲望はできるだけ大きくなるままに放置しておくべきだ」(p162)と言ってしまったばっかりに、ソクラテスから執拗な追及を受けて、途中から半ばスネ気味。本書解説によると、ニーチェはこのカリクレスに多大なる関心を寄せていたらしい。なればこそ、ソクラテスvsニーチェの代理戦争という観点からも、カリクレスにはもう少し食い下がっていただきたかった…と思うのは、ないものねだりだろうか。

・ところで、ソクラテスとカリクレスは、思想的には対極にあるにもかかわらず、ソクラテスはカリクレスを(ゴルギアスやポロスよりも)高く評価しているところも興味深い。思想と純学問的実力とを区別しているということか、それとも…。

・あとどれくらいの時間を生きながらえることができるかを考えるよりも、「これから生きるはずの時間を、どうしたなら最もよく生きることができるか」(p235)を考えよ、とソクラテスは言う。論敵に対するソクラテスの吟味は、そのままわれわれに対する吟味でもあるだろう。

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Posted by ブクログ 2013年06月11日

弁論術についてのソクラテスとゴルギアスの対話篇。
話は魂を良く生かすこと、正と不正、幸福について…といった話に変わっていく。

で、カリクレス曰く、
「いい歳になってもまだ哲学をしていて、それから抜け出ようとしない者を見たりするときは、ソクラテスよ、そんな男はもう、ぶん殴ってやらなければいけないと僕...続きを読むは思うのだ」

哲学ってそういうものとして一般の人から見られているのは古代から現代まで変わらないのね

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Posted by ブクログ 2013年02月15日

7, 8年ぶりに読み返した。カッリクレースはツボ。何度も腹を抱えた。もう、価値観の問題。彼を説得するには真理をもってしては不可能で、ソークラテースこそ、その使命を果たすためにゴルギアースから弁論術を学べばよかったんじゃないかな。キケローの言う「学識ある弁論家」となって。彼が本当にアテーナイ人の教育を...続きを読む志したのであればね。ところが彼にはプラトーンという弟子があった。そのために、時代を越えて、海を越えて、彼は私に教育を施した。今読み返して、本篇に限らずだが、プラトーンの対話篇が私の人格に与えた影響の大きさを知った。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年09月17日

政治家は何をしたらいいの?といういまとあまり変わらない話を延々としている。
国家は民衆に「快」と「善」とのどちらを示すべきか?それともどちらかがどちらと合一なのか?それともどちらかがどちらの下にあるのか?それとも上にあるのか?ということだ。
プラトンは最終的に、「政治家は民衆の料理人や給仕ではなく、...続きを読む医者でなければならない。」とする。ということは善を与えるべきであるとする。これが哲人王であるということなのだろう。
このような発想は、てっきりアリストテレスのものだと思っていたが(彼はどうすれば善く生きられるか、何が目的なのか、という思考であるから。)、ソクラテスの時代からあったのかと思った。
プラトンの考え方から云えば、大衆迎合主義は批判さるべきである。

ただこれは非常に危険な考え方だ。一つ間違えれば、「これが正しい。」という名の下に専制支配が行われる危険性さえある。ただ、憲法典で「民主国家を志向する」と歌い上げればそれが目的になるし、大衆迎合主義はそれを批判することさえある。逆に専制国家であれば、大衆迎合主義は民主国家を志向することもあるだろう。「自由か、それとも目的か。」は、常に堂々巡りをしているのであり、それは古代ギリシアから語りつくされているのかもしれないが・・。

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Posted by ブクログ 2013年03月23日

最強の敵、カルリクレス登場!(笑)というコピーがぴったりの対話篇。というか『ゴルギアス』という書名で本当にいいのか!(笑)
著名な弁論術家ゴルギアスのもとに「弁論術」とは何かという議論をふっかけにいったソクラテス。法廷や政治の場において人々を説得する技術だというゴルギアスに対し、説得する以上、全ての...続きを読む事柄が「正」だと知っているのか、それを教えることが可能で実践している者がいるのかと矛盾を追及し、早々に戦意喪失に追い込む。
第2ラウンドは代わりに登場したゴルギアスの弟子ポロス。ソクラテスは「弁論術」は技術ではなく、料理と同様に経験であり、その本質は「善」ではなく「快」で民衆への迎合だと喝破する。対するポロスは「弁論術」を使えば人は欲しいままに権力を行使することも可能だと反論し、さらに不正を行っても栄達できた者は幸せだとするのに対し、ソクラテスは人に不正を行うよりも不正を受ける方が幸せだといってポロスを驚かせる。そして、不正を行えば「醜」=「悪」だという論理を、例によってソクラテス自身が設定した条件文による択一という詭弁調!で導いたソクラテスは、そのような方法論である「弁論術」も政治や法廷では「正」という真の目的のためには役に立たず、不正を行った償いの刑を受けるために用いろと迫り、ポロスをさらに驚かせる。
そしてメインイベントの第3ラウンドで最も白熱した議論が展開される。このカルリクレスの態度は、これまでソクラテスの詭弁気味な言い負かし勝利に抑圧され続けてきた「プラトン」読者にとって、喝采ものといってよい。(笑)いわく、ソクラテスよ、もっと大人になれ!ゴルギアスが遠慮していることに気がつかないのか!法律によって抑制されているが、自然状態となれば不正だろうが弱肉強食は当然だろ!哲学なんていうものは大人が行うものではない、これ以上、馬鹿話を続けていると、法廷に引きずりだされ死刑になることだってあり得るぞ!、と。
だが、ここからのソクラテスの言説は光っている。先の弁論術は知識ではなく迎合であり、国民を正義や徳を導かないとの観点から、かつてアテナイの偉大な政治家とされた人々も、最後は自分が指導した国民により排斥されたことから、「政治家」としては無能であり、自分ソクラテスこそが真の政治を行っているとする。そして、仮の宿である身体から離れた魂がよき審判を得て救われるには、正しい行いや不正も裁かれ済みの状態になっている必要があるとし、仮に自分が死刑になっても魂は救われるとした格調高い道徳観・死生観を展開するのである。迂闊にも感動しました。(笑)
後のソクラテスの末路を暗示するとともに、ソクラテスに仮託したプラトン自身の政治へのかかわり方への決意表明としてとても面白かった。
もう一度、『ソクラテスの弁明』を読み返したくなりました。
それにしても「犬に誓って」って一体何に誓っているんだ?(笑)

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Posted by ブクログ 2011年11月19日

カリクレスの弱肉強食の自然の摂理を礼賛することに反駁していくソクラテスには本当に心を打たれた。

「不正を受けることより不正を行うことが悪いことである,さらに不正を行いながら裁きを受けないのが害悪の中で一番ひどいものである」というのを示すくだりは,今後も忘れないようにしなければ,と思う。

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Posted by ブクログ 2011年05月01日

ソクラテスが弁論家、その弟子、政治家と議論し次々に論破していく。三人は矛盾をつかれたり、論旨をすり替えようとしたり、揚げ足をとったり、逃げようとしたり、感情的に非難したりするが、ソクラテスの首尾一貫した論理には黙らざるをえない。哲学書ではあるが議論の正しいやり方としても読める。哲学的には公共善とは何...続きを読むか、政治とは何か、いかに生きるべきかなど現代にも当てはまるテーマだと思う。カルリクレスの説はニーチェが支持したらしい。

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Posted by ブクログ 2011年03月27日

プラトンの初期対話篇。

弁論家(ゴルギアス、ポロス)や現実政治家(カルリクレス)に代表される価値観と、哲学者(ソクラテス)に代表される価値観と、二つを対比して後者の方こそ真に目指されるべき生き方であることを論証していく。前者は、カネ・権力・快楽以外の価値を認めずそれら計量可能な「快」をより多く獲...続きを読む得することが――「真=善=美」に適っているか否かとは無関係に――幸福であるとする即物的な(無)価値観。後者は、カネ・権力・快楽を超えたものとして「真=善=美」という特定の価値を認めてそれを求めることが幸福であるとする形而上的な価値観。

前者の立場からカルリクレスは、「法は弱者のルサンチマンの実体化である」「力こそが正義である」「欲望を恣に充足することが自然である」「哲学は現実的な"快"を追求する上で無用である」「政治家は市民に迎合して彼らの"快"に奉仕せよ」と論じる。

後者の立場からソクラテスは、「人に不正を行うことは、人から不正を受けること以上に、悪だ」「"善"こそが正義である」「幸福を求める者は節制せよ」「哲学によって"真=善=美"を求めることが幸福につながる」「政治家は市民の魂に"快"を与えるのではなく知性に基づいてそれを"善"に導くべく努めるべきである」と論じる。

カルリクレス的な即物的(無)価値観は、絶対的な価値基準が崩壊したニヒリズム状況下から頽落することで容易に陥り得る(無)思想状態であり――現に当時のアテナイは戦争と政変により社会的にも精神的にも頽廃状態にあった――、まさに現代の支配的な時代状況にも合致するものではないか。カルリクレスの身も蓋も無い功利的な理屈の変奏を、現代の到る所に於いて耳にすることが出来る。これは、いつの時代にも存在し得る精神の頽落形態である。即物的な(無)価値観から形而上的な価値観へと飛翔する為に、ソクラテスの時代は"冥界の裁き"を持ち出す必要があった。我々は、各自の時代に於いて、各自の実存を賭けて、こうした即物主義への頽落を常に否定し続けねばならないと思う。

現代に於いてなお読まれるべきプラトン対話編の傑作。

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Posted by ブクログ 2022年08月31日

この本は、ソクラテスと3人の人物との対話形式で書かれており、「口が上手い人が本当に賢い人なのか!」という問題や、政治の本題を取り上げているものです。
私には、読みにくい本でしたが、2000年以上前に書かれた本を読んでいる思うと、不思議な気がしました。
ぜひぜひ読んでみてください。

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Posted by ブクログ 2020年09月08日

ソフィスト(ゴルギアス&ポロス)とアテネの政治家(カルリクレス)とソクラテスの対話を通じ、「善」を目的とした生き方であってこその人生であり、「善」を押し進めることによってこその政治であるとのプラトンの理想を伝えた対話編。

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Posted by ブクログ 2020年08月19日

ソクラテスと弁論を重ねるソフィスト達の意見が、現代であっても十分通用するものなので、そっちに驚いてしまった。
ソクラテスの意見もソフィストの意見も「なるほど。確かに。」と納得できる。
部分的に言い回しがくどい/分かりにくいところがあったが、論理的に何かを探ることはこんなに難しいのかと再確認できた。
...続きを読む
個人的に、ソクラテスのような方法で議論を進められたらめっちゃムカつくなぁと思う。

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Posted by ブクログ 2017年04月30日

初期プラトンまとめ読みの2冊目。

ソフィストのゴルギアスを相手に、弁論術について、議論を挑むソクラテスという構図は、基本的に「プロタラゴス」と同じだし、ソクラテスの論法も基本的には同じかな。

ただし、プロタゴラスさんが結構、人間味のある常識人だったのに対して、ゴルギアスさんは、もっと職業的な...続きを読む弁論家で、タイトルに反して、ゴルギアスとの議論は、早々に終わる。

ここまでは、ある意味、「プロタゴラス」の議論の復習といったところ。で、このあと、2人の若者が、「それは、納得いかない」とソクラテスに議論を挑む。その2番目のカルリクレスとの議論が、ハイライト。

カルリクレスは現実主義で、ソクラテスの書生議論を馬鹿にする。そして、「権力こそ善、快楽こそ善」といった、ちょっとニーチェを思わせる議論をふっかける。

これを契機に、丁々発止の議論がなされるのだが、カルリクレスさんは途中で議論につかれてしまって、最後の方は、ソクラテスの一方的な演説になってしまう。

この辺の議論の内容や一方的な議論の進め方は、プラトンの主著「国家」を思わせるところ。「ゴルギアス」が初期プラトンと中期プラトンをつなぐ作品であるといわれる所以である。

で、いろいろ議論したあげくが、「あの世での審判」の話になってしまうところも、「国家」と一緒だ。。。。

が、「国家」と違うのは、そういうソクラテスの一方的な議論を周りの人は、かなり冷めた目で見ているというか、あまり説得されていない、というのが伝わってくるところ。

「国家」では、みんな「そうです。その通りです。ゼウスにちかって」みたいな相槌しかないからな。

「ソクラテスとは何だったのか」という疑問を考え続けたプラトンが、プラトンなりに描いたソクラテス像の集大成というところかな。

これ以降、プラトンの著作にでてくるソクラテスは、どんどん史実のソクラテスから離れて、プラトンの空想上のキャラクターになっていく、のかな。

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Posted by ブクログ 2015年09月11日

これレジメにするのめんどくさいなあ、という印象。
正義とは何か、ということで、初期プラトンから『国家』へ向かっていくあいだにあるような作品。

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Posted by ブクログ 2014年06月07日

弁論術や政治について、ソクラテスが対話の中で、また、長文の弁舌で明らかにしていくもの。うーん、面白いものですね。

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Posted by ブクログ 2014年05月05日

『プロタゴラス』がおもしろかったので、さらに本作を読んでみた。こちらの方が議論の内容や対話の相手がバラエティにとんでおり、おもしろいし、わかりやすいかもしれない。

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Posted by ブクログ 2012年05月27日

当時の弁論家、ゴルギアス、ポロス、カリクレスを相手に、ソクラテスが正、不正の問題で論戦をかわす。
(おそらく)作者プラトンの意図とは逆にカリクレスのソクラテスへの徹底的な疑念こそがこの作品の価値になっている。
カリクレスの登場する場面から面白くなります。

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Posted by ブクログ 2012年01月25日

 この対話篇は、政治と道徳と人生を論じて、『国家』につぐプラトンの力作であり、ソクラテスを死にいたらしめたアテナイの社会を支配するいっさいの通念に対して向けられた、哲学の側からの怒りと批判の書である。

 弁論術(レトリカ)は、その当時のアテナイ社会における花形的な存在であり、それの含む問題は、こん...続きを読むにちの社会においていわゆるマス・コミュニケーションのおよぼしている道徳的。社会的影響の問題とまったく同じ性質のものと言ってよい。(扉紹介)



カリキュレス:たしかに、ソクラテス、若い年ごろにほどよく触れておくだけなら、けっして悪いものではない。しかし必要以上にそれに打ち込んで時間をつぶすならば、人間をだめにしてしまうものだ。
 
 ほかでもない、せっかくすぐれた素質にめぐまれていたとしても、その年ごろをすぎてもなお哲学をやっていると、ひとかどの立派な人物となって名をあげるためにぜひ心得ておかなければならないことがらを、なにひとつ知らぬ人間になりはてること必定だからだ。・・・・・

とかなり辛辣な言葉をカリキュレスはソクラテスに浴びせている。カリキュレスの主張はある面では、かなり鋭く現実の人々の反応を表明していると思う。さてソクラテスはどのような回答したのか・・・それは実際に読んで確認して欲しい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年01月16日

it leads an entrance of politics in the perspective of rhetoric.

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Posted by ブクログ 2011年02月13日

ゴルギアスは古代ギリシャ時代の弁論術士である。本書には、ゴルギアスとソクラテスの議論が延々と収められている。ソクラテスの問答法とゴルギアスのレトリックの戦いは、ソクラテスに軍配が上がるのだが、結果よりもそれぞれの戦略的な話しぶりが印象に残っている。やはり「演繹」が役に立つのは、形式的な議論と数学の証...続きを読む明だけなのかね?

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Posted by ブクログ 2011年05月12日

解説にも書かれている通り、この本はソクラテスの思想よりプラトンの考えが大きく反映されている。
この世で最も恥ずべきものは不正であり、不正を行うこと、そして不正を行いながらもそれに対する処罰を避けることが最も不幸なことである、という思考。
人として正しく、善く生きるために何をすべきか、何を掲げ生きるべ...続きを読むきなのか。
後半部においては当時のアテネの政治に対する痛烈な批判も入り、この現代において再読されるべき名著である。

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Posted by ブクログ 2015年10月20日

ソクラテスの弁明Episode0の巻。

全体的には、道徳についての内容。
タイトルはゴルギアスだが、
ゴルギアス→ポロス→カルリクレスと、
ソクラテスの対話相手は交代していく。

ゴルギアスとは弁論術について、
ポロスとは不正と幸福の関係、
最後にカルリクレスと道徳について議論し、
結論として、ソ...続きを読むクラテスの弁明において、
彼がとった行動が道徳に基づいた行為とされる。

解説ではプラトンによるソクラテスと、
プラトン自身の弁明だとしている。
弁明による彼の行動の根拠に対する、
弟子のプラトンの考えが分かるという意味で、
ソクラテスの弁明の副読本として読むのが良さそう。

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Posted by ブクログ 2014年04月12日

政治に関心を抱いた最中、「政治学の名著」なる本を手に取ると、紹介されていたのが本書。

詭弁を弄するソフィストが民衆を衆愚とする危険性について警鐘されている。もう少し踏み込むと、民主主義が欠陥あるものになり得ると言える。そこで私心が無い哲学者が政策を決定する哲人政治という発想が生まれ得る。後々は、「...続きを読む国家」あたりも読んでみよう。

後半はソクラテスが相手を演繹的に論破する様子が描かれており、論理的に考えることの参考となる。しかし、ビジネスでこれをやってしまうと仕事が進まないだろう。人間には感情があるから。

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Posted by ブクログ 2010年11月03日

【2010年_12冊目】
ソクラテスって、こんなオッサンだったのか、という衝撃。
しかし、これが何千年も前に議論されていたと思うと、
本当に、人間ってなんなの、と思う。

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