荻原浩のレビュー一覧
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時代は、昭和から平成あたり。短編八編、それぞれが、主人公達の過去から今を切なく描きだします。
彼らは、朧げながらも、仕事に夢を持ち、幸せな家庭を築き、穏やかな日常がある人生を願っていた、ごく普通の人達。そして、そんなささやかな願望も、一生継続するのは、案外難しいのです。
人生も半ばが過ぎて、彼らは、過去を振り返る。
そこには、幸せなひとときも、取り返せない不調和もある。
月の上の観覧車は、既視感がある作品かなと思いますが、最期の夢として素敵です。
少し時空のずれた自分のパラレルとも思える作品もありました。主人公は、男性が多いのですが、残りの半生の生き方に女性の強が多いかなと思いました。そして、 -
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5人の作家による恋愛アンソロジー
奥田英朗 「あなたが大好き」
窪美澄 「銀紙色のアンタレス」
荻原浩 「アポロ11号はまだ空を飛んでいるか」
原田マハ 「ドライビング・ミス・アンジー」
中江有里 「シャンプー」
の5編が収録されています。
窪美澄さんの作品を楽しみにしていましたが2016/10/17に刊行された「すみなれたからだで」に収録されていた物で少し残念でしたが、それでも再び読み返したらやっぱり好きだなと感じました。
16歳の男女のすれ違う繊細な恋心にドキドキしたり、おばあちゃんの家や海、龍宮窟の風景が脳内映像に浮かんで来たり、おばあちゃんの作るおにぎりが食べたくなったり、終始無駄 -
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ネタバレ初出は日経新聞紙上での連載であり、単行本も日本経済新聞出版から刊行された、荻原浩さんの新刊である。カバーには、マスクを着用した会社員が描かれている。漠然と、コロナ禍がテーマなのかと想像し、読み始めたのだが…何故、日経???
平日の朝、会社に行きたくないと思うことは、誰でもあるだろう。それでも、大多数の勤め人は結局は会社に向かうのだが、40歳の主人公・野崎は、会社と逆方向の電車に乗ってしまう。そして山中を彷徨い、街に戻ってみると…。
コロナ禍のはずが、誰もマスクなど着けていない。むしろ気味悪がられる野崎。そして彼も徐々に気づく。ここは彼が元いた世界ではないことを。一言で言ってしまえば、 -
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サラリーマンをやめ、東京から小さな田園都市にUターン就職して市役所の職員になった啓一。赤字経営のテーマパーク「アテネ村」の再建をする部署に配属され、周囲のぬるま湯のような仕事ぶりにうんざりしながら、腹をくくって仲間を増やし、知恵をしぼり、次第に仕事に没頭していく。
仕事だけでなく、家庭での妻や子どもたちとの場面もたくさん出てくるのが等身大の30代の男性という感じでよかった。このままじゃいけない、何かを変えたいという思いと、息子に恥じない父親でありたいという気持ちは、がんばる原動力になるのだな。
クスッと笑えたり、ちょっと悲哀を感じたりする物語。 -
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教祖仲村は山崎に告白した時の反応が違っていたら、彼を追い詰める選択はしなかったんだろうか。結局山崎がホームレスであろうと成功していようと他者を信じられない性格だったからこその結果であるとも言える。読書中からずっと救いのない話だった。
同じ千円でもホームレスと金持ちでは金額の重みが違うように、お金の価値は払う人間が決めている。値段があってないような芸術作品と新興宗教の教祖が作った焼き物とでは、その価値にどれほどの違いがあるのだろうか。買い手が欲しいのは物体そのものではなく、満足感と承認欲求であれば他人が糾弾するものではない。まぁ、本書では山崎(木島)が作っていたから問題になったので別の話では -
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「ゲッ!」
「(๑o̴̶̷̥᷅﹏o̴̶̷̥᷅๑)ウルウル」
「ヒッ〜!」
って感じの短編集。
ホラーなんやけど、そんなに怖くない。
こんな幽霊なら、話ししても良いかなと思わせる
「押入れのちよ」
キョンシーや!と思わせる
「しんちゃんの自転車」
いずれも心優しいから、ええんやな。
「コール」もそう。
何かええ感じ。
その他、コメディっぽくはなってるけど、生きてる人の方が怖いって思ってしまう作品などなど。
そうホラー、ホラーしてないんで、ホラー苦手な人でも読めそう。
優しい人は、生きてても、亡くなっても同じ何やなぁ…
そういう風になりたいです! -
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ネタバレ中に収録されたエッセイはもちろん、あとがきも文庫あとがきにかえても荻原節炸裂。
表紙絵も中にある挿絵も、著者本人の手によるもの。
荻原浩100%。
タイトル通り、一番生き生き書かれているのが家庭菜園の顚末。
我が家のベランダ菜園など足元にも及ばないくらいの手間と愛情をかけて、それでも思ったように育たない野菜たちに翻弄されながら、毎年毎年試行錯誤を重ねる姿に頭が下がる。
そして、コピーライター出身だからなのか、もって生まれた才能かはわからないが、比喩と擬人化がとてもうまい。
勉強になるわぁ。
終始ニヤニヤ笑いながら読んでいたのではないかと思うけど、時々ぷっと噴いてしまう。
人前で読むにはお