澤田瞳子のレビュー一覧
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京都ではお菓子の製造・販売業は、「お餅屋」「お饅屋」「お菓子屋」の三つ。関東でいうところの「団子屋」、フーテンの寅さんのおじさんの家・くるまやさんのようなお店は、こちらでは「お餅屋」に当たる。正しい京菓子屋さんは虎屋、川端道喜。一方各社寺の門前で参拝客相手に菓子を売る店 「お餅屋」「お饅屋」の走りとなる店 上御霊神社の唐板、上賀茂神社の焼餅に下鴨神社のみたらし団子、北野天満宮の長五郎餅と粟餅、伏見稲荷の味噌煎餅、黒谷金戒光明寺門前の八つ橋。
街道筋の餅屋は双葉、中村軒など京都の周辺部の見られる。
メモ 宮内庁御用邸の京都産牛乳 松原牛乳
「比良八荒」3月28日 京都は寒い
毎年3月26日、比良連峰の延宝寺で法華経八巻の講義・討論が行われる。八講が荒れるに転ずる -
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朝廷での政争に敗れ、太宰府に流された菅原道真を描く、第2弾。
第1弾からだいぶ間が空いているので、この本を読むに当たって前作を再読しました。
そうしたら、最初に読んだ時よりもずっと面白かった。ありがとう、第2弾!
この第2弾では、大宰大弐・小野葛絃(おのの くずお)の甥であり、その仕事の補佐に当たる大宰少弐・小野葛根(おのの くずね)の目を通して描かれる。
葛根は早くに親を亡くし、自分と妹を親代わりになって育て、後見にもなってくれた葛絃を父とも慕い、心から敬愛している。
葛絃が仕事をしやすいように気を配り、葛絃の立場を守るのが自分の使命と思っているが、顔も四角四面なら頭の中も四角四面、真面目すぎるが故の猪突猛進というか・・・
とにかくやりすぎてしまった。
・・・いや、良い子なんですよ!
人や、何かを恨(うら)んで恨んで、苦しくて仕方がない時、どう生きるか。どうやって報復するか。
結局、己の心を救えるのは、己の心の持ちようだと言う道真。
恨みの心を宥めるには、まず恨む相手に対しての執着や期待を捨てることだろう。
大宰府への左遷を恨んで京都の貴族に祟ったと言われた道真だが、この道真なら、もうそんなことはしないだろうと思われる。
大宰府に下ることで、京にいては見られないものを見て、得られない体験をした。
文房四宝に詳しいという己の特技を生かすことも知った。
流謫地にあっても己の才を生かし、人と交わり、人間らしく、心の赴くままに生きる道真。
雷神とも恐れられた道真の恨みを、この小説を書くことによって作者が浄化したような気さえする。
後の小野道風・阿紀と、道真の娘・紅姫もかわいい。 -
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平安時代末期、平家が栄華を極める中、平重衡による奈良の寺社勢力に対する南都焼討。
藤原家、平家、源家。
滅ぼした者が滅ぼされ、そしてその繰り返し。
栄華を極めて他者を滅ぼしても、いつか滅ぼされるという憎しみや恨みの連鎖が辛いです。
生きること、正しいことを説く仏教の世界でこんな乱暴で残虐なことがある時代。
興福寺や東大寺の静かな佇まいを思い出しながら、そこに憎しみや殺し合いがあったことに驚きます。
「怨みごころは怨みを捨てることによってのみ消ゆる」
どんなに時がたっても、今の世界でも同じように憎しみによる戦争がなくならないこともとても悲しくつらく思います。 -
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実に面白かった。後半、物語にのめりこんで、朝の通勤、一駅乗り過ごしてしまった。(笑)
延喜の年号改元の詔の中で、自らのことを謀反人と表現され、そのことに猛り狂った道真が、唐物を、目利きしながら、次第に静かな目に世の中を見るようになる。それと併せて、中央から来た官人が、大宰府の政庁で唐物を密かにとりえて、京に送っていた犯人を捕縛しにやってくる。
そのことに対して、小野葛根などの大宰府政庁の官人たちが大宰府を守ろうとする物語と言えばいいのかな。
最後に、道真が、人が生きようとすると必ずぶつかり合う、何処かで折り合いをつけていかないけないと語り場面はなんだか心にしみる。
考えたら、道真公は、2年程しか大宰府にはいない。残された時間はわずかなのだなあ。 -
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聖武天皇の死後、その遺詔を探そうと道鏡と中臣継麻呂が各関係者を回り、首という人物の輪郭を明らかにしていく。
漠然と聖武天皇には好意を抱いていた。東大寺や盧舎那仏を造ったイメージだろうか。澤田氏の『与楽の飯』からいかに現場が苦労を重ねていたかを知ってもなお悪い感情は生まれなかった。本作の各人物の証言はいずれも事実だけをとれば「愚君」と思える内容。ただそれでも首の「孤独」への同情と憐れみが感じられ、そこには澤田氏の思い入れを深く感じられた。
藤原氏の血を受け継いだ初めての混血の天皇。それゆえに全き天皇になろうと苦心した孤独な天皇。一般的には認識されていない聖武天皇の姿に心が動かされた。今わの際に娘への愛情を想起する(これこそが彼の遺詔)演出は非常に心憎い。彼自身は娘への愛情はなかったと否定しているが、自身の苦悩を娘へ伝えないという信念に父の深い愛情を感じた。その選択が結果として恵美押勝の乱や道鏡事件を生んだのだとしても、政の正解と親子の正解は時に矛盾すると思う。孝謙天皇(阿倍)は悪いイメージが染みついているが本作を読んで彼女サイドの物語も読んでみたいと思った。
全体を通して各人物の評価を読者に委ねている形式だと感じた。あからさまに良い/悪い人物はなく、だれもが人間らしく欲望と情で動いている。塩焼王や光明子がまさにそうで、小さい人物に見えるがそこに良さと彼/彼女の信念を感じられてよい。
螺旋プロジェクト作品は本作のみだが、単体として非常に良い作品だった。 -
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時は平安中期、藤原道長全盛の時代の話。主人公は仏師定朝と内供部の僧侶隆範。彼ら2人の視線を通じて平安時代の情勢、仏教感、貴族の権謀術数、市井の暮らしぶりなどが描かれています。時は末法の世が近く、平安京の治安は最悪と言っていい状況。その中での仏教の役割とはどいうものだったのでしょう。仏教があるからこそ救われる心と、所詮宗教では病気を治癒できない冷酷な事実と、仏師や僧侶という登場人物を通じて考えさせられるものがあります。貴族の優雅な暮らしの影で、多くの市民が野垂れ死ぬ世の中。そこに一筋の光を届けるのは、仏教や仏像なのでしょうか。それとも仏教を信じる人の心にあるのでしょうか。
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北九州旅行に備えて読んでみた本。
菅原道真のことについて、右大臣まで昇った、藤原氏の他市排斥運動の流れの中で、大宰府に左遷され、その地で死去。後に怨霊となり、天神さんとして祀られるというぐらいしか知らなかったので、参考にと読んでみた。
作者については、これまでも「火定」「龍華記」など何冊か読んでいて、きちんと史料を踏まえて書かれている印象を持っていて、今回も同様。
菅原道真も大宰府に流されたものの、単に憂憤だけで終わることなく、都に対して一矢報いようとして活動したという設定については、暗い話になりがちなところを救いのある物語にしていてよかったと思う。
続編が出ているので、機会を見つけて読んでみたい。 -
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最初の一章を読むのには時間をかけた。
一度ルビが振られた言葉は基本、その後漢字の読み方を覚えねばならぬのだ(そりゃそうだ普通だ)が、人名・平安時代の官職・当時の風俗や唐物、あとは単純に話し言葉であまり使わない漢字(「歔欷」など)に、あまりちゃんと時代ものを読んでこなかった私などは結構苦労したのだ。
が、2章目になってからはスイスイ読める。……面白かった。
道真自身は語り手ではなく、そのことが物語のレベルをぐんと押し上げて、現代性も帯びるストーリーになっている。怠け者だがドライな視点を保てる保積、能力はあるが「色事」の多い(と謗られてしまいがちな)恬子が道真の荒んだ心をどう動かすか、また道真からどのような影響を受けるか。コミュニケーションは相互作用なのだよなぁ。
終盤では、恬子、あんたそういうこと!となること請け合い。