澤田瞳子のレビュー一覧

  • 吼えろ道真 大宰府の詩

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    太宰府に下った菅原道真。悲嘆にくれ、都の人々を怨む日常かと思いきや、この作品の道真は手に負えないおじさんでありながらも、逞しくも気儘に暮らしている。大変良い。

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    2025年09月30日
  • 孤城 春たり

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    地元の「山陽新聞」に連載された山田方谷の物語。
    人の生き方の深さを感じさせられた一作だった。

    棺を蓋いて事定まる。
    変わり続ける世であればこそ、人は変わらぬ日々を送らねば。

    いい言葉を知った。

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    2025年07月21日
  • しらゆきの果て

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    時代時代に生きた絵師の短編集。直木賞作品「星落ちて、なお」でも素晴らしかった作品たちの表現に想像力がかき立てられる。「輝ける絵巻」の白河院が作った源氏絵巻、目にしたいものだ。

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    2025年07月12日
  • 夢も定かに

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    "しかしこの華やかな後宮のただ中で、夢も定かに見られぬ身だからこそなお、自分たちは各々の生き方を全うするため、足掻き続けずにはおられぬ。いつか、夢を掴むその時まで。"

    奈良時代。聖武天皇の頃。平城宮に仕える采女たちの物語。
    メインの登場人物は3人。それぞれモデルとなった実在の采女がいる。
    采女、という音の響きでは想像がなかなかつかないが、彼女たちはバリバリの官僚である。
    明日はどうなるかわからない。それは奈良時代の後宮でも変わらない。
    信念を変えず、しかし時に変化させながら生き抜いてやる。自分を守れるのは自分だけなのだからという、女性官僚たちの物語。

    そして、ラストは長屋王の変の2年前で終わる。彼女たちがどう生き抜いたのかも知りたくなった。
    また澤田さんの本を読みたい。

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    2025年07月06日
  • 火定

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    面白かった。
    コロナ終息後に読んだので、余計に今の現代と重なるところを感じた。
    疫病が蔓延して救いを求めるのに、札にすがり、いわれなき原因をつくり責め立てる。

    人はみないずれ死に、土に還る。
    どれだけ悶えてもあと百年もすれば、それを知る人もいなくなる。
    今、この時を必死に生きる。

    やりきれなさから、人を恨んだり間違ったことをしてしまうこともあるが、人の為に尽くせることってすごいなと思った。

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    2025年06月28日
  • 若冲

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    若冲が京都の青物問屋の長男に生まれたが弟に家督を譲り絵師としてその生涯を終えた程度のことは知っていた。暮らしに困らない若冲の絵はやはり魅力的でかねてから読みたいと思っていた作品。錦市場の危機や天明の大火など史実を交えながら義理の妹の視点による若冲の生涯独自の解釈で面白かった。

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    2025年04月29日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    最近詩吟を始め、菅原道真が左遷された際に詠んだ詩を吟じるにあたって、道真の人となりが知れる本を探していました。
    すると、ドンピシャ。左遷後の様子を書いたこちらの小説に辿り着きました。

    詩吟に関しては、左遷されたあとも醍醐天皇を想って余香に浸る・・・そんな様子が詩から見て取れ、とても重く悲しい道真を想像。

    ですが、こちらの小説を読み、たしかに左遷の事実に打ちのめされてはいるものの、『喜怒哀楽を露わにする雷神』と例えられるほど、怒って泣いて、笑って企んで・・・。ジェットコースターのような日常が描かれていてなんともコミカルな道真。
    勝手に救われた気持ちになりました。
    お節介を焼いてくれる小野恬子(小野篁の孫と説明があるまで小野小町だと気づかなかった)や、世話役に任命された龍野保積など、周囲との関わり合いによって徐々に活力を取り戻す姿にとても親しみが持てました。
    道真も人間だったんだなぁ。

    京に居たときには、本当の人の暮らしや貧しさを感じ取ることができなかった(隠された事実もあれど)と気づき、「私はなんのために・・・」と嘆く姿が印象的。
    決して自分の才に傲慢にならず、人の世を良くしようと努めた政治家で、人の世を見たまま表現しようとした歌人だったのかなと想像しました。

    人ひとりの生き方を変えられぬ者に、大いなる国を動かせるはずがない。
    そう思うと、道真の存在がたくさんの影響を及ぼしたわけであって、左遷という辛い事実も少し報われる気がします。
    どこで、どう生きるのか。自分の才をどう生かすのか。
    すべては自分次第で、出会い次第で、人生捨てたもんじゃないなと思わせてくれる素敵な物語でした。

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    2025年04月28日
  • 吼えろ道真 大宰府の詩

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    道真に振り回される葛根と温厚で何を考えているのか分からない伯父の葛絋。小野篁の息子と孫ということだがこの2人の話も読んでみたいと思ってしまうぐらいのめり込んでしまう話ばかりだった。

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    2025年01月02日
  • 月ぞ流るる

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     澤田氏らしい美しい物語だった。12月にして今年のベスト本。これは、朝児と頼賢、三条天皇と姸子の4人物語。
     序盤は朝児と頼賢師弟の信頼関係の醸成を楽しみつつも、頼賢の養母の原子の死の謎に迫っていく、静かな嵐の気配を感じさせられる展開。ただ後半早めに死の真相は判明し、そこからは一転三条天皇と姸子の物語に移行していく。月が満ちるように栄華を極める道長に対し、国のトップでありながら道長に両手両足を縛られ、実際に耳目も機能しなくなる天皇。そしてその対立のもとで天皇を慕いながらも政敵の子として愛情を向けてもらえない姸子。
     ここに頼賢と原子を絡め、三条天皇が何故ここまで苦しみながらも譲位しないかに解を与えていく。かつて自身が犯した罪を自らが苦しむことで償う、譲位して解放されることこそが罪だと。
     そしてラストシーン。百人一首で有名な「心にも〜」とそれに対する姸子の変化。前者は天皇のままならぬ苦しみへの叫びと解釈するのが通説だが、本作では姸子への愛情と受け取れる。「いつかはこの月も恋しくなるだろう」ではなく、「生きながらえたおかげであなたと月が見れた」と。歌が苦手な姸子がすぐに返歌を送るのも良い。そのへ返歌も朝児がかつて頼賢とその父を重ねて思い返した歌で、別の解釈であることも素晴らしく、澤田氏の和歌への造詣の深さに感嘆するばかり。
     さらに、上記出来事が朝児の栄花物語への思い、史書でも物語でもないかな文字の歴史書の意義、読んだ人が怒ったり悲しんだりすることで少しでも現実のモヤモヤから解放されることを願う気持ちの決心に帰着する展開は、賞賛の他に言葉が見つからない。

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    2024年12月18日
  • 灯台を読む

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    日本財団「海と灯台プロジェクト」から生まれた紀行。近年の流行作家門井慶喜、澤田瞳子、阿部智里、川越宗一、永井紗耶子、安部龍太郎。それぞれある地域の灯台を3カ所訪れ時空を超えて想いに馳せる。
    映画「喜びも悲しみも幾歳月」の世界は遠い過去。無人化さらにGPSの普及により灯台は役目を終えつつある。
    とはいえ灯台の立つ場所は古代からの交通の要衝。異国との貿易の出発点、文化が交わる場所でもあった。

    地域の海の記憶を辿り、新たな海洋体験を 灯台とともに

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    2024年12月05日
  • 輝山

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    なんとも静かで穏やかで心に残る作品でした。
    「石見銀山」て地味すぎるやろーと思いましたが、人の優しさとか、いずれ誰もが終わりを迎える命とか、成長した我が子を送り出すさみしさと覚悟とか、印象に残った箇所が多々あり、付箋をつけちゃいました(^^)

    小中学生相手の仕事をしていますが、こういった題材の文章に日本人の子どもたちはもっと触れるべきだと思います。
    歴史でも国語でもぜひとも教科書や副読本で扱って欲しい。

    澤田瞳子さんの作品を制覇しようと思いましたし、愛猫家と知り、ますます澤田瞳子さんが大好きになりました。

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    2024年11月23日
  • 灯台を読む

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    ネタバレ

    GPSの進歩により、灯台がその役割を終えていっているという事実を初めて知った。
    「海と灯台プロジェクト」協力のもと、灯台が存在することの意義を、その土地のあらましや歴史、灯台を守ってきた人々にスポットライトを当てることで言語化した、6名の作家さんによる紀行文。

    作品を読みながら旅行気分に浸れるので愉しい。作家のみなさんが灯台の中の螺旋階段を登り、灯台室に入られる場面のわくわく感が伝わってきた。フルネルライトを初めて検索したが、見事なライトであった。

    灯台の父と呼ばれるイギリス人のブラントンさんという方が、菜種油で火を灯す木造の灯明台が主な海の道標だった日本に、西洋式の灯台をもたらした。また、戦時中は灯台が攻撃の対象になったこと、灯台がある場所には神社があることなども知ることができた。

    絶滅危惧種ともいえる灯台に、何を感じ、何を見るかは、そのひとの感応力によるのかもしれない。
    灯台が海をわたる人々の命を守るために重要な役割を果たしてきたことは、時を経ても語り継がれなければならないと思った。

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    2024年11月18日
  • 若冲

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    若冲が好きでいくつか美術館で観ていたが、本書の中で作品名が出てくると「おーっ!これ見た見た!」と興奮していた。

    限られた史実と説得力のあるフィクションで描かれた若冲の生涯、当時の人々の生活までもリアルに感じられ京都に行って聖地巡りをしたくなった程。

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    2024年11月04日
  • 火定

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    時は天平9年、藤原光明子によって設立された施薬院で働く名代(なしろ)は、有能だがきつい上司の広道に辟易し、頑張っても庶民の相手ばかりで出世の道のない職場に嫌気がさしていた。そんな中、新羅から戻った帰国団員に発熱が見られ、次第に京の町は裳瘡(天然痘)による地獄絵図の様相を呈すようになる。病魔が蔓延る都ではあやしいお札や宗教、異国のものの排斥など様々な思惑が織り交ざり、出世という観念からしか考えられていなかった名代の気持ちも人々(施薬院で孤軍奮闘する綱手(民間の医者で出世しない)、まじめな役人の真公、出所不明だが仕事のできる謎の女性絹代、医師の家系ではないが実力で従医になったが謀られて罪人となり囚人生活で底辺を味わった諸男(恩赦で牢を出て、獄中での知的行動により藤原房前家に使える)と獄中で知り合った宇須、虫麻呂。施薬院の隣にある悲田院の子どもたちとそれを見守る隆英。)と関わりながら変化していく。
    名代と諸男の二人が天然痘の悲惨な状況下で心境を変化させていくところ、天然痘が収まっていくまでの人々の頑張りや思い、治療法の判明していく様など、様々な角度から読みごたえがあって面白かった。個人的に難しい言葉の使い方や話の構成などが好みなので★5ですが、合わない人は多いかも。
    難しいので高校生くらいから。死骸の表現がかなりグロテスクなので、知的に大丈夫でも中学生以上がいいと思います。

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    2024年10月21日
  • 星落ちて、なお

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    画鬼・河鍋暁斎の娘、とよ。
    彼の弟子でもある彼女は異母兄・周三郎と反発し合い、競い
    ながら、絵師として父の画業を追い、明治・大正期を生きる。
    蛙鳴く 明治二十二年、春 かざみ草 明治二十九年、冬
    老龍 明治三十九年、初夏 砧 大正二年、春
    赤い月 大正十二年、初秋 画鬼の家大正十三年、冬
    解説 東山彰良

    とよが22歳のとき、父は亡くなった。それは河鍋暁斎。
    様々な画風を自在に操り、奔放な画巧の稀代の画家。
    絵を描くことが父との紐帯であり、異母兄・周三郎も同様。
    赤い血でなく黒い墨で結び合わされたようで、お互い反発し、
    競いながらも、父の画風を守るために画技を磨き合う。
    偉大な星が落ちても、その画業を追い、行き着こうとする二人。
    だが、時代の変化、画壇の変遷の波。明治は遠くなりにけり。
    その中で、とよは多くの出会いと別れを体験する。
    父の弟子たちの姿、彼らの家族、結婚と離婚等々。
    長い年月の歩みは葛藤がありながらも、とよ自身を変えてゆく。
    人は喜び、楽しんでいいのだ。苦難を乗り越えた清兵衛の
    言葉がとよの心に使命を示す。父と兄のことを話すのが務めと。
    とよの真っ直ぐな生き方が印象的な作品でした。
    若い頃の、もがき苦しむ画業。兄の技巧への嫉妬。
    でも徐々に変化し、達観していく彼女自身の姿が良かったです。
    とよ・河鍋暁翠の絵が見たくなりました。

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    2024年10月18日
  • 輝山

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    最初、この作品は「重い」と思った。確かに、命の儚さを扱ったところは「重い」に違いないけれど、暗くはない。むしろ清々しい。澤田瞳子さんならではの作品だと思ったし、らしくない、とも思った。いつもながら、読み終わるのが惜しい、ずっと読んでいたい、そんな作品だ。

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    2024年10月08日
  • 名残の花(新潮文庫)

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    華々しい経歴の主人公が
    失意のうちに老いて登場すると
    普通は、回想で物語が展開するが
    この作品は違う。未来に進み
    ジジイがいい感じに成長していく。
    1話目と後半で別人のような
    イケメンならぬ
    イケジジイへの変化が
    面白い!

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    2024年08月08日
  • 星落ちて、なお

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    河鍋暁斎が好きなので読んだ。
    天才絵師河鍋暁斎の娘の絵師河鍋暁翠こととよの話。
    タイトルの星とはこの父親のことなのかどうか。
    絵師として万能すぎる父の亡き後の兄弟や父の弟子たちとの関係など。
    暁斎の長男周三郎との関係性に緊張感があって面白かった。

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    2024年08月06日
  • 満つる月の如し 仏師・定朝

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    仏師定朝・叡山僧侶の隆範・藤原一族の大河のような読み応えのある一冊。親王と中務の悲恋と壮絶な最期はサロメのようで、定朝は観音の理想をそこに見出す。単純に言うと"腕"に魂が宿っていくストーリーだが、読み終えるのが勿体無いと思わせる作品だった。

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    2024年08月04日
  • 恋ふらむ鳥は

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    「熟田津に船乗りせんと…」の歌が詠まれた背景はこんなだったのか!と高揚感に浸った。歌の力で場の流れを変えていく。額田王の名が教科書の文字ではなくその時代を生きた一人としてキャラが立った(笑)

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    2024年07月29日