澤田瞳子のレビュー一覧
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絵が好きだ。若冲の絵が好きだ。ニワトリが片足でジョジョ立ちでカッコつける絵がカッコいい。ジョジョは厨二のカッコよさ。とわいえ、かの上野の展覧会に5時間並んだ御仁のなかでも絵を「厨二」「ジョジョ」と評して愛でる世代は少ないだろう。何が言いたいかと言うと「絵の愛で方は人ソレゾレ」ということ。書評なのに何故こんなに絵画愛を語っているかというと、この本に出会うとは、小生では一生思いつかない「絵の愛で方」を発見することになる。まさに若冲大好き大好き溢れ出る想像力の果てに壮大なストーリーが出来ちゃった、って感じ。ここまでくると史実か否かを問うのは野暮。これは伝記ではない。人物評ではない。絵へ愛だけ。ある程
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螺旋プロジェクトの2作目。主役は聖武天皇。
完全な皇統を目指しながら自らに流れる藤原の(海族)の血脈に感じる葛藤と絶望。
色んな人の一人称で語られるそれぞれの首さまの見え方。
結局その最期までその苦しみは解されず、それは石器時代から脈々と続く”族”の対立には、何人も抗えないという真理か、そしてそれはこの後も続く。
こういう昔の物語は語りが読みにくく時代背景にも詳しくないので相変わらず苦手分野。
けど読み進めるうちにそれぞれに見えてる天皇の苦しみが見えて、そしてみんなそれに気づいてて、苦しみがよく伝わる描写だった。
どんな時代も、色んな見かた、見え方があるよなぁ。 -
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昨年末に読んだ「泣くな道真」の続編。
道真が大宰府に流されてから5か月。
今回は道真よりもその行動に振り回される太宰少弐・小野葛根の右往左往を楽しむ話。いつの世でも宮仕えの身はつらいね。
その周囲で登場する生臭坊主の泰成、水城の門を護る三百樹、唐物商の善珠、相変わらず業突張りの幡多児など個性豊かな面々が楽しく、肩肘張った葛根が彼らと交わる中で徐々に己を顧みていくところが宜しい。
葛根が支えているつもりの伯父、太宰大弐の小野葛絃の食わせ者振りもなかなかで、恬子が出てこなかったのが寂しいが、代わって葛絃の息子・阿紀が登場。小野家は逸材の宝庫だな。 -
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澤田瞳子さんの初読みは、8年前に『泣くな道真 大宰府の詩』からだ。それから『孤鷹の天』『関越えの夜 東海道浮世がたり』『若冲』と読み継ぎ『火定』で(医療物が苦手)終わっていた。
本作は『泣くな道真 大宰府の詩』の続編となっていて期待は裏切られなかったが、前作のような驚きは少なかった。
道真が「人はな、畢竟他者を救うことも助けることもできはせぬ。人を救うのは己自身。おぬしはこれまで人に助けられ守られてきたと考えているのかもしれん。されどそんな時も真実、自らを支えてきたのは実はおぬし自身だったはずだ」と若い葛根を諭しながら、左遷された道長自身にも言い聞かせているのだろう。
私もしっかり受け止めま -
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「泣くな道真」の続編。
菅原道真が太宰府に流されて五か月経ち、『延喜』と改元されるのだが、その詔に道真を侮辱するような言葉が書かれていたため、大切な詔を怒りに任せて破いてしまう。
前作に引き続き、イメージとは違う道真が描かれる。
太宰府で失意の日々を過ごし、都へ帰りたい、帝のそばに戻りたいという思いだけの辛い日々を過ごしているものだと思っていたら、身分を偽り博多津で唐物の目利きをするために出歩くという楽しみを見つけている。
妻は都にいるが、娘は一緒に住んでいるし、それなりに楽しんでいるようだ。
この第二作では、その唐物を巡ってのとんでもない犯罪?陰謀?が描かれる。
帝に献上される唐物が、 -
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螺旋プロジェクト、古代編。
首おびと(聖武天皇)が、崩御し、その御遺詔は「皇太子は道祖王」。それに疑問を持つ葛城王が、藤原系中臣継麻呂と道鏡に、その真偽を調べさせる。そこから二人は、首の周囲の人々を訪ねて、彼らから聖武天皇の人となりを知っていく。彼が、何を行い何に悩んでいたかその人生を描写する。
天皇家を山族、藤原家を海族として、螺旋プロジェクトの一編とします。
史実の流れをくみ取り、そうだったかもしれないと思わせてしまう巧さと知識。日本史お詳しい方には、なかなかのファンタジーでしょうか。
私は誰が何だったか調べながらでないとおぼつかないので、思い出から歴史を辿るのは流れを掴むのが難しかった。 -
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初読みの作者さんが続く。
こちらは少し前のkuma0504さんの「吼えろ道真 大宰府の詩」のレビューを見て、最初の巻から買ってみた次第。
菅原道真公が左遷された太宰府に着いたところから始まる物語。
太宰府やその近辺には、小学生の頃に遠足やら宝満山や天拝山への登山やらでよく行っていたが、その頃は歴史的な価値は知る由もなく、もはや記憶もおぼろ。
この本を読めば、博多津の賑わいも含めて堂々たる西の都といった風情で描かれており、こんなことなら近くに住んでいる間に都府楼跡や水城跡などきちんと行っておけば良かったなという心持ち。
物語はと言えば、左遷で悲嘆にくれる道真だが、その相手をするように命じら