荻原浩のレビュー一覧
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ネタバレ初出は日経新聞紙上での連載であり、単行本も日本経済新聞出版から刊行された、荻原浩さんの新刊である。カバーには、マスクを着用した会社員が描かれている。漠然と、コロナ禍がテーマなのかと想像し、読み始めたのだが…何故、日経???
平日の朝、会社に行きたくないと思うことは、誰でもあるだろう。それでも、大多数の勤め人は結局は会社に向かうのだが、40歳の主人公・野崎は、会社と逆方向の電車に乗ってしまう。そして山中を彷徨い、街に戻ってみると…。
コロナ禍のはずが、誰もマスクなど着けていない。むしろ気味悪がられる野崎。そして彼も徐々に気づく。ここは彼が元いた世界ではないことを。一言で言ってしまえば、本作はパラレル・ワールドもの。設定として決して目新しくはない。
マスク非着用以外にも、現実世界との違いに野崎は戸惑い、読者は苦笑する。笑えないネタもあるものの、基本的には荻原浩流のユーモア路線である。次第に適応し、興味津々の野崎だったが、晴れ舞台(?)を見届けることなく、脱出を図る…。
…が、2番目の異世界では、1番目より重い展開が待っていた。5文字と4文字のあるキーワード。現実社会も似たようなものだが。何より、野崎の家庭状況が辛い。こんな愛のない窮屈な家庭でも、野崎はある理由で脱出を躊躇する。気持ちはわかる。
それでも2度目の脱出を決意した野崎は、ようやく気づく。どこが異世界への扉なのか。そりゃ読者も気づかないよなあ。意図せず踏み入った3番目の異世界は、もはやコロナ禍は関係ねえし。似たような設定を読んだことがあるような。
コロナ禍を取り入れたことは本質ではなく、基本は荻原さんらしいエンタメ作品だ。感情が過剰に揺さぶられることもなく、誰にでも読みやすい。自分が荻原作品に求めるものを具現化したような作品だった。と、ほっとしていたのだが…。
最後の最後に、目が点になった。へ??? これはつまり、そういうこと??? うーむ、荻原浩をなめていたかもしれない。どうしようもないこの世界だが、自分はしがみつくしかない。そして今日も、会社に向かうのであった。 -
Posted by ブクログ
サラリーマンをやめ、東京から小さな田園都市にUターン就職して市役所の職員になった啓一。赤字経営のテーマパーク「アテネ村」の再建をする部署に配属され、周囲のぬるま湯のような仕事ぶりにうんざりしながら、腹をくくって仲間を増やし、知恵をしぼり、次第に仕事に没頭していく。
仕事だけでなく、家庭での妻や子どもたちとの場面もたくさん出てくるのが等身大の30代の男性という感じでよかった。このままじゃいけない、何かを変えたいという思いと、息子に恥じない父親でありたいという気持ちは、がんばる原動力になるのだな。
クスッと笑えたり、ちょっと悲哀を感じたりする物語。 -
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「ゲッ!」
「(๑o̴̶̷̥᷅﹏o̴̶̷̥᷅๑)ウルウル」
「ヒッ〜!」
って感じの短編集。
ホラーなんやけど、そんなに怖くない。
こんな幽霊なら、話ししても良いかなと思わせる
「押入れのちよ」
キョンシーや!と思わせる
「しんちゃんの自転車」
いずれも心優しいから、ええんやな。
「コール」もそう。
何かええ感じ。
その他、コメディっぽくはなってるけど、生きてる人の方が怖いって思ってしまう作品などなど。
そうホラー、ホラーしてないんで、ホラー苦手な人でも読めそう。
優しい人は、生きてても、亡くなっても同じ何やなぁ…
そういう風になりたいです! -
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ネタバレ中に収録されたエッセイはもちろん、あとがきも文庫あとがきにかえても荻原節炸裂。
表紙絵も中にある挿絵も、著者本人の手によるもの。
荻原浩100%。
タイトル通り、一番生き生き書かれているのが家庭菜園の顚末。
我が家のベランダ菜園など足元にも及ばないくらいの手間と愛情をかけて、それでも思ったように育たない野菜たちに翻弄されながら、毎年毎年試行錯誤を重ねる姿に頭が下がる。
そして、コピーライター出身だからなのか、もって生まれた才能かはわからないが、比喩と擬人化がとてもうまい。
勉強になるわぁ。
終始ニヤニヤ笑いながら読んでいたのではないかと思うけど、時々ぷっと噴いてしまう。
人前で読むにはお勧めできないエッセイ集。 -
Posted by ブクログ
「フジミクニ、ウルクに悪いことした。でも、人は悪くない」
「悪いのはワウ(王)か」
振り返ってカフィの顔を覗き込む。首を縦に振りかけてから、もとに戻していた。
「人は悪くない」
「じゃあ、誰のせいだ」
「悪霊のせい」誰かに問いかけるような調子でカヒィが言う。「悪霊、誰の心にも取り憑くから」(275p)
下巻に至り、縄文のムラ、ピナイを離れた少年ウルクは、森の主のような人喰い熊(ヒグマ)を倒したあと、おそらく静岡平野に展開している弥生人たちが統べるムラにたどり着く。そこは縄文人が夢想していた夢の植物「コーミー」のお陰で遊んで暮らせる所ではなく、「ワウ」の一族の下、縄文人よりもはるかに生産力が高いのに、始終労働をしなくては暮らせない所だった。それに、奴隷、庶民、武士、王族と階層性がハッキリしていた。
森に棲むサルミミの話では、前の前の王の時、縄文のムラにやってきて、米栽培を伝授して去り、米ができた頃にやってきて住民を殺して支配したらしい。縄文人に「戦争」をする「教え」はなかった。よって簡単に支配できたのである(←これはアイヌを参考にしているだろう)。
ミミナガの孫娘たるカフィの言う「悪霊」は、弥生人が信奉する「教え」のことだろう。確かに、そう言う強引なやり方で稲作文化は急速に西日本から東日本に広がっていった処もあったろう。しかし、東日本に限っていえば、最近の研究では稲作文化からまた縄文文化に逆戻りしているのである。ホントはそう言うところまで描けば面白かったかもしれないが、無い物ねだりかもしれない。
全体的には面白かった。新聞記者の香椰と考古学者の松野が登場する現代パートも、単に本編の註釈の意味合いだけでなく、現代につながる「混血の意味」や「権力の意味」「争い絶えない世界の意味」を我々読者に一考を与える意図もあったのである。さすが、直木賞作家だ。本書のみでこの時代の小説化を打ち切りにしているのがもったいない。
ただ、小説のあらすじとしては、想定の内側に収まった。こういう単純な物語を作るのに上下巻のボリュームが要るというのは、正直やはりショック。もちろん、説明を省略すれば読者がついてこない、と作者が思ったからだろう。それもわかる。うーむ悩ましい。巻末に小説としては異様に多い参考文献がならんでいる。
ただ、この弥生人のムラはちょっと時代を700年ほど早め過ぎている。ここまでの階層性は、西日本でも稀だし、ましてや東日本にあったのだろうか? -
Posted by ブクログ
星半分が無いから極端な評価になっちゃうけど3.5くらいってところ。中の上。
昭和のテレ東、日曜、午後2時の定番だった巨大化した生き物に襲われるパニックホラーをベースに色々と盛り込んでいて読み応え充分。
寄生虫のくだりでもっと押してく展開も良さそうだなとは思ったけど、最終的にはボスキャラ戦を持ってきて描写を気持ち悪がりながらも本をめくる手が止まらないハラハラ感。
長い本なのでダレるとこありそうかなという心配も杞憂に終わり一気に読み終えた。
子供の頃、カマキリは身近な昆虫だっただけに細かい動きとかリアルに想像できて余計に怖かったな。
けだし良作。氏の他の作品も読んでみようかな。