澤田瞳子のレビュー一覧
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ネタバレものすごく楽しかったです。
唐物商で都で培った目で目利きをして、柳公権の書欲しさにちゃっかり菅三道という名前で目利きをすることを承諾してしまう道長。
おーい! 大宰府についてから食事もろくに食べず、着替えもせず、いじけて毎日恨みつらみを書いていたんじゃないんかい!? と思わず思ってしまった(笑)
そこから、いきなり保積に十貫(約百万)の銭を用意しろと言ったりして、唐物を買いあさる道真が可笑しい
そして、ひょんなことから民草の本当の貧しさをしり、大宰府まで連れてきた愛息を失ってしまい、再び引きこもる道真。
だが、ここでうたた寝殿と呼ばれていた保積が彼のために苦言を呈するのがいいのです。
そして、横領されていた税の問題に取り掛かる道真達。それが己を左遷させる原因を作ったものに一泡吹かせるものだったのが、最高でした。
菅原道真が大宰府でどのように生活していたか、わからない部分が多いと思うのですが、私はこの本を読んで、こうだったらいいなと思いながら本を閉じました。
本当に面白かったです。そして恬子が誰なのか、最後にわかるのがとっても粋だなぁって思ったんですね。
楽しい時間でした。 -
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天然痘が猛威をふるい、多くの人々が病に伏し、亡くなっていく。なのに、治療法が見つからない。そのような状況下、寧楽の都はパニックに陥っていく。
そして、偽りの神を信じた人々が、そそのかされ、略奪し、外国人の命を奪っていく。
でも、そのような中にあっても、理性を失わず、医者として人のために尽くす綱手の生き方、考え方に深い感動を覚える。
本の最後に書かれていた「彼岸よりの慈雨」という言葉が心に残っています。
この本で描写されていたことは、「神も仏もいるものか」って思っても仕方のないような状況。
でも、「彼岸よりの慈雨ではあるまいか」と主人公が呟いたように、慈しむ神は確かにいるのだと、この本を読み終わって、思います。 -
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本作を敢えて一言で言えば「奈良時代を背景にした“時代モノ”の小説」ということにしかならないと思う。が、その「一言」に収まらないような、「憑かれる」かのように嵌ってしまうような側面も在る。
余り経験も無いことであるが、本作に関しては「憑かれる」かのように夢中で読み進め、ふと顔を上げて、作中で展開している様々な出来事が「小説の作中世界、更に古代の出来事」と改めて考え、ふうっと息を強く吐きながら安堵するような、そういう按配でもある。
主要視点人物の名代(なしろ)と諸男(もろお)とだが、恐るべき疫病の流行による大混乱という中、各々に変わって行く。2人が各々に自身の中の「闇」と「光」に向き合って行くということになる。そこが本作の肝であろうが…
「8世紀前半の寧楽(なら)」という、本作を読んでいる時間や空間からは遠く遠く隔たった場所で展開する、なかなかに凄惨な状況であるが、何か「変に胸に迫る」というように感じた。
疫病で夥しい死者が発生しているという中、色々な意味での“不寛容”が拡がり、それが混迷に拍車を掛けてしまうというような展開が見受けられるのだが、そういう辺りが「偶々読んでいるフィクションの小説」でありながら、何処となく「妙なリアリティー」を感じた。
文庫本としては未だ新しい本作である。一寸、御薦めだ。 -
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「7世紀の終わり頃から8世紀に切り替わるような頃」というのは、日本史では「持統天皇から文武天皇の時代」というようなことになる。現在の奈良市に在った平城京に遷都する前の、現在の橿原市に在った藤原京、読んだばかりの小説では推定される当時の呼称の新益京(あらましのみやこ)が築かれて日が浅い頃のことである。
本作の主要視点人物は、阿古志連廣手(あこしのむらじひろて)(=作中では主に「廣手」)である。一部は讃良大王(さららのおおきみ)(=作中では主に「讃良」)となっている。
因みに讃良大王(さららのおおきみ)というのは女帝の持統天皇である。現在でも知られている「〇〇天皇」というのは「諡号」というもので没後に冠せられる呼称である。存命中は、漠とした天皇に対する敬称で呼ばれるか、皇族の中での名で呼ばれることになる。そしてこの讃良の「大王」(おおきみ)という尊称だが、彼女の時代、後継の文武天皇(=作中では珂瑠(かる)王子または珂瑠(かる)大王)の頃に律令が定められたことを契機に「天皇」(すめらみこと)となって行く。
本作はその「天皇」(すめらみこと)という呼称、「日本」(ひのもと)という国号が創出されて行ったという経過を背景とするような物語が、若者の成長譚というような色合いで、時代モノらしい謀略や冒険や戦いという要素も加えて紡がれている。
廣手が新益京(あらましのみやこ)を目指して旅をしているという辺りから物語が起こる。紀伊国の牟婁(むろ)に在る地方豪族の次男である廣手は、新益京(あらましのみやこ)で仕事を始めようというのだった。
廣手には八束(やつか)という異母兄が在った。文武に優れ、周囲の人達に慕われていた兄を廣手自身も敬愛していたのだった。その兄の八束は仕事をするために郷里を離れていて、新益京(あらましのみやこ)で不慮の事故によって他界していた。その兄を追って、新益京(あらましのみやこ)で働くことになる。
本作では、廣手が色々な出来事に出くわす中、「天皇」(すめらみこと)という呼称、「日本」(ひのもと)という国号が創出されて行ったという経過にまで関わることとなり、兄の「不慮の事故」の真相にも迫るというような物語が展開する。
一口に語りきれないような、多彩な要素を含む、なかなかに興味深い作品である。本作に出くわすことが出来て善かった!! -
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時代が明記されていない作品もあるものの、おおむね古代~平安時代あたりが舞台でしょうか。
能楽の名曲からインスパイアされた作品が並ぶ短編集です。
もちろん元ネタは知らないものばかりでしたが、能楽の名曲が基底にあるとはいえ、どれも絶妙なひねりを加えている印象を受けました。
本書は貧しい立場に置かれた人々が主人公となっているものが多いです。
例えば表題作はかつて貧しさゆえに親から売られた少年たちの物語です。
稚児という立場を受け入れ、したたかに日々を生きる少年と、稚児という立場に馴染めず、周囲からいじめをうけている少年。
ある日前者の少年の元に、自分を捨てた父親を名乗る男が7年ぶりに会いにくるのですが・・・。
少年のとった行動から、人間の持つ矜持といったものをしっかりと見せてくれるあたり、うまいなあと思いました。
一方で、「大臣の娘」や「秋の扇」などは、ミステリー小説のような意外性のある展開で、お約束的な勧善懲悪の展開にもっていきたくなりそうなところを、あえてそうしなかったあたり、とても良かったと思います。
読む前は地味な作品なんじゃないかと危惧していたのですが、どうしてどうして、どの作品も30ページほどの分量の中でキレッキレの輝きを放っており、一編一編を堪能できました。
これだけのレベルの作品を短編で惜しげもなく魅せてくれるのはさすがとしか言いようがありません。
贅沢な一冊だと思います。
今回の候補作5冊の中で、もっとも楽しめたのは本作でした。 -
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ネタバレ奈良時代、三人の采女たちの青春群像劇であり、難しく弱い立場で生きねばならない彼女たちの、意思と強さの物語。
宮人である彼女たちの、現代の会社勤めに通じるような人間関係や様々な縛り、男女の差、その中でもがきながら友情を育む様がよく、終盤での大きな権力にしたたかに舌を出して守るべきものを守る姿に感動した。というか、素直におもしろいし泣ける!
そして古代史専攻の作者のこと、時代考証もしっかりしていて勉強になる。特に彼女たちのモデルがいて、その記録に触れ、作品がまた広がる感じがよい。
(その後の大事件や疫病を思うと……な部分もあるけどそれも含めて) -
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友人に「絶対に好きだと思う」とオススメされた本。
めちゃくちゃおもしろかった!
天平の時代
栄華を極めた藤原四兄弟をもおののかせ、
都の京都をはじめ、日本国中を揺るがせた天然痘
その病と闘った医師、
疫病の恐ろしさから混乱する人々
さらにその恐怖に乗じて国内を騒がそうとする人々
死に至る病に対面した時、不条理な死に取りつかれた時、愛する人を成すすべもなく奪われた時、人はその死に何を思うのか?そして病気から救えなかった人々への医師たちの葛藤と思い…
コロナ禍で混乱する現代にも通じる作品
今だからこそ読みたい作品!!
天然痘を恐れ隠遁生活を送る比羅夫の
「お気を付けくだされよ。疫病の流行は時に、人の身体ばかりか心まで蝕みまする。」
という言葉が胸に刺さる!
今も昔も人は変わらんの~。
と、ここまで書いておいてなんだけど
内容はかなりヘビーかと思うかもしれませんが
著者の澤田さんの文章がものすごく上手くて、かなり悲惨な状況でも、まるで絵巻物を見ているような、残酷な美しさのような、それでいてきらめきのような光を感じる作品でした。
すごい作家さんだ~! -
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奇矯な絵で人々を魅了した伊藤若冲。
取憑かれた様に彼を作画にのめり込ませるのは、贖罪の思いなのだろうか。
彼を憎み、贋作を描き続ける義弟・弁蔵に描かせるものは激しい憎悪である。
若冲は弁蔵に追われ、弁蔵は若冲を追い、さながら光と影のように、または撚り合わさった縄のように存在する、二人の絵師と、作品たち。
知らぬ間に、お互いがなくてはならない存在となっていったのではないか。
長い相克の末に、理解に似た境地に至ったのではないか。
影から見つめる、若冲の妹・志乃の視点だが、兄に寄り添い、弁蔵を慕い、「見届ける者」として確かな存在感がある。
若冲を失った弁蔵の慟哭は悲しいが、二人の絵師の長い愛憎を浄化させるものだったかもしれない。 -
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ネタバレ古代日本史の本というのをあまり読んでないので、他の作品とは比較できないが、この本は面白かった。戦のシーンはほとんど出てこない政争劇なのだが、適度に緊張感があり登場人物たちの描写も分かりやすくて、ボリュームやテーマの割に読みやすい。
持統天皇以前まで、天皇ではなく大王(おおきみ)であったこと。そしてその時代まで日本ではなく倭であったこと。
聖徳太子が小野妹子に託した文書が有名すぎて、その影響が大きいのだが、中央集権制という意味で日本が真に国家の体制を整えたのは、大宝律令が出来て以降だということが良く理解できる小説。
国家の基盤となる法律があってこその法治国家、そしてその国家には有能な官僚がつきものであること。これは現代日本も同じである。現代日本に藤原不比等はいるのだろうか?いい意味にも悪い意味にも、それだけの役者はいない…すくなくともまだ舞台には出てきていないように思う。