プラトンのレビュー一覧
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プラトンの初期対話篇。
弁論家(ゴルギアス、ポロス)や現実政治家(カルリクレス)に代表される価値観と、哲学者(ソクラテス)に代表される価値観と、二つを対比して後者の方こそ真に目指されるべき生き方であることを論証していく。前者は、カネ・権力・快楽以外の価値を認めずそれら計量可能な「快」をより多く獲得することが――「真=善=美」に適っているか否かとは無関係に――幸福であるとする即物的な(無)価値観。後者は、カネ・権力・快楽を超えたものとして「真=善=美」という特定の価値を認めてそれを求めることが幸福であるとする形而上的な価値観。
前者の立場からカルリクレスは、「法は弱者のルサンチマンの実体 -
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哲学に生き、死んだ人。哲学・思想と行為を一致させた人。自らの命を度外視して正しさを主張した。
哲学の基本書。プラトンの著作はたいてい対話形式で書かれているが、この著作に限っては、途中メレトスとのやりとりがあるものの、主としてソクラテスの一方的な独白形式で話が進む稀な作品。確かに弁明という性質上、形式的には必然かもしれないが、ソクラテス自身が聞き惚れそうになったと言うほどの (流されないようにと陪審員へ注意を促すのが真意だろうが)メレトス側の弁論が一切書かれていないのは、双方の主張を取り上げて吟味するプラトンの一連の作品からすると読者にとってあまりに一方的で異例な事のように思われる。例えば饗宴 -
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内容に入る前に一言…「長いんじゃ、ボケ!」 そして、対話のテーマが、柱である「国家論」「正義論」に留まらず、あらゆる方向に伸びてるのに巻数ごとのテーマ別の分類などが一切無いため、非常に読みづらい。まぁ、解釈書じゃないから原典に忠実でなければならないのはわかるけど…苦しかった。
さて、下巻では上巻の最後で登場した「哲人統治」の続きから。結局は真理や実在を愛する哲学者が、国を守る…というか支配するのに相応しいということでファイナルアンサー。トラシュマコスさんが陥落した今となっては、誰もソクラテスの意見に異を唱えません。「アナタノイウコトハタダシイデス」…そんな言葉ばかり繰り返してないでもっと -
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ギリシャ時代、おとこたちは、寝そべって、酒を飲みながら、語り合う。そのスタイルは、優雅だ。
ソクラテスの以外にエロスについて語るのは、パイドロス、パウサニアス、エリュクシマコス、アリストパネス、アガトン、アルキビアデスの6人である。
フロイトのエロスは、生命を維持し、統合しようとする本能。これは、性的な欲望や自己保存本能、そして個々の要素を結合させてより大きな全体を形成しようとする「生の本能」全体を指している。そして、エロスの対をなすタナトスを概念化した。タナトスは、フロイトが晩年に提唱した「死の本能」。これは、生命が元あった無機物の状態へと回帰しようとする破壊的な本能である。フロイト -
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ソクラテスの高潔さに畏敬の念を抱く。神からの啓示を得た彼は、ギリシャ世界に正しい秩序をもたらすべく奔走した。エセ知恵者を論理で斬り、多くの人に恨まれる形で。
時代が悪かった。ペロポネソス戦争での敗北でアテネに不安が満ちていた。青年腐敗の根源とされたソフィストと一緒くたにされ、ソクラテスは国家安定のため生贄にされる。
散り際は美しい。法治の重要性を説いた張本人が、法の決定に背くことはあり得ない。クリトンの脱獄の提案に優しく丁寧に反論し、極刑を受け容れる。
良心の呵責に訴えるのではなく、信念に生きた古代ギリシャの哲学者を描き出したプラトンは流石である。生き方が武士のそれに近いのは錯覚だろうか -
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ソクラテスだよと思ってたらソクラテスについてプラトンが書いたなんと創作物みたいなやつだった!だからこれは実質プラトンかも!!!
濡れ衣着せられたソクラテスですが結局死刑になっちまったよ〜な話 書いてるのは弟子のプラトンね。ソクラテスを陥れた奴は結局何かを得れたのかな。
自分はそんなことしてないけど、あれこれ言い訳すんのもアレだし、己を貫き通して死にすら殉じるぜ!みたいなのよくこの界隈で見る気がする。己の矜持や誇りがすごくて、かっこいい生き様ってこういうのを言うんだろうな〜と思ったりした。私もこうなりたい!
あとびっくりしたんだけどプラトンとソクラテスってめちゃ歳が離れてるんだね。
プラト -
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この本を読んでいるあいだ、私はまるで紀元前のアテナイにいて、法廷の片隅からソクラテスの言葉を傍聴しているような気持ちになった。論理や言葉の力で彼が人々に語りかける姿に引き込まれ、ページをめくる手が止まらなかった。
解説を読みながらでなければ理解できない部分もあったが、それでも彼の思想の核は強く響いてきた。とくに印象に残ったのは、「知らないことを恐れる必要があるのか?」という問い。人は死を恐れるが、それは“死”を知らないからであって、本当に恐れるべきことなのか? もしかしたら、死は良きものかもしれない――そんな風に、未知を恐れずに、自らの信念に従って生き抜く姿勢に心を揺さぶられた。
ただの哲 -
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難解な哲学書なのだろうと勝手に決めつけていたが、ユーモア溢れるエンターテイメント性のある作品で驚いた。
本書を読んで一番の衝撃は、そこかもしれない。
偉大なる?ソクラテスたちが飲み会でどんな話をしていたのか…その様子を垣間見ることができるとう何とも興味深い作品。
エロスを賛美する、そもそもエロスとは何なのか、なぜ賛美に値するのかなどが知識人たちによって議論される。
こんな高度な知的な飲み会…あるかいな笑
いや、こんな宴に参加してみいものだ。
古代ギリシャの文化や風習を知ることもできて、非常に興味深かった。
少年愛が当たり前の世界…。時代によって、当たり前は全然違う。だから世の中の見え方も -
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下巻の見所は、第7巻(洞窟の比喩)と第10巻(エルの神話)だ。哲学的象徴性と倫理的・宗教的深みの両方が味わえる部分であり、プラトンの思想の核心を理解する手がかりになる。
第7巻の「洞窟の比喩」は、本家プラトンよりも分かりやすく解説した本が世に出回っているので目新しさがないが、プラトンのイデア論の核心部で、人間の認識とは何かという問いに迫る部分。洞窟に捕らえられて影絵を見る囚人の喩えは、その語ろうとする認知論の本質以上に詩的な状況であり、何故だか私はうっとりしてしまう。
第10巻の(エルの神話)が私にとっては新鮮だ。
そのむかし、エルは戦争で最期をとげた。一〇日ののち、数々の屍体が埋薬のた -
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定番中の定番なので、少し違った読み方で感想を書いてみる。ソクラテスとの対話で序盤に登場するトラシュマコスのウザ絡みの意義についてだ。論破王ソクラテスの人に言わせて否定する弁論術を卑怯だと、相当な勢いで突っ込んでくる。今風に言えば成田悠輔やひろゆき相手に挑戦するみたいな感じだろう。
で、このトラシュマコスだが真正面から突っ込んで早々と本書から退場させてしまう。そのせいで議論の場が安全な空間に変質してしまい、そこからソクラテスの独壇場が始まる。
黙らされたことで「正義って、議論で勝ったほうの定義になるのか」という不信感が強まる。ソクラテスの論法はいわゆる勝ち負けを決する議論の進め方であり、必殺