澤田瞳子のレビュー一覧
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澤田氏らしい美しい物語だった。12月にして今年のベスト本。これは、朝児と頼賢、三条天皇と姸子の4人物語。
序盤は朝児と頼賢師弟の信頼関係の醸成を楽しみつつも、頼賢の養母の原子の死の謎に迫っていく、静かな嵐の気配を感じさせられる展開。ただ後半早めに死の真相は判明し、そこからは一転三条天皇と姸子の物語に移行していく。月が満ちるように栄華を極める道長に対し、国のトップでありながら道長に両手両足を縛られ、実際に耳目も機能しなくなる天皇。そしてその対立のもとで天皇を慕いながらも政敵の子として愛情を向けてもらえない姸子。
ここに頼賢と原子を絡め、三条天皇が何故ここまで苦しみながらも譲位しないかに解を -
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ネタバレGPSの進歩により、灯台がその役割を終えていっているという事実を初めて知った。
「海と灯台プロジェクト」協力のもと、灯台が存在することの意義を、その土地のあらましや歴史、灯台を守ってきた人々にスポットライトを当てることで言語化した、6名の作家さんによる紀行文。
作品を読みながら旅行気分に浸れるので愉しい。作家のみなさんが灯台の中の螺旋階段を登り、灯台室に入られる場面のわくわく感が伝わってきた。フルネルライトを初めて検索したが、見事なライトであった。
灯台の父と呼ばれるイギリス人のブラントンさんという方が、菜種油で火を灯す木造の灯明台が主な海の道標だった日本に、西洋式の灯台をもたらした。また -
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時は天平9年、藤原光明子によって設立された施薬院で働く名代(なしろ)は、有能だがきつい上司の広道に辟易し、頑張っても庶民の相手ばかりで出世の道のない職場に嫌気がさしていた。そんな中、新羅から戻った帰国団員に発熱が見られ、次第に京の町は裳瘡(天然痘)による地獄絵図の様相を呈すようになる。病魔が蔓延る都ではあやしいお札や宗教、異国のものの排斥など様々な思惑が織り交ざり、出世という観念からしか考えられていなかった名代の気持ちも人々(施薬院で孤軍奮闘する綱手(民間の医者で出世しない)、まじめな役人の真公、出所不明だが仕事のできる謎の女性絹代、医師の家系ではないが実力で従医になったが謀られて罪人となり囚
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画鬼・河鍋暁斎の娘、とよ。
彼の弟子でもある彼女は異母兄・周三郎と反発し合い、競い
ながら、絵師として父の画業を追い、明治・大正期を生きる。
蛙鳴く 明治二十二年、春 かざみ草 明治二十九年、冬
老龍 明治三十九年、初夏 砧 大正二年、春
赤い月 大正十二年、初秋 画鬼の家大正十三年、冬
解説 東山彰良
とよが22歳のとき、父は亡くなった。それは河鍋暁斎。
様々な画風を自在に操り、奔放な画巧の稀代の画家。
絵を描くことが父との紐帯であり、異母兄・周三郎も同様。
赤い血でなく黒い墨で結び合わされたようで、お互い反発し、
競いながらも、父の画風を守るために画技を磨き合う。
偉大な星が落ちても、そ -
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人はとかく、目を惹くものばかりを信じがちである…人目にはつかねど内心で案じている者は幾人もいる…p.336
順調でなかったり不幸だったりどん底では辛く悲しく孤独に陥ったりしたこともあり、そんなこともあったときには静か〜
に寄り添ってくれる優しさもあったなと…この本を読み終え改めて思い心温もる。
頼賢の生い立ちには辛いこと悲しいことが多々あったけど、受けた優しさは心に染み込んでいいて、朝児との出会いが転機となり難ありながらも良い方へ成長していくののが微笑ましく嬉しく読み進めました。
この物語の三条天皇の妃達の心内は平安時代の姫で卑しくないのがよかった。