澤田瞳子のレビュー一覧
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ネタバレ古代日本史の本というのをあまり読んでないので、他の作品とは比較できないが、この本は面白かった。戦のシーンはほとんど出てこない政争劇なのだが、適度に緊張感があり登場人物たちの描写も分かりやすくて、ボリュームやテーマの割に読みやすい。
持統天皇以前まで、天皇ではなく大王(おおきみ)であったこと。そしてその時代まで日本ではなく倭であったこと。
聖徳太子が小野妹子に託した文書が有名すぎて、その影響が大きいのだが、中央集権制という意味で日本が真に国家の体制を整えたのは、大宝律令が出来て以降だということが良く理解できる小説。
国家の基盤となる法律があってこその法治国家、そしてその国家には有能な官僚がつ -
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平城京の都を舞台にした作品は初めてで、凄く面白かった!!
普段、時代小説だと、江戸時代や幕末維新が背景のものを読む事が多いので、平城京時代の物語は新鮮で、舞台背景を少し知ることができました。
主人公の袁晋卿が、唐の都である長安から日本にやって来る事になり、そこには遣唐使として日本から唐に渡っていた玄昉と吉備真備による企みがあり、それはどういう事なんだろう?晋卿は何に巻き込まれているんだろう?ということを頭に置きながら、奈良で過ごす日々を読み進める内に、その世界の中に没入していました。
晋卿が日本に連れてこられ、更に唐に帰ることが許されない理由が判明し、大宰府に移る事になり、そこでの生活で、次第 -
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・鳥居耀蔵(とりい ようぞう)/鳥居胖庵(はんあん)77歳。かつて南町奉行を務め、奢侈を厳しく取り締まり、庶民からは「妖怪」と嫌われた。
失脚して23年の幽閉生活を過ごすうちに、時代は明治へと変わった。
まるで浦島太郎。帰ってみればこはいかに。
各章、能の演目に題材を取っている。
江戸時代、能は公的な儀式の場で上演され、幕府や大名たちの庇護を受け、能役者は武士身分に取り立てられていたが、徳川の世の終わりと共に、他の武士たち同様に没落し、生活のために能を捨てて他の職業に就く者も増えた。
胖庵も、能役者たちも同じく「お江戸に置き去りにされてしまった」前世紀の遺物である。
明治の世をどう生きていけば -
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まさに澤田氏にしか書けない物語。唐から来た異邦人と孤児の二人を中心に、玄昉と藤原広嗣でここまで豊かに、これほど面白く描き切る力量には舌を巻く。特に、物語の終盤・太宰府に赴く四名の組み合わせが良い。いずれも唐語を操りながら、京では“異物”として扱われる孤独な存在。ただ、志邑だけが最終章で急に主役のような扱いになった点には少し違和感があり、中盤でもう少し存在感をにじませても良かったように思う。
本作では、石上乙麻呂の排斥、広嗣の乱、玄昉の死といった有名な事件は描かれない。それを“あえて描かない”という選択こそ、名作家ならではの大胆さだと感じた。
孤児だった駒売・狗尾・挟虫の三人の生き方も -
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平重衡による興福寺焼き討ちから平氏滅亡まで――南都興福寺に関わる人々を描いた物語。「怨みごころは怨みを捨ててこそ消ゆる」という言葉が、どれほど難しく、そして尊い境地であるかを強く思い知らされる。
藤原頼長の息子で興福寺の悪僧の範長は、重衡への深い怨みを抱えながらも戦乱に加わらず、寺の復興に心血を注ぐ。その中で、貧しく暮らす孤児らと、彼を支える重衡の幼女・公子と出会い、怨みよりも「今ある生活と生命を守ること」の重さに気づいていく。
平氏が弱体化していく一方で、平氏に怨みを燃やす興福寺の悪僧たちの激情と、範長の冷静さは常に対照的に描かれる。やがて公子の出自が明らかになり、彼女が過酷な仕打ちを -
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暁斎の弟子ジョサイアコンドル著の”河辺暁斎”(岩波文庫)を通して、とある方から教えて頂いたのが澤田瞳子の本著。
河辺暁斎の娘とよ(河鍋暁翠)の物語であるが、非常に読み応えがあった。
暁斎自身が江戸末期から明治初期の激動の時代を生きた人であるが、暁翠も父暁斎と師暁斎とのつながりに苦悩しながらも明治から昭和初期の時代を生きた女性である。
欧米の文化が入りこれまでの価値観が崩れ去り(狩野派が古いと判断されたり、美人画が表面的な美しさを讃えるようになるなど)、それでもなぜ絵から離れなかったのだろうか?終盤に清兵衛が語る言葉もあるが、二度三度読むことでさらに味わえる部分が出てきそうだ。
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ネタバレ政は変わっても、変わらないものがある。
山田方谷を中心に幕末の備中松山藩の人々の姿を描く。激しく変わる世の中に義を求め続けた人たちの物語。
すべての人が学問を治めて、勤勉に、実直に、義のために生きていければいいがそれは理想にすぎない。どれだけ学んでも、移り変わる世のエネルギーには流される。でも、だからこそ、自分のできることをして、自分の信じるものを大切にして、生きていく。たとえ、間違いを犯しても。
ほとんどが知らないか、名前しか知らない人だったけど、読み切った今は皆の生き様に深く感じ入っている。思うようにはいかないからこそ、その場のベストを尽くさなくては。それにしても、七五三太が登場する -
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飛鳥時代を取り上げる小説は、歴史小説群の全体からみれば少数派であろう。また、近畿以外に生まれ暮らす人にとっては、この時代の説明に登場する地名なども馴染みがなく取りつきにくいので、今後、わが国において関東圏で育つ人の割合がますます増えたり、文化芸術の発信の東京偏重が一層露骨になれば、この時代に興味を惹かれる人は、さらに少なくなるであろうことを憂えたい。
1400年近くも前の時代だから、史実として知られていること、登場する個々人の人となりを知るてがかりは、後代に比べ圧倒的に少ない。かつて、黒岩重吾や井上靖は、豊かな想像力で、史料の少なさを逆に小説としての豊潤さを作りこむための武器として、読者の心に -
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母親の澤田ふじ子さんの小説に似てきた。公事宿シリーズのような推理や高瀬舟シリーズのような人情噺で京都が舞台。
この本の主人公は父親が、修行のために娘(真葛)を友人に預けて行方不明になっている。預け先で良くしてもらい、女性としては珍しく医師の修行も行っているし、預け先の家業の御薬園も良く手伝い漢方薬に詳しい。
6つの章となっているが、医薬の知識で各事件の匂いを嗅ぎ取って未然に防ごうと努力する。ただ結果として悲惨さがちょっとだけ軽減した事件が多い。大量毒殺事件で救えたのは数名。孤児が殺人事件を起こした後にできることは情状酌量での減刑。表題の「ふたり女房」では重婚の元夫婦、現夫婦はあれで皆幸せになれ -
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ネタバレ昨年、大河ドラマの光る君へを観ていたおかげで、とても楽しく読めた。観ていなかったら絶対に手に取らなかった本。
たくさんの登場人物がいたが、大河ドラマで出てきた人物ばかりだったため、俳優さんたちのお顔が浮かんできたおかげで無事に読み終えられた。
頼賢が追った過去の事件の真相が明るみに出るまでは、少し読むのに時間がかかったが、そのころには登場人物に感情移入してその後は一気に読んだ。
ラストシーン、三条天皇と妍子の月見のシーンで、心にも・・の歌が出てきた時には感動した。そしてその返歌が、タイトルの伏線回収であることも。
最後、頼賢が椿を集めたところはイマイチなぜだか分からなかった。 -
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巨星 河鍋暁斎の娘として一人の絵師として明治大正の激動の時代を生き抜いた とよ(暁翠)の一代記。
とよにとって絵を描くということは父や兄とのつながり、そしてそのつながりへの屈託を再認識する作業だった。
父のようになれるわけもなく、兄のような才もなく、さりとて絵から離れることもできず…
しかし終盤 以前 暁斎の弟子であった
清兵衛の「─この世を喜ぶ術をたった一つでも知っていれば、どんな苦しみも哀しみも帳消しにできる。生きるってのはきっと、そんなものなんじゃないでしょうか」「─とよさんもまたその年まで絵を続けているのは、そこに少しなりとも喜びがあったためではないですか。暁斎先生や周三郎さんへの