澤田瞳子のレビュー一覧

  • 吼えろ道真 大宰府の詩

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    道真に振り回される葛根と温厚で何を考えているのか分からない伯父の葛絋。小野篁の息子と孫ということだがこの2人の話も読んでみたいと思ってしまうぐらいのめり込んでしまう話ばかりだった。

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    2025年01月02日
  • 月ぞ流るる

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     澤田氏らしい美しい物語だった。12月にして今年のベスト本。これは、朝児と頼賢、三条天皇と姸子の4人物語。
     序盤は朝児と頼賢師弟の信頼関係の醸成を楽しみつつも、頼賢の養母の原子の死の謎に迫っていく、静かな嵐の気配を感じさせられる展開。ただ後半早めに死の真相は判明し、そこからは一転三条天皇と姸子の物語に移行していく。月が満ちるように栄華を極める道長に対し、国のトップでありながら道長に両手両足を縛られ、実際に耳目も機能しなくなる天皇。そしてその対立のもとで天皇を慕いながらも政敵の子として愛情を向けてもらえない姸子。
     ここに頼賢と原子を絡め、三条天皇が何故ここまで苦しみながらも譲位しないかに解を

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    2024年12月18日
  • 灯台を読む

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    日本財団「海と灯台プロジェクト」から生まれた紀行。近年の流行作家門井慶喜、澤田瞳子、阿部智里、川越宗一、永井紗耶子、安部龍太郎。それぞれある地域の灯台を3カ所訪れ時空を超えて想いに馳せる。
    映画「喜びも悲しみも幾歳月」の世界は遠い過去。無人化さらにGPSの普及により灯台は役目を終えつつある。
    とはいえ灯台の立つ場所は古代からの交通の要衝。異国との貿易の出発点、文化が交わる場所でもあった。

    地域の海の記憶を辿り、新たな海洋体験を 灯台とともに

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    2024年12月05日
  • 輝山

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    なんとも静かで穏やかで心に残る作品でした。
    「石見銀山」て地味すぎるやろーと思いましたが、人の優しさとか、いずれ誰もが終わりを迎える命とか、成長した我が子を送り出すさみしさと覚悟とか、印象に残った箇所が多々あり、付箋をつけちゃいました(^^)

    小中学生相手の仕事をしていますが、こういった題材の文章に日本人の子どもたちはもっと触れるべきだと思います。
    歴史でも国語でもぜひとも教科書や副読本で扱って欲しい。

    澤田瞳子さんの作品を制覇しようと思いましたし、愛猫家と知り、ますます澤田瞳子さんが大好きになりました。

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    2024年11月23日
  • 灯台を読む

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    ネタバレ

    GPSの進歩により、灯台がその役割を終えていっているという事実を初めて知った。
    「海と灯台プロジェクト」協力のもと、灯台が存在することの意義を、その土地のあらましや歴史、灯台を守ってきた人々にスポットライトを当てることで言語化した、6名の作家さんによる紀行文。

    作品を読みながら旅行気分に浸れるので愉しい。作家のみなさんが灯台の中の螺旋階段を登り、灯台室に入られる場面のわくわく感が伝わってきた。フルネルライトを初めて検索したが、見事なライトであった。

    灯台の父と呼ばれるイギリス人のブラントンさんという方が、菜種油で火を灯す木造の灯明台が主な海の道標だった日本に、西洋式の灯台をもたらした。また

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    2024年11月18日
  • 若冲

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    若冲が好きでいくつか美術館で観ていたが、本書の中で作品名が出てくると「おーっ!これ見た見た!」と興奮していた。

    限られた史実と説得力のあるフィクションで描かれた若冲の生涯、当時の人々の生活までもリアルに感じられ京都に行って聖地巡りをしたくなった程。

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    2024年11月04日
  • 火定

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    時は天平9年、藤原光明子によって設立された施薬院で働く名代(なしろ)は、有能だがきつい上司の広道に辟易し、頑張っても庶民の相手ばかりで出世の道のない職場に嫌気がさしていた。そんな中、新羅から戻った帰国団員に発熱が見られ、次第に京の町は裳瘡(天然痘)による地獄絵図の様相を呈すようになる。病魔が蔓延る都ではあやしいお札や宗教、異国のものの排斥など様々な思惑が織り交ざり、出世という観念からしか考えられていなかった名代の気持ちも人々(施薬院で孤軍奮闘する綱手(民間の医者で出世しない)、まじめな役人の真公、出所不明だが仕事のできる謎の女性絹代、医師の家系ではないが実力で従医になったが謀られて罪人となり囚

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    2024年10月21日
  • 星落ちて、なお

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    画鬼・河鍋暁斎の娘、とよ。
    彼の弟子でもある彼女は異母兄・周三郎と反発し合い、競い
    ながら、絵師として父の画業を追い、明治・大正期を生きる。
    蛙鳴く 明治二十二年、春 かざみ草 明治二十九年、冬
    老龍 明治三十九年、初夏 砧 大正二年、春
    赤い月 大正十二年、初秋 画鬼の家大正十三年、冬
    解説 東山彰良

    とよが22歳のとき、父は亡くなった。それは河鍋暁斎。
    様々な画風を自在に操り、奔放な画巧の稀代の画家。
    絵を描くことが父との紐帯であり、異母兄・周三郎も同様。
    赤い血でなく黒い墨で結び合わされたようで、お互い反発し、
    競いながらも、父の画風を守るために画技を磨き合う。
    偉大な星が落ちても、そ

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    2024年10月18日
  • 輝山

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    最初、この作品は「重い」と思った。確かに、命の儚さを扱ったところは「重い」に違いないけれど、暗くはない。むしろ清々しい。澤田瞳子さんならではの作品だと思ったし、らしくない、とも思った。いつもながら、読み終わるのが惜しい、ずっと読んでいたい、そんな作品だ。

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    2024年10月08日
  • 名残の花(新潮文庫)

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    華々しい経歴の主人公が
    失意のうちに老いて登場すると
    普通は、回想で物語が展開するが
    この作品は違う。未来に進み
    ジジイがいい感じに成長していく。
    1話目と後半で別人のような
    イケメンならぬ
    イケジジイへの変化が
    面白い!

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    2024年08月08日
  • 星落ちて、なお

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    河鍋暁斎が好きなので読んだ。
    天才絵師河鍋暁斎の娘の絵師河鍋暁翠こととよの話。
    タイトルの星とはこの父親のことなのかどうか。
    絵師として万能すぎる父の亡き後の兄弟や父の弟子たちとの関係など。
    暁斎の長男周三郎との関係性に緊張感があって面白かった。

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    2024年08月06日
  • 満つる月の如し 仏師・定朝

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    仏師定朝・叡山僧侶の隆範・藤原一族の大河のような読み応えのある一冊。親王と中務の悲恋と壮絶な最期はサロメのようで、定朝は観音の理想をそこに見出す。単純に言うと"腕"に魂が宿っていくストーリーだが、読み終えるのが勿体無いと思わせる作品だった。

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    2024年08月04日
  • 恋ふらむ鳥は

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    「熟田津に船乗りせんと…」の歌が詠まれた背景はこんなだったのか!と高揚感に浸った。歌の力で場の流れを変えていく。額田王の名が教科書の文字ではなくその時代を生きた一人としてキャラが立った(笑)

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    2024年07月29日
  • 火定

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    2020/6/20

    すごいものを読んでしまった気分。

    新型コロナの流行を機に読もうと思ったあるあるパターンです。
    寧楽(なら)、つまり奈良時代の天然痘パンデミックもの。
    奈良時代の天然痘ともなると現代の新型コロナよりかなりエグい描写の地獄絵図が繰り広げられるわけですが、乱世の人心は現代にも通じるものがあるんだろうね。

    本の紹介に「光と闇」とありますが、光みたいなものも確かに感じた。
    医療従事者の志が尊かった。
    澤田瞳子さん知らなかったので他のも読まなければ。

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    2024年05月19日
  • 歴屍物語集成 畏怖

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    面白かった!
    怒涛の一気読みでした。

    天野先生の『死霊の山』がお気に入りです。信長が仏閣を焼け打ち、撫で斬りにしているのは有名ですが、この物語のラストシーンが胸に染み入ります。

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    2024年04月25日
  • のち更に咲く

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    スリルある平安ミステリー小説。
    「真と嘘」は明確にされていくのでモヤモヤはなくスッキリ読み終えました。
    優しく切なくも美しい終幕♡
    本帯の言うよう「艶やかに魅せる澤田絵巻」
    全くそのものでした。

    高雄の守りたかった御位子。小紅、忠信、保昌がいるからきっと大丈夫!と私は思っている。

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    2024年04月16日
  • のち更に咲く

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    道長邱で働く女房、父も兄も犯罪者で既に死んでいる。しかし盗賊の親分は死んだはずの兄だと噂が流れる。

    すごく面白かった。道長を含む貴族たちの権謀術数と道長を嫌う人達の憎悪を中心に描くミステリー

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    2024年04月12日
  • のち更に咲く

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    平安時代、権力の頂点に登り詰めていく藤原道長の陰で、失意の涙に沈んだ人たちはどう生きたか。
    歴史上の人物に大胆な配役が与えられている。
    盗賊として捕えられ獄死した、藤原保輔(ふじわらのやすすけ)だが、彼を忘れえぬ人々の想いは密かに咲き続ける。それは、あだ花なのだろうか。
    冷や飯食いの藤原たち、高貴な女性の秘めたる恋・・・
    アクションありミステリありで、読み進むにつれて引き込まれる。
    御以子のその後が気になります。
    のち更に続く、ということはないのでしょうか。

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    2024年04月09日
  • のち更に咲く

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    平安の藤原一族が栄華を極める時代の影に光をあて、同時代に生きた実際の人物を元に作者の創作が加わり、奇想天外な想定にハラハラドキドキ。
    寝ても覚めても続きが気になった小説でした。
    藤原保輔という貴族の生まれでありながら、呪われた六条の家系に翻弄され、盗賊になった小兄の生き様を知るべく、妹の小紅。忌まわしい家族を持ったことの後ろめたさを抱えながらも亡き兄の事を調べていくにつれ、強くなっていく様も見事。知的な女性像に好感が持てました。
    どの登場人物も個性際立っていて、読んでいて楽しい小説でした。直木賞受賞作は、これから読破します。

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    2024年03月22日
  • 月ぞ流るる

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    人はとかく、目を惹くものばかりを信じがちである…人目にはつかねど内心で案じている者は幾人もいる…p.336
    順調でなかったり不幸だったりどん底では辛く悲しく孤独に陥ったりしたこともあり、そんなこともあったときには静か〜
    に寄り添ってくれる優しさもあったなと…この本を読み終え改めて思い心温もる。
    頼賢の生い立ちには辛いこと悲しいことが多々あったけど、受けた優しさは心に染み込んでいいて、朝児との出会いが転機となり難ありながらも良い方へ成長していくののが微笑ましく嬉しく読み進めました。
    この物語の三条天皇の妃達の心内は平安時代の姫で卑しくないのがよかった。

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    2024年03月19日