澤田瞳子のレビュー一覧
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奈良時代の宮仕えの采女、若子・笠女・春江を軸とした青春小説。十代の女の子が主人公とは言え、話は政治に情欲と生々しく実に古代らしく良い。三人それぞれキャラは立っているものの、あまり感情移入できず、小説の評価としてはまずまず。心情描写はしっかりしているが、事件に重点を置いているからか、事の重大さに比して軽い。これが当時のリアルなのかもしれないが。
各短編の中で群を抜いて好きなのが「藤影の猫」。最近よく落語をきくが、まさに落語の人情噺のような温まる落ち。不遇をかこつ采女のささやかな抵抗といたずら。籠の鳥と自身の境遇を重ねる表現に心を掴まれる。皇女目線では敵にあたる藤原房前にも人の心と流儀があり、完全な悪人ではないのも良い味となっている。 -
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登場人物がみな、生き生きしていました。亡くなっていく人も臨終の瞬間まで生き生きしていました。と、なんとも矛盾した言い方ですが、その場での役割をしっかりと果たして、この話の中でなくてはならない存在感を放ち、亡くなっていきました。人だけではなく、書画までが登場人物として人格と存在感を持って訴えかけてきました。
とはいうものの、決して重苦しいものではなく、だからと言って軽々しくなく、激しい一陣の雷雨のように過ぎていきます。
ヒロイン、道真と同時代の人であったのか、とつくづく思った次第です。彼女は彼女で有名ですが、なんというか、時代から浮き立った存在。六歌仙の中でも一人、時代から浮いているような感覚だったので、そうか、道真と同時代か、と改めて認識しました。
それにしても、いささか無駄遣いではないかなあ。もっとしつこいくらい活躍してほしかった。
それは主人公についても同様に感じて、これだけのキャラクターがそろっていたら、もっといろんなことが起きて、もっといろんな活躍が語られてもいいのに、もっと読みたい、と切に思ったところです。
そうか、だから2冊目、続巻があるのか。
このあとすぐに本屋に発注します。
あまりに面白すぎて、もっと読みたい気持ちが強くなりすぎて、それが物足りなさに思えて、星一つ減じたところです。
今日から「雷」を見る目が変わりそうです。 -
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富士山の噴火に伴う様々な出来事、富士山は休火山だと習ったような記憶があるが、何回も何回も噴火を続けている活火山だと言う意見が一般的になってきており、驚いた記憶がある。
箱根山の街道造りの興味を惹かれたが、陸奥の国への集団移住、明治期の北海道開拓屯田兵の話、満州国への集団移住、満網開拓団の話、ロシア、ウクライナ、戦争、イスラエル、パレスチナ、戦争、など、現在の戦争も領土を巡る、様々な思いが引き起こしていることに思いを馳せながら読み終えた。
長い歴史の様々な出来事の中で、人はその自分の生きる範囲でもがき、苦しみ、喜び、楽しみ、生きていくのが歴史なのかなと思わされた。 -
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ネタバレ赤染衛門が見つめた宮中の姿。
夫を亡くした朝児は慶円に頼まれて頼賢の学問を見ることとなった。頼賢は不義の子であり、引き取って育ててくれていた原子の仇を娍子とみなして真実を明らかにする時を待っていた。再び女房として姸子のところに上がった朝児も犯人探しのために情報を集めることに協力する。火事が頻発する内裏、病に苦しむ帝に攘夷を迫る道長、疎まれる姸子、道長に近付き帝の側で真実を探そうとする頼賢……赤染衛門こと朝児はそのすべてをつぶさに見ていた。
最後に三条帝が詠んだ百人一首の歌で涙がこぼれた。悲劇の帝、それでも帝を慕う人はいる。しかし世の流れには逆らえず。絶望を詠んだ帝に必死で寄り添う姸子。雲と月。あまりに美しく、哀しい光景である。
物語の効能に重きを置く藤式部が、朝児にも書くよう迫る。朝児は歴史と物語の差異と共通点に想いを馳せる。自分1人の人生では体験しきれない様々が描かれているからこそ、それを読むことが慰めになったり助けになったりする。出来事のみ並べた歴史書に、人は何を読むのか。所詮は作り事であり突飛な筋の方が読まれると知って、物語は何を伝えるのか。同じ字の並びから何を得るかは読む人ごとに異なる。だから書いておくことの大切さがあると朝児は書き始める。自分の見た自分の周りの人たちのことを。
きっと歴史書と物語については著者の命題でもあるのだろう。ならば朝児は著者自身なのかもしれない。 -
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「星おちて、なお」澤田瞳子
一冊にぎゅっと、女絵師の人生、日本絵画の歴史、明治から大正にかけての日本の歴史がつまっている。
明治22年から大正13年にかけ、河鍋暁斎の娘とよ(河鍋暁翠)の半生が描かれる。
不世出の絵師といわれた河鍋暁斎。
どんなものでも、想像力と画力で自由自在に描きあげ、見る人を喜ばし驚愕させた天才。
おとよは、父である前に師匠であった暁斎を超えられない無力さを感じ、絵師であるゆえの苦難に直面するたびに、絵師の家に生まれた自分の人生を「獄だ。」と恨む。
終始、静かだけれど力強い文章で、絵師として生きる苦労、作品を生み出す苦悩、時流に取り残され流派最後の1人として悩みもがきながらも進む、おとよの絵に対する真っ直ぐな生き方が伝わってくる。
絵画や美術作品に癒される時間が好きで、まとまった時間があると美術館や博物館に行くのですが、
「星落ちて、なお」を読んで、作品に取り組む人達が命懸けで一筆一筆を重ねる作品だからこそ、心震え癒されるんだと改めて気付かされました。
読んで良かった。 -
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藤原道長と三条天皇が勢力争いをしている様子を、その周りにいる三条天皇の妻で道長の娘である姸子(けんし)やその女房、とくに学者家系に生まれた朝児(あさこ)とそのもとへ学習のためやってきた頼賢(らいけん)などの目から真実がどこにあるのかをあぶりだすような内容。頼賢の育ての親、原子(げんし)が謎の死をとげた真実はなにか、というところが説かれていくのが話の中核となっていくのだが、とくにそれにこだわらず、栄華を求めて生きることへの冷静な観察眼の方が主テーマのような話だった。つ・ま・り、全体を通して展開が平板で、一見してわからない445ページ(紙が薄いのか?)を読み切るのはなかなかに骨が折れました。でも、しっとりと全編面白かったです。目先の面白さがなくても好きで読む方向け。
内容がかなり難しいので高校生くらいから?でも、彰子や道長出てきて、日本史と直結しているので中学生でも読書好きなら大丈夫です。