澤田瞳子のレビュー一覧

  • 若冲

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    なかなか味わい深い本で感想が難しい本です。まず、このタイトルが何を意味しているのか読むまで全く知らず。江戸時代の有名な画家だったのですね。その絵師、若冲の生涯を描いた連作短編ですが、この手の話を読むといつも、読みながら、思わずググってしまいます。今回も鹿苑寺障壁画とか、石峰寺とか、鳥獣図とか思わず調べてしまいました。自分の絵の贋絵を描き若冲を憎む義理の弟、そして憎まれることを糧に名作を生み出す若冲の物語を堪能しましたが、当人たちの心情は複雑で、正直難しく感じました。

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    2021年10月16日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    菅原道真というと、天神様。
    藤原時平の謀略で、無実の罪で太宰府に流され、失意のうちに亡くなった文人政治家。
    そして、その死後、雷神となり、都を脅かした…。
    しかし、それ以外、自分は何を知っているのだろう?

    本作では、道真が太宰府に流されてからの日々が描かれる。
    面白いのは、道真の目線ではなく、彼を迎え入れた太宰府の役人たちの側から描かれることだ。

    中心的な視点人物の一人が、うたたね殿と見くびられる官人、龍野穂積。
    道真は、太宰府に到着して以来、ずっとひきこもり、すさんだ生活をしている。
    体を壊しでもしたら、不当な扱いをしたという誤解を与えかねない。
    それを恐れた小弐小野葛絃の命で、道真の身

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    2021年10月10日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    奈良仏教史を専攻する作家が描いた太宰府へ流された後の道真さんの物語。本当にこんな風だったらいいな。有名な女性歌人も登場して、てんこもりで痛快。

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    2021年08月21日
  • 火定

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    天平7年(735年)から同9年(737年)にかけて大流行した天然痘は首都・平城京(奈良)でも大量の感染者を出し、国政を担っていた藤原4兄弟も相次いで死去した。日本の政治経済や宗教が大混乱に陥り、後の大仏建立のきっかけとなる未曾有のパンデミックであった。
    本書はその混乱の中、病の蔓延を食い止めようとする献身的な医師、偽りの神をまつりあげ混乱に乗じて銭をかき集める才覚者、周囲の者を押しのけて自分だけ生き長らえようとする者などパニック時の人間の行動を生々しくドラマチックに描き出し、直木賞候補作にもなっている。
    主な舞台となるのは、光明皇后が設立した「施薬院」といわれる庶民救済施設で、怪我や病気で苦し

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    2021年08月07日
  • 若冲

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    ネタバレ

    連作短編集の形式で、謎に満ちた絵師・若冲の生涯を描く。

    京都の青物問屋・桝源の跡取り息子でありながら家業を顧みず、一室に籠ってひたすら絵を描く源左衛門(若冲)。
    同じく家の中で妾腹の子として疎んじられ、ひっそりと若冲の身の回りの世話をする妹・志乃。
    そして、若冲の妻・お三輪が自死したのは、桝源の人々のいじめのせいと考え、絵に没入してお三輪を庇うこともしなかった若冲にも深い恨みを抱えている義弟・源蔵。

    独自の奇抜な画題や技法を突き詰めながら絵を描き続ける若冲と、贋作を描くことで若冲を貶めるために絵師となった源蔵(君圭)は、作品を通じて互いの存在を強烈に意識し合い、心をたぎらせ合う。


    澤田

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    2021年05月28日
  • 火定

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    奈良時代におこった天然痘のパンデミックを背景に、人の哀しい性や医療従事者の葛藤などを描いた作品。自分だけは助かろうと自己中心的になる人、混乱に乗じて一儲けしようとする人、デマや噂に翻弄されて理性を失う人など、色々な人が登場する。世界的なコロナ禍のいま読むと、似たような出来事が思い当ってリアルに思える。
    名代(なしろ)と諸男(もろお)のダブル主人公という感じで、二人の視点から交互に語られるのが上手いと思った。
    初めて読んだ作家さんだけど、他の作品も読んでみたいと思った。

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    2021年05月08日
  • 火定

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    奈良時代、天然痘。
    病を持ち込んだと罪悪感に苛まれるもの、
    流行を食い止めようと必死な医師、
    流行に乗じて儲けよう、流言で混乱させようとするもの、
    疫病への恐れ、不安、怒りから、混乱に巻き込まれ暴徒と化す民衆。

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    2021年05月06日
  • 若冲

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    「若冲」と言えば、多彩な色彩とその美しい彩色を思い出す。「動植綵絵」は、その多色彩もさることながら、写体の生々しさの中に実物とかけ離れた幻想的な鶏、鳳凰、草花などに見ているとその迫力に疲れを感じる時がある。
    本作の第一章のタイトルとなっている「鳴鶴」は、以前行った特別展示会で、中国の文正の「鳴鶴図」が原画との説明があった。
    色彩にしろ構図は似ているとしても私には全く違う鶴にみえる。鶴と言えばのイメージカラーの紅白も全く異にする白と赤である。実物とかけ離れたその姿は、意匠性を感じる。
    これは、フランスの印象派ならぬ日本における印象派ではないかと個人的には思っている。

    歴史小説として、若冲の生涯

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    2021年04月09日
  • 若冲

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    史実とは異なると思うが、とても面白い小説に仕上げている。著者は京都で学んだおかげで絵に対する造詣も深いのか。絵に対する描写も細やかで、物語が真に迫る。若冲が、なぜ独特の奇矯な絵をなぜ描けたのか、独創的な想像力で物語に仕上げている。しかもただ、単に面白い物語だけではなく、もしかしたら筆者が絵の中に見た若冲の姿は、本当に若冲のなかにあったのではないか、と思わせる。最後の弁蔵の独白。「美しいがゆえに醜く、醜いがゆえに美しい、そないな人の心によう似てますのや。そやから世間のお人はみな知らず知らず、若冲はんの絵に心惹かれるんやないですやろか」

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    2021年04月06日
  • 火定

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    友人の薦めで読み始め、最初の数ページは用語がなかなか頭に入ってこなくて、読み進める自信がなかったけど、段々読みやすくなり、一気に読んでしまいました。

    とにかく奈良時代、千年以上、気の遠くなるような昔の話です。
    どの程度、このお話がリアルなのかなんて、わかりようもない。
    お話として面白かったのでよしです。
    ちょっと「火定」は言い過ぎじゃないかと思ったけど。

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    2021年03月06日
  • 京都はんなり暮し 〈新装版〉

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    京都人として「あ~あれね」、というローカル事情がつらつらと書かれていて楽しく読めた。

    あとがきのこの一文が京都の歴史をうまくまとめているかと。
    それらの出来事を眺めるに、結局京都に暮すとはそういった様々な変化を愛するということと同義なのかもしれないと思う。

    よそさんもぜひ読んでみては。

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    2021年01月31日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    一度目は始め数ページでリタイア。
    もう一度と思って再チャレンジしたら
    まぁ面白い‼️
    道真のイメージががらっと変わった。

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    2021年01月25日
  • 与楽の飯~東大寺造仏所炊屋私記~

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    澤田先生得意の奈良時代。しかも設定は大仏造成所。この時代は人よりは知っているつもりだが、知らないことが多く、全てが新鮮に感じた。

    解説にはホームズとワトソンとなったが、ミステリ(謎)自体はそんなに複雑なものではない。その前後に見え隠れする時代の特殊性、過酷な環境などが物語を盛り立ていると思う。蝦夷の乙虫の登場は奥州好きにとって嬉しかあったが、外つ者の宿命で悲しい話となってしまうのは何とも言えない感情である。

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    2021年01月09日
  • 腐れ梅

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    幕末よりもっと昔の平安時代とかの歴史小説の方が好きかも
    まぁこの小説はピカレスクロマン(ダークヒーローもの)だったからかもしれないけど。

    とにかく読みやすくて面白かった。
    登場人物が全員クズなんだけど(唯一康明だけは光だったかな)

    女の人怖いよ〜

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    2020年12月05日
  • 火定

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    2015年に雑誌連載された作品らしいがテーマは実にタイムリー。
    裳瘡(天然痘)が大流行し夥しい人々が亡くなりパニックに陥っていく寧楽(なら)の都を、施薬院で働く蜂田名代(はちだのなしろ)と冤罪により投獄されたことにより世を怨む元侍医の猪名部諸男(いなべのもろお)の視点を通して描く。

    『病とは恐ろしいものだ、と名代は思う。それは人を病ませ、命を奪うばかりではない。人と人の縁や信頼、理性すら破壊し、遂には人の世の秩序までも、いとも簡単に打ち砕いてしまう』

    正に今のご時世を表現している。時代が移り変わり医学や科学、技術の進歩があり手段は変わっても人の心の不安定さは変わらないのか。
    出世コースから

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    2020年12月04日
  • 火定

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    ネタバレ

    藤原氏の大きな危機を招いた天平の天然痘の大流行を描いた作品である。
    単行本から文庫化するのを待っていたのだ、まさか、コロナという新たな病のパンデミィック下で読むことになろうとは皮肉なものである。

    舞台は二つ。一つは貧しい人々を受けいれ治療している施薬院で不満を抱えながら働く下級役人名代の行く道のり。
    もう一つはかつて侍医として帝に仕えていた医師である諸男の選ぶ道のり。

    二人を囲む病は暴力や詐欺を生み出して、病以上に人々を苦しめる。

    現代も奈良時代も変わらない人の浅ましさ。だか、それ以上の気高いものもある。

    今、火定にある世界も同じように、大事なものを見失わないことを切に思う。

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    2020年11月19日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    ナツイチのノベルティ欲しさで買った一冊でしたが、本当に面白かったです。
    徹底的に史料を読み込まれた裏付けによって書かれた物語は映像化して、もっと多くの人達に知って貰いたい位です。(道真は野村萬斎さんかな。ただ、平安時代はヒットしないか。)
    いつの時代にも通じるテーマで、読後感もすっきりでした。
    他の作品も読んでみます。

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    2020年11月06日
  • 夢も定かに

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    奈良時代の女官たちの働きぶり。
    キャラ設定がわかりやすい歴史小説です。

    1300年前の平城京、聖武天皇の御世。
    宮廷を支える後宮には、多くの女性たちが働いていた。
    表紙のイラストのようなキャラ設定で、読みやすい。
    おっとりした若子が上京し、しっかり者の笠女、色っぽく可愛い春世と同室に。
    3人とも10代後半で、地方の出身。
    若子は出仕するはずだった妹の代わりに急遽仕事に就いたため、覚悟も準備も出来ていなかったが…

    後宮には12の司(部署)があり、13歳から30歳までの女性が登用される。
    地方の豪族出身だと采女(うねめ)になり、畿内の貴族出身の氏女(うじめ)とは身分の差があった。
    総合職と一般

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    2020年10月08日
  • 日輪の賦

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    ネタバレ

    持統天皇の治世、律令制の確立に奔走する者たちを描いた壮大な物語。概略だけを見れば地味なテーマではあるが、過去の遺産を捨てきれない古い勢力による反抗により話は国家を揺るがす大きな事件を生み出す。

    主人公の廣手たちの行動が律令国家の未来への希望を原動力としている点が非常に気持ち良い。制度は作るだけでは不十分であり、その中で動く人間がよく理解し、柔軟に対応してこそ本当の価値を生み出す(413p)。今に通じるものもある。

    ハイライトは廣手が兄の仇である大麻呂と対峙するシーン。諦観と後悔から自分を殺してみろと挑発する大麻呂に対し、廣手は兄の首を取るより国家に尽くすよう懇願する道を選ぶ(p403)。そ

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    2020年09月20日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    ネタバレ

    元になった能の解説や、さらにその元になった史実や伝説と合わせて読むと面白い。
    能の世界って(理解できると)こんなに彩り豊かなのね~と思った…

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    2020年07月19日