澤田瞳子のレビュー一覧

  • 恋ふらむ鳥は

    Posted by ブクログ

    額田王の一生。壬申の乱となっていく兄弟・親子皇位相続のごたごた、百済滅亡でやってきた難民などの話がからみあう。後の持統天皇となる讚良が悪役(笑)
    中臣鎌足が面白いキャラクターとなっている。
    能の「国栖」がまた見たくなった。

    0
    2025年12月02日
  • 梧桐に眠る

    Posted by ブクログ

     まさに澤田氏にしか書けない物語。唐から来た異邦人と孤児の二人を中心に、玄昉と藤原広嗣でここまで豊かに、これほど面白く描き切る力量には舌を巻く。特に、物語の終盤・太宰府に赴く四名の組み合わせが良い。いずれも唐語を操りながら、京では“異物”として扱われる孤独な存在。ただ、志邑だけが最終章で急に主役のような扱いになった点には少し違和感があり、中盤でもう少し存在感をにじませても良かったように思う。

     本作では、石上乙麻呂の排斥、広嗣の乱、玄昉の死といった有名な事件は描かれない。それを“あえて描かない”という選択こそ、名作家ならではの大胆さだと感じた。

     孤児だった駒売・狗尾・挟虫の三人の生き方も

    0
    2025年12月02日
  • 京都の歩き方―歴史小説家50の視点―(新潮選書)

    Posted by ブクログ

    短いエッセイが盛り込まれた本なので読みやすい。
    京都の暮らしが知れて、ヨソモノには嬉しい。
    たくさんの話があり、どれも興味深い。

    けれど、よーく覚えているのが、他の都府県で和食に誘われない、というところでしょうか。

    ここでも他府県民の京都への偏見?が垣間見えて楽しい。

    0
    2025年11月25日
  • 龍華記

    Posted by ブクログ

     平重衡による興福寺焼き討ちから平氏滅亡まで――南都興福寺に関わる人々を描いた物語。「怨みごころは怨みを捨ててこそ消ゆる」という言葉が、どれほど難しく、そして尊い境地であるかを強く思い知らされる。
     藤原頼長の息子で興福寺の悪僧の範長は、重衡への深い怨みを抱えながらも戦乱に加わらず、寺の復興に心血を注ぐ。その中で、貧しく暮らす孤児らと、彼を支える重衡の幼女・公子と出会い、怨みよりも「今ある生活と生命を守ること」の重さに気づいていく。
     平氏が弱体化していく一方で、平氏に怨みを燃やす興福寺の悪僧たちの激情と、範長の冷静さは常に対照的に描かれる。やがて公子の出自が明らかになり、彼女が過酷な仕打ちを

    0
    2025年11月18日
  • のち更に咲く

    Posted by ブクログ

    話題になっていたので、全く内容を知らなかったが、ミステリじゃないか!パッと見、文章かたそうと思ったけど、どんどん読める。
    ミステリも様々な設定が流行る中で、なぜこの設定を選んだのか必然性がなくては、と言われるようになったが、この作品はまさにこの時代、この環境でないと成り立たない結末。

    終盤、兄保昌の登場が増えるにつれ、忠信が減ってちょっと残念。御以子はどこに。

    0
    2025年10月18日
  • 星落ちて、なお

    Posted by ブクログ

    暁斎の弟子ジョサイアコンドル著の”河辺暁斎”(岩波文庫)を通して、とある方から教えて頂いたのが澤田瞳子の本著。

    河辺暁斎の娘とよ(河鍋暁翠)の物語であるが、非常に読み応えがあった。

    暁斎自身が江戸末期から明治初期の激動の時代を生きた人であるが、暁翠も父暁斎と師暁斎とのつながりに苦悩しながらも明治から昭和初期の時代を生きた女性である。

    欧米の文化が入りこれまでの価値観が崩れ去り(狩野派が古いと判断されたり、美人画が表面的な美しさを讃えるようになるなど)、それでもなぜ絵から離れなかったのだろうか?終盤に清兵衛が語る言葉もあるが、二度三度読むことでさらに味わえる部分が出てきそうだ。

    0
    2025年10月16日
  • 孤城 春たり

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    政は変わっても、変わらないものがある。

    山田方谷を中心に幕末の備中松山藩の人々の姿を描く。激しく変わる世の中に義を求め続けた人たちの物語。

    すべての人が学問を治めて、勤勉に、実直に、義のために生きていければいいがそれは理想にすぎない。どれだけ学んでも、移り変わる世のエネルギーには流される。でも、だからこそ、自分のできることをして、自分の信じるものを大切にして、生きていく。たとえ、間違いを犯しても。

    ほとんどが知らないか、名前しか知らない人だったけど、読み切った今は皆の生き様に深く感じ入っている。思うようにはいかないからこそ、その場のベストを尽くさなくては。それにしても、七五三太が登場する

    0
    2025年10月08日
  • のち更に咲く

    Posted by ブクログ

    大河ドラマ、澤田瞳子をパクる(小説の連載期間は2023年、単行本発刊は2024年2月、大河ドラマは2024年)。袴垂は史実らしいからそれだけなら偶然かもだけど、「星落ちて、なお」というタイトル回があったので、リスペクトを込めてパクってますという意思表示かなと思いました。(『星落ちて、なお』は、澤田瞳子の直木賞受賞作のタイトル)
    読んだタイミングが大河ドラマの後だったので、直秀で脳内再生されたのは、個人的には良かったです。

    0
    2025年09月28日
  • 恋ふらむ鳥は

    Posted by ブクログ

    飛鳥時代を取り上げる小説は、歴史小説群の全体からみれば少数派であろう。また、近畿以外に生まれ暮らす人にとっては、この時代の説明に登場する地名なども馴染みがなく取りつきにくいので、今後、わが国において関東圏で育つ人の割合がますます増えたり、文化芸術の発信の東京偏重が一層露骨になれば、この時代に興味を惹かれる人は、さらに少なくなるであろうことを憂えたい。
    1400年近くも前の時代だから、史実として知られていること、登場する個々人の人となりを知るてがかりは、後代に比べ圧倒的に少ない。かつて、黒岩重吾や井上靖は、豊かな想像力で、史料の少なさを逆に小説としての豊潤さを作りこむための武器として、読者の心に

    0
    2025年09月21日
  • 恋ふらむ鳥は

    Posted by ブクログ

    史実だけを元に描くには遠い昔過ぎ、浪漫に満ち溢れすぎている。
    人が残す生きた証は、遺伝子だけではない。

    0
    2025年09月16日
  • ふたり女房 京都鷹ヶ峰御薬園日録

    Posted by ブクログ

    母親の澤田ふじ子さんの小説に似てきた。公事宿シリーズのような推理や高瀬舟シリーズのような人情噺で京都が舞台。
    この本の主人公は父親が、修行のために娘(真葛)を友人に預けて行方不明になっている。預け先で良くしてもらい、女性としては珍しく医師の修行も行っているし、預け先の家業の御薬園も良く手伝い漢方薬に詳しい。
    6つの章となっているが、医薬の知識で各事件の匂いを嗅ぎ取って未然に防ごうと努力する。ただ結果として悲惨さがちょっとだけ軽減した事件が多い。大量毒殺事件で救えたのは数名。孤児が殺人事件を起こした後にできることは情状酌量での減刑。表題の「ふたり女房」では重婚の元夫婦、現夫婦はあれで皆幸せになれ

    0
    2025年09月11日
  • 星落ちて、なお

    Posted by ブクログ

    画鬼の娘として生まれた河鍋とよの生涯を描いた作品。たくさんの苦悩があったんだなあというのと、それでも気丈に生きた姿に感銘を受けました。

    0
    2025年08月29日
  • 月ぞ流るる

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    昨年、大河ドラマの光る君へを観ていたおかげで、とても楽しく読めた。観ていなかったら絶対に手に取らなかった本。

    たくさんの登場人物がいたが、大河ドラマで出てきた人物ばかりだったため、俳優さんたちのお顔が浮かんできたおかげで無事に読み終えられた。

    頼賢が追った過去の事件の真相が明るみに出るまでは、少し読むのに時間がかかったが、そのころには登場人物に感情移入してその後は一気に読んだ。

    ラストシーン、三条天皇と妍子の月見のシーンで、心にも・・の歌が出てきた時には感動した。そしてその返歌が、タイトルの伏線回収であることも。

    最後、頼賢が椿を集めたところはイマイチなぜだか分からなかった。

    0
    2025年08月22日
  • 星落ちて、なお

    Posted by ブクログ

    巨星 河鍋暁斎の娘として一人の絵師として明治大正の激動の時代を生き抜いた とよ(暁翠)の一代記。

    とよにとって絵を描くということは父や兄とのつながり、そしてそのつながりへの屈託を再認識する作業だった。
    父のようになれるわけもなく、兄のような才もなく、さりとて絵から離れることもできず…

    しかし終盤 以前 暁斎の弟子であった
    清兵衛の「─この世を喜ぶ術をたった一つでも知っていれば、どんな苦しみも哀しみも帳消しにできる。生きるってのはきっと、そんなものなんじゃないでしょうか」「─とよさんもまたその年まで絵を続けているのは、そこに少しなりとも喜びがあったためではないですか。暁斎先生や周三郎さんへの

    0
    2025年08月15日
  • 孤鷹の天 下〈新装版〉

    Posted by ブクログ

    202506/上・下まとめて。これがデビュー作だなんてすごすぎる!とても面白くとても胸が痛む物語。実在人物・創作上人物、とにかくたくさんの登場人物がでてくるけどそれぞれの個性や魅力が伝わるキャラ描写も秀逸。読んでて一部キャラは里中満智子先生の「女帝の手記」(阿倍がヒロインの歴史漫画)で脳内再生された。

    0
    2025年08月13日
  • 孤鷹の天 上〈新装版〉

    Posted by ブクログ

    202506/上・下まとめて。これがデビュー作だなんてすごすぎる!とても面白くとても胸が痛む物語。実在人物・創作上人物、とにかくたくさんの登場人物がでてくるけどそれぞれの個性や魅力が伝わるキャラ描写も秀逸。読んでて一部キャラは里中満智子先生の「女帝の手記」(阿倍がヒロインの歴史漫画)で脳内再生された。

    0
    2025年08月13日
  • 火定

    Posted by ブクログ

    天平時代の奈良を襲う天然痘の猛威を、主に悲田院や施薬院で働く下級武士や庶民を通して描いている。食欲が無くなる程のグロテスクな状態を淡々と乾いた文章で表しているので何とか読み終えた。パンデミックの中で、人間の持つ二面性やエゴ、集団心理など考えさせられた。
    読み終えた後で気がついたが、今作品は2017年上梓されたものらしい。その後の世界を襲ったコロナの極限状況を彷彿させると言うか、そのままを予言しているかの様。そう言う意味でも凄い作品だった。

    0
    2025年08月12日
  • 赫夜

    Posted by ブクログ

    大きな災害の中で、どう生きていくのか、もがいて足掻いて生きていく様が、強く描かれている感じがしました。
    人は、変わらない生活を望みがちですが、それでも日々変わっていっているもので、それに向き合って生きているんだなと、改めて思いました。
    田村麻呂と阿弖流為は、他の本で読んだ時に、とてもカッコ良かったので楽しみにしていました。今回の二人も素敵でした。
    時代の流れの中で、捨てなければならないもの、掴み取るもの、正しいかどうかでもなく、自分が選んだ道を行く思いで、歴史は動いているんだなと思いました。

    0
    2025年08月10日
  • 月人壮士

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    〈螺旋プロジェクト〉の一冊。

    〈螺旋プロジェクト〉とは
    「共通のルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家=朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画である。
    ルール1 「海族」vs.「山族」の対立を描く
    ルール2 共通のキャラクターを登場させる
    ルール3 共通シーンや象徴モチーフを出す
    (中央公論新社HPより)

    これは、読む人を相当選ぶ小説だと思います。
    何しろまだまだ分からないことの多い奈良時代の、聖武天皇の死について、です。
    聖武天皇と言えば、仏教に深く

    0
    2025年08月07日
  • 京都の歩き方―歴史小説家50の視点―(新潮選書)

    Posted by ブクログ

    必ずしも京都に限った話だけではない歴史中心のエッセイ。週刊誌連載時の「歴史のしっぽ 古都の歩き方」の方がふさわしいのではないか。まあ京都関係が多いし「京都」とつけるだけで売れ行きが違うのかもしれないが。
    ところで澤田瞳子さんは「歴史小説家」なのだろうか?確かに大学で歴史を学んでいるし、そこらの時代小説作家とはレベルが違うとは思うが、作品はかなりフィクションが入っていると思う。もちろんちゃんとした歴史的知識がバックにあるので土台はしっかりしている。ただ内容的には時代小説の範疇だと思うのだが。

    0
    2025年07月24日