澤田瞳子のレビュー一覧
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平重衡による興福寺焼き討ちから平氏滅亡まで――南都興福寺に関わる人々を描いた物語。「怨みごころは怨みを捨ててこそ消ゆる」という言葉が、どれほど難しく、そして尊い境地であるかを強く思い知らされる。
藤原頼長の息子で興福寺の悪僧の範長は、重衡への深い怨みを抱えながらも戦乱に加わらず、寺の復興に心血を注ぐ。その中で、貧しく暮らす孤児らと、彼を支える重衡の幼女・公子と出会い、怨みよりも「今ある生活と生命を守ること」の重さに気づいていく。
平氏が弱体化していく一方で、平氏に怨みを燃やす興福寺の悪僧たちの激情と、範長の冷静さは常に対照的に描かれる。やがて公子の出自が明らかになり、彼女が過酷な仕打ちを受けてもなお――いや、だからこそ、範長は怨みの連鎖の本質に辿り着いたと思える。
単なる読者である私でさえ、信円や悪僧たちの所業に強い怒りを覚え、汚い言葉を吐きたくなるほどである。当事者である範長が怨みを捨てることが、どれほど困難を極めるかを痛感させられた。
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暁斎の弟子ジョサイアコンドル著の”河辺暁斎”(岩波文庫)を通して、とある方から教えて頂いたのが澤田瞳子の本著。
河辺暁斎の娘とよ(河鍋暁翠)の物語であるが、非常に読み応えがあった。
暁斎自身が江戸末期から明治初期の激動の時代を生きた人であるが、暁翠も父暁斎と師暁斎とのつながりに苦悩しながらも明治から昭和初期の時代を生きた女性である。
欧米の文化が入りこれまでの価値観が崩れ去り(狩野派が古いと判断されたり、美人画が表面的な美しさを讃えるようになるなど)、それでもなぜ絵から離れなかったのだろうか?終盤に清兵衛が語る言葉もあるが、二度三度読むことでさらに味わえる部分が出てきそうだ。
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ネタバレ政は変わっても、変わらないものがある。
山田方谷を中心に幕末の備中松山藩の人々の姿を描く。激しく変わる世の中に義を求め続けた人たちの物語。
すべての人が学問を治めて、勤勉に、実直に、義のために生きていければいいがそれは理想にすぎない。どれだけ学んでも、移り変わる世のエネルギーには流される。でも、だからこそ、自分のできることをして、自分の信じるものを大切にして、生きていく。たとえ、間違いを犯しても。
ほとんどが知らないか、名前しか知らない人だったけど、読み切った今は皆の生き様に深く感じ入っている。思うようにはいかないからこそ、その場のベストを尽くさなくては。それにしても、七五三太が登場するとは。備中松山藩と関わりがあったなんて知らなかった(忘れていただけかも)。機会があれば松山城に行ってみたい。 -
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飛鳥時代を取り上げる小説は、歴史小説群の全体からみれば少数派であろう。また、近畿以外に生まれ暮らす人にとっては、この時代の説明に登場する地名なども馴染みがなく取りつきにくいので、今後、わが国において関東圏で育つ人の割合がますます増えたり、文化芸術の発信の東京偏重が一層露骨になれば、この時代に興味を惹かれる人は、さらに少なくなるであろうことを憂えたい。
1400年近くも前の時代だから、史実として知られていること、登場する個々人の人となりを知るてがかりは、後代に比べ圧倒的に少ない。かつて、黒岩重吾や井上靖は、豊かな想像力で、史料の少なさを逆に小説としての豊潤さを作りこむための武器として、読者の心に残る作品を残した。澤田もその系譜を継いでいる。これだけ具体的で長大なドラマを書き込むためには、ものすごく脳味噌を消耗したことであろう。
おかげで、読者は、この時代の雰囲気を、少しでも感じる機会を得られるということだ。
もちろん、これは小説であって、歴史を叙述するものではない。どの時代も変わらない、人間の生き死に、個人の欲望や感情と周辺の人間とのやりとりを、たまたまこの時代に仮託して描くものだ。 -
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母親の澤田ふじ子さんの小説に似てきた。公事宿シリーズのような推理や高瀬舟シリーズのような人情噺で京都が舞台。
この本の主人公は父親が、修行のために娘(真葛)を友人に預けて行方不明になっている。預け先で良くしてもらい、女性としては珍しく医師の修行も行っているし、預け先の家業の御薬園も良く手伝い漢方薬に詳しい。
6つの章となっているが、医薬の知識で各事件の匂いを嗅ぎ取って未然に防ごうと努力する。ただ結果として悲惨さがちょっとだけ軽減した事件が多い。大量毒殺事件で救えたのは数名。孤児が殺人事件を起こした後にできることは情状酌量での減刑。表題の「ふたり女房」では重婚の元夫婦、現夫婦はあれで皆幸せになれるのだろうか。
重い内容が多いが、主人公の真葛が凛としているので何とか読み切れる。続編もあるようなので、いつか読もうと思う。 -
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ネタバレ昨年、大河ドラマの光る君へを観ていたおかげで、とても楽しく読めた。観ていなかったら絶対に手に取らなかった本。
たくさんの登場人物がいたが、大河ドラマで出てきた人物ばかりだったため、俳優さんたちのお顔が浮かんできたおかげで無事に読み終えられた。
頼賢が追った過去の事件の真相が明るみに出るまでは、少し読むのに時間がかかったが、そのころには登場人物に感情移入してその後は一気に読んだ。
ラストシーン、三条天皇と妍子の月見のシーンで、心にも・・の歌が出てきた時には感動した。そしてその返歌が、タイトルの伏線回収であることも。
最後、頼賢が椿を集めたところはイマイチなぜだか分からなかった。 -
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巨星 河鍋暁斎の娘として一人の絵師として明治大正の激動の時代を生き抜いた とよ(暁翠)の一代記。
とよにとって絵を描くということは父や兄とのつながり、そしてそのつながりへの屈託を再認識する作業だった。
父のようになれるわけもなく、兄のような才もなく、さりとて絵から離れることもできず…
しかし終盤 以前 暁斎の弟子であった
清兵衛の「─この世を喜ぶ術をたった一つでも知っていれば、どんな苦しみも哀しみも帳消しにできる。生きるってのはきっと、そんなものなんじゃないでしょうか」「─とよさんもまたその年まで絵を続けているのは、そこに少しなりとも喜びがあったためではないですか。暁斎先生や周三郎さんへの引け目のせいで、ご自身の中にある喜びに顔を背けちゃいませんか」という言葉に とよはハッとする。
物語の最後 自身の役割を真摯に愚直に果たそうとする とよがいた。
とても生真面目で繊細で強い人。
褒め言葉になるかどうかわからないが
きっと そういう絵を描く人なのだと思った。 -
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ネタバレ〈螺旋プロジェクト〉の一冊。
〈螺旋プロジェクト〉とは
「共通のルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家=朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画である。
ルール1 「海族」vs.「山族」の対立を描く
ルール2 共通のキャラクターを登場させる
ルール3 共通シーンや象徴モチーフを出す
(中央公論新社HPより)
これは、読む人を相当選ぶ小説だと思います。
何しろまだまだ分からないことの多い奈良時代の、聖武天皇の死について、です。
聖武天皇と言えば、仏教に深く帰依されて、全国に国分寺を建立し、奈良の大仏を建立した天皇です。
おかげさまで国庫がすっからかんになり、庶民の暮らしは困窮したのですが。
中臣家の三男継麻呂と道鏡が橘諸兄に呼び出され、天皇は死に際して遺詔(遺言のようなもの)を残さなかったか探れ、と命じられます。
というのも現天皇(孝謙天皇)は、アラフォーの聖武天皇の実の娘で、5日前に聖武天皇は、皇太子を道祖(ふなど)王とするようにとの遺詔を発したばかりだが、血統の違う道祖王を指名することに違和感を覚えたからだ。
中臣家はもともと藤原氏系統のおおもとであるが、血筋としては格上だが、今は不比等の一族に押しやられ、かつての栄光は見る影もない。
橘諸兄もまた、消えゆく橘氏の残り香であり、中臣家ともども藤原氏にはよい感情を持ってはいない。
道鏡は、まだ天皇家の人々に仕えて間もない新入りで、そのあまりにもまっすぐな心根に「足元をすくわれないように。機会があればすぐに宮廷を去るように」と言われるのですが、真っ当すぎて宮廷を去るタイミングを逃し、後々足をすくわれるのは歴史の知るところ。
ともあれ、生前の聖武天皇に近しい人々に話を聞き、その人物像を浮かび上がらせる。
古より国土に根を張り天地のすべてを統べる高貴な天皇家の血を父から受け継ぎ、朝廷での権力を握ってはいるもののたかが臣下でしかない藤原氏の血を母から受け継いだ聖武天皇は、己の中で混じり合うことのない二つの血筋に悩まされる。
それは、律令完成後の新しい世界で初めての、全きの完璧な存在である天皇を、己の血筋から生み出したいという持統天皇の強い願いと、一見持統天皇に協力している風でありながら着々と自らの血筋を天皇家に注ぎ込む藤原氏の思惑が絡まり合った結果なのである。
骨肉の争いが絶えることがなかった奈良時代の物語は、上手の手にかかれば実にワクワクするものになる。
奈良時代好きとしては、ありがとう!澤田瞳子先生!という感じなのだが、さすがに万人向けではない。
人名も役職も建物も、分かりにくすぎる。(作品内で聖武天皇は首(おびと)大王であり、孝謙天皇は阿倍女王である)
そして〈螺旋プロジェクト〉としても、これは異色の作品だ。
天皇家(山)と藤原氏(海)に一応分かれているが、その根拠は極めて薄い。
耳がとがっているわけでも、目が青いわけでもない。
二つの部族の対立は聖武天皇の中にしかない。(孝謙天皇の中にも、後の藤原氏の女性が生んだ天皇も、この対立に関しては無自覚なので)
そんなに藤原の血が天皇家に入っているのが嫌なら、さっさと長屋王にくらいを譲ればいいのに。
持統天皇が、自分の血筋にこだわった結果、数代あとには天武天皇系統は絶滅してしまう、天智天皇系統が復活することになるのだが、持統天皇は天智天皇の娘なんだよね。
愛する夫の血を残すために、甥やら姪やら殺しまくり。怖~。
で、数代後に絶える。
諸行無常ですな。
関係ないけど、乙巳の変について澤田瞳子さんに書いてほしいという野望を持っている。
あの当時絶対忌み嫌われた血という穢れ。
ましてや、天皇の前で入鹿を惨殺って、ありえない話のはず。
殿中でござるのよ。
刀を持って天皇の御前に参れるはずがないのに、どうしてそれが可能になったのか?
そして中大兄皇子の罪は問われず、後に天智天皇になってしまう。
人殺しなのに。クーデターなのに。
その謎を、納得できるような形で小説にできるのは、澤田瞳子さんだけだと思っているのよね。
ぜひ、いつか、お願いします。 -
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ネタバレ澤田瞳子さんの歴史小説は歴史の流れをなぞるように物語が進んでいく。(まだ2冊目だけど汗)
延暦19年(西暦800年)富士山噴火。
焼石・焼灰、全てを灰色に染めてしまう降灰は横走に住む人々を襲う。
被災した人達を、降灰の被害にあいながらも岡野牧(朝廷に馬を献上するための牧場)の人達は受け入れる。
被災地に公的支援はなく復興に追われる中、1度ならず2度目の噴火。
心折れ生きる希望を失いそうになる中での、征夷大将軍坂上田村麻呂の東北征伐のための馬や馬具等の納入要請。
「富士山、噴火。それでも人は、生き続けねばならぬだ。」の言葉がつらい。
時代背景や社会制度、当時の言葉も頻繁に出てくるので調べながら読み進めていく。
時間はかかるけれど読み終えると、小説を楽しむというより、描かれた時代を追体験したような感覚になる。
内容が濃すぎて感想がまったくまとまらないけれど…、
被災した人たちの奮闘する姿から今を生きる私達が大切な事を学べる小説だと思った。
歴史が大嫌いだった学生時代の自分に読んだほうが良いよって伝えたい。
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今日の京都の天気は、
くもり 一時 雨
降水確率は50%
最高気温は摂氏33度
最低気温は25度。
湿度は60%~70%台後半。
梅雨入り以降、
夏至を迎えてさらに暑くて
ジメジメした日が続きます。
でも、、、、
京都は良い♡
良いものは良い♡
そんな京都の歩き方を
京都府生まれ、同志社大学大学院出身の
歴史小説家 澤田瞳子さんが教えてくださいます。
澤田さんは、「はじめに」で、こう語ります。
「京都のあり方と歴史を知らずしてこの地を味わうことは、歴史や文化の表層をただ軽く撫でるだけの行為に過ぎない。
「京都に生まれ育ったわたしから見ても、京都という土地は日々新しい顔を見せ続け、こちらが必死に食らいついていかねば、いつの間にかまったく違う姿へと変貌してしまいそうな得体の知れなさがある。」
「千年の都・京都とは何かを問うことは、歴史とは何か、ひいてはわれわれ自身とは何かという問いにもつながる。」
「本書がそんな模索へと踏み入る、細い散歩道となれば幸いである。」
秋冬春夏の順に語られる京都。
最終章の「夏」は、まず「38 伊庭八郎の京都スイーツ三昧」から語られます。
澤田さんは「毎年、六月も半ばに差しかかると、なんとなく落ち着かぬ日々が始まる。」そうです。
それは「豆菓子屋・豆政」さんの「和菓子・水無月(みなづき)」の販売開始日が近づくからでした♡
そして、お話は、水無月から銀座新橋 時雨庵の汁粉に広がり、幕末は寺田屋事件の旗本・伊庭八郎(いば はちろう)の甘党ぶりに及びます。半年の滞在後、五月に京都を離れた伊庭が六月末までもし京都に滞在していたら水無月を食べていたかもしれないと、お話は結ばれます。
今年もそろそろ販売開始ですネ♡
水無月♡♡
歴史と和菓子が結びついて、舞台となった京都が偲ばれる。はんなりと上品な良いお話です。
京都の夏のお話は、39 鱧(はも)、40 愛宕山リゾート、41(京都人は行かない)金閣寺と続いていきます。
暑いから?、遠いから?、実際には行かないけれど、
エアコンの効いたお部屋で、またはカフェで冷たい飲み物など飲みながら、この本で、澤田瞳子さんの案内の下、京都の歴史や風物を楽しんでみられてはいかがでしょうか。
オススメどすえぇ♡
《目 次》
はじめに
秋
1 京都人の「京都」を探して
2 東寺の塔は空海のコーラ
3 白峯神宮にサッカー神のおわす
4 宣長・将門の京都青春記
5 鹿はナマに限る?――危ない生食の古代史
6 樺山伯爵は馬鹿車に乗って
7 紫式部は鰯を食べたか
8 歴史は「残り物」で出来ている
9 紅葉狩りと藤原実資の怒り
10「京料理」の誕生
11 紅葉の高雄に恋が香る
冬
12 師走の風物詩・広沢池の鯉揚げ
13 皇太子ニコライと京都ホテル
14 歌枕をめぐる旅
15 道真が聞いた鐘の音は
16 相撲の歩みは『日本書紀』から
17 大河ドラマに楽しくだまされたい
18 平安貴族に見る酒と出世の日本史
19 古式ゆかしい吉田神社節分祭
20 幻の能面「雪・月・花」が揃う時
21 凡河内躬恒の当意即妙
22 ご本尊の受難、仏像からカーネルまで
23 京都看板散歩のすすめ
24 生八ッ橋「夕子」と『金閣炎上』
春
25 平野神社の普賢象桜を見て
26 かつてタケノコは果物だった
27 なぜ大江山は丹後に設定されたか
28『甲子夜話』に残る京都大地震
29 煩悩に迷った僧侶たち
30 鵺の史跡を訪ねて
31 高瀬川の蜘蛛が運ぶもの
32 公家のスキャンダルと温泉
33「薪能」普及の立役者はオリンピック?
34「小京都」の京都離れ
35「薬子の変」に思うこと
36 通学路から時代劇が見える
37 京都土産のイノベーション
夏
38 伊庭八郎の京都スイーツ三昧
39 漱石の鱧、泣菫の鱧
40 愛宕山リゾートへようこそ
41 京都人は行かない金閣寺
42 はじめての鎌倉
43 野ざらし大仏
44 戦争遺跡が語るもの
45 八瀬の釜風呂と入浴の陰謀
46 自首には向かない日
47 後西天皇の悲劇
48「みすや針」が繋ぐ鬼平の縁
49 早すぎた慶應義塾京都分校
50 私たちは歴史の道を歩いている
あとがき