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Posted by ブクログ
様々な家族の姿を描いた短編集
祝直木賞! ということで久々の荻原浩さんの小説を読みましたが、ユーモラスな話も、シリアスな話も、どちらも登場人物の心理描写が相変わらず丁寧でそしてリアルです。
この荻原さんの心理描写のリアルさの根底にあるのは、様々な登場人物の、それぞれの情けなさをしっかりと描いているからこそだと思います。
シリアスでいえば、男手一つで育てた一人娘の結婚に複雑な心情を抱く父を描く「結婚しようよ」
古くからの写真館を営む父に反発し家を飛び出し、独自で写真の仕事を続ける息子。しかし父が倒れたという連絡を受け、その息子や娘たちが写真館に集うことになる表題作の「家族写真」
こうしたシリアスなドラマの完成度の高さはもちろんなのですが、やはり個人的にはユーモラスに人間の情けなさを描いた短編こそ、荻原さんの真骨頂だと思います。
一家全員太っている内村さん一家のご主人のダイエットを描いた「肉村さん一家176kg」
奥さんから聞いた効果があるかどうかわからない、怪しげなダイエットに精を出す様子や奥さんとのやり取りなど、どこかにありそうな光景が、荻原さんの手にかかるとついついクスリとさせられます。
終わり方のなあなあな感じも、またリアルです。
「住宅見学会」は、マイホームを夢見る主婦が、家族とともに、実際に住民が住んでいる様子を見学できるモデルルームに行く話。
モデルルームに住んでいる若くてきれいな奥さんについつい嫉妬したり、自分の家族と相手の家族を比較してしまったり……。書きようによっては、グチグチしてしまいそうですが、荻原さんが書くと、どこかカラッとした雰囲気に仕上がります。こういう書き方はやっぱり荻原さんらしいですね。
一番印象的だった短編は、「しりとりの、り」
家族でドライブに行った最中、父がいきなり「会話が足りない」と言い出し、家族全員でしりとりをすることになるのですが……。
全編会話だけで進む作品なのですが、やりとりが秀逸! 空気の読めない父、しりとりに乗りきらないほかの家族の面々。それが会話だけで映像として浮かび上がってきます。
そして展開も一筋縄ではいきません。単に笑わせるだけでなく、会話が進むごとに、この家族の違った一面が浮かび上がってきます。構成や書き方もうまい!
『明日の記憶』や『砂の王国』といったシリアスな大作ではないですが、それでもしっかりと荻原さんらしさがつまった短編集だと思います。
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