【感想・ネタバレ】泣くな道真 大宰府の詩のレビュー

あらすじ

右大臣だった菅原道真が大宰府へ左遷された。悲憤慷慨する彼にお相手役の保積もお手上げ。そこへ美貌の歌人恬子(しずこ)が現れ、博多津の唐物商へ誘う。道真は、書画骨董の目利きの才を発揮し、生気を取り戻す。その頃、朝廷に出す書類に不正が発覚し、府庁は窮地に。事態を知った道真は、自ら奇策を……。朝廷を欺き、意趣返しなるか! 日本史上最も有名な左遷された男の活躍をユーモアのなかに描く歴史小説。

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太宰府に左遷されてしまった道真は、当初悲嘆にくれてやけっぱちな生活を送っていたものの、輸入されてくる唐物などの目利きを通して、元気に逞しく生き抜いていく。

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2025年10月04日

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最近詩吟を始め、菅原道真が左遷された際に詠んだ詩を吟じるにあたって、道真の人となりが知れる本を探していました。
すると、ドンピシャ。左遷後の様子を書いたこちらの小説に辿り着きました。

詩吟に関しては、左遷されたあとも醍醐天皇を想って余香に浸る・・・そんな様子が詩から見て取れ、とても重く悲しい道真を想像。

ですが、こちらの小説を読み、たしかに左遷の事実に打ちのめされてはいるものの、『喜怒哀楽を露わにする雷神』と例えられるほど、怒って泣いて、笑って企んで・・・。ジェットコースターのような日常が描かれていてなんともコミカルな道真。
勝手に救われた気持ちになりました。
お節介を焼いてくれる小野恬子(小野篁の孫と説明があるまで小野小町だと気づかなかった)や、世話役に任命された龍野保積など、周囲との関わり合いによって徐々に活力を取り戻す姿にとても親しみが持てました。
道真も人間だったんだなぁ。

京に居たときには、本当の人の暮らしや貧しさを感じ取ることができなかった(隠された事実もあれど)と気づき、「私はなんのために・・・」と嘆く姿が印象的。
決して自分の才に傲慢にならず、人の世を良くしようと努めた政治家で、人の世を見たまま表現しようとした歌人だったのかなと想像しました。

人ひとりの生き方を変えられぬ者に、大いなる国を動かせるはずがない。
そう思うと、道真の存在がたくさんの影響を及ぼしたわけであって、左遷という辛い事実も少し報われる気がします。
どこで、どう生きるのか。自分の才をどう生かすのか。
すべては自分次第で、出会い次第で、人生捨てたもんじゃないなと思わせてくれる素敵な物語でした。

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2025年04月28日

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 「知恵の神様」或いは「3大怨霊」として言わずと知れた菅公こと菅原道真。怖そうな人物のわりに表紙のイラストがとてもかわいらしく、思わず手にした1冊。
 彼は中流貴族でありながら、自らの才能により文章博士・右大臣にまで昇進したものの、藤原氏の妬みにあい、大宰府に流された。当初、この宿命を恨み続けていた菅公であったが、あるきっかけから、全く無関係であった菅公と恬子(小町)と穂積のトライアングルが動き出し、朝廷を欺き、意趣返しを成功なるか? 
 豪華絢爛なる貴族社会を描きつつも、視点はいつも名もなき民衆の側にある澤田歴史文学。爽快感の残る作品である。

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2023年04月14日

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逸話でしかあまり知らない道真公の太宰府生活、息子の死は非常に悲しいが、本当に終わりの方にある生活だったとしたら楽しいなぁと。

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2023年01月21日

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 太宰府へと貶遷された菅原道真の活躍を描く痛快歴史ロマン。シリーズ1作目。4章および終章からなる。再読。

      * * * * *

 澤田瞳子さんには珍しくコミカルで軽めの作品ですが、その分すべての主要人物が生き生きと描かれていました。

 まずは「うたたね殿」・龍野保積。出世の先が見えた中年地方官僚です。
 このトボけた味の狂言回しが道真の心情を刺激し、生きる意欲を引き出していきます。彼のみが実在の人物ではなさそうですが、あとのキャスティングが見事でした。
 
 主人公の菅原道真からして、真面目で堅い学者肌とは打って変わり喜怒哀楽の激しいガンコじじいに、小野恬子はこれがあの小町かと思うほどおきゃんでサバサバした女性に、それぞれ描かれています。実に思いきったイメージ変更だと思いました。
 なのに、読んでいて少しも不自然さがなくむしろ好もしく感じてしまうほどです。

 他にも、大宰大弐の小野葛絃やその甥の葛根も十分過ぎるほどの存在感を放っていました。(名前だけ登場の道風兄弟の活躍も見たかった)

 再読だったのですが、前回読みとれなかった部分に気づけた分、面白さは初読を上回りました。さり気なく雷を絡めたラストの場面もよくできていてニクイほどです。
 まったく澤田さんの豊富な知識と作品構築の緻密さにはほとほと感心するばかりです。

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2023年01月08日

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読み終えて、太宰府での菅原道真その地で親しまれていた姿の想像を膨らます。やはり拝みに行くのは太宰府天満宮だな。「人は置かれた場所で生きねばならない。哀しみに沈み、悲嘆にくれるのもそれはそれで一つの生き方。さりながらただ我が身を嘆き、他人を恨んでも、そこからもたらされるものは何もなかろう」p198
野しずこ(小野小町)に惚れた!

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2022年03月09日

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なんだろう?
この出演者が映像で浮かび動き出す感じの読書感覚。
会話挿入のタイミングが優れている小説なんだろうな。

菅原道真と小野小町。

二人を軸に、色んな物語が描かれていて、なんとも微笑ましく、なんとも楽しげで、妙に人間ポイ。
この人間ポイ、という点がスイスイと読み進ませてくれる。

軽い気持ちで読み始めたのに、気が付くと、神様の菅原道真の目線なんて何処にもなく、「頑張れ、道真くん」、と応援したくなってくる。

キャラ立ちしてシリーズ化すら可能な雰囲気たっぷりでした。

一言でいうと、道真くんが好きになった。
そして、良い味付けの小町さんもイイ。笑

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2021年09月01日

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ネタバレ

 ものすごく楽しかったです。

 唐物商で都で培った目で目利きをして、柳公権の書欲しさにちゃっかり菅三道という名前で目利きをすることを承諾してしまう道長。

 おーい! 大宰府についてから食事もろくに食べず、着替えもせず、いじけて毎日恨みつらみを書いていたんじゃないんかい!? と思わず思ってしまった(笑)

 そこから、いきなり保積に十貫(約百万)の銭を用意しろと言ったりして、唐物を買いあさる道真が可笑しい

 そして、ひょんなことから民草の本当の貧しさをしり、大宰府まで連れてきた愛息を失ってしまい、再び引きこもる道真。

 だが、ここでうたた寝殿と呼ばれていた保積が彼のために苦言を呈するのがいいのです。

 そして、横領されていた税の問題に取り掛かる道真達。それが己を左遷させる原因を作ったものに一泡吹かせるものだったのが、最高でした。

 菅原道真が大宰府でどのように生活していたか、わからない部分が多いと思うのですが、私はこの本を読んで、こうだったらいいなと思いながら本を閉じました。

 本当に面白かったです。そして恬子が誰なのか、最後にわかるのがとっても粋だなぁって思ったんですね。

 楽しい時間でした。

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2021年08月10日

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出先で読むには電子書籍が便利と思って購入したけど共感しきりで往きの新幹線で読みきっていまいそう。帰りの新幹線、どおしよお?他の本買わなきゃ、、、また、澤田瞳子先生の本にしよう、っと!

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2021年05月23日

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右大臣の位にまで上り詰めた天才文人政治家、菅原道真が太宰府に流されてきた。鬱屈し怒り狂う道真はだんだんと異国の文化の混じる太宰府にて生き生きと己の役割を見つけていくというストーリー。

太宰府に左遷されて初めて本当に民はどのように生きているのか、苦しんでいるのかを目にする。自分が今までやっていたことはなんだったのかと自問自答するシーンが好きだった。

"どんな教養も、飢えや貧困の前には一粒の麦ほどの価値もない。薄汚れた画幅を名品と判じられたところで、病み衰えた男一人、救えはしないのだ。"

有名な書画や陶器を鑑定しながら、朝廷にしっぺ返しも喰らわせる道真。恬子さんの視点が鮮やかで好きだし、途中からわかっていたけれど正体が分かるシーンも穏やかで好きだ。
結局、自分の目で現実を見ないとわからないことはたくさんある。その上で自分が育んできた才能を活かすこともできるという話なのだなと思う。

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2025年05月25日

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朝廷での権利争いに敗れて太宰府に配流され、その怨みを宥めるために天神さんとして祀られた、というエピソードは有名な菅原道真を生身の人間として取り上げた作品。
当時の記録からして性格や日常生活に関する資料なんて殆ど残ってないはずなので、数少ない史実をベースにここまで面白い物語に仕上げたのは流石です。
説ある小野小町を意外なキーパーソンとして登場させているもの面白い。次作も期待。

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2025年01月09日

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あー好き。温かい読後感。菅原道真…あまりに存在が遠すぎて、実在した普通の人間なのだと考えたこともなかった。会話して、泣いて笑って、同じ人間であることが強く感じられて、あー最後まで、読めてよかった。
…というのも、語彙が難しすぎて、スマホが手放せなかった。平安時代はあまり興味がなかったけれど、やっぱり澤田瞳子さん、いいわー(^^)

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2024年12月12日

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登場人物がみな、生き生きしていました。亡くなっていく人も臨終の瞬間まで生き生きしていました。と、なんとも矛盾した言い方ですが、その場での役割をしっかりと果たして、この話の中でなくてはならない存在感を放ち、亡くなっていきました。人だけではなく、書画までが登場人物として人格と存在感を持って訴えかけてきました。
とはいうものの、決して重苦しいものではなく、だからと言って軽々しくなく、激しい一陣の雷雨のように過ぎていきます。
ヒロイン、道真と同時代の人であったのか、とつくづく思った次第です。彼女は彼女で有名ですが、なんというか、時代から浮き立った存在。六歌仙の中でも一人、時代から浮いているような感覚だったので、そうか、道真と同時代か、と改めて認識しました。
それにしても、いささか無駄遣いではないかなあ。もっとしつこいくらい活躍してほしかった。
それは主人公についても同様に感じて、これだけのキャラクターがそろっていたら、もっといろんなことが起きて、もっといろんな活躍が語られてもいいのに、もっと読みたい、と切に思ったところです。
そうか、だから2冊目、続巻があるのか。
このあとすぐに本屋に発注します。
あまりに面白すぎて、もっと読みたい気持ちが強くなりすぎて、それが物足りなさに思えて、星一つ減じたところです。
今日から「雷」を見る目が変わりそうです。

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2024年12月06日

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 北九州旅行に備えて読んでみた本。
 菅原道真のことについて、右大臣まで昇った、藤原氏の他市排斥運動の流れの中で、大宰府に左遷され、その地で死去。後に怨霊となり、天神さんとして祀られるというぐらいしか知らなかったので、参考にと読んでみた。
 作者については、これまでも「火定」「龍華記」など何冊か読んでいて、きちんと史料を踏まえて書かれている印象を持っていて、今回も同様。 
 菅原道真も大宰府に流されたものの、単に憂憤だけで終わることなく、都に対して一矢報いようとして活動したという設定については、暗い話になりがちなところを救いのある物語にしていてよかったと思う。
 続編が出ているので、機会を見つけて読んでみたい。

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2023年11月25日

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「美しいもの」の役目とは。
置かれた場所で生き続ける。不条理でしんどくても。汚泥を啜って地を這い回ってでも。
夏の雷雨は轟いて、その後晴れる。
天満様にお参りしたくなった。行きたいところが増えるなあ。

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2023年10月31日

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最初の一章を読むのには時間をかけた。
一度ルビが振られた言葉は基本、その後漢字の読み方を覚えねばならぬのだ(そりゃそうだ普通だ)が、人名・平安時代の官職・当時の風俗や唐物、あとは単純に話し言葉であまり使わない漢字(「歔欷」など)に、あまりちゃんと時代ものを読んでこなかった私などは結構苦労したのだ。
が、2章目になってからはスイスイ読める。……面白かった。
道真自身は語り手ではなく、そのことが物語のレベルをぐんと押し上げて、現代性も帯びるストーリーになっている。怠け者だがドライな視点を保てる保積、能力はあるが「色事」の多い(と謗られてしまいがちな)恬子が道真の荒んだ心をどう動かすか、また道真からどのような影響を受けるか。コミュニケーションは相互作用なのだよなぁ。
終盤では、恬子、あんたそういうこと!となること請け合い。

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2023年10月30日

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菅原道真が太宰府に左遷されたあとの物語。
家柄に合わぬ出世(右大臣)をした道真は、貴族からの反発され左遷されるに至った。京への未練と恨みで塞ぎ込んでいた道真のもとに来たのは、「うたたね殿」こと保積と、美貌の歌人小野括子。
道真の人生って、すごくドラマチックだったんだな。
私は歴史ドラマとか全然見ないんだけど、もし道真が主人公のドラマや映画があったら見てみたい!どうやらまだ大河ドラマにもなっていない模様。こんなに有名人なのに、映像化しにくい人なのかなぁ。

物語序盤、文句ばかり言っている道真にちょっとイライラしたけど、括子が道真の能力(美術や文献への知識が豊富で目利きができる)に気付いて、唐品を扱う店に行くようになってからは話全体が生き生きしてきて面白かったな~。

廃寺を守る僧が、道真と知らずに道真の歌を批判した出来事から、道真はもっと太宰府の中に入っていきたい、この土地の力になりたい、と思ったのではないかしら。

ラスト、京からわざわざ道真の哀れな姿を見に来た藤原氏のために、みんなでドタバタと部屋を地味にして道真を隠そうとしていたのが良かったですね。
道真、太宰府に馴染んだなーって、読んでいて嬉しくなった。

括子はラストは出羽国に行ってしまったけど、まさか彼女があの有名な小野小町だったとは。
古典も歴史も疎くて、はっきり書かれるまで全然気付かなかったよ。小野小町って世界三大美女とされていて「高嶺の花で近づきにくい人」っていうイメージだったんだけど、この本の中では、とても先進的で素敵な女性でした!

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2023年06月22日

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天神様 学問の神様 祟り神!
道真さまの太宰府でのくらしが書かれています
太宰府の問題の解決方法は頭のいい人は 考えてることが違うなぁ~とおもいました そして、そこそこたのしそうに暮らしている様子は、イメージが違って面白かったです。

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2023年06月15日

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伯父と甥の立ち位置が変わる(伯父を守ろうとしていた葛根自身の変化でもある)ところが凄いと思った。ボーッと立っているだけと思われた門衛が、意外な働きをしていたり、「人は見かけによらない」が沢山あった。

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2023年03月03日

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歴史小説のしっかりした史実の中で道真を始め登場人物が生き生きとこんな風であったかもというように動いている.小野小町まで出てきたのにはびっくりしたけれど,自然でこんな女性だったかも.

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2022年11月27日

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ネタバレ

菅原道真については、教科書に書いてあるくらいのことしか知らなかったので、こんなに大人げない人だとは!と驚いた。(いや、これフィクションだし)
何しろ身に覚えのない罪で左遷されちゃったので、ひきこもる、人にあたる、物にあたる。
とてつもなく教養のある文人貴族じゃないの?

藤原氏全盛の時に、実力(教養)だけでのし上がってきた道真には、根回しとか、相手を立てるということがなかったのだろう。
真っ向から藤原氏とぶつかってしまい、分不相応な出世をよく思わない多くの貴族たちを敵に回し、冤罪で大宰府に流される。
大宰府への道中にかかる費用も一切本人負担で、一族はことごとく田舎に飛ばされ、孤独と憤懣でどうしようもない気持ちはわかるけど、同行の7歳の娘と4歳の息子がいるんだから、もうちっと大人げを持てよ、と思ってしまう。

が、大陸からの書画骨董がどこよりも早く手に入る博多津で、埋もれた骨とう品を発掘したり贋作を発見したりしているうちに、少しずつ生気を取り戻す。
が、その中で道真は、今まで自分が見ていたものは本当の庶民の姿ではなかったことを知る。

律令制度が形骸化しつつあり、国も地方も財政難。
道端には飢えて死ぬ者が転がり、畑は耕すものもなく立ち枯れ…なんて実情は、都から視察に来るような偉い人には見せられない、隠さねばならないものなのである。
ある程度体裁を整えた地方の窮状を見て、策を施し、それで満足していた己を道真は恥じる。
そして、そんな世の中とは無縁とばかりに雅に現を抜かす朝廷の人々や大社大寺に怒りを覚える。

さて、大宰府の窮状を救うために、横領品の横流しをするのはいけなくて、贋作製作はいいの?
というような疑問を覚えつつ。

私が気に入ったのは、大宰府の大弐(だいに・次巻のようなもの)である小野葛絃(くずお)です。
いつもニコニコ温厚で、できる男風ではないけれど、いうべき嫌味はとことん鋭く、見ないふりして全てをご承知。
好きだなあ、こういう人。うん。

ひとつ不満は、道真があまり子どもと絡まなかったこと。
この当時の父親がどの程度子どもと接するのかわからないけれど、ほぼほぼ子供と触れ合うシーンがない。
だから隈麿のことはショックだったのはわかるけど、私もショックだったけど、でも違和感。

あと、第四章のタイトルで予想はついていたけれど、恬子はやっぱりあの方でしたか。
詳しくない時代の話でしたが、面白かったです。

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2022年04月11日

Posted by ブクログ

歴史小説の醍醐味の一つに、史実では証明されていない同時期の人物の邂逅があげられる。
今回楽しんだのは道真と小野小町のやりとりだった。
現代以上にもののけや闇を恐れた平安人に恐怖を感じさせた菅原道真が、こんな気さくなおじさんだったと知ったらさぞや驚いただろう。
話は面白く読みやすいのでお薦めできる一冊と思う。

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2022年03月26日

Posted by ブクログ

菅原道真というと、天神様。
藤原時平の謀略で、無実の罪で太宰府に流され、失意のうちに亡くなった文人政治家。
そして、その死後、雷神となり、都を脅かした…。
しかし、それ以外、自分は何を知っているのだろう?

本作では、道真が太宰府に流されてからの日々が描かれる。
面白いのは、道真の目線ではなく、彼を迎え入れた太宰府の役人たちの側から描かれることだ。

中心的な視点人物の一人が、うたたね殿と見くびられる官人、龍野穂積。
道真は、太宰府に到着して以来、ずっとひきこもり、すさんだ生活をしている。
体を壊しでもしたら、不当な扱いをしたという誤解を与えかねない。
それを恐れた小弐小野葛絃の命で、道真の身辺に侍る。
やがて、博多津での唐物屋へ連れ出すことに成功するが、そこで道真は眼識を買われ、目利きとして雇われることになる!

葛絃の妹、恬子(しずこ)も関わることになり、物語は起伏が生まれてくる。
やがて、太宰府を揺るがす不正会計事件が発覚し、その解決に道真が乗り出していく。

道真がとにかくいきいきしていて面白い。
「~ぞよ」というキャラ語、初めて使われているのを見た(笑)のはともかく、泣きわめき、時に周囲を困らせ、好きな唐渡りの美術品を買いあさる。
おとなしい人かと思っていたので、こんな道真像は新鮮だ。

それから、やはりこの人らしいのは、官人の生活や、当時の人々の生活の様子を描いているところだろうか。
のたれ死ぬ庶民を看取る僧侶の姿を見て、道真が衝撃を受けるところは、作品中でも最もドラマティックなところ。

その後、道真は都に戻ることなく亡くなるはず。
しかし、本作ではそこまで描かない。
それによって、この作品はとてもさわやかで、力強い読後感を与えている。
道真がその後、政治家として、さらに大きくなった、という、歴史とは異なる別の結末を想像してみたくなる。

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2021年10月10日

Posted by ブクログ

奈良仏教史を専攻する作家が描いた太宰府へ流された後の道真さんの物語。本当にこんな風だったらいいな。有名な女性歌人も登場して、てんこもりで痛快。

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2021年08月21日

Posted by ブクログ

一度目は始め数ページでリタイア。
もう一度と思って再チャレンジしたら
まぁ面白い‼️
道真のイメージががらっと変わった。

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2021年01月25日

Posted by ブクログ

ナツイチのノベルティ欲しさで買った一冊でしたが、本当に面白かったです。
徹底的に史料を読み込まれた裏付けによって書かれた物語は映像化して、もっと多くの人達に知って貰いたい位です。(道真は野村萬斎さんかな。ただ、平安時代はヒットしないか。)
いつの時代にも通じるテーマで、読後感もすっきりでした。
他の作品も読んでみます。

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2020年11月06日

Posted by ブクログ

菅原道真公がこんなんだったらいいのに、と思わせる話だった。ちゃっかりあの歴史的美女も。
太宰府行ってみたくなった。

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2025年10月02日

Posted by ブクログ

知識量が素晴らしい。全体的には登場人物も魅力的で、当時の太宰府の雰囲気もリアルに感じられて、さくりと読める物語として楽しめるのは間違いないところ。

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2023年02月22日

Posted by ブクログ

初読みの作者さんが続く。
こちらは少し前のkuma0504さんの「吼えろ道真 大宰府の詩」のレビューを見て、最初の巻から買ってみた次第。

菅原道真公が左遷された太宰府に着いたところから始まる物語。

太宰府やその近辺には、小学生の頃に遠足やら宝満山や天拝山への登山やらでよく行っていたが、その頃は歴史的な価値は知る由もなく、もはや記憶もおぼろ。
この本を読めば、博多津の賑わいも含めて堂々たる西の都といった風情で描かれており、こんなことなら近くに住んでいる間に都府楼跡や水城跡などきちんと行っておけば良かったなという心持ち。

物語はと言えば、左遷で悲嘆にくれる道真だが、その相手をするように命じられた中級官人・龍野保積と乱入してきた美貌の歌人・恬子が絡んできて、そこからは生気を取り戻したり、また落ち込んだり、まあ忙しいこと。
昔、天満宮で「道真公のご生涯」みたいな展示も見たが、今もホームページを覗けば『太宰府では、衣食もままならぬ厳しい生活を強いられながらも、皇室のご安泰と国家の平安、またご自身の潔白をひたすら天にお祈りされ、誠を尽くされました』と載っていて、そんな人物像と異なった姿は新鮮と言えば新鮮。
確かに菅公くらいの才があれば、自分を貶めた都の政敵に対して一矢報いるためにあれくらいはやるであろうな。

太宰府から博多津まで歩くのは結構大変だと思っていたけど、案外近かったのね。(とは言え、この本に書いているように2時間ほどで行けるとは思えないけど)

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2022年12月25日

Posted by ブクログ

太宰府に流された菅原道真公の姿を、ユーモアたっぷりに描いた歴史もの。
片肘張らず、気負わずに読める。
菅原道真公のイメージが少し変わるかも。

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2021年10月19日

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