あらすじ
悩みを抱える人々が門を叩く、一風変わった駆け込み寺。
平穏で優雅に暮らす尼たちの元へ、ある日飛び込んできたのは「助けてほしい」と叫ぶ若い娘……。雅やかで心に染み入る連作時代小説。
※この電子書籍は2020年4月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
後水尾天皇第八皇女の緋宮光子さまは落飾して元瑤となり、霊元天皇第十皇女である元秀と、林丘寺で暮らしていた。その付人たちの物語。
林丘寺は現在、修学院離宮の中離宮と呼ばれる場所にあり、現在は離宮として管理されている。事前申込みをしておけば、内部の観覧は許されており、80分ほどで巡ることができる。
中離宮は特に徳川秀忠第五女が後水尾天皇の中宮として過ごした御殿を移築してあり、天下の三棚といわれる霞の棚まであるほどの豪奢な御殿。そこで繰り広げられるのんびりとした風景がよい。
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優しい元揺の登場が毎度待ち遠しく読み進めてました。歴史背景知識はあまり必要なく読み進められるので、澤田瞳子小説にしては読み進めやすい作品だと思う。
Posted by ブクログ
人里離れた尼寺を舞台に高貴な方々の日常とそこに関わる市井の人々の人間模様を描いた作品。書名の「駆け入りの寺」から受けた印象とは少々異なる内容でしたが、それぞれの物語にそれぞれの「駆け入り」がありました。
過去の事情から、自分を捨て他人ばかりおもんばかる老尼公と、恩人を捨て置いたという自責の念にさいなまれる青侍の二人の主人公。尼寺へ駆け入るが如く持ち込まれる問題に向き合う二人の主人公を通じて"過ちは真正面から向き合ってこそ新たな道が開ける"と言ったメッセージを受けた気がします。
尼公が発する御所ことばと周囲が発する市井の言葉が相まって、舞台となる尼寺の雅でありながらも人間臭い独特な世界観が醸し出されています。
また、各物語の冒頭にさらっと並べられた季節感溢れる語句が五感を刺激して、情景とともに物語りの中へと誘われます。
お恥ずかしながら人名が覚えきれず、語句の意味が分からずで、本に貼り付けた付箋紙に単語を拾い、読みや意味を追記して、時折参照しながら読み進めました。受験勉強のようでしたが楽しく読ませていただきました。
Posted by ブクログ
いつもながら澤田瞳子さんの作品は一筋縄では行かない。最初は、ほんわかとした人情物かと思って読んでいたら、なかなかどうして、人間の業の様なものが浮き出て来て、それでいて、最後は清々しい気持ちになる。やっぱり凄い。