澤田瞳子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
澤田瞳子の冷静で精密な史実に基づく「若冲伝」である。彼女の性格が滲む誠実で真面目な文章によるストーリーは説得力に富むが反面ダイナミックなエンターテイメントとしての面白みに欠けるきらいがあり、大学で歴史の講義を聞いているようだ。
絵に没頭する大店の跡取り若冲と姑お清との間の軋轢に自殺をする妻お三輪との事、その弟弁蔵の贋絵を通した復讐、若冲を側でささえる異母妹お志乃の目を通した絵師若冲の悟りへの生涯。弁蔵(君圭)との対決と和解がこの物語の最高潮の場面である筈が、ここが余り盛り上がらない、正確ではあるが長々とした理屈での解説という感じに堕している。
蕪村の出自と親娘の愛憎(「親子の道にまとわりて -
Posted by ブクログ
ネタバレ若冲の生涯を描いた壮大な歴史小説。
史実で分かること以外はフィクションなんだと思うけど、江戸時代の京都の文化風俗や習慣などを緻密に調査したうえで練られたものだと感じた。
美術作品に心を動かされると、自然とアーティストにも興味が生まれる。
自分自身も若冲ファンになってから、このような濃密で奇抜で狂気的な画家はどのような人物だったのか、いかにしてこのような作品が生まれたのか、どのような生涯を送ったのか・・・等々知りたくなった。
とはいえ300年以上前に生まれた人物、Wikipediaで調べてもほとんど情報がない・・・。となると妄想で埋めていくしかないので、思うがままに想像を巡らせていた。
ちょ -
Posted by ブクログ
大好きな澤田瞳子さんの作品だが本作はいまいち。最近造仏の話を読んでいたので定朝にとても興味を持っていただけに主人公(で良いのか?)の定朝の造形が少し物足りなく感じた。
本作は若き日の定朝とそれを支える内供奉の隆範の交流から始まるも早々に身分を背景に二人の仲は亀裂。そこから中務と敦明親王を巡るドタバタ騒動を経て定朝が本当の仏の姿を見つけるというストーリー。思い返しても「事件」と定朝の成長の繋がりは無理があるように感じる。「本当の仏の姿」を模索し成長していく定朝を正面から描いて欲しかったなという思い。
本作に登場する彰子の存在が非常に気になった。どちらかと言うと悲劇の中宮定子のライバルというイ