あらすじ
2度目の原発事故でどん底に落ちた社会――。3年前に懲役を終えたばかりの及川頼也は、若頭に「アル中を治せ」と命じられ、とある大学病院の精神科を訪れる。検査によると、及川の脳には「良心がない」のだという。医者らを拒絶する及川だが、ウィリアムズ症候群の少女が懐くようになり……。人間の脳は変われるのか。ハードボイルドの筆致で描く、脳科学サスペンス!
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最後に、「いやー…マジかー」と声が出た。ヤクザの世界から精神科病棟内と、普段知ることのない”禁断の”世界が本の厚さ分しっかりと描かれており、全く息つかせない展開で1ページも退屈しなかった。
まさかこんなキャラクターに感情移入するとは思わなかったけど、幸せになってほしかったと心から思った。
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ものすごくよかった。主人公が徐々に変わっていくところ、ところどころ笑ってしまうところもよかった。しばらくしたらまた読みたくなるだろうなって本。
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やっぱり荻原さんは、ただの良い人のお話よりこの様なはぐれ者が主人公の方が断然面白い。これだけの長編だが一気に読みました。どんなに長くなっても良いから、途中で終わらないで最後まで書いてハッピーエンドで締め括って欲しかった。それでも久しぶりに堪能しました。梨帆ちゃんがんばれ!
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いつの間にか、主人公と少女の人間関係に引き込まれてしまった。珍しく乱暴な表現が多い作品だったが、読み返すと、少女の達振る舞いや言動が荻原作品らしさを出していたのかなぁ…
主人公と同じ病気を持っている者として言えば、今後、主人公には幸せになって欲しい。終わりのない病気との闘いを続けながら…
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2020.09.04~09.09
本当に荻原浩の作品?と思うような暴力から始まる物語。
でも、最後は心温まるシーンがあり、やっぱり、彼の作品なんだと思う。
良心とは?恐怖とは?女医のセリフが核心をついている。
そして、女の子の無邪気さが、あどけなさが色を添えている。
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脳の一部が働いていないので恐怖感がないらしい。他者への共感がないので思いやることができないらしい。数値による判断を基に薬や様々なプログラムで改善しようとする、と書くととっても良いことに見える。でもその実態は……
人の心は科学では測り切れないんだよ、こん畜生め! てな気分になってしまった。
らいや どうか無事で、りほ の所へきっと帰ってね
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二度目の原発事故が起きた日本の二年後。どん底に落ちた社会。広範囲にわたって、避難が余儀なくされる。原発事故は実はテロ活動によるものだった。日本全体に恐怖が覆い、何もかも沈滞している。自衛隊は、自国防衛隊となって、テロ活動を阻止する。「特定秘密メディア規制法」が成立している。
主人公、及川頼也は、20代後半。幼少時から母親のネグレクトと義父による暴力を受けていた。16歳の時に義父を金属バットで殴り少年院に入った。3年前に二度目の服役を終えたヤクザ。仕事は組の管轄の店の見回り、店長や店の人間に気合を入れる。腕っぷしは強いし、怖いものはない、背中には観音様の彫り物がある。
ある日、ぼったくりバーでいざこざを起こした。イライラしていたのだ。過剰に暴力を振るう。
酒が手放せない。夕方から呑み、顔色も悪い。カシラに呼ばれて、病院に行ってこいと諭される。
行った大学病院の精神科は、アルコール中毒を治すためだった。この大学病院の理事長と組長は、病院の建設用地がらみの繋がりがある。
及川頼也は「嘘は昔からつき慣れている。あんまり嘘ばかりついてきたから、最近は自分でも自分の言葉がどこまで本当か嘘かも見分けがつかないくらい」の状態だった。
病院で、アルコール依存症の治療だと思っていたが、どうも違う方向での診察だった。さまざまな検査をされて、いろいろなVR画面をゴーグルで見せられ、脳を画像に撮られた。それで、入院を勧められる。
病院の待合室にいる及川頼也に懐いたのが藍沢梨帆。本来及川頼也はガキは嫌いだった。「おじちゃん、雨が好き?」とか、「オムライスが好き?」と聞いてくる。梨帆は七歳でウイリアムズ症候群だった。共感力が強すぎて、恐怖心がない。及川頼也と真反対なのだ。
桐島教授が担当。及川頼也は、脳の説明を受ける。前頭前野は、思考や創造性を担う脳の中枢。この領域が正しく活動していない。診断結果として、反社会性パーソナリティ障害だと診断される。他者に対する共感力の欠如、感情的情報の処理不全、自身の過ちから学ぶ能力の欠如、爬虫類的な快楽を抑えられない脳の障害であると言われる。脳の海馬の尻尾の部分(扁桃体)が欠損し、恐怖を感じない。「良心がない」と言われる。また、人に共感することもできない。及川頼也は「良心なんて何の役にも立たねえ。良心がない。だからどうしたっていうんだ。上等だ」とつぶやく。
対立する暴力団の抗争があり、襲ってきた組の二人を処理する。それが火ダネになって、抗争が起こり警察のガサ入れがありそうだとカシラはいい、逃げろと言われて、及川頼也は、病院の8週間の治療プログラムを受ける。そこは、国家プロジェクトがPTSDを改善する薬品を開発する秘密実験病棟だった。及川頼也は、開発された薬品の実験体だった。及川頼也の脳は、変わるのか?その病棟で、脳に欠陥がある患者と接触する及川頼也。次第に、何が問題かがわかってくる。
桐島教授の開発している新薬は、恐怖を恐れないこと、過去の出来事を忘れる薬だった。自衛隊員が、怖くて戦えない状況や戦争での恐れをなくすための特殊な薬だった。
そういう中で、及川頼也は、曽於の企みを見抜き、実験材料にされている梨帆を救うのだった。
それにしても、歯止めの効かないほどの暴力的男の及川頼也が、可愛い少女の存在で、大きく変化していくのが面白い。また、脳の機能について、説明があるので、わかりやすい。脳の見える化をしている。この及川頼也の破天荒な戦いぶりとセリフは、実にいいのだ。本当の悪は誰なのか?
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いつもの荻原のように調子よくページは進む。自分ではどうしようもなかった不運の中で懸命に生きる人々の、善性を丹念に描くのが荻原のやり方。だが、ストーリーには何の救いもないのがつらい。
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このどうしようもない主人公がすごく魅力的。
容赦なく暴力を振るう前半でもどうして嫌いになれないから話が進むにつれ、お願いだからハッピーエンドになってくれと祈りつつ読んだ。
びくびくするほどの暴力シーンとくすっと笑えるやりとり、主人公の真っ直ぐで切ない内面が全部しっかり描かれていて、とてもよかった。
すごく面白かったです。
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面白いのです。。。。
出版社の紹介では「二度目の原発事故でどん底に落ちた社会――。三年前に懲役を終えたばかりの及川頼也は、若頭に「アル中を治せ」と命じられ、とある大学病院の精神科を訪れる。検査によると、及川の脳には「良心がない」のだという。医者らを拒絶する及川だが、ウィリアムズ症候群の少女が懐くようになり……。人間の脳は変われるのか。ハードボイルドの筆致で描く、脳科学サスペンス!」と書かれています。
どうしようもないサイコパス(反社会的人格)のヤクザの悪行を書き連ね、最後は森の中の怪しげな精神病院内でマッドドクター(サイエンティスト)との戦い。手に汗握ると言いましょうか、さすが荻原さん、読ませてくれます。
それにしてもご自身が「ノンジャンルの人間」と言い、「器用貧乏なのかもしれない」と自己分析されている荻原さん。
デビュー当時は『ハードボイルド・エッグ』などのスラップスティックコメディ、その後『明日の記憶』などのシリアス物に転身し、その中で『海の見える理髪店』などのハートウォーミングな作品を数多く発表。最近では縄文人の男の子と弥生人の女の子の恋を描いた『二千七百の夏と冬』や巨大カマキリが登場する昆虫版ジェラシックパークの『楽園の真下』などサスペンスフルな作品も多くあります。
でもね、個人的には時代を遡るほど「荻原さんらしい」と感じてしまうのです。
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本から目を離している時間にも、ずっと考えてしまうようなストーリー。
暴力描写がすごい。『アウトレイジ』のよう。
読み進むにつれ、乱暴者の及川頼也をだんだんと応援している自分に苦笑。
可能性は低いだろうが、彼の幸せを祈った。
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荻原浩さんの作品ってこんなんでしたっけ?
主人公目線が一貫されていて、その口調がけっこう荒っぽい思考の男性。
最初は違和感があったけど、読み進めていくうちにだんだんと感情移入できて楽しめました。
正気と狂気。メンヘラとサイコパス。
現代的なテーマで、精神科の施設みたいなところも薄気味悪くて、、、でも、あるかもしれない!あったら怖い!そんな感じでした。
個人的には好きなテーマで、よかったです。
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もうちょっと、なんかこう、科学的に解決されていく部分が多いと思って読んでいたら、全然違いました。でも、りほと関わっていく場面が好きで、この流れでもいいなと思いました。
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ヤクザでアル中の及川。アル中治療で訪れた病院で、能の検査の結果、「良心」が欠落していることがわかった。治療のため入院するといろんな出会いの中、いつしか及川の心の中にも変化が。。。というお話。面白くて一気読みしてしまった。
Posted by ブクログ
前半は痛々しい描写が多く、想像するほど胸が痛む。
最初こそ主人公のことを軽蔑していたが、ページを捲るたび徐々に主人公の根本的な人間味に惹かれていく。
天使と悪魔のようなリホとの出会いから、
お互いが歩み寄ろうと必死で、
いつしか見返りを求めず人のために生きる道を選んだ男の姿は本当に格好いい。
読み応えがとてもあった。