【感想・ネタバレ】泣くな道真 大宰府の詩のレビュー

あらすじ

右大臣だった菅原道真が大宰府へ左遷された。悲憤慷慨する彼にお相手役の保積もお手上げ。そこへ美貌の歌人恬子(しずこ)が現れ、博多津の唐物商へ誘う。道真は、書画骨董の目利きの才を発揮し、生気を取り戻す。その頃、朝廷に出す書類に不正が発覚し、府庁は窮地に。事態を知った道真は、自ら奇策を……。朝廷を欺き、意趣返しなるか! 日本史上最も有名な左遷された男の活躍をユーモアのなかに描く歴史小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 ものすごく楽しかったです。

 唐物商で都で培った目で目利きをして、柳公権の書欲しさにちゃっかり菅三道という名前で目利きをすることを承諾してしまう道長。

 おーい! 大宰府についてから食事もろくに食べず、着替えもせず、いじけて毎日恨みつらみを書いていたんじゃないんかい!? と思わず思ってしまった(笑)

 そこから、いきなり保積に十貫(約百万)の銭を用意しろと言ったりして、唐物を買いあさる道真が可笑しい

 そして、ひょんなことから民草の本当の貧しさをしり、大宰府まで連れてきた愛息を失ってしまい、再び引きこもる道真。

 だが、ここでうたた寝殿と呼ばれていた保積が彼のために苦言を呈するのがいいのです。

 そして、横領されていた税の問題に取り掛かる道真達。それが己を左遷させる原因を作ったものに一泡吹かせるものだったのが、最高でした。

 菅原道真が大宰府でどのように生活していたか、わからない部分が多いと思うのですが、私はこの本を読んで、こうだったらいいなと思いながら本を閉じました。

 本当に面白かったです。そして恬子が誰なのか、最後にわかるのがとっても粋だなぁって思ったんですね。

 楽しい時間でした。

0
2021年08月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

菅原道真については、教科書に書いてあるくらいのことしか知らなかったので、こんなに大人げない人だとは!と驚いた。(いや、これフィクションだし)
何しろ身に覚えのない罪で左遷されちゃったので、ひきこもる、人にあたる、物にあたる。
とてつもなく教養のある文人貴族じゃないの?

藤原氏全盛の時に、実力(教養)だけでのし上がってきた道真には、根回しとか、相手を立てるということがなかったのだろう。
真っ向から藤原氏とぶつかってしまい、分不相応な出世をよく思わない多くの貴族たちを敵に回し、冤罪で大宰府に流される。
大宰府への道中にかかる費用も一切本人負担で、一族はことごとく田舎に飛ばされ、孤独と憤懣でどうしようもない気持ちはわかるけど、同行の7歳の娘と4歳の息子がいるんだから、もうちっと大人げを持てよ、と思ってしまう。

が、大陸からの書画骨董がどこよりも早く手に入る博多津で、埋もれた骨とう品を発掘したり贋作を発見したりしているうちに、少しずつ生気を取り戻す。
が、その中で道真は、今まで自分が見ていたものは本当の庶民の姿ではなかったことを知る。

律令制度が形骸化しつつあり、国も地方も財政難。
道端には飢えて死ぬ者が転がり、畑は耕すものもなく立ち枯れ…なんて実情は、都から視察に来るような偉い人には見せられない、隠さねばならないものなのである。
ある程度体裁を整えた地方の窮状を見て、策を施し、それで満足していた己を道真は恥じる。
そして、そんな世の中とは無縁とばかりに雅に現を抜かす朝廷の人々や大社大寺に怒りを覚える。

さて、大宰府の窮状を救うために、横領品の横流しをするのはいけなくて、贋作製作はいいの?
というような疑問を覚えつつ。

私が気に入ったのは、大宰府の大弐(だいに・次巻のようなもの)である小野葛絃(くずお)です。
いつもニコニコ温厚で、できる男風ではないけれど、いうべき嫌味はとことん鋭く、見ないふりして全てをご承知。
好きだなあ、こういう人。うん。

ひとつ不満は、道真があまり子どもと絡まなかったこと。
この当時の父親がどの程度子どもと接するのかわからないけれど、ほぼほぼ子供と触れ合うシーンがない。
だから隈麿のことはショックだったのはわかるけど、私もショックだったけど、でも違和感。

あと、第四章のタイトルで予想はついていたけれど、恬子はやっぱりあの方でしたか。
詳しくない時代の話でしたが、面白かったです。

0
2022年04月11日

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