澤田瞳子のレビュー一覧

  • 火定

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    「若冲」がいまいちだったので避けてた作家さんだったのだけど、コレは面白かった。じっとり薄暗い感じが題材に合ってたのかな。

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    2025年07月24日
  • 月人壮士

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    螺旋プロジェクト2冊目!

    物としては歴史小説のような内容。
    仏教に依拠し天平文化を作ったとされる聖武天皇。
    天皇として、時代の流れを見ると様々な意見や考えがでで、文化的には大きな存在である。

    そんな聖武天皇の生涯を遺言を追うという形でどんな人物であったのかを浮き彫りとしていく話。

    物単品でみると歴史の知識がないと所々関係性が難しい場面だが、螺旋プロジェクトの海と山のお陰で非常に分かりやすく、読みやすい内容になっている。
    歴史好きな自分としては面白い本だった。

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    2025年07月12日
  • しらゆきの果て

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    仏画、絵巻などをメインにした、5篇からなる歴史短編集。鎌倉、戦国、江戸、幕末と時代の移ろいの中でも変わらない芸術を突き詰める其々の主人公の哀しさが切なかった。表題作のしらゆきの果ても良かったが、9歳で松永久秀の人質となった苗を描いた紅牡丹が好きだった。

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    2025年05月20日
  • 京都の歩き方―歴史小説家50の視点―(新潮選書)

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    <内容>
    第1章  秋
    第2章  冬
    第3章  春
    第4章  夏

    <内容>
    京都生まれ、京都在住の作家沢田瞳子のエッセイ。週刊新潮に1年間連載したものを再構成、加筆したもの。ただしあくまでもエッセイなので、すべてが京都の話ではない。歴史作家だけに、京都界隈のことはとても詳しいが、さほど掘り込まれたものではない。その辺を差し引いて読まねばならない。

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    2025年05月13日
  • 火定

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     何ものかわからない流行り病とたたかう人々の様は、コロナ禍が想起された。
    混乱の犠牲になった密翳や、
    裳瘡に罹った多伎児や悲田院の太魚、黒丑、白丑ら子供達のシーンは哀しかった。

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    2025年04月26日
  • 赫夜

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    記録をしないことはなかったことになる

    あの時何が起こってどうしたか
    何度も繰り返す災害に今より非力だった人々
    希望を持ってはまた災害が起き
    馴染んだ地を捨てる覚悟は今も同じ

    安寧な都で何事も知らず終える生涯と
    自然に翻弄されながら見聞を得る生涯
    どちらかを選ぶことのできる
    今という時代に感謝すべきだろう

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    2025年04月14日
  • 孤城 春たり

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    幕末に学者として備中松山藩に仕え、藩政改革を断行して借金だらけだった藩財政を建て直した山田方谷を主人公にした作品と知り、読む事にしました。
    先日亡くなった童門冬二さんの『小説・上杉鷹山』のイメージで読み始めたのですがかなり違います。各章にはそれぞれ別の主人公が存在し、どちらかと言えば方谷は主要脇役として通しで出てきている感じです。おそらく大きな反発の中で行われたであろう財政立て直しについてもサラリと触れるレベルです。どちらかと言えば人間物語。
    備中松山藩が不戦を貫いた戊辰戦争を描く最終章。徳川慶喜の老中である藩主と方谷に加え、家老、組頭、そして方谷の弟子たちなど各章の主人公たちが、それぞれの思

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    2025年04月09日
  • しらゆきの果て

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    絵師を主人公にした作品が二つ、絵巻物を作る話、絵の破片を見て少女が生きる気力を取り戻す話(←これはこじつけすぎ?)がある。
    一番好きなのは「紅牡丹」かな。苗に生きていてほしい両親と侍女の執念が感じられる。

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    2025年03月16日
  • 月ぞ流るる

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    ネタバレ

    平安時代のミステリー風歴史小説。

    藤原原子の殺害犯人を暴くミステリーと思いまいしたが、真相解明後の登場人物たちの悟りにページを割いていることから、「栄花物語」執筆事始、三条天皇譲位の歴史物語として読み解くことが正しいような気がしました。
    特にミステリー部の主人公的頼賢が実在の人物であったのは感服しました。
    また事件の真相も主題の一つ三条天皇譲位にうまくつながっているお思いました。
    大河ドラマ「光る君へ」を見たばかりなので、登場人物の脳内ビジュアルに影響しました。

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    2025年03月09日
  • 夢も定かに

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    ネタバレ

    ☆4のつもりだったが、最後まで読んで☆3にした。

    元々古代の女性官僚について卒論執筆にあたって細かく調べたこともあり、するする読めるし理解も早かった。笠女(笠目)だけその人生の全貌を知っていたため、誰かの妻となったり女を使って出世したりしない部分をもって肩入れして読んでいたが、結局笠女のターンは少なく、その後の出世っぷりも描かれなかったのは残念。

    とはいえ若子や春世までしっかり実在していたとは。彼女たちの子供についても調べると面白かった。また『万葉集』の授業をとっていたため、小鹿の登場もなんだか嬉しかった。

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    2025年02月11日
  • 孤城 春たり

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    備中高松城に行き感激した事を覚えてる。で、この小説を勘違いしてたが、幕末の松山藩の重鎮の物語だった。山田方谷と言う儒学者が主人公で、弱小の藩を建て直す才力や人柄が感銘受けた。

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    2025年01月28日
  • 火定

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    時は天平年間。誰であろうと区別なく人を喰らい尽くす感染症が海を渡ってやって来る。次々と命果てる数多の患者を前に無力感に苛まれながらも自らの使命と治療に当たる医療従事者たち。恐怖と絶望感に翻弄され平常心を失う民。無論貴族も例外ではない。秩序が崩壊する京の陰惨な光景を直截的な表現で淡々と描かれた作品に全身が粟立つような臨場感を体験した。理性と感情のガチンコが本書の面白さのひとつと思う。語彙力を試されるような文体も魅力。

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    2025年01月28日
  • 恋ふらむ鳥は

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    ネタバレ

    叔母に勧められて。長かった…笑
    新聞連載の小説ということで、わかりやすさや面白さが重要なのはわかる一方で、通しで読んでいるとあまりにも(?)額田王が全ての中心で、"都合よく"話が進んでいくので、うまくいえないのだけれど抵抗感のようなものがずっと心中にあって、没入感を得られず残念な感じでした笑

    ただ何も詳細がわかっていない額田王の人生や、詠まれた歌の背景や想いをこのような一つのストーリーにまとめ上げられているのは純粋にすごいなと思いました。

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    2024年12月08日
  • 灯台を読む

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    日本に約3000基ある灯台の役割や多様な価値について知ってもらおうという趣旨で進められている「海と灯台プロジェクト」。主体は一般社団法人・海洋文化創造フォーラムで共催が日本財団と海上保安庁である。そのプロジェクトの一環として企画されたのが、灯台が果たしてきた地域固有の役割や機能、存在価値を物語化して知らしめようという取り組み。本書はそれに基づき19基の灯台を6人の著名な作家が分担して現地取材し、紀行文集として取りまとめたもの。
    灯台の建築技術や歴史、地域との関わりについて様々な観点から語られ、読み進めるうちに少しずつ灯台への関心が高まってくる。
    しかし、門外漢の私には歴史作家や描写力のある作家

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    2024年11月27日
  • 月ぞ流るる

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    主人公は大河ドラマ「光る君へ」にも登場する栄花物語の著者赤染衛門こと朝児(あさこ)。権勢を誇る藤原道長と対立する三条天皇をめぐる、平安京内裏が舞台の物語。権力争いに利用される姫君が健気でもあり、哀れでもある。もう一人の主人公が、比叡山の僧、頼賢(らいけん)。三条天皇の妃の一人が、他の貴族と不倫の末生まれ、早くに親から見捨てられたが、やはり三条天皇の妃のひとり、原子(げんし)に養育され、原子が毒殺(という噂)された後は比叡山に預けられたという生い立ちを持つ頼賢。いくつかの遍歴の後、三条天皇に仕える身となる。天皇が中心、貴族たちが覇者を争うその様を、ありのまま書き記そうと決意する朝児が目にする様々

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    2024年11月06日
  • 赫夜

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    平安遷都した頃のお話。鷹取は大中臣家に使えている三十歳の家人。家人は牛馬同然に売買される奴婢ほどではないが、家の財産として生涯その軛を逃れられない。話は鷹取が家の主の弟が駿河の国司となるのに供なるところから。駿河で富士の爆発やそれに伴う村の様子、馬を飼う里のこと、遊女たち、山賊の生き方、蝦夷や坂上田村麻呂など多彩なメンバーが登場し、鷹取に影響を与えていく。
    起承転結があるような展開ではなく、悠久の富士そのもののどっしりと壮大な話だったので、面白みは薄め。文章や語彙の美しさ、歴史的背景を織り込んだ描写はいつもながらに卓越。
    澤田瞳子好きなら、ゆっくり読み進めるのにオススメです。
    山賊の荒さや遊女

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    2024年11月03日
  • 赫夜

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    長く続く歴史という一本の線。自分が生きるこの日々はごく小さな一点だけれど、それは確かにその線上にあり線を成す一点であること。そのことをしみじみと思う一冊。

    長い時間の中では瞬きするほどの一生だけど、ひとつひとつのその点に生きている熱量を吹き込んでくれる物語の面白さよ。LIFE is beautiful !

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    2024年10月23日
  • 星落ちて、なお

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    江戸末期から明治にかけて活躍した絵師・河鍋暁斎の娘の物語。
    お恥ずかしいことに、私は河鍋暁斎を知らず、架空の人物かと思っていて、読み終わってから検索して知りました。
    物語の描写のとおり、彼の絵は生き生きとして迫力のある作品でした。
    この人の家族はさぞ苦労しただろうなと思うほどに。

    読みながら、絵を描く運命から逃れられず苦しむ娘の生き様が、苦しくて苦しくて。
    芸術って、その人自身の才能なのに、子供だからって跡取りにされたらつらいだろうな。
    関東大震災のところも、東日本や能登の震災を思いつらくなり、読むのがずっと苦しかったです。

    最後に
    「人は喜び、楽しんでいいのだ。生きる苦しみ哀しみと、それ

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    2024年10月15日
  • 若冲

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    表紙にある「若冲」のタイトルとニワトリの絵、有名な画家とその作品という朧げな記憶から本書を手に取りました。
    青物問屋の跡取りが早々に隠居して絵描きに没頭し、描く絵画は奇想天外な発想と細微を極める表現力によって他を圧倒する。芸術家にありがちな気風かと思えば、お家のピンチには絵筆を置いて奔走するユニークな存在で何処までが事実なのかと思います。その若冲さんに対して怨みと怒りを力に変え見事な贋作を描いて執拗に絡む義弟の源蔵。この構図を中心に若冲さんの世界が広がってゆきます。読み進めるにつけ原画を見てみたくなります。恐らく主人公のこだわりが怒涛のごとく押し寄せてくるに違いありません。とても面白い作品でし

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    2024年10月01日
  • 若冲

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    読み進めていくと
    登場人物の動きが目に浮かび、セリフが聞こえてくるような作品でした。
    史実のとおりではないようですが、
    このような生き方から
    若冲の絵がうまれたという物語は、小説としておもしろいと思いました。

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    2024年09月26日