澤田瞳子のレビュー一覧

  • 赫夜

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    平安時代の賤民を主人公にした小説というのが私には目新しかった。
    自分にとってあまり聞きなれない言葉遣いも、小説に趣を添えていて好もしく感じた。
    これでもかというくらいの苦難。人間の弱さ、愚かさ、狡さ。そういった中でも生き残った者たちの営みは連綿と続いて行く様子が描かれている。
    予測不可能な自然災害というのは決して他人事ではないし、人間の願いや祈りや努力や思いなど通じないどうしようもなさというのも古今東西あるだろう。善悪や好悪とは別次元で、それぞれの立場で現実の問題や変化を受け入れて生きていくしかない、それが人生。そうやって人間は生きてきたしこれからもそうしていくのだろう。

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    2025年01月26日
  • 孤城 春たり

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    見開きの登場人物の多さにのけぞったが、1話ずつ、時代が流れて行くので、いっぺんに登場することはなくひと安心。
    幕末に学問を元に人々を導いた方谷、彼に惹かれた人々が自分の人生を見つめ直し、より正しく生きていこうとする姿が爽やかに描かれる。
    これまで知らなかったか、実在の人物のようだ。実話かと思うと、ますます方谷の偉大さが伝わってくる。

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    2025年01月23日
  • 赫夜

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    2度の富士山の噴火という大災害ににみまわれながらも、懸命に生きる牧や郷の人々の姿に浸ってはいられなかった。
    困難な上に困難が押し寄せても、そこには良民も賤民も関係なく、生き続けなければいけない。「生き続けなければいけない」この言葉が凄く胸に響きました。
    主人公である鷹取の、牧に来てから心持ちが変化していく様子もとても興味深いものでした。
    小説の中に没頭できて面白かったです。

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    2025年01月20日
  • 孤城 春たり

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    城郭見学で初めて備中松山城を訪れたのは50年前。それ以来何度も訪れていて好きな城郭の一つ。それで読み始めたが幕末にこんな悲しい結末を迎えたんだなぁ。

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    2025年01月14日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    朝廷での権利争いに敗れて太宰府に配流され、その怨みを宥めるために天神さんとして祀られた、というエピソードは有名な菅原道真を生身の人間として取り上げた作品。
    当時の記録からして性格や日常生活に関する資料なんて殆ど残ってないはずなので、数少ない史実をベースにここまで面白い物語に仕上げたのは流石です。
    諸説ある小野小町を意外なキーパーソンとして登場させているもの面白い。次作も期待。

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    2025年01月09日
  • 孤城 春たり

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    備中松山藩の幕末期の顛末を描く。
    知より剣を尊ぶ熊田恰は山田方谷を付け狙っていたが、大石や三島の諫言で方谷に準じていく。

    幕末の顛末を知る読者には備中松山藩の行く末がわかっているだけに、藩主板倉勝静が徳川幕府へ恭順していた故の顛末には悲しむべきものがあった。
    時代小説ではあまり書かれてこなかった備中松山藩を取り上げた本作は、幕末期の歴史観に新たな一面が加わわり興味深かった。

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    2025年01月06日
  • 夢も定かに

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     奈良時代の宮仕えの采女、若子・笠女・春江を軸とした青春小説。十代の女の子が主人公とは言え、話は政治に情欲と生々しく実に古代らしく良い。三人それぞれキャラは立っているものの、あまり感情移入できず、小説の評価としてはまずまず。心情描写はしっかりしているが、事件に重点を置いているからか、事の重大さに比して軽い。これが当時のリアルなのかもしれないが。
     各短編の中で群を抜いて好きなのが「藤影の猫」。最近よく落語をきくが、まさに落語の人情噺のような温まる落ち。不遇をかこつ采女のささやかな抵抗といたずら。籠の鳥と自身の境遇を重ねる表現に心を掴まれる。皇女目線では敵にあたる藤原房前にも人の心と流儀があり、

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    2024年12月30日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    あー好き。温かい読後感。菅原道真…あまりに存在が遠すぎて、実在した普通の人間なのだと考えたこともなかった。会話して、泣いて笑って、同じ人間であることが強く感じられて、あー最後まで、読めてよかった。
    …というのも、語彙が難しすぎて、スマホが手放せなかった。平安時代はあまり興味がなかったけれど、やっぱり澤田瞳子さん、いいわー(^^)

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    2024年12月12日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    登場人物がみな、生き生きしていました。亡くなっていく人も臨終の瞬間まで生き生きしていました。と、なんとも矛盾した言い方ですが、その場での役割をしっかりと果たして、この話の中でなくてはならない存在感を放ち、亡くなっていきました。人だけではなく、書画までが登場人物として人格と存在感を持って訴えかけてきました。
    とはいうものの、決して重苦しいものではなく、だからと言って軽々しくなく、激しい一陣の雷雨のように過ぎていきます。
    ヒロイン、道真と同時代の人であったのか、とつくづく思った次第です。彼女は彼女で有名ですが、なんというか、時代から浮き立った存在。六歌仙の中でも一人、時代から浮いているような感覚だ

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    2024年12月06日
  • 赫夜

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    馴染みのない時代の話なのだけど読めちゃうのがすごいんだよなー。さすがです。全冊サイン入りの試みもすごい。

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    2024年11月23日
  • 赫夜

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    富士山の噴火に伴う様々な出来事、富士山は休火山だと習ったような記憶があるが、何回も何回も噴火を続けている活火山だと言う意見が一般的になってきており、驚いた記憶がある。
    箱根山の街道造りの興味を惹かれたが、陸奥の国への集団移住、明治期の北海道開拓屯田兵の話、満州国への集団移住、満網開拓団の話、ロシア、ウクライナ、戦争、イスラエル、パレスチナ、戦争、など、現在の戦争も領土を巡る、様々な思いが引き起こしていることに思いを馳せながら読み終えた。
    長い歴史の様々な出来事の中で、人はその自分の生きる範囲でもがき、苦しみ、喜び、楽しみ、生きていくのが歴史なのかなと思わされた。

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    2024年10月03日
  • 赫夜

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    駿河国司の家人が馬の産地で体験した富士山の噴火。

    平安時代、どれだけ大変なことだったろうかと思う。この時代を平民の視線から見る大作。ちょっと長いなとは思う。

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    2024年09月16日
  • 歴屍物語集成 畏怖

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    短編集だがどの物語も個性がありストーリーがリアリティがありテーマがありとても引き込まれた!これは世に埋もれた快作だ!

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    2024年09月06日
  • 赫夜

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    阿弖流爲と坂上田村麻呂は別稿で読みたかった。取ってつけたみたい。世の中変わらぬものは何一つない。覇権主義の戦さも。ふるさとを思う人の心も。富士山噴火の話が、大河ドラマ「紫式部」と「阿弖流爲」懐かしむ方向に…。

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    2024年09月01日
  • のち更に咲く

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    こんなお話があってもいいかも。
    藤原元方と、保昌の関係がしっかりと頭に入りました。
    この時代、みんな親戚…?

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    2024年08月26日
  • のち更に咲く

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    ネタバレ

    話しが進むにつれて、先が気になり、最後は一気読みでした。
    読後感はそれなりに満足でしたが、個人的には先に読んだ「月ぞ流るる」の方が、より物語が説得的だと感じました。
    ここに描かれている保輔の人物像からして、倫子と男女の仲に果たしてなるだろうかと。仮に、そのような関係に至ったのだとすれば、そこまでの過程で葛藤やらドラマがあったはずなので、そこが描かれていたら、より心に沁みる物語になったのではないかと思いました。

    いずれにしても、今後も注目の作家さんです。

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    2024年08月20日
  • 月ぞ流るる

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    澤田瞳子作にしては読みやすかった。
    大河ドラマ共リンクしていて、人物像が浮かび上がった。赤染右衛門、頼賢を中心に探偵モノでありながら三条天皇と研子のラストが胸をついた。悲劇でありながら見方によっては希望のラストが見事。

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    2024年08月14日
  • 月人壮士

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    螺旋プロで小生初、澤田瞳子さん。歴史小説初デビューです。以前、日経でエッセイを書かれていて、軽快な素敵な文章で歴史小説を書かれるのかなと、気になっていましたがその通りで、良かったです。

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    2024年08月12日
  • のち更に咲く

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    藤原道長が栄華を極めんとして、娘の彰子が御子を産むか、という時期のお話。
    主人公は小紅といい道長の家の位の低い女房勤めをしている。祖父は大納言までなった公卿だったが、産まれた皇子が女で権力争いに負け悶死。父もその荒々しい血筋を引き、酒におぼれ酒席のいさかいで殺人を起こす。四人姉妹の末の小紅は兄、保昌とともに罪人の子という後ろ指をさされながら生きている。もう一人の兄は強盗となり、その兄の残した人間関係が今の小紅にかかわってくる。兄・保輔はかなり昔にとらえられ殺害されている…はず。
    巷で暗躍する強盗団が兄の保輔なのか、兄を検非違使に売ったといわれている足羽忠信の真実は?二人の関係は深まるのか?和泉

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    2024年08月06日
  • のち更に咲く

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    秀でた能力などもなく、難しい立場であるところから少しずつ心情が変化していく様子が丁寧に描写されていて面白かった。

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    2024年08月04日