あらすじ
“根拠なしポジティブ”の現代のフリーターと、昭和19年の「海の若鷲」にあこがれる軍国青年が時空を超えて入れ替わった! それぞれの環境に順応しつつも、ふたりはなんとか元の時代に戻ろうとするが……。未来を知る者と、過去を知る者。ふたりの「19歳」を通して描く、あの時代、あの戦争。
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結末がはっきりしないのが逆に良い。健太が戻っても決して今までとはいかない事態になってしまっていて、一方吾一が戻ってもその後の生存は絶望的という状況。そこに至るまでの展開は笑えるところがありながら真に迫っていて、特に吾一の現代に対する思いについては、考えさせられるところが多くある。
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あらすじを読んで「入れ替わりネタか、よくある話かな…戦争関係の話は重いし暗いからちょっと気が進まないな」と思ったのですが、読み進めるとさすが荻原さんといったところ。
たしかに重くて暗い部分もありますが、その中での幸せやおもしろさを心地よく散りばめてくれて、「つらいから読みたくないな」という気持ちにはなりませんでした。
むしろ、これからどうなってしまうのか、続きが気になって止まりません。
荻原さんは、自分が経験されたわけではないのに、対象のもの、雰囲気をリアルに描写されるのが本当に上手なので、戦争、サーフィンを経験したことのない自分も、まるでその場にいるような臨場感を味わえます。
他の方の感想で、この小説を元に映像化された作品があることを知れたので、探して見てみます。
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2001年9月12日、サーフィンをしていた少年尾島健太は大きな波にのまれてしまう。
目を覚ますとそこは1944年の日本で?
一方、1944年9月12日に飛行練習をしていた、同じく19歳の石庭飛行兵長は飛行機のコントロールを失い、気づくと2001年の病院に居て…。
そっくりな容姿により、入れ替わってしまった二人。はたして新たな世界になじむことはできるのか。
現代から戦中へ向かった健太、戦後の事情を知った石庭。
ふたりの運命はどうなるのだろうか。
健太は無事に帰ってこれるのか。
歴史知識に欠ける健太に、というより現代人の健太に感情移入してしまう部分が多かったですが、戦中から見れば「乱れた」現代に翻弄される石庭も共感できるところは少なくないです。
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2001年9月12日、
ニートでサーフィン中の健太が、大波に呑まれ。
1944年9月12日、
海軍で飛行訓練中の吾一が、海上に、墜落。
お互い、目が覚めた時、
そっくりな二人は 入れ替わっていてーーー。
欲張り放題、
自分の幸せのためだけに生きる現代を、軍国少年・吾一は、嘆く。
死ぬために生きる、命をかけて過ごす、
そんな切迫感が当たり前の時代に、
サーファー少年・健太は、たじろぐ。
それぞれの時代錯誤のチグハグ会話に、クスッとなり。
時空を超え、大切な人を信じ、想いを馳せる姿にウルっとなり。
いろんな感情が、行き来する。
いろんなものが、つまってる。
最後まで、想像力掻き立てられて、
物語は心の中で続いてゆく…
読書の醍醐味をいっばい味わえた一冊。
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フリーターが戦時下へ!
帝国海軍航空隊員が現代へ!
過去を知る者と、未来を知った者。
瓜二つの二人がタイムスリップして入れ替わる物語。
タイムスリップは偶然なのか?必然なのか?
戦争をテーマにした話ではあるけれど本書は重苦しさを感じさせない。
主人公の健太(フリーター)は「根拠なしのポジティブ」思考で楽観主義者なので物事を明るい方向に切り替えてしまうのと、ちょっとおバカキャラなので周りを明るい雰囲気にしてしまう。
能天気過ぎて「それはないだろ!」とイラっと来る場面も。
もう一人の主人公吾一も現代と戦時下のカルチャーショックを受けている様子がコメディタッチで描かれていて、無理して現代の言葉を使うシーンとか使い方が全然違ったりしていて思わず笑ってしまう。
現代と戦時下の出来事とギャップを交互に描写することにより、平和と戦争の悲惨さがより理解しやすく描かれていて、特に渋谷での吾一のこの言葉には心に重くズッシリときた。
自堕落な感じの若者や喧騒な街並みを見て、
「これが自分達が命を捨ててまで守ろうとしている国の50年後の姿なのか!」とかなり悪い方にショックを受けてました。
吾一と同じ年齢の若者達が戦争の事などまるでなかったように忘れてしまっている姿に、今私達の平和は先人の犠牲のもとに今の平和があるのを忘れてはならないという著者のメッセージのようにも思います。
本書の物語のなかだけでなく実際にも行われていたのだろうと思われる理不尽な命令や罰則には心が痛みます。
下司官の憂さ晴らしとしか思えない日常化した暴力の正当化や、日本の降伏後の上官命令による無駄な戦闘と特攻隊への強制的志願。
たくさんの命が失われることに…。
何かあれば非国民、お国のため戦場で命を散らすのは名誉なことだという価値観とNOと言えない同調圧力。
命令する方は安全な場所で物見遊山。
大切な人を守りたいという気持ちを利用して。
誰を守るため、何を守るための戦争なのか?
とても強い不条理さを感じます。
また、NOと言える社会作りには教育、選挙の大切さを感じました。
中盤までは途中少し中弛みしてしまうけど、それ以降は進撃ラッパの合図とともに怒涛の快進撃、物語に没頭してページをめくる手が止まらない。
結末は読み手の想像に委ねる形でモヤモヤが残りますが、いろいろな結末が想像できて面白いから、これもアリかなと思う。
疑問に思ったのは何で結末を委ねる形にしたのか著者の思いが知りたいかな。
戦争の悲惨さを忘れてはいけない
同じ過ちを繰り返さないように
戦争を知ることが平和へのだい一歩
Posted by ブクログ
二人がお互いの時代にタイムスリップしてしまい、元に戻る方法を探しながらそれぞれの時代で必死に生きる物語。
交互に読み進めるが、自分も健太と吾一に身を置き換えて読んでしまった。
健太の方は、大変な時代だったことがとても伝わってきた。
吾一の方は、セブンイレブンやテレビ、電子レンジ、ケンタッキーなどの独特な表現がとても面白かった。
ラストは想像と違ったが、なかなかよかった。
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無い話だよなあと思いつつも、引き込まれて読んでしまった。ストーリーの先を知りたいとどんどん。最後はあえての終わり方だったが、かえって気に入った。
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現代を生きるちょっといい加減な若者健太と戦争時代を生きる生真面目な吾一が時空を超えて入れ替わってしまう物語。
時代のギャップに戸惑いながらも大切なものを守るためにする最後の選択。。。
結局恋人みなみのもとに戻った健太が本物の健太なのか、吾一なのかはわかりません。できれば成長した健太で会ってほしいと私は思います。
Posted by ブクログ
現代と過去の生活様式が細かく書かれていて、その時代に馴染むというよりそれぞれの人格で生活していき成長や葛藤していく二人を面白く思う。何故か現代より過去の人間模様の方が濃いと思うのは命がいつどうなるのかが分からない時代だから。ラストの健太の行動やミナミの見た波から見えた姿が健太だと考えると、健太の行動は必然だったと思わずにいられない、二人の物語のようで実は健太の物語で健太とミナミの物語のスタートを見たのだと思う。中盤からは一気読み出来るほど没頭出来る作品。
Posted by ブクログ
おもしろかった!
時代が変われば、考え方も変わるのかな。
自分の考えとか言っているけど、それは周りの環境にかなり左右されているわけで。
産まれた時からスマホで何でもできる子ども達はどういう考えになるんだろう。
最後の終わり方が…気になってしょうがない!!
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毎年、8月15日が近付くと戦争関連の映画やドラマが放送されるが、2年前ほども、この本が原作となって森山未来の主演で放送された。
それはかなり感動したが、原作本を改めて読むと・・・ん~。
それほど、森山未来の演技がよかったのだろう。
内容はタイムスリップもの。
現代の若者と60年前の戦争末期の特攻飛行兵が入れ替わってしまうという内容。
今も昔も、風俗や習慣は変わってはいるが心根は同じだという筋書き。
まあ、よくある話ではあるな。
アメリカ映画なんかでは、最後には元に戻ってハッピーエンドとなるんだろうが、これは違う。
最後の1行に、それらしき記述があるが、元に戻れたかどうかは読者の判断に任せている。
この辺が日本的だ。
本を読むよりもDVDをお勧めする。
Posted by ブクログ
タイムスリップする話だと思っていたのだが、最後に度肝を抜かれる展開でした。
途中、中だるみのような内容で読んでて飽きてきたが、最後まで読んでよかった。
戦争中の訓練生と戦争を知らない21世紀生まれの人間が入れ替わるとこうなるだろうなと思ってしまう。
それ以上に面白いストーリーでした。
Posted by ブクログ
環境によって変わる人間。いまを生きる私たちも、戦争中を生きたひとたちも中身は変わらない。情報の取捨選択ができず、歯向かうことができなかった時代。両方を体験しながらも帰ろうとする吾一。戦時の波にうたれながら、影響をうけていく健太。
最後のくだりはいらなかったかな。
Posted by ブクログ
2001年に暮らすフリーターの健太、1944年に海軍の飛行兵として生きる吾一、ふたりが同時にタイムスリップし、それぞれの時代で入れ変わった。…
現代人から見た戦争、昔の人から見た今が、良く表現されていて、とても面白かった。
健太の気持ちは共感に値するもの。
一方、吾一の、未来を嘆く気持ちと言うのは、いい着眼点だなと思わされた。
ファンタジーコメディ風ではあるが、テーマが戦争なので、考えさせられることは多数有り。
そして、二人の関係性が上手く繋がることには感心しきり。
結局どうなったかは、読み手に任されるという終着点。
やられた。
『正しい戦争なんて、どこにもない。戦死に尊いも賤しいもない。』は健太の言葉。
手軽に読める戦争小説。オススメです。
Posted by ブクログ
直木賞作家の作品。
2001年を生きるフリーターの健太と、1944年を生きる軍人の吾一がお互いにタイムスリップして入れ替わるストーリー。
死と隣り合わせの環境に放り込まれた健太と、自分が守ろうとした日本の未来に驚愕する吾一の描写が時に面白く、時に考えさせられる内容だった。
Posted by ブクログ
タイムスリップにより、野放図な生活から一変して戦争の渦中の予科練兵になった健太が、1年ほどでその環境に馴染み最後は特攻するまでになる。 人は時代に沿って生きるもので、その時の環境や価値観が人を創り出すのだろう。 そして、戦争は起こしてはならないけれど、家族のため、愛する人のために避けられない戦いもあるんだ。太平洋戦争で戦われた多くの方々もそうであったと思う。 荻原さんは、ユーモアを交えながらもそのことを伝えたかったんじやないかな・・・。 先人が命を賭して残してくれた日本という国を大切にしたい。
Posted by ブクログ
予科練の特攻隊員と現代の若者が入れ替わってしまうタイムスリップもの。
最終的に特攻は回天になるんだけど、最初から回天の練習生にしなかったのは「特攻」のイメージと「回天」の一般への知名度の問題だと思う。マニアの壁を考えなければ、最初から「回天」にするだろう。特攻隊員が現代に来たときに「異世界」であると少年倶楽部の小説から思いつく。当時から「異世界」という概念はあったのです。
で、この物語の仕掛けは、入れ替わるということで、同時並行で現代と太平洋戦争末期が描かれるます。この手法は使えるかなと思うのです。異世界転移したときに現代人が異世界に行くだけではなく、異世界から現代の方にもやってくる。等価交換、質量保存の法則みたいな感じで。
それが魔王討伐中の勇者でもいいし、なにか異世界で重大な役割をもっていた何かする。
そして、現代、異世界両方の世界をクロスさせ描写する。全然関係ないと思われる場面を描き、それが1本の物語に収束していく形は、高野和明氏の「ジェノサイド」とかホラー、サスペンスなどで多く使われている手法なのだけど、ちょっと違うか……
この手法はWEB小説には向かないと思うし。
お互いが違う世界で困惑し元の世界に戻ろとする話はありかと思う。