澤田瞳子のレビュー一覧

  • 吼えろ道真 大宰府の詩

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      実に面白かった。後半、物語にのめりこんで、朝の通勤、一駅乗り過ごしてしまった。(笑)
     延喜の年号改元の詔の中で、自らのことを謀反人と表現され、そのことに猛り狂った道真が、唐物を、目利きしながら、次第に静かな目に世の中を見るようになる。それと併せて、中央から来た官人が、大宰府の政庁で唐物を密かにとりえて、京に送っていた犯人を捕縛しにやってくる。
     そのことに対して、小野葛根などの大宰府政庁の官人たちが大宰府を守ろうとする物語と言えばいいのかな。
     最後に、道真が、人が生きようとすると必ずぶつかり合う、何処かで折り合いをつけていかないけないと語り場面はなんだか心にしみる。
     考えたら、道真公

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    2024年01月11日
  • 月人壮士

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     聖武天皇の死後、その遺詔を探そうと道鏡と中臣継麻呂が各関係者を回り、首という人物の輪郭を明らかにしていく。
     漠然と聖武天皇には好意を抱いていた。東大寺や盧舎那仏を造ったイメージだろうか。澤田氏の『与楽の飯』からいかに現場が苦労を重ねていたかを知ってもなお悪い感情は生まれなかった。本作の各人物の証言はいずれも事実だけをとれば「愚君」と思える内容。ただそれでも首の「孤独」への同情と憐れみが感じられ、そこには澤田氏の思い入れを深く感じられた。
     藤原氏の血を受け継いだ初めての混血の天皇。それゆえに全き天皇になろうと苦心した孤独な天皇。一般的には認識されていない聖武天皇の姿に心が動かされた。今わの

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    2024年01月07日
  • 満つる月の如し 仏師・定朝

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    時は平安中期、藤原道長全盛の時代の話。主人公は仏師定朝と内供部の僧侶隆範。彼ら2人の視線を通じて平安時代の情勢、仏教感、貴族の権謀術数、市井の暮らしぶりなどが描かれています。時は末法の世が近く、平安京の治安は最悪と言っていい状況。その中での仏教の役割とはどいうものだったのでしょう。仏教があるからこそ救われる心と、所詮宗教では病気を治癒できない冷酷な事実と、仏師や僧侶という登場人物を通じて考えさせられるものがあります。貴族の優雅な暮らしの影で、多くの市民が野垂れ死ぬ世の中。そこに一筋の光を届けるのは、仏教や仏像なのでしょうか。それとも仏教を信じる人の心にあるのでしょうか。

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    2023年12月31日
  • 火定

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    描写がグロテスクで、読み進めるのがきついと感じるほど。ただ、コロナ後の今なら、これは少しも大袈裟ではないのだと、残念ながら思えてしまう。
    病気も悲惨だが、人の世界そのものが醜悪で、それでもそこで生きていく、生きていかなければならない、その姿が、きれいごとではなく描かれていた。この作品の舞台は奈良時代だが、いつの時代も人類はこうやって生きてきて、そして今もこれからも、どうにかこうにか生きのびていくのか、いけるのか、時代を超えた重い内容で、読み終わってもきつさが残った。最後に描かれた登場人物の強さは、救いにつながるのだろうか。

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    2023年12月06日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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     北九州旅行に備えて読んでみた本。
     菅原道真のことについて、右大臣まで昇った、藤原氏の他市排斥運動の流れの中で、大宰府に左遷され、その地で死去。後に怨霊となり、天神さんとして祀られるというぐらいしか知らなかったので、参考にと読んでみた。
     作者については、これまでも「火定」「龍華記」など何冊か読んでいて、きちんと史料を踏まえて書かれている印象を持っていて、今回も同様。 
     菅原道真も大宰府に流されたものの、単に憂憤だけで終わることなく、都に対して一矢報いようとして活動したという設定については、暗い話になりがちなところを救いのある物語にしていてよかったと思う。
     続編が出ているので、機会を見つ

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    2023年11月25日
  • 名残の花(新潮文庫)

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    「妖怪」と恐れられた元南町奉行の鳥居耀蔵。
    失脚し、23年もの幽閉の後、目にしたのは
    明治なり「東京」とかわった街の姿だった・・・

    老武士の憤懣
    能役者たちの矜持

    それでも生きていかなければならない人々を描いた良作

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    2023年11月09日
  • 火定

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    面白くあっという間に読み終わりました。登場人物は人間味に溢れ、時に道に迷いながら感染症と戦う。最後まで飽きずに読めました。

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    2023年11月02日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    「美しいもの」の役目とは。
    置かれた場所で生き続ける。不条理でしんどくても。汚泥を啜って地を這い回ってでも。
    夏の雷雨は轟いて、その後晴れる。
    天満様にお参りしたくなった。行きたいところが増えるなあ。

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    2023年10月31日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    最初の一章を読むのには時間をかけた。
    一度ルビが振られた言葉は基本、その後漢字の読み方を覚えねばならぬのだ(そりゃそうだ普通だ)が、人名・平安時代の官職・当時の風俗や唐物、あとは単純に話し言葉であまり使わない漢字(「歔欷」など)に、あまりちゃんと時代ものを読んでこなかった私などは結構苦労したのだ。
    が、2章目になってからはスイスイ読める。……面白かった。
    道真自身は語り手ではなく、そのことが物語のレベルをぐんと押し上げて、現代性も帯びるストーリーになっている。怠け者だがドライな視点を保てる保積、能力はあるが「色事」の多い(と謗られてしまいがちな)恬子が道真の荒んだ心をどう動かすか、また道真から

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    2023年10月30日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    (2023/10/19 1.5 h)

    能の曲目8 つを下敷きにした短編集
    話のすべてが毒の効いた繋がりの物語

    能楽の知識がなくても楽しめる上に
    基になった作品にも関心のもてる良作

    「鮎」(国栖)
    「照日の鏡」(葵上)
    の2 作が特に好き

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    2023年10月19日
  • 駆け入りの寺

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    人里離れた尼寺を舞台に高貴な方々の日常とそこに関わる市井の人々の人間模様を描いた作品。書名の「駆け入りの寺」から受けた印象とは少々異なる内容でしたが、それぞれの物語にそれぞれの「駆け入り」がありました。
    過去の事情から、自分を捨て他人ばかりおもんばかる老尼公と、恩人を捨て置いたという自責の念にさいなまれる青侍の二人の主人公。尼寺へ駆け入るが如く持ち込まれる問題に向き合う二人の主人公を通じて"過ちは真正面から向き合ってこそ新たな道が開ける"と言ったメッセージを受けた気がします。

    尼公が発する御所ことばと周囲が発する市井の言葉が相まって、舞台となる尼寺の雅でありながらも人間臭

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    2023年10月14日
  • 与楽の飯~東大寺造仏所炊屋私記~

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    奈良時代、大仏造立を舞台とした話。
    古代と言って良いのか、とにかく言葉(漢字)が中々馴染めずに はじめは苦労して読み進めた。
    しかし宮麻呂の作る料理に食欲が刺激される。勝手な想像だけど現代に比べても、かなり質素、素朴なものであろうと思われるのだけど、思わずかき込みたくなる。田舎料理を求めてしまう。

    この時代についてあまり知らず、当時は強制労働的に粗末な扱いで酷使されていたのだと思っていたが、寝食は不都合なく、食は皆の楽しみ憩いとなっていたので、明るい気持ちで読めた。

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    2023年07月09日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    菅原道真が太宰府に左遷されたあとの物語。
    家柄に合わぬ出世(右大臣)をした道真は、貴族からの反発され左遷されるに至った。京への未練と恨みで塞ぎ込んでいた道真のもとに来たのは、「うたたね殿」こと保積と、美貌の歌人小野括子。
    道真の人生って、すごくドラマチックだったんだな。
    私は歴史ドラマとか全然見ないんだけど、もし道真が主人公のドラマや映画があったら見てみたい!どうやらまだ大河ドラマにもなっていない模様。こんなに有名人なのに、映像化しにくい人なのかなぁ。

    物語序盤、文句ばかり言っている道真にちょっとイライラしたけど、括子が道真の能力(美術や文献への知識が豊富で目利きができる)に気付いて、唐品を

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    2023年06月22日
  • 駆け入りの寺

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    いつもながら澤田瞳子さんの作品は一筋縄では行かない。最初は、ほんわかとした人情物かと思って読んでいたら、なかなかどうして、人間の業の様なものが浮き出て来て、それでいて、最後は清々しい気持ちになる。やっぱり凄い。

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    2023年06月19日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    天神様 学問の神様 祟り神!
    道真さまの太宰府でのくらしが書かれています
    太宰府の問題の解決方法は頭のいい人は 考えてることが違うなぁ~とおもいました そして、そこそこたのしそうに暮らしている様子は、イメージが違って面白かったです。

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    2023年06月15日
  • 若冲

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    母親のふじ子さんの各種シリーズで馴染みの京都が舞台。
    内容は直木賞受賞の「星落ちて・」と同様に暗く、10年ぐらいの間隔の進め方。ただ対象が若冲ということもあり、先日も美術館に見に行くぐらい関心があるので、興味深く読ませて貰った。
    あの作品も、この作品も亡き妻に対する悔恨と恨みに想う義弟への対抗で描いたことに深い哀しみを見た。
    ということだったが、巻末の上田秀人さんの解説によれば、結婚したという事実は確認されていない。作者の想像で書けるのが歴史小説との事。感動は作者の力量という事なのだが、解説を読んだことが良かったのか悪かったのか?

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    2023年06月04日
  • 火定

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    現代の医療は昔と比べて素晴らしく進歩しているが、感染症にたいする恐怖は今も昔も同じ。目に見えない敵に為す術もない

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    2023年05月18日
  • 吼えろ道真 大宰府の詩

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    道真シリーズ第二弾。一作目よりも読みやすかったかも。
    心のひだの奥があばかれ、さらけ出された感じ。

    小野の息子が書道に傾倒して……もしやあの人?!っていう展開も良かった。

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    2023年03月29日
  • 吼えろ道真 大宰府の詩

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    流謫の身である菅原道真の”その後”を描く、第二弾。
    この巻では太宰少弐である小野葛根の眼から、献上されるべき唐物のすり替え事件の顛末が描かれる。

    序盤で丁寧に状況や人間関係を描いていくのは、澤田さんのいつものやりかた。
    読者にとってはありがたい一方、人によっては、もうちょっとテンポよく!と思う人もいるかも。
    でも、本作は物語上必要な内容がしっかり描かれている。
    必要があってそれだけの紙数が費やされるのだということが、読者にもよくわかる。
    しかも最後も駆け込みで終わっていくのではなく(他の作品ではその気味があるものも、残念ながらあるが)、しっかり満足感が味わえ、なおかつ少ししっとりした終わり方

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    2023年03月19日
  • 風雲 戦国アンソロジー

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    それぞれの作家特有の語り口で、戦国時代の様々な時期や場所で生きてきた人物の姿が描かれており、とても読み応えがあった。

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    2023年03月14日