あらすじ
紀元前七世紀、東日本――ピナイ(谷の村)に住むウルクは十五歳。野に獣を追い、木の実を集め、天の神に感謝を捧げる日々を送っている。近頃ピナイは、海渡りたちがもたらしたという神の実“コーミー”の噂でもちきりだ。だが同時にそれは「災いを招く」と囁かれていた。そんなある日、ウルクは足を踏み入れた禁忌の南の森でカヒィという名の不思議な少女と出会う。
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Posted by ブクログ
この本の物語はもちろん創作だけれど、縄文時代(やその前)から歴史や命は続いていたという事実の壮大さにやられる。
1万年続いたという縄文時代の後、たった2700年の間に、人類は進化したのか退化したのか…いろいろ考えてしまう。
人種のこと、争いのこと、話全体にすごく重くて大切な主題が流れているが、ひとりの人間の想いや人生も大切に描かれている。人類の大きなテーマはいつでも個人のテーマだと思った。
そして荻原浩さんの軽快で暖かくチャーミングな文体が好き。
この本を読んだしばらく後にいろいろなキッカケがあり縄文時代の文化にハマり、その後再読した。縄文博物館で見る遺物や資料がより鮮やかに見えた。
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たくさんの飾り物をつけた人間は、大抵人に物を分け与えるのが嫌いだ。
「地震(じふるえ)、怖い」 「そうかな」家を直せば済むことだ。地震えで潰れるような家は、皆でひと働きすれば元通りになるし、柱が細いから大きな怪我もしない。地震えは、土の中に埋まった人や獣の塊が、蘇りのために一斉に外へ抜け出るときに起きる。ピナイではむしろ喜ばしい出来事だった。
ウルク(縄文人)には、このクニの人間(弥生人)は面倒事が好きで、自分たちで勝手にそれを増やしているふうに見える
、、、
面白かった。最初から2人の運命はわかっていたから最後もそこまで悲しくはならずにすんだかな。
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2700年前のパートと現代パート、2つの自体を軸にストーリーが進みます。もちろんメインは前者のほうですが…まあ.とってもいい話です!その辺は他の方の感想を(ごらぁ
現代のパートがなんだろ…2700年前のパートとのリンクが感涙もの。
比較するのはおかしいけど、アサシンクリードシリーズ(ゲーム)もこのくらいやってくれるといいのに(笑)
わかる人いるかなぁー?
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上下巻、一気読み。
物語として、とても面白く、その上で、「豊かになる」とはどういうことなのか、とても考えさせられる内容だった。
読んだ後もしばらく、後を引く。
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想像以上に面白かった。どんどん引き込まれていった。
縄文時代から、人が集まれば理不尽な差別や意地悪は存在する。そらになんとか立ち向かって人生を切り開く勇者(ウルクは勇者に思えた)はいるのだな。
縄文時代から弥生時代のカルチャーショックや、よそ者に対する恐れや嫌悪、文化が進めば格差が生まれて、挙句殺し合い。
この2冊にギュッと押し込まれて、色々考えさせられた。
Posted by ブクログ
上巻は熊との対決が圧巻だった。
そして下巻は打って変わって、ウルクと異世界の話。
ウルクと彼女の結末は分かっていたけれども、応援せずにはいられなかった。
最後の終わり方がすごすぎて、この感想を書かずにいられなかった。
他の著者なら、令和のヒロインで終わっていたと思う。そこをウルクたちで終わらせていたのもよかった。それでも命は続くというか。日本人はそれでも生きているというか。
東日本大震災の後の物語という印象。そしてコロナ以前。震災が遠い昔の出来事に思えてしまった。この物語は、コロナ前に読むべきだった。
もともと大好きな著者だったけれど、ますます好きになった。政治思想も共感できたし。
これ、映画化してもいいんじゃないかな。Netflixでドラマ化するとか。映像で見てみたい。もちろん描写が素晴らしいから映像は頭の中で再現されているんだけど。
素晴らしかった!
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著者の今までとは、かなりテイストの違う作品だったが、とても楽しく読めた。
最初は、誰が誰なのかよく分からなかったが、ラストに向かって登場人物もシンプルになり、終わってしまうのが惜しくなる作品だった。
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縄文人の少年ウルクの、優しくて切ない、まっすぐな物語。
美味しいものを食べたい。平和に暮らしたい。好きな人と一緒に生きていたい。ウルクの望みは本当にシンプルで、胸にジーンと響く。
時代の転換点は未来へ向かう明るいイメージを持っていたけれど、それだけじゃないと気付かされました。
Posted by ブクログ
期待してなかったからなのかな…とても心に残った本でした。
現代の10代の生き方と全く違う価値観や生きづらさ等比べる事は出来ない、理解し合える事も出来ないけど、恋愛で国の違い、育ちの違いで共通するところもあったり…
とにかく 今の時代に産まれて良かったなぁと思える
Posted by ブクログ
読みづらい点もあった上巻から下巻は一気に2700年前の世界に引き込まれていきました。戦、戦争は嫌いです。しかし人の歴史は戦の歴史でもあると考えさせられました。
Posted by ブクログ
「フジミクニ、ウルクに悪いことした。でも、人は悪くない」
「悪いのはワウ(王)か」
振り返ってカフィの顔を覗き込む。首を縦に振りかけてから、もとに戻していた。
「人は悪くない」
「じゃあ、誰のせいだ」
「悪霊のせい」誰かに問いかけるような調子でカヒィが言う。「悪霊、誰の心にも取り憑くから」(275p)
下巻に至り、縄文のムラ、ピナイを離れた少年ウルクは、森の主のような人喰い熊(ヒグマ)を倒したあと、おそらく静岡平野に展開している弥生人たちが統べるムラにたどり着く。そこは縄文人が夢想していた夢の植物「コーミー」のお陰で遊んで暮らせる所ではなく、「ワウ」の一族の下、縄文人よりもはるかに生産力が高いのに、始終労働をしなくては暮らせない所だった。それに、奴隷、庶民、武士、王族と階層性がハッキリしていた。
森に棲むサルミミの話では、前の前の王の時、縄文のムラにやってきて、米栽培を伝授して去り、米ができた頃にやってきて住民を殺して支配したらしい。縄文人に「戦争」をする「教え」はなかった。よって簡単に支配できたのである(←これはアイヌを参考にしているだろう)。
ミミナガの孫娘たるカフィの言う「悪霊」は、弥生人が信奉する「教え」のことだろう。確かに、そう言う強引なやり方で稲作文化は急速に西日本から東日本に広がっていった処もあったろう。しかし、東日本に限っていえば、最近の研究では稲作文化からまた縄文文化に逆戻りしているのである。ホントはそう言うところまで描けば面白かったかもしれないが、無い物ねだりかもしれない。
全体的には面白かった。新聞記者の香椰と考古学者の松野が登場する現代パートも、単に本編の註釈の意味合いだけでなく、現代につながる「混血の意味」や「権力の意味」「争い絶えない世界の意味」を我々読者に一考を与える意図もあったのである。さすが、直木賞作家だ。本書のみでこの時代の小説化を打ち切りにしているのがもったいない。
ただ、小説のあらすじとしては、想定の内側に収まった。こういう単純な物語を作るのに上下巻のボリュームが要るというのは、正直やはりショック。もちろん、説明を省略すれば読者がついてこない、と作者が思ったからだろう。それもわかる。うーむ悩ましい。巻末に小説としては異様に多い参考文献がならんでいる。
ただ、この弥生人のムラはちょっと時代を700年ほど早め過ぎている。ここまでの階層性は、西日本でも稀だし、ましてや東日本にあったのだろうか?
Posted by ブクログ
古い人骨が発見された。
縄文時代と弥生時代の男女が手を繋いだ状態で。
現代の新聞記者、佐藤香椰がそのスクープを追う。
2700年前の日本で生きていたであろう、ウルクとカヒィの恋と冒険の物語を中心に繰り広げられる物語は、考古学というものの夢を私たちに伝えてくれる。
ウルクやカフィの言葉は分かりにくいものの、読み解いていくのも面白い。
猪や鹿、熊などを狩り、米の栽培を始める頃の日本。狩猟民族と農耕民族の生活の違いなど興味深く、作者の想像の世界を楽しめた。
Posted by ブクログ
いまなお続く戦や差別、そして人間にとっては欠かせない出会いや恋、誰かを大切に想う心、原始の時代に生きていたウルクが現代のわたしたちに問いかけているような作品でした。
Posted by ブクログ
おそらく本邦初の、本格・縄文・恋愛小説。
縄文人の男の子と弥生人の女の子の出会いの物語です。
山の中で狩猟と採取の生活を行う縄文人の部落に育った少年・ウルクは、山中で不思議な女の子・カヒィに出会う。ちょっとしたことから掟に背き一人村を追い出されることになったウルクは、帰村の許しを得る為、噂のコーミー(米)を求めて旅をする。そして、たどり着いたのはカヒィが住み、農耕を行う弥生人の部落だった。
簡単に紹介するとそういうあらすじの中で、狩猟民族である縄文人の生活や、強い身分制度を生み出す農耕民族の弥生人の生活が丹念に描かれます。特に当時は本州にも居たヒグマとウルクの戦いは緊迫感が有ります。そこに時折、現在~もう一人の主人公と言うべき新聞記者の香椰~の物語が織り込まれながら話が進みます。
やや重めに始まりましたが、流石は荻原さん、途中からは一気呵成に読ませます。とは言え、やはり上下2巻はちょっと長すぎるかな。映像化したら面白い作品でしょうが、セットや衣装(と言うより役者さん)が大変でしょうね。
ジャンルは何なんだろう。
奈良時代くらいまでは歴史小説。さらに遡るとSFっぽくなる。
その仕切りは・・・当時に書かれた文字(文章)が残っているかどうかなのかな。
Posted by ブクログ
うーむ、上巻のもどかしさが一転、流石受賞作!
古代を描くのにおちゃらけてるのか何なのか分からないところも、著者の懐の広さと感心した。
学校で縄文時代は狩猟生活、弥生時代は農耕生活などと歴史の授業で習ったが、考えてみればそんなの後付けで、現代の様に、昨日迄平成で今日から令和です〜なんて無い訳だ。
縄文人と言われる狩猟をメインに生きている人々のところにジワジワ大陸から別の文化を持ってくる人々がいてそれを弥生人、そして稲作がいつの間にか広まって弥生時代、みたいな分類しているにすぎないのだと、改めて思い至った。
縄文、弥生が入り混じった時期でも、当事者達は考え方や生活様式が違うという事で争ったり、許容したりと、現代と変わらない生活がそこにはあったに違いない。
発掘された古人骨である主人公と現代の新聞記者の主人公の恋する者達の気持ちと、周囲の人々の見方がオーバラップするのも考えさせられる。と同時に、人間の本質って変わらないのかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
縄文時代の終わりと弥生時代のはじめって、どうなってだだろ?キッチリ線引きがされるわけでもないだろうし・・と、ぼんやりと疑問を感じてた、そんな時期のお話。狩りと採集の縄文は貧しく、米作をもたらした弥生では豊かになった、そんな定説ばかりではなかっただろうということに気付かされた作品。現代のヒロインとリンクしているけど、そっちは随分と大風呂敷広げた終わりだったな。でも、人が30回生まれ直しても変わらないもの、いいものも悪いものも、あるということ。それを考えると、縄文時代が遥か昔のものでなく、すぐ手の先にあるような感じがしてしまう。
Posted by ブクログ
西暦も2000年を超え、地球規模の様々な問題が顕著になってきています。しかし、過去に遡って目を向けると、アフリカを起源とする人類の発祥や、日本人は何処からやってきたのかというような考古学的な興味は、想像の世界だけに気持ちを掻き立てられるものがあります。一対の若い男女の人骨の発掘を発端とするこの物語は、それだけに一気に2700年の時を跨いで縄文、弥生時代に飛びます。
日本列島と思われるある所に狩猟によって命を繋いでいる一集団、その中の思春期を迎えた16歳になる男子、ウルクが主人公です。彼は図らずもヒグマと思われる巨大な熊を倒すことと、ある目的を遂げるために家族を含むその集団から離れなければなりません。日本人が、今に至るまで生産活動と食糧として大きな価値を持った米。稲作の始まりが弥生人によってもたらせられたという説を題材としながら、ウルクすなわち縄文人と、旅の途中で出会った弥生人のカフィとの恋の顛末を描きます。
想像の域を出ない物語ですが、言語や戦さ、家畜の飼育など、どのように始まったのかがとこどころに出て来るのでその辺りも興味あるところです。現代人として登場する新聞記者の香椰が日本人って何?と呟く部分。自分たちは地球上の唯一の仲間だと信じて、韓国や中国人を嘲笑っている人たちは、そのルーツはもしかしたら皆一緒かもしれないのを知っていて行動しているのか…確かに疑問ですね。そもそもアフリカで誕生したイヴが、全人類の遺伝子上の母。〜人類みな兄弟~という言葉が浮かびます。
Posted by ブクログ
生まれ育った村を出て旅をするウルクが辿り着いたのは、村を出るきっかけになった森に迷った際に出会った少女カヒィの住む村だった。
ただ、そこはウルクの里とは違うことが多かった。
ウルクの成長と縄文時代という時代背景が、とても面白く夢中になった。
2018.1.6
Posted by ブクログ
面白くなるところまで少し時間がかかったけど、世界観に慣れてきたら最後まで一気に読んでしまった。描写が想像しやすく頭で映像が流れるように読めた。縄文時代と現代が交互に変わるけれど細かい伏線がきちっと繋がっていて、読んでて感情移入がしやすく、最後はじわじわとこみ上げるような切なさを感じた。主人公の女の子が一人未来を目指していく。現代を生きてるということ、かな。
いつの時代も人間が人間であるかぎり、争いや戦さなど同じような歴史が繰り返され、きっと変わらないのだろうな。
Posted by ブクログ
「下」に入りあっという間に読んでしまった。
いや、読まずにはいられなかった。
少々、言葉回しは、読みづらいところもあったが
何しろ、二千七百年前の縄文人と弥生人との物語であるが故
しょうがないのだろう
Posted by ブクログ
手を繋いでいたと思われる状態で発掘された縄文時代と思われる二体の人骨。その儚い主人公の青春の物語は読んでいる途中でその先の成長が見られないのが解ってしまう、強く残念で寂しいがとても読み応えがあった。素晴らしい。
Posted by ブクログ
現代社会と重ね合わせて語られる、縄文時代の恋愛・青春小説であり、サバイバル、バトル小説でもあった。閉鎖的な日本人やナショナリズムに対する皮肉も込められ、考えさせられる。分かっていても、切ないラストには泣かされた。
Posted by ブクログ
ロマンがある感じで、けっこうよかった。縄文時代と現代が交互に進むパターンの本。現代で、縄文・弥生文化の補足をしてくれるので、わかりやすい。子供の頃に読んだ、まんが日本の歴史の第1巻を思い出す…あれはずいぶんほのぼのしていた。
Posted by ブクログ
冒頭に「縄文人と弥生人の白骨発見。しかも少年少女で少女は妊娠痕跡あり」を入れることで、2700年前の物語をファンタジーから歴史小説に変えた。最初から結末が分かっているにもかかわらず、そこまでに至るまでの物語に、次第に引き込まれてしまう。上巻の縄文人の生活が、下巻を読み進めるにつれて愛おしくなる。二千七百回も年を重ねて、何が進化した?文化や文明とは何?
Posted by ブクログ
最初は文中の縄文時代のことばに慣れず,読みにくかったけれど,下巻は一気に読んでしまった。
ウルクの冒険物語。ラストは切ないけれど,殺されるよりはカフィと一緒にいられたのでよかったのかもしれない。
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荻原浩 「 二千七百の夏と冬 」
縄文時代と3.11直後の現代を行き交う展開。韓国人の恋人を失った記者 佐藤香椰が 縄文人ウルクと弥生人カヒィの愛を追いかける。
「戦場には人間の本当がある〜人間が変えられるもの変えられないものを知りたい〜時間がかかっても、いつかは変えられると信じたい」
著者が伝えたいのは、異なる国や文化を排除する社会を変えるのは 時間ではなくて 愛
Posted by ブクログ
人間とはそもそも戦う様に出来ているのか。
ラストはわかっていたものの切なく少し寂しい。
『何の努力もせずに手に入れられる国籍を誇ったって、自分自身は1センチも前に進めない。』
考えさせられる一文。
Posted by ブクログ
上巻でピナイを追われ一人旅立つ事となるウルク
陽の色の獣との死闘
弥生人の国、コーミー、剣、毛人、そして恋・・・
ピナイを出る事で様々な経験を積むウルク!
目的のコーミーを食したものの、弥生人の国の豊かさと忙しさに矛盾を感じる・・・
やがてウルクは人間同士の争いに触れる事となる。
便利になると忙しくなり、豊かになると貪欲になる。
この二つの物は行き着くところを知らない。
2700年前から続いているのであれば、それは理であり鳥の巣に卵どうにもならない。