【感想・ネタバレ】月人壮士のレビュー

あらすじ

「全き天皇であること」
――その何人にも推し量れぬ孤独。

756年、東大寺大仏を建立した首(聖武)太上天皇が崩御。
道祖王を皇太子にとの遺詔が残されるも、
その言に疑いを持つ者がいた。
中臣継麻呂と道鏡は、密かに亡き先帝の真意を探ることになるが、
ゆかりの人々が語り出したのは、
母君との尋常ならざる関係や隔たった夫婦のありよう、
御仏への傾倒など、死してなお謎多きふるまいや
孤独に沈む横顔ばかりで――。

国のおおもとを揺るがす天皇家と藤原家の相克を背景に、
聖武天皇の真実をあぶり出す!
〈螺旋プロジェクト〉の1冊としても話題。

【電子版巻末に特典QRコード付き。〈螺旋プロジェクト〉全8作品の試し読みができます】

※〈螺旋プロジェクト〉とは――
「共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画

〈螺旋〉作品一覧
朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』
天野純希『もののふの国』
伊坂幸太郎『シーソーモンスター』
乾ルカ『コイコワレ』
大森兄弟『ウナノハテノガタ』
澤田瞳子『月人壮士』(本作)
薬丸岳『蒼色の大地』
吉田篤弘『天使も怪物も眠る夜』

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

良かった!
螺旋プロジェクトで巡ってきて、単体では絶対に読まなかったであろう歴史物。
頼朝あたりまでは、興味を持てば読んだりしましたが、まさかの奈良時代、聖武天皇。
この時代は、藤原、麻呂麻呂いっぱい問題で、人の名前を覚えるのも困難で本当に苦手。
巻頭に家系図がついてなかったら挫折してました。

果、最後まで読んで良かった!
聖武天皇の切なさに涙しました。

そして、この後の道鏡と阿部のことを考えると、やっぱり阿部の中に複雑な想いがあって、宮古、首、阿部と螺旋のように続いていったんだなと、寂しくなる。

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2023年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

螺旋シリーズ7冊目。

唯一の欠点は、登場人物の名前と読み方や出てくる漢字の読み方が一向に覚えられないこと!最後まで家系図のところに栞挟んで読んでたわ。
それ以外は果てしなく良かった!
螺旋シリーズで一番良かったかも知れない。
何が良かったかというのは正直はっきりとは語れないんだけど、なんかこう、しみじみと、良かった。
良かったと言ってもハッピーエンドとか爽快感とか勧善懲悪とかスッキリとかそういうのではなくて、ただただ良い物語を読んだという、良い読書をした、読書って良いなぁ、という、良さ。

天皇の話なのに基本ネガティブで、大っぴらに話してたら不敬罪に当たるのでは?とかの不謹慎厨めいた感想を持ってしまったのがなんか我ながら嫌だったりした。
話のメインは、結局天皇は男性でなきゃいけないということ。今考えると普通にド炎上しそうな内容なのに、天皇が男性であるということは現代でも当たり前のように扱われている。そう考えるとなんでなんだろう、という根本的な疑問を持ってしまう。今でもできていないのに狙って子供の性別を決めるなんてできるわけがなく、そんなときに限って男子が生まれなかったり早逝してしまったりする。だから本妻だけじゃなく側室なり愛人なりを作りまくって、男子が生まれたらその子を天皇にするという、改めて説明されるとおかしな話ではあるんだけど、文化としては別に日本に限った話ではなく世界中で起きてることなんだよなぁ…。男性の肉体的優位は否定できないけど、支配者になれるかならないかという能力は男女に差があるわけではないのになぁ、としみじみと考えてしまう。
しかも、そう考えると今でも天皇はやはり男性でなきゃいけないのに、現代の倫理観から側室も愛人もなにも無理となると、皇后様のプレッシャーたるや凄まじいのでは。と、天皇家を見る目がちょっと変わってしまう。変な意味ではなく。

そして螺旋要素としては、それほど表に出てこない。あくまでも補佐的な使われ方で、とても良い。ただ、後半から藤原氏が海、天皇家が山ということがはっきりと明示され、それに翻弄される聖武天皇と周りの人たちが読んでてとにかくつらい。おおる、おおるという泣き声の使われ方も一番印象的だったし、巻き貝の飾りもどこで出てきたかちゃんと覚えている。

語られ方としては、章ごとに一人の人物がひたすら語り倒しているだけ、それを10章続けていくだけという、特に凝った仕組みではないのだが、なんかミステリーというか京極夏彦でよく読む感じの文章構成というか、まあなんかこの形式を表す文学用語はあるんだろうけどとにかく引き込まれるおもしろい形式だった。色んな人が聖武天皇について語っていき、人となりが分かっていくように見えて急に違う展開になったり。でも結局他人から見たことなので、真実かどうかは誰にもわからないという…

あ、あと火の鳥とか読んで仏教嫌いになっている自分だが、今作でも仏教が割と敵みたいな感じに描かれていて、共感してしまった。いや、文化としては好きなんだけどやっぱり日本古来の文化の方が好きというか。
まあともかく聖武天皇という、天皇家であればそれ自体が宗教みたいなもののトップが仏法を尊ばれたというところの違和感をきちんと描いているところも良かった。良いとかダメとかではなく、たしかに不思議ではあるよね、という。

あ、あと道鏡が話の聞き手として出てくるが、話しそのものには全く関わらない。というかテキスト的には一言も発しない。割と有名な人じゃなかったっけ…

まあともかく天皇家に天皇以外の血が入った(初めてなのかどうか知らないが)出来事を海と山に絡めてくるというのは素晴らしかった。わかりやすいし、悲しいし。今思うと海族が局地的過ぎはしないかという気もするけど。

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2023年03月04日

Posted by ブクログ

螺旋プロジェクト(私の中で)4冊目。

一言で言うととても好みの本だった。
螺旋プロジェクトは海族と山族の対立をテーマとしているが、この本は聖武天皇の内なる葛藤を対立として描いたもの。

以下少しネタバレ含む
父親から受け継ぐ天皇家としての山族、それを侵食するかのような藤原氏の血を引く母親は海族として描かれて、その二つの血を引く聖武天皇が自らの天皇としての有るべき姿に苦悩する。その姿が、天皇を取り巻く人々の一人語りのような形で物語が進む。

章が進むにつれて聖武天皇のさまざまな顔が見えてくる様子は、劇的な展開こそないものの生き生きとしていた。聖武天皇も文中では首(おびと)と書かれていたりと、歴史の知識に乏しい私は最初の50ページくらいは巻頭の家系図と行ったり来たりでかなり読みにくいと感じたが、関係図が分かればあとは物語にどっぷりと浸かることができて面白い。一人語りをする登場人物もユニークで色々な立場の人が出てくることで、より聖武天皇像が立体的になった。

今のところ、螺旋プロジェクトの「対立」構造というものに対してのアプローチで一番好きな本となった。残りの本も楽しみだ。

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2023年02月11日

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ネタバレ

聖武天皇の遺召を探すために、選ばれた中臣継麻呂と道鏡。

 それは本当に存在しているのか?
 何故、帝になった安部帝はそれにこだわるのか?

 天皇家(山の一族)と藤原家(海の一族)の血を引いた聖武天皇が何を思い、自分の中にある対立するものをどう受け止めていたのか。

 螺旋プロジェクトで書かれた作品の一つです。

 日本人は血族主義ですから、彼の立場は辛かったのかもしれないなぁと読みながら思ってました。

 大仏に関してはいろんな史料があるので、改めて、あの大きな廬舎那仏を作った彼の気持ちは本当はどうだったんでしょうね。

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2023年02月07日

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ネタバレ

〈螺旋プロジェクト〉の一冊。

〈螺旋プロジェクト〉とは
「共通のルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家=朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画である。
ルール1 「海族」vs.「山族」の対立を描く
ルール2 共通のキャラクターを登場させる
ルール3 共通シーンや象徴モチーフを出す
(中央公論新社HPより)

これは、読む人を相当選ぶ小説だと思います。
何しろまだまだ分からないことの多い奈良時代の、聖武天皇の死について、です。
聖武天皇と言えば、仏教に深く帰依されて、全国に国分寺を建立し、奈良の大仏を建立した天皇です。
おかげさまで国庫がすっからかんになり、庶民の暮らしは困窮したのですが。

中臣家の三男継麻呂と道鏡が橘諸兄に呼び出され、天皇は死に際して遺詔(遺言のようなもの)を残さなかったか探れ、と命じられます。
というのも現天皇(孝謙天皇)は、アラフォーの聖武天皇の実の娘で、5日前に聖武天皇は、皇太子を道祖(ふなど)王とするようにとの遺詔を発したばかりだが、血統の違う道祖王を指名することに違和感を覚えたからだ。

中臣家はもともと藤原氏系統のおおもとであるが、血筋としては格上だが、今は不比等の一族に押しやられ、かつての栄光は見る影もない。
橘諸兄もまた、消えゆく橘氏の残り香であり、中臣家ともども藤原氏にはよい感情を持ってはいない。
道鏡は、まだ天皇家の人々に仕えて間もない新入りで、そのあまりにもまっすぐな心根に「足元をすくわれないように。機会があればすぐに宮廷を去るように」と言われるのですが、真っ当すぎて宮廷を去るタイミングを逃し、後々足をすくわれるのは歴史の知るところ。

ともあれ、生前の聖武天皇に近しい人々に話を聞き、その人物像を浮かび上がらせる。
古より国土に根を張り天地のすべてを統べる高貴な天皇家の血を父から受け継ぎ、朝廷での権力を握ってはいるもののたかが臣下でしかない藤原氏の血を母から受け継いだ聖武天皇は、己の中で混じり合うことのない二つの血筋に悩まされる。

それは、律令完成後の新しい世界で初めての、全きの完璧な存在である天皇を、己の血筋から生み出したいという持統天皇の強い願いと、一見持統天皇に協力している風でありながら着々と自らの血筋を天皇家に注ぎ込む藤原氏の思惑が絡まり合った結果なのである。

骨肉の争いが絶えることがなかった奈良時代の物語は、上手の手にかかれば実にワクワクするものになる。
奈良時代好きとしては、ありがとう!澤田瞳子先生!という感じなのだが、さすがに万人向けではない。
人名も役職も建物も、分かりにくすぎる。(作品内で聖武天皇は首(おびと)大王であり、孝謙天皇は阿倍女王である)

そして〈螺旋プロジェクト〉としても、これは異色の作品だ。
天皇家(山)と藤原氏(海)に一応分かれているが、その根拠は極めて薄い。
耳がとがっているわけでも、目が青いわけでもない。
二つの部族の対立は聖武天皇の中にしかない。(孝謙天皇の中にも、後の藤原氏の女性が生んだ天皇も、この対立に関しては無自覚なので)

そんなに藤原の血が天皇家に入っているのが嫌なら、さっさと長屋王にくらいを譲ればいいのに。
持統天皇が、自分の血筋にこだわった結果、数代あとには天武天皇系統は絶滅してしまう、天智天皇系統が復活することになるのだが、持統天皇は天智天皇の娘なんだよね。
愛する夫の血を残すために、甥やら姪やら殺しまくり。怖~。
で、数代後に絶える。
諸行無常ですな。

関係ないけど、乙巳の変について澤田瞳子さんに書いてほしいという野望を持っている。
あの当時絶対忌み嫌われた血という穢れ。
ましてや、天皇の前で入鹿を惨殺って、ありえない話のはず。
殿中でござるのよ。
刀を持って天皇の御前に参れるはずがないのに、どうしてそれが可能になったのか?
そして中大兄皇子の罪は問われず、後に天智天皇になってしまう。
人殺しなのに。クーデターなのに。
その謎を、納得できるような形で小説にできるのは、澤田瞳子さんだけだと思っているのよね。
ぜひ、いつか、お願いします。

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2025年08月07日

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奈良時代 聖武天皇の御代
自らの血統に苦悶する首天皇
今際の際に残した最後のご遺詔は何なのか?
各章で語られる別の人々の視点で語られる生涯で明らかになるお姿が、ラストシーンで集約される

この時代の小説を全然読んで来なかったので案の定苦戦しましたが、いい作品だった

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2025年04月12日

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漢字が読めないのと人物相関の理解がおっつかんくて読むの苦戦したけど、文体は読みやすく最期まで読み切って、切なさに評価上がりました。

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2025年02月27日

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螺旋プロで小生初、澤田瞳子さん。歴史小説初デビューです。以前、日経でエッセイを書かれていて、軽快な素敵な文章で歴史小説を書かれるのかなと、気になっていましたがその通りで、良かったです。

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2024年08月12日

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時は天皇が在命中にもかかわらずコロコロ入れ替わり、女帝も普通に存在し、まさかの再任すらあったという奈良時代。皇族を山族、藤原氏を海族になぞらえ決して交わってはいけない二族の混血として皇位に就いてしまった聖武天皇の苦悩を、周囲の人への聞き取りという形で綴ったという凝った作品です。
史実と言われている事柄すら信じられないこの時代のことを、ここまでの精度で創作した手腕がすごい。
本作ではまだ下っ端扱いの弓削道鏡が、どちらの血も引かない天皇を目指してあの事件を起こしたのかも、という想像を掻き立てられます。

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2024年05月07日

Posted by ブクログ

 聖武天皇の死後、その遺詔を探そうと道鏡と中臣継麻呂が各関係者を回り、首という人物の輪郭を明らかにしていく。
 漠然と聖武天皇には好意を抱いていた。東大寺や盧舎那仏を造ったイメージだろうか。澤田氏の『与楽の飯』からいかに現場が苦労を重ねていたかを知ってもなお悪い感情は生まれなかった。本作の各人物の証言はいずれも事実だけをとれば「愚君」と思える内容。ただそれでも首の「孤独」への同情と憐れみが感じられ、そこには澤田氏の思い入れを深く感じられた。
 藤原氏の血を受け継いだ初めての混血の天皇。それゆえに全き天皇になろうと苦心した孤独な天皇。一般的には認識されていない聖武天皇の姿に心が動かされた。今わの際に娘への愛情を想起する(これこそが彼の遺詔)演出は非常に心憎い。彼自身は娘への愛情はなかったと否定しているが、自身の苦悩を娘へ伝えないという信念に父の深い愛情を感じた。その選択が結果として恵美押勝の乱や道鏡事件を生んだのだとしても、政の正解と親子の正解は時に矛盾すると思う。孝謙天皇(阿倍)は悪いイメージが染みついているが本作を読んで彼女サイドの物語も読んでみたいと思った。
 全体を通して各人物の評価を読者に委ねている形式だと感じた。あからさまに良い/悪い人物はなく、だれもが人間らしく欲望と情で動いている。塩焼王や光明子がまさにそうで、小さい人物に見えるがそこに良さと彼/彼女の信念を感じられてよい。
 螺旋プロジェクト作品は本作のみだが、単体として非常に良い作品だった。

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2024年01月07日

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ネタバレ

難しかったけど面白かった。
海と山の戦いが、こういう表現もあるのかと思った。
夕暮れの話とか、共通認識になってるシーンが分かりにくくて、どのシーン!?と何度かページペラペラしてみたけど、あまり分からなかった(⁠+⁠_⁠+⁠)
登場人物たちがこのお話のあとに辿った運命を思うと切なくなった。

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2023年02月15日

Posted by ブクログ

奈良時代を舞台にした話で、学生の時に習った名前を久しぶりに思い出しながら、聖武天皇という人にすごく興味が湧く作品だった。
螺旋プロジェクトでは4作目だが、聖武天皇という1人の人物の中で海と山を対立させているのは面白かった。
改めて歴史の勉強をしたいと思った。

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2023年02月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

螺旋プロジェクト第2弾。

この「月人荘士」も最初は苦戦しました。人名・地名と役職名が難しかった。ので、フリガナが書いてある所まで、何回も戻ってっていうのをやって。苦戦でした。

でも、この「月人荘士」の世界観になじめると案外読めるようになって。また、おもしろく感じれるようになりました。

主人公は首(おびと)天皇(聖武天皇)。ただ、物語はこの首が崩御されたところから始まります。この首のご遺詔を探し求め、その過程で主人公の首の人間像に迫る、っていう形で進んでいきます。インタビュー形式で物語が進んでいくんですが、新鮮な感じがしました。

螺旋プロジェクトのテーマには「超越的な存在」の出現がありますが、最初は山族たる皇族の血と海族たる藤原家の血を併せ持った首天皇がこの物語の「超越的な存在」かと思ったんですが、そうではなかった。

首は、全き天皇であろうとするのに、自分の中の藤原家の血を憎んでいる。ただ自分が天皇になれたのは藤原家の血があったからこそ、っていう葛藤とか、親族への愛憎などの矛盾を一人で抱え、苦悩していた。日本古来の日輪の裔である天皇でありながら、外国から渡来した仏教に傾倒していったのも矛盾に満ちていたんだと思う。

螺旋プロジェクトは海族と山族の対立が大きなテーマですが、この「月人荘士」は直接的な対立ではなく、首天皇の内なる海と山の対立が描かれていました。

このストーリーの「超越的な存在」は首天皇その人ではなく、佐伯今毛人(さえきのいまえみし)という、一介の地方官吏。ただこの佐伯今毛人は「ウナノハテノガタ」のウェレカセリと同じような身体的特徴を持っていました。

佐伯今毛人はすごいことをやってのけたのではないけど、東大寺周辺の自然のバランスを図らずともやっていたのがなるほど、と思いました。その近くに大日女(おおひるめ)という猟師の少女がいたのが印象的。大日女とは天照大神の別称なんだそう。「超越的な存在」と天照大神を並べて描くって巧いなぁと感心しました。ただ、ここに出てくる大日女と天照大神の関係はないはずなんですが、もしかしたら・・・?って思う何かを感じた気がしました。実際、この佐伯今毛人の章だけ、他の章と雰囲気が違っていたような。

この「月人荘士」も、最初は読み進めるのに苦労しましたが、「ウナノハテノガタ」同様、慣れれば割と読めるようになったし、世界観を楽しめるようになりました。

面白かったです。

螺旋プロジェクト、続けて読んでいきます。

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2023年01月28日

Posted by ブクログ

プロジェクトの他の作品とはちょっと違った感じで、海族と山族も抽象的に例え話みたいな感じでしか出てこない。その分、対立する感じに無理矢理感がなくて良かったと思う。
奈良時代、聖武天皇と言われても、無学な自分にはちょっと難しく、新しい名前が出る度に調べて読んだ。
今更すごく勉強になった。

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2023年01月09日

Posted by ブクログ

同プロジェクト他作品と違って「海族の人」と「山族の人」間の対立ではなく、その両方の血を引く聖武天皇の内面の葛藤を対立として描いているのが面白かった!

周囲の人々による首様(聖武天皇)語りを聞く形式で話が進んでいって、最後にやっと聖武天皇目線でその内心が少しだけ描かれるんだけど、それがもうしんどくて…。

このプロジェクト、各作家さんが対立というものをどのように捉えてどのように描くのか、その違いがとっても面白いな〜。

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2023年01月08日

Posted by ブクログ

螺旋プロジェクト 奈良時代編。
対立する天皇家と藤原家の両方を血を持つ聖武天皇が苦悩するお話。死後に周辺の人たちの回想によって、主人公を多面的な角度から描いていく手法を取っている(「阿寒に果つ」が同じ手法だったような)。

奈良・平安のドロドロとした争い。誣告、密告、呪い、毒殺、放火…。高校生の時かな、古本屋で買った小松左京の「応天炎上」の3篇が面白く、以来なんども読んでる。その中で聖武帝が何度も遷都したのは地震のせいではないかという説があった。災害があると、権力基盤が揺らぐのはいつの時代も同じか。

古刹や大社に行った際には、昔の権力者たちが作った建築物や庭園(再建されたものが多いのだろうけど)に圧倒されつつ、この太い柱や大きな石はどうやって運ばれてきたのだろうとか、想像しながら見物することにしてる。いつも思うが権力の源って何なんだろう?

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2022年12月31日

Posted by ブクログ

螺旋プロジェクト2冊目!

物としては歴史小説のような内容。
仏教に依拠し天平文化を作ったとされる聖武天皇。
天皇として、時代の流れを見ると様々な意見や考えがでで、文化的には大きな存在である。

そんな聖武天皇の生涯を遺言を追うという形でどんな人物であったのかを浮き彫りとしていく話。

物単品でみると歴史の知識がないと所々関係性が難しい場面だが、螺旋プロジェクトの海と山のお陰で非常に分かりやすく、読みやすい内容になっている。
歴史好きな自分としては面白い本だった。

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

平安時代が舞台ということで、螺旋プロジェクトみたいな企画でない限り、自分からはなかなか手に取らない小説で、とっても新鮮でした。

海と山の争いと、血の争いをもとにしたストーリー、かつ主人公の帝(聖武天皇)の周りの人の一人称を中心に描かれる複雑な人間関係は、ミステリーみたいな要素もあって終始ドキドキしながら読めました。

学生時代は歴史の授業が苦手で全く興味をもてなかったのだけど、こういう話を読むと、今さらながらに歴史にも興味がでてきて、学び直してみようかなと思わされます。

面白かったです!

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2024年05月05日

Posted by ブクログ

奈良時代の話がまず新鮮だった。固有名詞が難しすぎるけど慣れたら読みにくくない。100ページくらい進んでからやっと、「首さま」が聖武天皇だって気づいて自分でも遅すぎると思った。

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2024年02月27日

Posted by ブクログ

螺旋プロジェクト4冊目。

聖武天皇崩御に際し、すでに明らかになっている遺詔のほかにあるのでは?と周辺に聞きまわる物語。

章立ては話を伺った人が一人称で話している。

山の一族天皇家に海の一族藤原家が絡みついていく様子が生々しい。

この時代から藤原摂関家が席巻していく。

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2024年02月07日

Posted by ブクログ

螺旋プロジェクトの2作目。主役は聖武天皇。
完全な皇統を目指しながら自らに流れる藤原の(海族)の血脈に感じる葛藤と絶望。
色んな人の一人称で語られるそれぞれの首さまの見え方。
結局その最期までその苦しみは解されず、それは石器時代から脈々と続く”族”の対立には、何人も抗えないという真理か、そしてそれはこの後も続く。

こういう昔の物語は語りが読みにくく時代背景にも詳しくないので相変わらず苦手分野。
けど読み進めるうちにそれぞれに見えてる天皇の苦しみが見えて、そしてみんなそれに気づいてて、苦しみがよく伝わる描写だった。

どんな時代も、色んな見かた、見え方があるよなぁ。

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2023年07月29日

Posted by ブクログ

文章が好き ◯
作品全体の雰囲気が好き ◯
内容結末に納得がいった ◯
また読みたい
その他

螺旋プロジェクト3冊目。
澤田瞳子さんの作品、初です。
歴史小説を読むのも久しぶり。
日本の古代史に触れるのも久しぶりでした。
学生だった当時は、きらびやかな貴族社会にあこがれをもって勉強していました。
大人になってそれなりに知識経験を積んだ今となっては、
一族の期待を背負っていた娘達の苦悩とはいかほどのものかと、
光明子の一人がたりが胸に刺さります。

聖武天皇の功績。
「そうか、こんな見方もできるのか」と、ページをめくる手がとまらない。

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2023年06月09日

Posted by ブクログ

本作品では、思いっきり没入ができなかった。作品の舞台となっている時代背景をあまり学習していなかったためということもある。本書は、伊坂さんの殺し屋シリーズのように登場人物がそれぞれ一人称で語るスタイルで物語が進む。海族と山族の血を受けた天皇陛下の葛藤が物語の中心にあり、想像と違ったスタイルだった。

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2023年06月07日

Posted by ブクログ

螺旋シリーズとして読みました。
内容も難しかったので表現はもっと現代的にしてもらったほうがよみやすかったかもしれない。

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2023年06月06日

Posted by ブクログ

螺旋プロジェクトの古代を描く作品。
プロジェクトの設定でスパイスを効かせた歴史小説。
他作品が山と海の対立を分かりやすい形で示しているのに対して、本作は首個人の心のうちの葛藤として描かれている。
この手の作品は最終的に隠された真実が暴かれたときの衝撃で評価が決まると思うが、そのインパクトは少し弱かった。

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2023年01月26日

Posted by ブクログ

螺旋プロジェクト、古代編。
首おびと(聖武天皇)が、崩御し、その御遺詔は「皇太子は道祖王」。それに疑問を持つ葛城王が、藤原系中臣継麻呂と道鏡に、その真偽を調べさせる。そこから二人は、首の周囲の人々を訪ねて、彼らから聖武天皇の人となりを知っていく。彼が、何を行い何に悩んでいたかその人生を描写する。
皇家を山族、藤原家を海族として、螺旋プロジェクトの一編とします。
史実の流れをくみ取り、そうだったかもしれないと思わせてしまう巧さと知識。日本史お詳しい方には、なかなかのファンタジーでしょうか。
私は誰が何だったか調べながらでないとおぼつかないので、思い出から歴史を辿るのは流れを掴むのが難しかった。
今回は、一人の人間(聖武天皇)が自身の身体に流れる山族と海族の血の交わりに葛藤するといった趣向が面白いと思います。

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2022年12月25日

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