澤田瞳子のレビュー一覧
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聖武帝の時代。長屋王事件前夜の平城京を舞台に、3人の采女たちを中心に紡ぎ出される日常を描いている。
解説によれば、それぞれモデルがいるらしい。粟国造若子をモデルとした若子、飯高君笠目をイメージした笠女、そして藤原麻呂の子を産み、安貴王に愛され万葉集にも歌が残る因幡八上采女。
この小説の舞台の後、安宿媛の産んだ基王子が亡くなり、長屋王が国家転覆を諮ったとして邸宅を囲まれ、妻の吉備内親王とともに自殺。またこの事件を主導した藤原四兄弟は天然痘で次々と世を去る。
それらの前哨戦としての藤原家と長屋王の諍いや、井上内親王の伊勢下向などが描かれており、緊張感を持って終始読み進めることができた。
長屋王が -
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"しかしこの華やかな後宮のただ中で、夢も定かに見られぬ身だからこそなお、自分たちは各々の生き方を全うするため、足掻き続けずにはおられぬ。いつか、夢を掴むその時まで。"
奈良時代。聖武天皇の頃。平城宮に仕える采女たちの物語。
メインの登場人物は3人。それぞれモデルとなった実在の采女がいる。
采女、という音の響きでは想像がなかなかつかないが、彼女たちはバリバリの官僚である。
明日はどうなるかわからない。それは奈良時代の後宮でも変わらない。
信念を変えず、しかし時に変化させながら生き抜いてやる。自分を守れるのは自分だけなのだからという、女性官僚たちの物語。
そして、ラストは長 -
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最近詩吟を始め、菅原道真が左遷された際に詠んだ詩を吟じるにあたって、道真の人となりが知れる本を探していました。
すると、ドンピシャ。左遷後の様子を書いたこちらの小説に辿り着きました。
詩吟に関しては、左遷されたあとも醍醐天皇を想って余香に浸る・・・そんな様子が詩から見て取れ、とても重く悲しい道真を想像。
ですが、こちらの小説を読み、たしかに左遷の事実に打ちのめされてはいるものの、『喜怒哀楽を露わにする雷神』と例えられるほど、怒って泣いて、笑って企んで・・・。ジェットコースターのような日常が描かれていてなんともコミカルな道真。
勝手に救われた気持ちになりました。
お節介を焼いてくれる小野恬子