荻原浩のレビュー一覧
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フリーターが戦時下へ!
帝国海軍航空隊員が現代へ!
過去を知る者と、未来を知った者。
瓜二つの二人がタイムスリップして入れ替わる物語。
タイムスリップは偶然なのか?必然なのか?
戦争をテーマにした話ではあるけれど本書は重苦しさを感じさせない。
主人公の健太(フリーター)は「根拠なしのポジティブ」思考で楽観主義者なので物事を明るい方向に切り替えてしまうのと、ちょっとおバカキャラなので周りを明るい雰囲気にしてしまう。
能天気過ぎて「それはないだろ!」とイラっと来る場面も。
もう一人の主人公吾一も現代と戦時下のカルチャーショックを受けている様子がコメディタッチで描かれていて、無理して現代の言葉を使うシーンとか使い方が全然違ったりしていて思わず笑ってしまう。
現代と戦時下の出来事とギャップを交互に描写することにより、平和と戦争の悲惨さがより理解しやすく描かれていて、特に渋谷での吾一のこの言葉には心に重くズッシリときた。
自堕落な感じの若者や喧騒な街並みを見て、
「これが自分達が命を捨ててまで守ろうとしている国の50年後の姿なのか!」とかなり悪い方にショックを受けてました。
吾一と同じ年齢の若者達が戦争の事などまるでなかったように忘れてしまっている姿に、今私達の平和は先人の犠牲のもとに今の平和があるのを忘れてはならないという著者のメッセージのようにも思います。
本書の物語のなかだけでなく実際にも行われていたのだろうと思われる理不尽な命令や罰則には心が痛みます。
下司官の憂さ晴らしとしか思えない日常化した暴力の正当化や、日本の降伏後の上官命令による無駄な戦闘と特攻隊への強制的志願。
たくさんの命が失われることに…。
何かあれば非国民、お国のため戦場で命を散らすのは名誉なことだという価値観とNOと言えない同調圧力。
命令する方は安全な場所で物見遊山。
大切な人を守りたいという気持ちを利用して。
誰を守るため、何を守るための戦争なのか?
とても強い不条理さを感じます。
また、NOと言える社会作りには教育、選挙の大切さを感じました。
中盤までは途中少し中弛みしてしまうけど、それ以降は進撃ラッパの合図とともに怒涛の快進撃、物語に没頭してページをめくる手が止まらない。
結末は読み手の想像に委ねる形でモヤモヤが残りますが、いろいろな結末が想像できて面白いから、これもアリかなと思う。
疑問に思ったのは何で結末を委ねる形にしたのか著者の思いが知りたいかな。
戦争の悲惨さを忘れてはいけない
同じ過ちを繰り返さないように
戦争を知ることが平和へのだい一歩 -
Posted by ブクログ
二度目の原発事故が起きた日本の二年後。どん底に落ちた社会。広範囲にわたって、避難が余儀なくされる。原発事故は実はテロ活動によるものだった。日本全体に恐怖が覆い、何もかも沈滞している。自衛隊は、自国防衛隊となって、テロ活動を阻止する。「特定秘密メディア規制法」が成立している。
主人公、及川頼也は、20代後半。幼少時から母親のネグレクトと義父による暴力を受けていた。16歳の時に義父を金属バットで殴り少年院に入った。3年前に二度目の服役を終えたヤクザ。仕事は組の管轄の店の見回り、店長や店の人間に気合を入れる。腕っぷしは強いし、怖いものはない、背中には観音様の彫り物がある。
ある日、ぼったくりバーでいざこざを起こした。イライラしていたのだ。過剰に暴力を振るう。
酒が手放せない。夕方から呑み、顔色も悪い。カシラに呼ばれて、病院に行ってこいと諭される。
行った大学病院の精神科は、アルコール中毒を治すためだった。この大学病院の理事長と組長は、病院の建設用地がらみの繋がりがある。
及川頼也は「嘘は昔からつき慣れている。あんまり嘘ばかりついてきたから、最近は自分でも自分の言葉がどこまで本当か嘘かも見分けがつかないくらい」の状態だった。
病院で、アルコール依存症の治療だと思っていたが、どうも違う方向での診察だった。さまざまな検査をされて、いろいろなVR画面をゴーグルで見せられ、脳を画像に撮られた。それで、入院を勧められる。
病院の待合室にいる及川頼也に懐いたのが藍沢梨帆。本来及川頼也はガキは嫌いだった。「おじちゃん、雨が好き?」とか、「オムライスが好き?」と聞いてくる。梨帆は七歳でウイリアムズ症候群だった。共感力が強すぎて、恐怖心がない。及川頼也と真反対なのだ。
桐島教授が担当。及川頼也は、脳の説明を受ける。前頭前野は、思考や創造性を担う脳の中枢。この領域が正しく活動していない。診断結果として、反社会性パーソナリティ障害だと診断される。他者に対する共感力の欠如、感情的情報の処理不全、自身の過ちから学ぶ能力の欠如、爬虫類的な快楽を抑えられない脳の障害であると言われる。脳の海馬の尻尾の部分(扁桃体)が欠損し、恐怖を感じない。「良心がない」と言われる。また、人に共感することもできない。及川頼也は「良心なんて何の役にも立たねえ。良心がない。だからどうしたっていうんだ。上等だ」とつぶやく。
対立する暴力団の抗争があり、襲ってきた組の二人を処理する。それが火ダネになって、抗争が起こり警察のガサ入れがありそうだとカシラはいい、逃げろと言われて、及川頼也は、病院の8週間の治療プログラムを受ける。そこは、国家プロジェクトがPTSDを改善する薬品を開発する秘密実験病棟だった。及川頼也は、開発された薬品の実験体だった。及川頼也の脳は、変わるのか?その病棟で、脳に欠陥がある患者と接触する及川頼也。次第に、何が問題かがわかってくる。
桐島教授の開発している新薬は、恐怖を恐れないこと、過去の出来事を忘れる薬だった。自衛隊員が、怖くて戦えない状況や戦争での恐れをなくすための特殊な薬だった。
そういう中で、及川頼也は、曽於の企みを見抜き、実験材料にされている梨帆を救うのだった。
それにしても、歯止めの効かないほどの暴力的男の及川頼也が、可愛い少女の存在で、大きく変化していくのが面白い。また、脳の機能について、説明があるので、わかりやすい。脳の見える化をしている。この及川頼也の破天荒な戦いぶりとセリフは、実にいいのだ。本当の悪は誰なのか? -
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美形のホームレス、怪しい辻占いの三人で
新興宗教を立ち上げる。
明日の食事にも困っていた木島が、
「大地の会」を大きくして行く様には、
こうやって宗教はお金になっていくのか、
とただただ感心しました。
箱庭療法の箱庭が暗示的に何度も登場し、
この物語はどこまで行くんだろう、
大地の会はどこまで広がっていくんだろうと、
そう良い未来が
待っているわけではないと思いながら、
それはいつ来るんだと、
落ち着かない気持ちで読んでました。苦笑
仲間でもないし友達でもない。
人間として繋がっていたわけではない。
みんな病んでて救いを求めてる。
でも目が覚めたら…世界は違う見え方をしているかもしれない。
木島の最後を見届けたくて、
後半も読み進める手が止まらずでした。 -
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自然賛歌系の本だと(他の方のレビューを読んでいたにも関わらず)思い込んでいましたが、近未来SFホラーでした。前半は提示された世界にちょっと入れずに寝落ちを何度もしてしまいましたが、ホラーというか、アクション全開になる後半は一気読み。あとは、ホラーアクションありなのに、主人公が1歳半の母。しかもこの母がなかなかのんびりというか、ふつうに子育てして子供の成長に悩んでという女性で、アクションで突然、育った時の環境で得た能力を発揮し、格好良くなって、そのギャップがおもしろく、格好良かったです。しかも[くるー」っていう恐怖の時も、「あ?あー」「る?る る」とか言いながら常にいる。なんだろう、ホラーなのに和む。
植物の知見がたくさん出てきて、物の見方が反転するような面白さもありました。
AIも結構恐怖ツールでした。むむ、悪用する人がAIをそっちに持っていくようにしたらこれは割とすぐにくる恐怖?
殺害ありホラー系なので中学校以上。 -
Posted by ブクログ
M・ナイト・シャマラン監督の『ハプニング』を思い出した。
この映画をもっとより詳しく、わかりやすくした感じ。
映画はグロさやその演出で怖かったけれど、この作品は植物の脅威がしっかりと描かれていたので心の底からゾワゾワとした恐怖を感じた。
それに加えてA I(人工知能)の怖さも描いてくるとは…
作者の荻原さんは、今を生きる人間たちに何か警鐘を鳴らしたいのだろうか、、?
主人公の行動に少しモヤっとする所があるけれど、読みやすいのでぜひたくさんの人に読んでこの恐怖を味わって欲しい。
きっと、この作品を読んだ後から今までのどかに感じていた木々の揺れる音や葉っぱのざわめきが恐ろしく感じてくると思います…
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Posted by ブクログ
荻原浩さん。お名前は知りつつ作品には今まで触れてこなかったのですが、漫画も描かれている(!)と知りエッセイを探しました。
挿絵もご本人だろうと思ったからですが、こんなに面白い方だったとは。
初のエッセイ本。
旅の話、日常、どれも楽しいのですが、趣味の家庭菜園についての話はノリノリに思えました。
悪く言えば…ふざけている…?
外出先でなくて良かった。何度か吹き出してしまったから。あとがきまで面白かったです。
ド素人から見れば、家庭菜園は畑のレベル。
イラスト、漫画も描ける小説家、元は広告会社のコピーライターという凄い人でした。
挿絵は思った以上に可愛かったです。
読みたいと思う作家さんが、また増えてしまった。