長沼毅のレビュー一覧
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本書は生物学の概説書というわけではないと思うが、ブルーバックスの『アメリカ版大学生物学の教科書』が思いっきり積読状態になっている自分としては、生物学を学んでいくための一つのアウトラインになってくれそうで読んでよかった。面白く、読みやすく、学びになった。
著者独自の表現なのか、生物学界でよく使われている表現なのかわからないけど(おそらく前者だろう)、「体内に海を抱える」(p.123- )という表現が詩的で良いなと思った。つまり、今まで海にいた生物が進化の過程で陸に上がるにあたり、皮膚を丈夫にして体内に水分を保持しやすくしたり、繁殖の際に胎児が浮かぶ羊水というシステムを準備したり、といったことを「 -
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9人の最先端な科学者が、それぞれの専門領域から地球外生命あるやなしやを論じてくれる一冊。
「SFの世界でのお話に過ぎないと思われがちだった地球外生命は、いまや科学の最先端にある重要なテーマとなっています。」
光合成の成り立ちを延々と書いて地球外生命の話はちょっとだったり、
アミノ酸が非人為的にどうやって合成され得るかを延々と書いてみたり、
地球の極限環境の生命についてだったり、
色んな観点で、いないと思うよとか、いやいるよとか話を聞かせてくれる。
一見、地球外生命の話としては回りくどいようにも思えるけど、その実すっごく直接的に生命発生についての話になっていて、つまりすっごく面白い。
科 -
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生物学者や天文学者が集まったシンポジウムを土台にしたアンソロジー。「9の論点」とあるが、論点がはっきり9つあるんじゃなくて9人集まったから「9の論点」にしたみたい。
どちらかといえば物理学者に地球外生命肯定派が多くて、生物学者に否定派が多いらしい。しかし系外惑星が次々と発見されたり、太陽系内でも生命が存在しうる環境が見つかったりする中で、徐々に肯定的な見方が増えてきて、学問として成立するようになった。でも、まだ知的生命の存在までは簡単には考えられない。
フェルミのパラドックス:広大な宇宙には知的生命が他にもいそうなのに、誰も人類にコンタクトしてきていないのは何故か?
電波で何光年もの距離を -
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個体が生まれた後で獲得した形質は子孫には遺伝しない。すなわち個体が努力して首が長くなっても、それによって遺伝子の情報は変わらない。故にキリンの首が長いのは進化論の考え方では突然変異によるものとされる。長い首を持ってしまったキリンの先祖は実は苦労している。下草や水を飲むのも大変。生き延びるという意味では極めて不利な状況だったに違いない。少なくとも生きやすくなるという目的をもって進化したのではない。皆と同じことをしていたのでは生存競争には到底勝てない状況にあって、生き残るためには発想の転換が必要であった。下草から高木の葉を食べるというライフスタイルに変えた。自分のカタチに合った生き方を選択したわけ
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普段はノウハウとか法律の本しか読まないため、敢えて全く仕事とは関係のないジャンルの本にチャレンジしてみた。
なお、きっかけは日経新聞の日曜版に書かれてあった書評から。
恥ずかしながら生命とか生物といった分野は大学受験の科目でしか勉強して以降は、本など一切読んだことがなかったが、過酷な環境でも死なない生物の紹介など、生物学の知識がほとんどなくても面白く読み進めることができた。
一番面白いと思ったのは進化に関する記述の「キリンは高い木の葉を食べるために首が長くなった」わけでなあいという部分だ。生物学の間では常識なのだろうが、てっきり生存競争の過程でそういう体型に変化していったとばかり思っていたので -
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好熱細菌は、コドンの冗長性をうまく使っているという話があり、興味深く感じた。DNAでは4種(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)の塩基が3つひと組でアミノ酸をコードしている。アミノ酸は20種類だから、4種×3bit=64種の可能性を考えると、コーディングには冗長性がある。たとえばCGCとAGAはそれぞれアルギニンを指すコドンであるが、G-C結合は水素結合を3つ持ち、化学的安定性が高い。そのため、超好熱細菌などにおいては、この冗長性が重要になってくる。また、放射線に対する強い耐性を持つ微生物が、4セットのゲノムを持ち、余剰分をエラーコレクションに使っているという話も興味深かった。
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いずれにしても人類はもう、すべてを自然に任せることはできなくなっていると考えるべきです。ならばいっそのこと、その力を人類全体の発展に有効な方向に使うことを考えたほうがよいのではないでしょうか。
ホモ・パックス(平和なヒト)
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なぜ生物系・物理系・複雑系の人たちはよく「生命とは何か」を考え続けるかということをずっと疑問に思っていた。著者は「自分とは何か」という疑問とのつながりの中からこと疑問が生まれたようだ。
結局のところ線引き問題に還元されるのか?人類の有効な発展とは何か?極端な平和が争いを生むのではないか?ちょっと納得がいかない。途中から自分の興味範囲のアポリアと分化して、違う方向に