同棲していた恋人にふられ、ブラック企業勤めにも疲れ果てていた潤という青年が、夏祭りで気まぐれにすくった金魚にリュウ(琉金だから)と名前をつけたところから物語は始まる。
リュウを飼い始めた夜に、赤い衣をまとった美女が潤の部屋に現れる。どうやら金魚の化身らしい彼女は、誰かを探しているようだが、肝心な記憶を失い途方に暮れていた。
突然始まった奇妙な同居生活に、潤はだんだんと幸せを感じるようになっていったが、しかし彼女にはある秘密があった。
数ヶ月前に読んだ本なので多少忘れている部分もあるのだけど、因縁とはこういうことか…とストーリーのつくりにとても感心した。
突如として潤の目の前に現れたリュウは、遠い昔の中国生まれ(金魚、琉金がそうなので)。長崎生まれの潤のところに現れたのには、彼らが想像するはずもない因縁があった。
リュウのキャラクターは、当たり前だけど世間知らずの自由奔放キャラで、とてもキュートだけど一緒に過ごすのは正直大変そう。笑
潤は元々振り回されキャラなのか、それとも状況から疲れ切っていて身を任せている感じなのか、リュウに振り回されながらも彼女に惹かれてゆき、彼女がいない生活など考えられないようになってゆく。
仏壇仏具の営業をする会社に勤めている潤が、リュウと出逢ったあと、ぐんぐんと営業成績をあげていく様もとても不思議で心地よい。
成績をあげようという野心ではなく、大切な人を亡くした誰かに寄り添うということが、自然に出来ていく様が。
この小説は今年の春先にドラマ化されたらしいけれど、映像化し甲斐がありそうだなと感じた。リュウを演じた女優さんが、嫌いではないけれどイメージとはちょっと違うかな、とは思ったが。笑
よく出来た、エンタメ性が高めの物語だと思う。すらすら読める系です。