【感想・ネタバレ】泣くな道真 大宰府の詩のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年04月14日

 「知恵の神様」或いは「3大怨霊」として言わずと知れた菅公こと菅原道真。怖そうな人物のわりに表紙のイラストがとてもかわいらしく、思わず手にした1冊。
 彼は中流貴族でありながら、自らの才能により文章博士・右大臣にまで昇進したものの、藤原氏の妬みにあい、大宰府に流された。当初、この宿命を恨み続けていた...続きを読む菅公であったが、あるきっかけから、全く無関係であった菅公と恬子(小町)と穂積のトライアングルが動き出し、朝廷を欺き、意趣返しを成功なるか? 
 豪華絢爛なる貴族社会を描きつつも、視点はいつも名もなき民衆の側にある澤田歴史文学。爽快感の残る作品である。

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Posted by ブクログ 2023年01月21日

逸話でしかあまり知らない道真公の太宰府生活、息子の死は非常に悲しいが、本当に終わりの方にある生活だったとしたら楽しいなぁと。

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Posted by ブクログ 2023年01月08日

 太宰府へと貶遷された菅原道真の活躍を描く痛快歴史ロマン。シリーズ1作目。4章および終章からなる。再読。

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 澤田瞳子さんには珍しくコミカルで軽めの作品ですが、その分すべての主要人物が生き生きと描かれていました。

 まずは「うたたね殿」・龍野保積。出世の先が見えた中...続きを読む年地方官僚です。
 このトボけた味の狂言回しが道真の心情を刺激し、生きる意欲を引き出していきます。彼のみが実在の人物ではなさそうですが、あとのキャスティングが見事でした。
 
 主人公の菅原道真からして、真面目で堅い学者肌とは打って変わり喜怒哀楽の激しいガンコじじいに、小野恬子はこれがあの小町かと思うほどおきゃんでサバサバした女性に、それぞれ描かれています。実に思いきったイメージ変更だと思いました。
 なのに、読んでいて少しも不自然さがなくむしろ好もしく感じてしまうほどです。

 他にも大宰大弐の小野葛絃やその甥の葛根も十分過ぎるほどの存在感を放っていました。(名前だけ登場の道風兄弟の活躍も見たかった)

 再読だったのですが、前回読みとれなかった部分に気づけた分、面白さは初読を上回りました。さり気なく雷を絡めたラストの場面もよくできていてニクイほどです。
 まったく澤田氏の豊富な知識と作品構築の緻密さにはほとほと感心するばかりです。

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Posted by ブクログ 2022年03月09日

読み終えて、太宰府での菅原道真その地で親しまれていた姿の想像を膨らます。やはり拝みに行くのは太宰府天満宮だな。「人は置かれた場所で生きねばならない。哀しみに沈み、悲嘆にくれるのもそれはそれで一つの生き方。さりながらただ我が身を嘆き、他人を恨んでも、そこからもたらされるものは何もなかろう」p198
...続きを読む野しずこ(小野小町)に惚れた!

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Posted by ブクログ 2021年09月01日

なんだろう?
この出演者が映像で浮かび動き出す感じの読書感覚。
会話挿入のタイミングが優れている小説なんだろうな。

菅原道真と小野小町。

二人を軸に、色んな物語が描かれていて、なんとも微笑ましく、なんとも楽しげで、妙に人間ポイ。
この人間ポイ、という点がスイスイと読み進ませてくれる。

軽い気持...続きを読むちで読み始めたのに、気が付くと、神様の菅原道真の目線なんて何処にもなく、「頑張れ、道真くん」、と応援したくなってくる。

キャラ立ちしてシリーズ化すら可能な雰囲気たっぷりでした。

一言でいうと、道真くんが好きになった。
そして、良い味付けの小町さんもイイ。笑

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月10日

 ものすごく楽しかったです。

 唐物商で都で培った目で目利きをして、柳公権の書欲しさにちゃっかり菅三道という名前で目利きをすることを承諾してしまう道長。

 おーい! 大宰府についてから食事もろくに食べず、着替えもせず、いじけて毎日恨みつらみを書いていたんじゃないんかい!? と思わず思ってしまった...続きを読む(笑)

 そこから、いきなり保積に十貫(約百万)の銭を用意しろと言ったりして、唐物を買いあさる道真が可笑しい

 そして、ひょんなことから民草の本当の貧しさをしり、大宰府まで連れてきた愛息を失ってしまい、再び引きこもる道真。

 だが、ここでうたた寝殿と呼ばれていた保積が彼のために苦言を呈するのがいいのです。

 そして、横領されていた税の問題に取り掛かる道真達。それが己を左遷させる原因を作ったものに一泡吹かせるものだったのが、最高でした。

 菅原道真が大宰府でどのように生活していたか、わからない部分が多いと思うのですが、私はこの本を読んで、こうだったらいいなと思いながら本を閉じました。

 本当に面白かったです。そして恬子が誰なのか、最後にわかるのがとっても粋だなぁって思ったんですね。

 楽しい時間でした。

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Posted by ブクログ 2021年05月23日

出先で読むには電子書籍が便利と思って購入したけど共感しきりで往きの新幹線で読みきっていまいそう。帰りの新幹線、どおしよお?他の本買わなきゃ、、、また、澤田瞳子先生の本にしよう、っと!

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Posted by ブクログ 2023年11月25日

 北九州旅行に備えて読んでみた本。
 菅原道真のことについて、右大臣まで昇った、藤原氏の他市排斥運動の流れの中で、大宰府に左遷され、その地で死去。後に怨霊となり、天神さんとして祀られるというぐらいしか知らなかったので、参考にと読んでみた。
 作者については、これまでも「火定」「龍華記」など何冊か読ん...続きを読むでいて、きちんと史料を踏まえて書かれている印象を持っていて、今回も同様。 
 菅原道真も大宰府に流されたものの、単に憂憤だけで終わることなく、都に対して一矢報いようとして活動したという設定については、暗い話になりがちなところを救いのある物語にしていてよかったと思う。
 続編が出ているので、機会を見つけて読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2023年10月31日

「美しいもの」の役目とは。
置かれた場所で生き続ける。不条理でしんどくても。汚泥を啜って地を這い回ってでも。
夏の雷雨は轟いて、その後晴れる。
天満様にお参りしたくなった。行きたいところが増えるなあ。

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Posted by ブクログ 2023年10月30日

最初の一章を読むのには時間をかけた。
一度ルビが振られた言葉は基本、その後漢字の読み方を覚えねばならぬのだ(そりゃそうだ普通だ)が、人名・平安時代の官職・当時の風俗や唐物、あとは単純に話し言葉であまり使わない漢字(「歔欷」など)に、あまりちゃんと時代ものを読んでこなかった私などは結構苦労したのだ。
...続きを読むが、2章目になってからはスイスイ読める。……面白かった。
道真自身は語り手ではなく、そのことが物語のレベルをぐんと押し上げて、現代性も帯びるストーリーになっている。怠け者だがドライな視点を保てる保積、能力はあるが「色事」の多い(と謗られてしまいがちな)恬子が道真の荒んだ心をどう動かすか、また道真からどのような影響を受けるか。コミュニケーションは相互作用なのだよなぁ。
終盤では、恬子、あんたそういうこと!となること請け合い。

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Posted by ブクログ 2023年06月22日

菅原道真が太宰府に左遷されたあとの物語。
家柄に合わぬ出世(右大臣)をした道真は、貴族からの反発され左遷されるに至った。京への未練と恨みで塞ぎ込んでいた道真のもとに来たのは、「うたたね殿」こと保積と、美貌の歌人小野括子。
道真の人生って、すごくドラマチックだったんだな。
私は歴史ドラマとか全然見ない...続きを読むんだけど、もし道真が主人公のドラマや映画があったら見てみたい!どうやらまだ大河ドラマにもなっていない模様。こんなに有名人なのに、映像化しにくい人なのかなぁ。

物語序盤、文句ばかり言っている道真にちょっとイライラしたけど、括子が道真の能力(美術や文献への知識が豊富で目利きができる)に気付いて、唐品を扱う店に行くようになってからは話全体が生き生きしてきて面白かったな~。

廃寺を守る僧が、道真と知らずに道真の歌を批判した出来事から、道真はもっと太宰府の中に入っていきたい、この土地の力になりたい、と思ったのではないかしら。

ラスト、京からわざわざ道真の哀れな姿を見に来た藤原氏のために、みんなでドタバタと部屋を地味にして道真を隠そうとしていたのが良かったですね。
道真、太宰府に馴染んだなーって、読んでいて嬉しくなった。

括子はラストは出羽国に行ってしまったけど、まさか彼女があの有名な小野小町だったとは。
古典も歴史も疎くて、はっきり書かれるまで全然気付かなかったよ。小野小町って世界三大美女とされていて「高嶺の花で近づきにくい人」っていうイメージだったんだけど、この本の中では、とても先進的で素敵な女性でした!

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Posted by ブクログ 2023年06月15日

天神様 学問の神様 祟り神!
道真さまの太宰府でのくらしが書かれています
太宰府の問題の解決方法は頭のいい人は 考えてることが違うなぁ~とおもいました そして、そこそこたのしそうに暮らしている様子は、イメージが違って面白かったです。

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Posted by ブクログ 2023年03月03日

伯父と甥の立ち位置が変わる(伯父を守ろうとしていた葛根自身の変化でもある)ところが凄いと思った。ボーッと立っているだけと思われた門衛が、意外な働きをしていたり、「人は見かけによらない」が沢山あった。

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Posted by ブクログ 2022年11月27日

歴史小説のしっかりした史実の中で道真を始め登場人物が生き生きとこんな風であったかもというように動いている.小野小町まで出てきたのにはびっくりしたけれど,自然でこんな女性だったかも.

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年04月11日

菅原道真については、教科書に書いてあるくらいのことしか知らなかったので、こんなに大人げない人だとは!と驚いた。(いや、これフィクションだし)
何しろ身に覚えのない罪で左遷されちゃったので、ひきこもる、人にあたる、物にあたる。
とてつもなく教養のある文人貴族じゃないの?

藤原氏全盛の時に、実力(教養...続きを読む)だけでのし上がってきた道真には、根回しとか、相手を立てるということがなかったのだろう。
真っ向から藤原氏とぶつかってしまい、分不相応な出世をよく思わない多くの貴族たちを敵に回し、冤罪で大宰府に流される。
大宰府への道中にかかる費用も一切本人負担で、一族はことごとく田舎に飛ばされ、孤独と憤懣でどうしようもない気持ちはわかるけど、同行の7歳の娘と4歳の息子がいるんだから、もうちっと大人げを持てよ、と思ってしまう。

が、大陸からの書画骨董がどこよりも早く手に入る博多津で、埋もれた骨とう品を発掘したり贋作を発見したりしているうちに、少しずつ生気を取り戻す。
が、その中で道真は、今まで自分が見ていたものは本当の庶民の姿ではなかったことを知る。

律令制度が形骸化しつつあり、国も地方も財政難。
道端には飢えて死ぬ者が転がり、畑は耕すものもなく立ち枯れ…なんて実情は、都から視察に来るような偉い人には見せられない、隠さねばならないものなのである。
ある程度体裁を整えた地方の窮状を見て、策を施し、それで満足していた己を道真は恥じる。
そして、そんな世の中とは無縁とばかりに雅に現を抜かす朝廷の人々や大社大寺に怒りを覚える。

さて、大宰府の窮状を救うために、横領品の横流しをするのはいけなくて、贋作製作はいいの?
というような疑問を覚えつつ。

私が気に入ったのは、大宰府の大弐(だいに・次巻のようなもの)である小野葛絃(くずお)です。
いつもニコニコ温厚で、できる男風ではないけれど、いうべき嫌味はとことん鋭く、見ないふりして全てをご承知。
好きだなあ、こういう人。うん。

ひとつ不満は、道真があまり子どもと絡まなかったこと。
この当時の父親がどの程度子どもと接するのかわからないけれど、ほぼほぼ子供と触れ合うシーンがない。
だから隈麿のことはショックだったのはわかるけど、私もショックだったけど、でも違和感。

あと、第四章のタイトルで予想はついていたけれど、恬子はやっぱりあの方でしたか。
詳しくない時代の話でしたが、面白かったです。

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Posted by ブクログ 2022年03月26日

歴史小説の醍醐味の一つに、史実では証明されていない同時期の人物の邂逅があげられる。
今回楽しんだのは道真と小野小町のやりとりだった。
現代以上にもののけや闇を恐れた平安人に恐怖を感じさせた菅原道真が、こんな気さくなおじさんだったと知ったらさぞや驚いただろう。
話は面白く読みやすいのでお薦めできる一冊...続きを読むと思う。

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Posted by ブクログ 2021年10月10日

菅原道真というと、天神様。
藤原時平の謀略で、無実の罪で太宰府に流され、失意のうちに亡くなった文人政治家。
そして、その死後、雷神となり、都を脅かした…。
しかし、それ以外、自分は何を知っているのだろう?

本作では、道真が太宰府に流されてからの日々が描かれる。
面白いのは、道真の目線ではなく、彼を...続きを読む迎え入れた太宰府の役人たちの側から描かれることだ。

中心的な視点人物の一人が、うたたね殿と見くびられる官人、龍野穂積。
道真は、太宰府に到着して以来、ずっとひきこもり、すさんだ生活をしている。
体を壊しでもしたら、不当な扱いをしたという誤解を与えかねない。
それを恐れた小弐小野葛絃の命で、道真の身辺に侍る。
やがて、博多津での唐物屋へ連れ出すことに成功するが、そこで道真は眼識を買われ、目利きとして雇われることになる!

葛絃の妹、恬子(しずこ)も関わることになり、物語は起伏が生まれてくる。
やがて、太宰府を揺るがす不正会計事件が発覚し、その解決に道真が乗り出していく。

道真がとにかくいきいきしていて面白い。
「~ぞよ」というキャラ語、初めて使われているのを見た(笑)のはともかく、泣きわめき、時に周囲を困らせ、好きな唐渡りの美術品を買いあさる。
おとなしい人かと思っていたので、こんな道真像は新鮮だ。

それから、やはりこの人らしいのは、官人の生活や、当時の人々の生活の様子を描いているところだろうか。
のたれ死ぬ庶民を看取る僧侶の姿を見て、道真が衝撃を受けるところは、作品中でも最もドラマティックなところ。

その後、道真は都に戻ることなく亡くなるはず。
しかし、本作ではそこまで描かない。
それによって、この作品はとてもさわやかで、力強い読後感を与えている。
道真がその後、政治家として、さらに大きくなった、という、歴史とは異なる別の結末を想像してみたくなる。

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Posted by ブクログ 2021年08月21日

奈良仏教史を専攻する作家が描いた太宰府へ流された後の道真さんの物語。本当にこんな風だったらいいな。有名な女性歌人も登場して、てんこもりで痛快。

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Posted by ブクログ 2021年01月25日

一度目は始め数ページでリタイア。
もう一度と思って再チャレンジしたら
まぁ面白い‼️
道真のイメージががらっと変わった。

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Posted by ブクログ 2020年11月06日

ナツイチのノベルティ欲しさで買った一冊でしたが、本当に面白かったです。
徹底的に史料を読み込まれた裏付けによって書かれた物語は映像化して、もっと多くの人達に知って貰いたい位です。(道真は野村萬斎さんかな。ただ、平安時代はヒットしないか。)
いつの時代にも通じるテーマで、読後感もすっきりでした。
他の...続きを読む作品も読んでみます。

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Posted by ブクログ 2020年10月03日

太宰府に左遷された道真は
毎日毎晩悲嘆に暮れて見る影もなし。
お相手役に任命された保積は
噂の文人に憧れていたものでショックを隠せない。
ところが同じく過日の道真を知っている
歌人の恬子が道真の文具好き心をくすぐって
博多津に連れ出してみたら…。

え〜、こんな道真、嫌っす。
と思いながら読んでいく...続きを読むと、保積や恬子と共に
「泣くな!」と応援したくなっちゃう。
知識欲の強い人間の心をくすぐる方法を
よく知ってるねぇ、恬子…と思ったら
彼女も歴史上の有名人がモデル。
実際は巡りあってないかもしれないけど
こんな”IF”なら大歓迎です。

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Posted by ブクログ 2020年08月19日

フォローしているレビュアーさんのレビューで知った本。
ありがとうございます。

太宰府に左遷された菅原道真を慰めるため、お相手役として派遣された怠け者役人・龍野保積。そこへ才色兼備なお騒がせ女房で歌人の小野恬子(しずこ)が加わり博多津の唐物商へ連れていったことから道真は少しずつ変わっていく。

博多...続きを読むは昔から外国との交易が盛んで栄えた場所。しかし京の都と比べれば生活も文化も政治も何もかもが違うし、やはり都落ちという言葉通り、とんでもない田舎に来てしまったもうお仕舞いだという気分になるのだろう。
保積の道真との初対面シーンは正にそれを象徴している。
太宰府庁長官から道真を慰めるために預かった貴重な書物にも墨の入った硯をぶつけ滅茶苦茶に、保積の服も滅茶苦茶にされる。
嘆き悲しむというよりは、人間不信になって怒り狂う猛獣のようだ。

しかし恬子をきっかけに何故か唐物屋の目利きとして働くことになったことから道真に変化が起こり始める。
実は恬子も都を嫌になって自ら太宰府へと流れてきた似たような状況。そして保積は出世が望めないと分かってから一気に仕事へのやる気をなくした。
そんな三人が出会って道真にやっと生気が戻って来たのだが、何と道真の幼い息子が事故死するという悲しい出来事が起こる。
どうなる、道真。

左遷されたことを嘆き悲しみ、失意のまま亡くなって怨霊になるほど怨み辛みを募らせたという菅原道真公。
しかしちょっとは楽しい日々もあったのでは?という想像は面白い。
その地の日々、その時の日々をどう過ごすかはその人の気持ちの持ち方次第。
中盤までの道真はその生き甲斐を書画の目利きに求め様々な逸品を探すことを楽しみにしていたのだが、逸品の価値が分かる者が蔵の奥深くに仕舞いこむことが良いこととは限らないことを知り、明日生きて行く糧もなく人間扱いもされない最下層の人々の苦しさも知る。
終盤はそんな道真に保積を通じて太宰府庁の窮地を救うミッションが課せられる。

軽すぎず重すぎず、ちょっと痛快さもあって楽しめた。
道真とあの人が実際出会っていたのかは分からないが、こんな想像もあって良い。
それぞれが自分の立ち位置で出来ることを探り、プライドを持って前に進んでいく。良い話だった。

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Posted by ブクログ 2020年07月31日

初めての作家。文庫書き下ろしではあるが、ラノベに近い時代小説が多い中で、しっかり時代考証をしていて好感を持った。ただ、キャラは現代によせている。そのせいか、十分エンタメ小説になっていた。買ったのは、ナツイチのブックバンドが欲しかったタメ。

菅原道真が左遷された太宰府での赴任先半年の日々がテーマ。 ...続きを読む「半沢直樹」ではないけど、まるで社会人小説のように「左遷からどう立ち直るか」がテーマ。

思うに、奈良・平安時代は、まだまだ小説化されていない時代・人物・地域の宝庫だろう。さすれば、10世紀初頭失意のうちに太宰府で歿(なくな)ったと云われる道真を、実はそうではなく、その才能を活かして、密かに政敵の藤原時平に倍返しまでは行かずとも意趣返しをしていた、と作り替える本書は、充分に「スカッと」する平安時代版「半沢直樹」だろう。

江戸時代の東京はたかだか400-150年前の舞台に過ぎない。千年の都・京都も長いかもしれないが、実は福岡は更に1700年前から都だった。ということは、あまり知られていない。実は博多津の発掘が次々となされて、更には周辺地域の遺跡がどんどん掘られて、当然莫大な量の遺物が出てきて、最近になってやっと分かりかけてきていることが多い。澤田瞳子はよく読み込んでいると思う。博多津や太宰府東北の水城の景観などをよく説明している。私の興味はあくまでも弥生時代ではあるが、発掘成果を小説に反映させるという視点では、面白い。

小野恬子(てんこ)という名前が出てきた時点で、あの有名歌人と思い出さないのは、私の不徳の致すところ。彼女の出没地域は全国に及んでいて、岡山県総社市には墓まである。生涯は不明である。太宰府にいたとしても、全然不思議じゃなかった。

あと一作は、読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2020年02月03日

道真、へんくつじじいでかわいい。こういうのもありかも。
東風吹かば…の歌が好きなので大宰府行ってみたいなぁ。
そして小町か!ってとこに気づいてなかったのが悔しい。

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Posted by ブクログ 2018年05月11日

夢破れた天上人の敗者復活戦。道真の復讐と
いっても、驚くほどの事ではない。けれど、史料に照らし時代を蘇えらせるのが、うまい。寒早十首の話が印象深い。

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Posted by ブクログ 2018年02月01日

学問の神様・菅原道真、名前は有名だけれど、文学作品で語られる事はあまりないような気がする。

そんな道真に血肉を与えたような作品でした。
博多津のにぎわいが、作品が平安時代の設定と知っていても、半島に近いせいの異国情緒が、奈良以前も彷彿とさせて…
歴史小説好きにはたまらない。

さりげなく小野の小町...続きを読むさんも登場したり(206ページにしてやっと気づく)、道真が雷神と結び付けられるエピソードもあり。
歴史の行間を興味深く埋めてくれる。

まだちょっと荒削りな感もあるのですが、戦国幕末江戸時代に関しては書き手も多いこの頃、平安以前は手薄な分野になってしまった。
個人的に期待したい作家です。

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Posted by ブクログ 2023年02月22日

知識量が素晴らしい。全体的には登場人物も魅力的で、当時の太宰府の雰囲気もリアルに感じられて、さくりと読める物語として楽しめるのは間違いないところ。

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Posted by ブクログ 2022年12月25日

初読みの作者さんが続く。
こちらは少し前のkuma0504さんの「吼えろ道真 大宰府の詩」のレビューを見て、最初の巻から買ってみた次第。

菅原道真公が左遷された太宰府に着いたところから始まる物語。

太宰府やその近辺には、小学生の頃に遠足やら宝満山や天拝山への登山やらでよく行っていたが、その頃は歴...続きを読む史的な価値は知る由もなく、もはや記憶もおぼろ。
この本を読めば、博多津の賑わいも含めて堂々たる西の都といった風情で描かれており、こんなことなら近くに住んでいる間に都府楼跡や水城跡などきちんと行っておけば良かったなという心持ち。

物語はと言えば、左遷で悲嘆にくれる道真だが、その相手をするように命じられた中級官人・龍野保積と乱入してきた美貌の歌人・恬子が絡んできて、そこからは生気を取り戻したり、また落ち込んだり、まあ忙しいこと。
昔、天満宮で「道真公のご生涯」みたいな展示も見たが、今もホームページを覗けば『太宰府では、衣食もままならぬ厳しい生活を強いられながらも、皇室のご安泰と国家の平安、またご自身の潔白をひたすら天にお祈りされ、誠を尽くされました』と載っていて、そんな人物像と異なった姿は新鮮と言えば新鮮。
確かに菅公くらいの才があれば、自分を貶めた都の政敵に対して一矢報いるためにあれくらいはやるであろうな。

太宰府から博多津まで歩くのは結構大変だと思っていたけど、案外近かったのね。(とは言え、この本に書いているように2時間ほどで行けるとは思えないけど)

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Posted by ブクログ 2021年10月19日

太宰府に流された菅原道真公の姿を、ユーモアたっぷりに描いた歴史もの。
片肘張らず、気負わずに読める。
菅原道真公のイメージが少し変わるかも。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年07月27日

菅原道真大宰府権帥へ左遷の時から物語は始まる
主人公は下流貴族の穂積
うたたね殿の異名がある怠け者だが、息子がソコ
ソコ頑張ってるので顔をつぶさないように特命の
任務をこなす
左遷元右大臣道真のお相手の筈が、無断外出する
道真の不在を隠ぺいするハメに
楽しくコメディ風に大宰府を過すうちに、小野小
...続きを読むまで事件を起こし、最後はまさかの隠ぺい工作
を菅原道真みずから行う

楽しく読める割りには、しっかりと時代背景が書
きこまれている
デビュー作も論文を読み続け、気にかかる単語を
軸に物語を史料に基づいて書くというから永井路
子クラスのとんでもない作家さんのようだ

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