荻原浩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ読書備忘録743号。
★★★★。
荻原さんの作品は、心に染み渡る作品が多い。
この作品は面白かったけど、個人的にはめっちゃ苦手分野。笑
私は、戻れる場所が普遍的に存在するということが、絶対的な安心感として必要とする性格。
なので、なんか知らんけど家に帰れないという嫌な夢を小さいころから良く見る。ほんとに嫌だった。笑
この作品。最初に言ってしまうと(ネタバレ)多次元世界のお話。
主人公はふとした事から、ちょっとだけ違う世界に紛れ込んでしまう。そしてもとの世界に戻るために頑張るのだが、多次元世界は無数にある。だから戻れない・・・。めちゃくちゃ嫌だ!エンディングが嫌だ!主人公が元の世界に戻れました!というエンディングにして欲しかった!
主人公はどこにでもいるうだつの上がらないサラリーマン、帝通プランニングという広告代理店に勤める野崎修作。40歳。
サラリーマンなら100人中100人が経験する「朝会社に行きたくない。下り電車に乗ってしまいたい症候群」に罹った。笑
そして、下り電車に乗ってしまった。笑 ただ、次の駅で降りて上り電車に乗るつもりだった。しかし乗った電車は急行。あれよあれよという間に終点の駅に。
もう会社に間に合わない。
開き直って、近くに見えたふたコブ山に登ってみようと、駅前にあった雑貨屋のような店で腰の曲がったおばあさんからサンドイッチとビールを買って登り始める。
そして、異世界へ・・・。
そこには、妻の美冬はいた。
コロナが流行っていなかった。
その代わりMCDウィルスとかいうウィルスの影響で牛が絶滅しており、牛丼が無かった。マトン丼があった。
そしてこの世界で野崎はヒット企画を連発していた出来るサラリーマンだった。
すぐに戻ろうかと思ったが、妻は子宮筋腫に罹っており、手術をする。夫としてそれを見届けなくて良いのか?
しかし、亡くなった親が生きている。やはりこの世界は自分の世界ではない。
野崎は再び下り電車に乗り、終着駅に。
そして再び雑貨屋のようなよろず屋に。再びおばあさんからサンドイッチを買って山に。
「良いところですね」と自分。おばあさんは「短いあいだしか居なかったのになにがわかる」。「えっ?」
もやもやを抱えつつ山に。そして下る。そこは更に全然違う世界だった・・・。
妻は美冬ではなく、会社の同僚でちょっとだけつき合ったことのあった女性。ちょっと抜けた部下の多田が専務になっていた。玉の輿?
そして思考警察なる、マスク警察の発展版みたいなとんでも警察がネットに蔓延っていた。
そして再び下り電車に。
次は日本が内戦状態の世界。
そして、多次元世界の交差ポイントに驚くべき事実が明かされる。そしてあるロジックに従い、いよいよ無数にある世界から元の世界へ戻ろうとする修作!
やった!戻れた!
そこには慣れ親しんだ世界が広がっていた!そして新聞には平成33年という日付が・・・。
が~ん。ハッピーエンドが良かった。涙
しかし流石は荻原さん。めちゃくちゃユーモアにあふれた文体は健在。楽しめました。 -
Posted by ブクログ
どっぷり物語に浸りました!おもしろかったし、最後そんな…とちょっと泣いちゃいました。
物語は仕事に未来を見出せず、酒浸り&薬浸りの潤のお話。ふとしたことからお祭りで金魚すくいをやって金魚を持ち帰る。それとは別に千年以上前の中国でのお話も絡んで来る。とある美女が婚約者の仲を裂かれ、ジジイと無理矢理結婚させられそうになる。
これ、どうやって話まとめるの⁇いややっぱり最後はハッピーエンドだよね⁇とぐいぐい読ませる。ところどころ過激な描写はあるけど。
最後の場面はうそ⁈って思わず叫んでしまった。
元カノが出てくるシーンとか、だんだん立ち直っていく主人公の描写がとにかく秀逸!
ジブリあたりでアニメ化しないかな…切なくてちょっとリアルで泣けて可愛らしい物語です。 -
Posted by ブクログ
銀行を辞めざるをえなくなったエリート銀行員がタクシードライバーになってから自分の人生を振り返る物語です。
過去の自分の実績を褒めてくれる人はなく、転職したタクシードライバーの売り上げもまま成らず、不安や不満は過去の自分へ向けられていきます。
銀行を辞めなかったら、元カノと結婚していたら、懐かしい下宿時代に戻ってみたら、妄想の中で収まらない思いを自分の目で確かめに行動に移す主人公。
そこで見たのは、住んでいたアパートが老朽化で取り壊しになったり、全く成績が上がらなかったタクシードライバーの仕事が少しずつ軌道に乗ってきたり、時の流れと共に幾つかの偶然が自分の人生を作っていることでした。
あのときこうしていれば「たら」「れば」は、誰もが思うもの。
「今」より過去のあのとき、あの道を選んでいた方がよかったのか、、そう思いたい気持ちが深刻な気持ちにさせずユーモアのある描き方で書かれているのも魅力。
人生いろいろあっても「今」を丁寧に生きていくことが大事であることを教えてくれる本。
サラッと楽しく読めるのでおススメです! -
Posted by ブクログ
超過疎地の村が、村おこしのために弱小広告代理店と組んで古代生物をでっち上げるキャンペーンのお話
牛穴村
奥羽山脈の一角、日本の最後の秘境といわれる大牛山の山麓に、サルノコシカケのようにはりついた寒村
東京の6分の1に及ぶ面積を持つが、人口はわずか300人
主な産物は、カンピョウ、オロロ豆、ヘラチョンペ
民芸品としてゴゼワラシ(現在は生産されていない)
村の青年団(とはいっても皆30代)が村おこしに立ち上がる
メンバーの中で唯一の大卒の慎一が、ゼミで一緒で今は広告代理店に勤めている友人を訪ねる
しかし、集めた金額と見積もりの金額との差に驚く
自ら他の広告代理店を探して出会ったのが、倒産寸前のユニバーサル広告社
限界集落と弱小広告代理店による村おこしプロジェクトが始まる
しかし、その内容とはネッシーと同じような「ウシアナザウルス」のでっちあげだった
果たして、プロジェクトは成功するのか?村はどうなるのか?
タイトルは「ライ麦畑でつかまえて」から取っているのだろうけど、共通の要素は一切ない
各章のタイトルが広告業界に関連する単語で、それに応じた展開になっている
単語の説明文の本来の意味と実態が合わせて描かれてあるので、ところどころでニヤリとする
広告代理店の仕事内容もなんとなく理解できるようになる
ただ、如何にブームをでっちあげるかという虚業である事もよりわかってしまうなぁ
東北出身でも方言の部分が読みにくいと感じるところがいくつか
まぁ、そんな悟のキャラクターがより一層のユーモアを感じるんですけどね
村おこし、広告代理店の仕事、流行、報道のありかたなど
架空の出来事だけど、程度の差こそあれ同じような事が現実でも起こっているなぁと思えるリアリティがあった
荻原浩はこれがデビュー作のようで
何作か読んだり映像化作品を見たりしたけど、中年になったからこそわかる気持ちというものがあるんだろうなぁと思う