あらすじ
読書メーターで感動の声多数!
単行本刊行時、新聞・雑誌で書評掲載多数、
話題の直木賞受賞第一作、待望の文庫化!
世界遺産・石見銀山を舞台に直木賞作家が描く
名もなき者たちの美しき生き様
あの山は命の輝きを永遠に宿し続けるいのちの山――
江戸後期、弘化年間。
石見国大森銀山に赴き、大森代官所の中間として働く金吾は、
江戸から代官・岩田鍬三郎の身辺を探る密命を帯びていた。
間歩で鉱石を採掘し、気絶に罹り若くして命を落とす掘子、
重い荷を運び母と妹を養う手子の少年、石を選別するユリ女――
銀山で懸命に働く人びとの姿に心動かされる金吾。
さらに彼らを慈悲深く見守る岩田を見て、金吾は己の命に疑問を抱く……。
【目次】
第一章 春雷
第二章 炎熱の偈(げ)
第三章 銀の鶴
第四章 ありし月
第五章 たたずむはまつ
第六章 いのちの山
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Posted by ブクログ
輝く山と書いて「輝山」。きざんと読む。辞書には載っていない著者の造語。
江戸時代後期、石見銀山が小説の舞台。つまり銀山を輝く山と表現している。
銀山で懸命にあるいは命がけで働く人々の姿に心動かされる。代官の身辺を探る密命を帯びた代官所の中間、金吾の行動。読み終わったイメージは、女流、山本周五郎かと思った。
銀山界隈は年配の男の姿が極めて少ない。危険と隣あわせで鉱石を採掘する掘子たちは、咳を繰り返して煤のようなものを吐いた末に短い命を終えるからだ。
だが、金吾がこの町で出会った掘子たちはみな恬淡と陽気で、四十歳までは生きられない境遇を嘆く色は微塵もない。
それとも命に限りがあると知ればこそ、短い夏を精一杯生きる蝉の如く、今この時を楽しめるのだろうか。
ネタバレになるので内容にはあまりふれないが、随所に現れる光る文章がいい。
「長い冬の後には、必ず春が来る。年によってはなかなか春が巡り来ず、雷が鳴り、冷たい雨が降る折もあるかもしれない。しかしその雷は確実にいつか、春を呼ぶ春雷に代わるのだ。」
「この世は辛く、不条理だ。だが、おのぶが貼った不動明王の図像が叡応の手になるものであり、この月輪寺で配られる薬が岩田が手配したものであるように、学問も薬も祈りもーこの世の哀しみも喜びも、すべては人ゆえにもたらされる。ならば人を救えるものまたたった一つ、人でしかないのではあるまいか。」
「親しい者の死を悲しみ、嘆くのは人の常だ。だが苦しみながら亡くなっていった仲間の死にざまを思うよりも、自分は元気に間歩稼ぎをしていた頃の彼らの姿を覚えていたい。それこそが生きてこの世に残った者の務めではないか、と与平次は眩しいものを眺めるように眼を細めた。」
澤田瞳子の小説はこの本を含めて3冊読んだ。僕のお気に入りの作家のひとりになった。
Posted by ブクログ
なんとも静かで穏やかで心に残る作品でした。
「石見銀山」て地味すぎるやろーと思いましたが、人の優しさとか、いずれ誰もが終わりを迎える命とか、成長した我が子を送り出すさみしさと覚悟とか、印象に残った箇所が多々あり、付箋をつけちゃいました(^^)
小中学生相手の仕事をしていますが、こういった題材の文章に日本人の子どもたちはもっと触れるべきだと思います。
歴史でも国語でもぜひとも教科書や副読本で扱って欲しい。
澤田瞳子さんの作品を制覇しようと思いましたし、愛猫家と知り、ますます澤田瞳子さんが大好きになりました。
Posted by ブクログ
最初、この作品は「重い」と思った。確かに、命の儚さを扱ったところは「重い」に違いないけれど、暗くはない。むしろ清々しい。澤田瞳子さんならではの作品だと思ったし、らしくない、とも思った。いつもながら、読み終わるのが惜しい、ずっと読んでいたい、そんな作品だ。
Posted by ブクログ
戦国時代に本格的な銀の採掘が始まった石見銀山。
その後、支配者を変えながら大正時代まで約400年採掘が続いた間にどれだけの若者の命を呑み込んだのだろう。
今よりもずっと生まれた境涯を変えることが難しかった時代に、40歳まで生きられぬ定めを受け入れて生きていた人々。
逞しくも痛ましい登場人物達の生き様が胸に迫る。
自分が金吾の立場だったら、親しくなった人たちを次々と見送らなければならないことに耐えられるだろうか。
石見銀山を訪れたくなった。
Posted by ブクログ
江戸時代に石見銀山で働く人々の話。遠き昔より鉱山の採掘作業は過酷な労働の代名詞。堀子たちは視界不良の中で土砂崩れ、地下水の噴出、粉塵、低酸素、ガス爆発などの危険に晒される現場に大した装備もなく足を踏み入れる。それゆえ大けがや「気怠れ」と呼ばれる呼吸疾患で彼らの平均寿命は40年と短く、高給と引き換えに自らの命を差し出しているに等しい。陰気な題材ではあるが、主人公を始め登場するキャラクターの陽気な様と割り切りった死生観によって中和され、物語は読みやすい。単に銀山にまつわる日常が描かれるだけではなく、事件性を秘めた展開も飽きずに読める工夫と思う。
昔は貨幣を作るにも多くの命がかかっていた。カネの重みは命の重み。鉱物としての重さ以上に価値を感じるものではなかったか。今の貨幣には感じることのない重さだろう。