澤田瞳子のレビュー一覧
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目に見えない疫病の恐怖。そして死と破滅が隣り合わせの中、人は何を見出すのか。奈良時代の平城京を舞台にパンデミックを描いた歴史小説です。
庶民相手に多忙を極める施薬院の仕事に嫌気が差していた官人の名代は、同僚と薬の買い付けに向かった市で、高熱で倒れる若い男を見かける。そしてその男を看病した、諸男という男には、前歴があるらしいが……
その後、高熱が続いた後、一端熱が下がる病が、都のあちこちで発生。それはかつて国を恐慌に陥れた天然痘の流行の始まりだった。
ストーリーの運び方がとにかく上手だった。静かに始まった異変が徐々に広がり、都を地獄に変えていく。その過程で容赦なく描かれる人々の運命の末路。発 -
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1300年前の奈良時代に後宮があって当たり前、なのに今更ながらの認識で恥ずかしい。政治の頂点が聖武天皇にあり、その生活を円滑に進めるための官僚集団みたいな部署が後宮には12司あった。そこで働くワーキングガール3人の女官の物語だ。女官は地方豪族出身の采女(うねめ)と中央貴族の子女である氏女(うじめ)で構成されていて役職も付いた。主人公となる3人は采女で地方出身者。畿内を中心にして形成された古代国家は各地域を征服していく中で、地方の豪族たちからその子女を差し出させている。女性は采女、男性は兵衛として天皇に仕えた。武芸に巧みな兵衛に対し、采女の推薦条件は13歳以上30歳未満で形容端正の容貌が重視され
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京内の病人収容、治療を行う施薬院に勤める名代と帝の侍医職を追われた諸男を中心に物語が展開する。
疫病が蔓延、市井の人々が薬を渇望しても、その値が吊り上げられる。そんな人々は「常世常虫」なる神を頼り、怪しげなまじない札を買い求める。
「責められるべきは京の衆ではない。まことは疫病の流行に迅速な手を打てぬ官ではないか」
「病とは恐ろしいものだ、と名代は思う。それは人を病ませ、命を奪うばかりではない、人と人との縁や信頼、理性をすら破壊し、遂には人の世の秩序までも、いとも簡単に打ち砕いてしまう。」
どの時代においても、繰り広げられる事象は同じだ。 -
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天平年間、平城京における裳瘡(天然痘)の流行を扱った医療時代小説である。天然痘はウイルスが原因だ。古代何度もパンデミックが起きている。現代は根絶しているが、我々世代は何れかの肩に昔のワクチンの痕(あと)が必ず微かに残っている。しかし、古代は天然痘で生き残った者には一生痘痕面(あばたずら)がついて回った。
天平9年(737年)、京内の病人の収容・治療を行う公的施設、施薬院では、天然痘の発生から忽ち大パニックに陥る。いわゆる医療崩壊である。何しろまともな医師が1人しかいない。庶民は怪しげなまじない札を高価格で買い、フェクニュースに踊らされて外国人襲撃を始める。現代でも起こりそうな事を上手いこと時 -
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この世の地獄はどこにある。
天然痘の流行する奈良の都の様子を描いた作品。施薬院に配属された名代、濡れ衣で侍医から一時は罪人にまで身を落した諸男、この2人を軸に話が進んでいく。医師の道とは何なのか。絶望と恐怖の中でどのように生きるのか。それはいつの時代でも不変の問い。
効果のないまじないが流行し、それに大金を払う人が出たり、とにかく自分だけは助かりたいと、閉じこもって食料などは届けてもらったり、病は海外からもたらされたものだと、異国の人を攻撃したり、新型コロナウイルスの感染が拡大する今の様子と通じるところもある。
医師の姿に自分の答えを見つけた名代の独白がいい。全員を救うことはできず、人を -
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ネタバレ少女たちのお仕事青春小説かと思っていたが、内容はもうちょっと大人だった。
地方豪族の娘は郷里においては名家のご令嬢でも、中央に出てくれば田舎娘。
畿内豪族の娘との格差もあり、女性が職を持つといってもひとりで生きていくことは難しい。
若子は妹の代わりに急遽出仕が決まり、何の覚悟もろくな準備もないまま出てきたために仕事にも慣れずどこかふわふわしている。
それが現実を知ることにより自分の生きる道を見つける。
能力も高く男性に交じって仕事をしたいと思う笠女も、いざ男性官僚の能力を超えられると知られれば女だからとはじかれる。
恋愛に奔放な春世はそうしなければ生きていけなかった。
誘いを断っても受け