澤田瞳子のレビュー一覧
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幕末に学者として備中松山藩に仕え、藩政改革を断行して借金だらけだった藩財政を建て直した山田方谷を主人公にした作品と知り、読む事にしました。
先日亡くなった童門冬二さんの『小説・上杉鷹山』のイメージで読み始めたのですがかなり違います。各章にはそれぞれ別の主人公が存在し、どちらかと言えば方谷は主要脇役として通しで出てきている感じです。おそらく大きな反発の中で行われたであろう財政立て直しについてもサラリと触れるレベルです。どちらかと言えば人間物語。
備中松山藩が不戦を貫いた戊辰戦争を描く最終章。徳川慶喜の老中である藩主と方谷に加え、家老、組頭、そして方谷の弟子たちなど各章の主人公たちが、それぞれの思う「義」を唱え、ぐしゃぐしゃに絡み合いながら大きな塊になって話が進む感じです。少々、混乱の様相。陰で支えた妻たちは置き去りにされたまま終わってしまうし。
もう少し、方谷自身を主人公に据えた物語が読みたかったけど、難しいのかな。なにせ司馬遼太郎が「立派過ぎて題材にするのは困難」と評したとされる人物なので
470ページほどの大作。もう少し刈り込めばもっと感動的に仕上げられたかな。 -
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日本に約3000基ある灯台の役割や多様な価値について知ってもらおうという趣旨で進められている「海と灯台プロジェクト」。主体は一般社団法人・海洋文化創造フォーラムで共催が日本財団と海上保安庁である。そのプロジェクトの一環として企画されたのが、灯台が果たしてきた地域固有の役割や機能、存在価値を物語化して知らしめようという取り組み。本書はそれに基づき19基の灯台を6人の著名な作家が分担して現地取材し、紀行文集として取りまとめたもの。
灯台の建築技術や歴史、地域との関わりについて様々な観点から語られ、読み進めるうちに少しずつ灯台への関心が高まってくる。
しかし、門外漢の私には歴史作家や描写力のある作家の語りには少々、退屈で疲労感を覚えたというのが正直なところ。むしろ、ファンタジー作家で自信もミスチョイスでないかと思ったという阿部智里氏の大衆性をベースにした書きぶりに親近感を覚え、ほっとした。
それはともかく、灯台に関して基礎的で大事なことだと思った点を幾つか挙げておく。
①江戸幕府に対し、西洋各国は航路を照らす灯台の必要性を主張、条約を協定させ、8つの灯台を建設させた。その第1号として、明治2年に初点灯したのが観音埼灯台
②灯台は、西洋人の航路に配慮して、太平洋、東シナ海、瀬戸内海、日本海の順で建てられた
③徳川末期にイギリスから来日し約7年半で26基の灯台を建てたリチャード・ヘンリー・ブラントンは日本の「灯台の父」と呼ばれた
④灯台の灯りはフレネルレンズという大きなレンズからプリズム状の光を投げかけ約30~50キロメートル先まで届く
⑤海路を守る灯台は軍事的な価値もあったため、太平洋戦争では、攻撃目標にされた
⑥GPSなど航海技術が発達した今日、灯台は航路標識としての役割を終えつつあり、文化財や観光資源としての面がクローズアップされている
これら以外にも、トピックネタとして面白いと思った点を挙げておく。
①島根県の出雲日御碕灯台は、駐車場完備、お土産屋、食堂もあり、灯台内部は一般公開され、観光スポットになっている
②高知県室戸岬灯台のレンズの直径は2.6メートルで光達距離約49キロの第一等フレネルレンズ
③三重県安乗埼灯台は全国でも珍しい四角形の灯台。映画「喜びも悲しみも幾歳月」の舞台にもなった
④点灯してから1分以内に生じるエメラルドグリーンに光る瞬間を見たいという灯台ファンが多い
⑤富山県の生地鼻灯台は灯塔を白黒2色に塗られているので、パンダ灯台の愛称で呼ばれている -
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主人公は大河ドラマ「光る君へ」にも登場する栄花物語の著者赤染衛門こと朝児(あさこ)。権勢を誇る藤原道長と対立する三条天皇をめぐる、平安京内裏が舞台の物語。権力争いに利用される姫君が健気でもあり、哀れでもある。もう一人の主人公が、比叡山の僧、頼賢(らいけん)。三条天皇の妃の一人が、他の貴族と不倫の末生まれ、早くに親から見捨てられたが、やはり三条天皇の妃のひとり、原子(げんし)に養育され、原子が毒殺(という噂)された後は比叡山に預けられたという生い立ちを持つ頼賢。いくつかの遍歴の後、三条天皇に仕える身となる。天皇が中心、貴族たちが覇者を争うその様を、ありのまま書き記そうと決意する朝児が目にする様々な内裏の出来事。なかなかに興味深い。
何かというと、火付、放火で人心を操ろうするさまが、おぞましく、慄然とさせられた。
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平安遷都した頃のお話。鷹取は大中臣家に使えている三十歳の家人。家人は牛馬同然に売買される奴婢ほどではないが、家の財産として生涯その軛を逃れられない。話は鷹取が家の主の弟が駿河の国司となるのに供なるところから。駿河で富士の爆発やそれに伴う村の様子、馬を飼う里のこと、遊女たち、山賊の生き方、蝦夷や坂上田村麻呂など多彩なメンバーが登場し、鷹取に影響を与えていく。
起承転結があるような展開ではなく、悠久の富士そのもののどっしりと壮大な話だったので、面白みは薄め。文章や語彙の美しさ、歴史的背景を織り込んだ描写はいつもながらに卓越。
澤田瞳子好きなら、ゆっくり読み進めるのにオススメです。
山賊の荒さや遊女の叙述あるので、小学校には向いてません。難易度的にも高校から。
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江戸末期から明治にかけて活躍した絵師・河鍋暁斎の娘の物語。
お恥ずかしいことに、私は河鍋暁斎を知らず、架空の人物かと思っていて、読み終わってから検索して知りました。
物語の描写のとおり、彼の絵は生き生きとして迫力のある作品でした。
この人の家族はさぞ苦労しただろうなと思うほどに。
読みながら、絵を描く運命から逃れられず苦しむ娘の生き様が、苦しくて苦しくて。
芸術って、その人自身の才能なのに、子供だからって跡取りにされたらつらいだろうな。
関東大震災のところも、東日本や能登の震災を思いつらくなり、読むのがずっと苦しかったです。
最後に
「人は喜び、楽しんでいいのだ。生きる苦しみ哀しみと、それは決して矛盾はしない。いや、むしろ人の世のが苦悩に満ちていればこそ、たった一瞬の輝きは生涯を照らす灯となる。」
という言葉で、やっと救われた気持ちです。 -
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表紙にある「若冲」のタイトルとニワトリの絵、有名な画家とその作品という朧げな記憶から本書を手に取りました。
青物問屋の跡取りが早々に隠居して絵描きに没頭し、描く絵画は奇想天外な発想と細微を極める表現力によって他を圧倒する。芸術家にありがちな気風かと思えば、お家のピンチには絵筆を置いて奔走するユニークな存在で何処までが事実なのかと思います。その若冲さんに対して怨みと怒りを力に変え見事な贋作を描いて執拗に絡む義弟の源蔵。この構図を中心に若冲さんの世界が広がってゆきます。読み進めるにつけ原画を見てみたくなります。恐らく主人公のこだわりが怒涛のごとく押し寄せてくるに違いありません。とても面白い作品でした。