荻原浩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ読み始めた時は『ブラック企業で働く俺 お祭りで掬った金魚がビショビショの美少女になったので同棲することになった件』というようなラノベタイトルが頭に浮かび、大丈夫か?と心配になったが、ファンタジーと現実のバランスが絶妙でスラスラ読めた。
何よりリュウが可愛い。昔の中国から脈々と続く復讐の旅路での途切れ途切れの記憶だけ持っている、無垢な女の子。潤の関わり方も愛にあふれていて、うるっときた。特にオキチモズクが枯れてしまって右往左往するシーンが好きだった。
そして結末が…ミスリードに騙されてたので「そっちかー!」と…
でもそうすると何故最初に出会った時に復讐しなかったのか?そもそもなぜ記憶が消えてしまっていたのか?霊が見えるようになったのはなんで?
そこにも深い理由と縁があるのかな?もう少し考察したい感じ。
復讐の旅を終えて愛する人と?穏やかに最期の時を過ごせてよかったね…
あ、あと子どもにヨウガって名付けたかったのは分かるけど、奥さんが急に出てきたのだけがちょっと残念だったかも。 -
Posted by ブクログ
自分を失っていくこと、できることが減っていくことがどれだけ恐ろしいのか考えずにはいられない。
もし、自分がアルツハイマーになってしまったら
読み進めて行くのが苦しい。
確実に病気が脳を痛めつけ、人格すらも変えていってしまう描写は残酷とも言える。
ラストは悲しく思った。
人によっては感じ方は違うのかな。
でも、救いがないわけでもなかった。記憶はなくなっても愛情は残っていたんじゃないかな。そうであって欲しい。
自分が生きているうちにできること、したいこと、残せることはなんだろうそんなふうに考える契機になった。
それでもやはり怖い病気だなー、人ごとじゃない誰でもなりうる。そのことを忘れずにいよう。 -
Posted by ブクログ
フリーターが戦時下へ!
帝国海軍航空隊員が現代へ!
過去を知る者と、未来を知った者。
瓜二つの二人がタイムスリップして入れ替わる物語。
タイムスリップは偶然なのか?必然なのか?
戦争をテーマにした話ではあるけれど本書は重苦しさを感じさせない。
主人公の健太(フリーター)は「根拠なしのポジティブ」思考で楽観主義者なので物事を明るい方向に切り替えてしまうのと、ちょっとおバカキャラなので周りを明るい雰囲気にしてしまう。
能天気過ぎて「それはないだろ!」とイラっと来る場面も。
もう一人の主人公吾一も現代と戦時下のカルチャーショックを受けている様子がコメディタッチで描かれていて、無理して現代の言葉を使うシーンとか使い方が全然違ったりしていて思わず笑ってしまう。
現代と戦時下の出来事とギャップを交互に描写することにより、平和と戦争の悲惨さがより理解しやすく描かれていて、特に渋谷での吾一のこの言葉には心に重くズッシリときた。
自堕落な感じの若者や喧騒な街並みを見て、
「これが自分達が命を捨ててまで守ろうとしている国の50年後の姿なのか!」とかなり悪い方にショックを受けてました。
吾一と同じ年齢の若者達が戦争の事などまるでなかったように忘れてしまっている姿に、今私達の平和は先人の犠牲のもとに今の平和があるのを忘れてはならないという著者のメッセージのようにも思います。
本書の物語のなかだけでなく実際にも行われていたのだろうと思われる理不尽な命令や罰則には心が痛みます。
下司官の憂さ晴らしとしか思えない日常化した暴力の正当化や、日本の降伏後の上官命令による無駄な戦闘と特攻隊への強制的志願。
たくさんの命が失われることに…。
何かあれば非国民、お国のため戦場で命を散らすのは名誉なことだという価値観とNOと言えない同調圧力。
命令する方は安全な場所で物見遊山。
大切な人を守りたいという気持ちを利用して。
誰を守るため、何を守るための戦争なのか?
とても強い不条理さを感じます。
また、NOと言える社会作りには教育、選挙の大切さを感じました。
中盤までは途中少し中弛みしてしまうけど、それ以降は進撃ラッパの合図とともに怒涛の快進撃、物語に没頭してページをめくる手が止まらない。
結末は読み手の想像に委ねる形でモヤモヤが残りますが、いろいろな結末が想像できて面白いから、これもアリかなと思う。
疑問に思ったのは何で結末を委ねる形にしたのか著者の思いが知りたいかな。
戦争の悲惨さを忘れてはいけない
同じ過ちを繰り返さないように
戦争を知ることが平和へのだい一歩 -
Posted by ブクログ
二度目の原発事故が起きた日本の二年後。どん底に落ちた社会。広範囲にわたって、避難が余儀なくされる。原発事故は実はテロ活動によるものだった。日本全体に恐怖が覆い、何もかも沈滞している。自衛隊は、自国防衛隊となって、テロ活動を阻止する。「特定秘密メディア規制法」が成立している。
主人公、及川頼也は、20代後半。幼少時から母親のネグレクトと義父による暴力を受けていた。16歳の時に義父を金属バットで殴り少年院に入った。3年前に二度目の服役を終えたヤクザ。仕事は組の管轄の店の見回り、店長や店の人間に気合を入れる。腕っぷしは強いし、怖いものはない、背中には観音様の彫り物がある。
ある日、ぼったくりバーでいざこざを起こした。イライラしていたのだ。過剰に暴力を振るう。
酒が手放せない。夕方から呑み、顔色も悪い。カシラに呼ばれて、病院に行ってこいと諭される。
行った大学病院の精神科は、アルコール中毒を治すためだった。この大学病院の理事長と組長は、病院の建設用地がらみの繋がりがある。
及川頼也は「嘘は昔からつき慣れている。あんまり嘘ばかりついてきたから、最近は自分でも自分の言葉がどこまで本当か嘘かも見分けがつかないくらい」の状態だった。
病院で、アルコール依存症の治療だと思っていたが、どうも違う方向での診察だった。さまざまな検査をされて、いろいろなVR画面をゴーグルで見せられ、脳を画像に撮られた。それで、入院を勧められる。
病院の待合室にいる及川頼也に懐いたのが藍沢梨帆。本来及川頼也はガキは嫌いだった。「おじちゃん、雨が好き?」とか、「オムライスが好き?」と聞いてくる。梨帆は七歳でウイリアムズ症候群だった。共感力が強すぎて、恐怖心がない。及川頼也と真反対なのだ。
桐島教授が担当。及川頼也は、脳の説明を受ける。前頭前野は、思考や創造性を担う脳の中枢。この領域が正しく活動していない。診断結果として、反社会性パーソナリティ障害だと診断される。他者に対する共感力の欠如、感情的情報の処理不全、自身の過ちから学ぶ能力の欠如、爬虫類的な快楽を抑えられない脳の障害であると言われる。脳の海馬の尻尾の部分(扁桃体)が欠損し、恐怖を感じない。「良心がない」と言われる。また、人に共感することもできない。及川頼也は「良心なんて何の役にも立たねえ。良心がない。だからどうしたっていうんだ。上等だ」とつぶやく。
対立する暴力団の抗争があり、襲ってきた組の二人を処理する。それが火ダネになって、抗争が起こり警察のガサ入れがありそうだとカシラはいい、逃げろと言われて、及川頼也は、病院の8週間の治療プログラムを受ける。そこは、国家プロジェクトがPTSDを改善する薬品を開発する秘密実験病棟だった。及川頼也は、開発された薬品の実験体だった。及川頼也の脳は、変わるのか?その病棟で、脳に欠陥がある患者と接触する及川頼也。次第に、何が問題かがわかってくる。
桐島教授の開発している新薬は、恐怖を恐れないこと、過去の出来事を忘れる薬だった。自衛隊員が、怖くて戦えない状況や戦争での恐れをなくすための特殊な薬だった。
そういう中で、及川頼也は、曽於の企みを見抜き、実験材料にされている梨帆を救うのだった。
それにしても、歯止めの効かないほどの暴力的男の及川頼也が、可愛い少女の存在で、大きく変化していくのが面白い。また、脳の機能について、説明があるので、わかりやすい。脳の見える化をしている。この及川頼也の破天荒な戦いぶりとセリフは、実にいいのだ。本当の悪は誰なのか?