澤田瞳子のレビュー一覧

  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    朝廷での権利争いに敗れて太宰府に配流され、その怨みを宥めるために天神さんとして祀られた、というエピソードは有名な菅原道真を生身の人間として取り上げた作品。
    当時の記録からして性格や日常生活に関する資料なんて殆ど残ってないはずなので、数少ない史実をベースにここまで面白い物語に仕上げたのは流石です。
    諸説ある小野小町を意外なキーパーソンとして登場させているもの面白い。次作も期待。

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    2025年01月09日
  • 孤城 春たり

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    備中松山藩の幕末期の顛末を描く。
    知より剣を尊ぶ熊田恰は山田方谷を付け狙っていたが、大石や三島の諫言で方谷に準じていく。

    幕末の顛末を知る読者には備中松山藩の行く末がわかっているだけに、藩主板倉勝静が徳川幕府へ恭順していた故の顛末には悲しむべきものがあった。
    時代小説ではあまり書かれてこなかった備中松山藩を取り上げた本作は、幕末期の歴史観に新たな一面が加わわり興味深かった。

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    2025年01月06日
  • 夢も定かに

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     奈良時代の宮仕えの采女、若子・笠女・春江を軸とした青春小説。十代の女の子が主人公とは言え、話は政治に情欲と生々しく実に古代らしく良い。三人それぞれキャラは立っているものの、あまり感情移入できず、小説の評価としてはまずまず。心情描写はしっかりしているが、事件に重点を置いているからか、事の重大さに比して軽い。これが当時のリアルなのかもしれないが。
     各短編の中で群を抜いて好きなのが「藤影の猫」。最近よく落語をきくが、まさに落語の人情噺のような温まる落ち。不遇をかこつ采女のささやかな抵抗といたずら。籠の鳥と自身の境遇を重ねる表現に心を掴まれる。皇女目線では敵にあたる藤原房前にも人の心と流儀があり、完全な悪人ではないのも良い味となっている。

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    2024年12月30日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    あー好き。温かい読後感。菅原道真…あまりに存在が遠すぎて、実在した普通の人間なのだと考えたこともなかった。会話して、泣いて笑って、同じ人間であることが強く感じられて、あー最後まで、読めてよかった。
    …というのも、語彙が難しすぎて、スマホが手放せなかった。平安時代はあまり興味がなかったけれど、やっぱり澤田瞳子さん、いいわー(^^)

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    2024年12月12日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    登場人物がみな、生き生きしていました。亡くなっていく人も臨終の瞬間まで生き生きしていました。と、なんとも矛盾した言い方ですが、その場での役割をしっかりと果たして、この話の中でなくてはならない存在感を放ち、亡くなっていきました。人だけではなく、書画までが登場人物として人格と存在感を持って訴えかけてきました。
    とはいうものの、決して重苦しいものではなく、だからと言って軽々しくなく、激しい一陣の雷雨のように過ぎていきます。
    ヒロイン、道真と同時代の人であったのか、とつくづく思った次第です。彼女は彼女で有名ですが、なんというか、時代から浮き立った存在。六歌仙の中でも一人、時代から浮いているような感覚だったので、そうか、道真と同時代か、と改めて認識しました。
    それにしても、いささか無駄遣いではないかなあ。もっとしつこいくらい活躍してほしかった。
    それは主人公についても同様に感じて、これだけのキャラクターがそろっていたら、もっといろんなことが起きて、もっといろんな活躍が語られてもいいのに、もっと読みたい、と切に思ったところです。
    そうか、だから2冊目、続巻があるのか。
    このあとすぐに本屋に発注します。
    あまりに面白すぎて、もっと読みたい気持ちが強くなりすぎて、それが物足りなさに思えて、星一つ減じたところです。
    今日から「雷」を見る目が変わりそうです。

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    2024年12月06日
  • 赫夜

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    馴染みのない時代の話なのだけど読めちゃうのがすごいんだよなー。さすがです。全冊サイン入りの試みもすごい。

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    2024年11月23日
  • 赫夜

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    富士山の噴火に伴う様々な出来事、富士山は休火山だと習ったような記憶があるが、何回も何回も噴火を続けている活火山だと言う意見が一般的になってきており、驚いた記憶がある。
    箱根山の街道造りの興味を惹かれたが、陸奥の国への集団移住、明治期の北海道開拓屯田兵の話、満州国への集団移住、満網開拓団の話、ロシア、ウクライナ、戦争、イスラエル、パレスチナ、戦争、など、現在の戦争も領土を巡る、様々な思いが引き起こしていることに思いを馳せながら読み終えた。
    長い歴史の様々な出来事の中で、人はその自分の生きる範囲でもがき、苦しみ、喜び、楽しみ、生きていくのが歴史なのかなと思わされた。

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    2024年10月03日
  • 赫夜

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    駿河国司の家人が馬の産地で体験した富士山の噴火。

    平安時代、どれだけ大変なことだったろうかと思う。この時代を平民の視線から見る大作。ちょっと長いなとは思う。

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    2024年09月16日
  • 歴屍物語集成 畏怖

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    短編集だがどの物語も個性がありストーリーがリアリティがありテーマがありとても引き込まれた!これは世に埋もれた快作だ!

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    2024年09月06日
  • 赫夜

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    阿弖流爲と坂上田村麻呂は別稿で読みたかった。取ってつけたみたい。世の中変わらぬものは何一つない。覇権主義の戦さも。ふるさとを思う人の心も。富士山噴火の話が、大河ドラマ「紫式部」と「阿弖流爲」懐かしむ方向に…。

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    2024年09月01日
  • 月ぞ流るる

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    澤田瞳子作にしては読みやすかった。
    大河ドラマ共リンクしていて、人物像が浮かび上がった。赤染右衛門、頼賢を中心に探偵モノでありながら三条天皇と研子のラストが胸をついた。悲劇でありながら見方によっては希望のラストが見事。

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    2024年08月14日
  • 月人壮士

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    螺旋プロで小生初、澤田瞳子さん。歴史小説初デビューです。以前、日経でエッセイを書かれていて、軽快な素敵な文章で歴史小説を書かれるのかなと、気になっていましたがその通りで、良かったです。

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    2024年08月12日
  • 若冲

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    面白かった
    あとがきで、若冲に妻がいたことは史実ではなく澤田さんの脚色であることを知った
    小説家、おそるべし!

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    2024年07月30日
  • 星落ちて、なお

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    ネタバレ

    タイトルが素敵。
    星=父が亡くなってもなお亡霊の様に父に取り憑かれている主人公の葛藤。
    血の繋がった家族じゃなくても目の前に物凄い才能を持った人がいたら、それは劣等感を抱いてしまうけど、それが血の繋がった家族であれば余計に逃れられないし、苦しいだろう。
    でも絵を描くことへの喜びに気づいて、自分の使命を自覚して進んでいく。そして星が落ちてもなおその星の輝きを後世に伝えようと決意する。
    主人公の正直で真面目で責任感の強い性格も読んでいて心地良かったし、素敵な物語であった。

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    2024年07月28日
  • 月ぞ流るる

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    ネタバレ

    赤染衛門が見つめた宮中の姿。

    夫を亡くした朝児は慶円に頼まれて頼賢の学問を見ることとなった。頼賢は不義の子であり、引き取って育ててくれていた原子の仇を娍子とみなして真実を明らかにする時を待っていた。再び女房として姸子のところに上がった朝児も犯人探しのために情報を集めることに協力する。火事が頻発する内裏、病に苦しむ帝に攘夷を迫る道長、疎まれる姸子、道長に近付き帝の側で真実を探そうとする頼賢……赤染衛門こと朝児はそのすべてをつぶさに見ていた。

    最後に三条帝が詠んだ百人一首の歌で涙がこぼれた。悲劇の帝、それでも帝を慕う人はいる。しかし世の流れには逆らえず。絶望を詠んだ帝に必死で寄り添う姸子。雲と月。あまりに美しく、哀しい光景である。

    物語の効能に重きを置く藤式部が、朝児にも書くよう迫る。朝児は歴史と物語の差異と共通点に想いを馳せる。自分1人の人生では体験しきれない様々が描かれているからこそ、それを読むことが慰めになったり助けになったりする。出来事のみ並べた歴史書に、人は何を読むのか。所詮は作り事であり突飛な筋の方が読まれると知って、物語は何を伝えるのか。同じ字の並びから何を得るかは読む人ごとに異なる。だから書いておくことの大切さがあると朝児は書き始める。自分の見た自分の周りの人たちのことを。

    きっと歴史書と物語については著者の命題でもあるのだろう。ならば朝児は著者自身なのかもしれない。

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    2024年07月21日
  • 月ぞ流るる

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    物語のほぼラスト、三条帝と妍子のやり取り(悲しいけど、一種の雪解けと捉えました)では、思わず涙が出そうになりました。
    憎い藤原道長の娘である故に、愛せない、愛せないが、憎み切ることもできないという帝の苦悩を痛切に感じました。

    三条天皇の百人一首の歌と物語が見事に絡まっており、筆者の想像力に脱帽です。

    日本史の中で、戦国時代や幕末に比べると、小説として取り上げられることが少ないと思われる平安時代ですが、なかなかドラマティックで、興味深い人物や出来事が多い時代だと思いました。

    著者の他の作品も読んでみたいです。

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    2024年07月11日
  • 星落ちて、なお

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    「星おちて、なお」澤田瞳子
    一冊にぎゅっと、女絵師の人生、日本絵画の歴史、明治から大正にかけての日本の歴史がつまっている。

    明治22年から大正13年にかけ、河鍋暁斎の娘とよ(河鍋暁翠)の半生が描かれる。

    不世出の絵師といわれた河鍋暁斎。
    どんなものでも、想像力と画力で自由自在に描きあげ、見る人を喜ばし驚愕させた天才。

    おとよは、父である前に師匠であった暁斎を超えられない無力さを感じ、絵師であるゆえの苦難に直面するたびに、絵師の家に生まれた自分の人生を「獄だ。」と恨む。

    終始、静かだけれど力強い文章で、絵師として生きる苦労、作品を生み出す苦悩、時流に取り残され流派最後の1人として悩みもがきながらも進む、おとよの絵に対する真っ直ぐな生き方が伝わってくる。


    絵画や美術作品に癒される時間が好きで、まとまった時間があると美術館や博物館に行くのですが、
    「星落ちて、なお」を読んで、作品に取り組む人達が命懸けで一筆一筆を重ねる作品だからこそ、心震え癒されるんだと改めて気付かされました。
    読んで良かった。

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    2024年06月17日
  • 月ぞ流るる

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    赤染衛門と叡山の僧頼賢を中心に宮城の悲喜を描いた物語です。栄華を誇り貪欲に求める藤原道長と対立する帝、その諍いの影で悲しむ人々の話に心を打たれました。最後に病に侵される帝と道長の娘として疎まれ続けた妃が睦み合う姿は涙無くして読むことはできませんでした。感動の作品です。

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    2024年06月02日
  • 月ぞ流るる

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    藤原道長と三条天皇が勢力争いをしている様子を、その周りにいる三条天皇の妻で道長の娘である姸子(けんし)やその女房、とくに学者家系に生まれた朝児(あさこ)とそのもとへ学習のためやってきた頼賢(らいけん)などの目から真実がどこにあるのかをあぶりだすような内容。頼賢の育ての親、原子(げんし)が謎の死をとげた真実はなにか、というところが説かれていくのが話の中核となっていくのだが、とくにそれにこだわらず、栄華を求めて生きることへの冷静な観察眼の方が主テーマのような話だった。つ・ま・り、全体を通して展開が平板で、一見してわからない445ページ(紙が薄いのか?)を読み切るのはなかなかに骨が折れました。でも、しっとりと全編面白かったです。目先の面白さがなくても好きで読む方向け。
    内容がかなり難しいので高校生くらいから?でも、彰子や道長出てきて、日本史と直結しているので中学生でも読書好きなら大丈夫です。

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    2024年05月24日
  • 月ぞ流るる

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    重厚な世界観と、息づかいまで聞こえてきそうな丁寧な登場人物の描写が、平安の宮中の独特の雰囲気と、その中で起こる様々な出来事を彩っていて面白かった。

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    2024年05月19日