澤田瞳子のレビュー一覧

  • 火定

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    奈良時代、天然痘。
    病を持ち込んだと罪悪感に苛まれるもの、
    流行を食い止めようと必死な医師、
    流行に乗じて儲けよう、流言で混乱させようとするもの、
    疫病への恐れ、不安、怒りから、混乱に巻き込まれ暴徒と化す民衆。

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    2021年05月06日
  • 若冲

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    「若冲」と言えば、多彩な色彩とその美しい彩色を思い出す。「動植綵絵」は、その多色彩もさることながら、写体の生々しさの中に実物とかけ離れた幻想的な鶏、鳳凰、草花などに見ているとその迫力に疲れを感じる時がある。
    本作の第一章のタイトルとなっている「鳴鶴」は、以前行った特別展示会で、中国の文正の「鳴鶴図」が原画との説明があった。
    色彩にしろ構図は似ているとしても私には全く違う鶴にみえる。鶴と言えばのイメージカラーの紅白も全く異にする白と赤である。実物とかけ離れたその姿は、意匠性を感じる。
    これは、フランスの印象派ならぬ日本における印象派ではないかと個人的には思っている。

    歴史小説として、若冲の生涯

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    2021年04月09日
  • 若冲

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    史実とは異なると思うが、とても面白い小説に仕上げている。著者は京都で学んだおかげで絵に対する造詣も深いのか。絵に対する描写も細やかで、物語が真に迫る。若冲が、なぜ独特の奇矯な絵をなぜ描けたのか、独創的な想像力で物語に仕上げている。しかもただ、単に面白い物語だけではなく、もしかしたら筆者が絵の中に見た若冲の姿は、本当に若冲のなかにあったのではないか、と思わせる。最後の弁蔵の独白。「美しいがゆえに醜く、醜いがゆえに美しい、そないな人の心によう似てますのや。そやから世間のお人はみな知らず知らず、若冲はんの絵に心惹かれるんやないですやろか」

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    2021年04月06日
  • 火定

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    友人の薦めで読み始め、最初の数ページは用語がなかなか頭に入ってこなくて、読み進める自信がなかったけど、段々読みやすくなり、一気に読んでしまいました。

    とにかく奈良時代、千年以上、気の遠くなるような昔の話です。
    どの程度、このお話がリアルなのかなんて、わかりようもない。
    お話として面白かったのでよしです。
    ちょっと「火定」は言い過ぎじゃないかと思ったけど。

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    2021年03月06日
  • 京都はんなり暮し 〈新装版〉

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    京都人として「あ~あれね」、というローカル事情がつらつらと書かれていて楽しく読めた。

    あとがきのこの一文が京都の歴史をうまくまとめているかと。
    それらの出来事を眺めるに、結局京都に暮すとはそういった様々な変化を愛するということと同義なのかもしれないと思う。

    よそさんもぜひ読んでみては。

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    2021年01月31日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    一度目は始め数ページでリタイア。
    もう一度と思って再チャレンジしたら
    まぁ面白い‼️
    道真のイメージががらっと変わった。

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    2021年01月25日
  • 与楽の飯~東大寺造仏所炊屋私記~

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    澤田先生得意の奈良時代。しかも設定は大仏造成所。この時代は人よりは知っているつもりだが、知らないことが多く、全てが新鮮に感じた。

    解説にはホームズとワトソンとなったが、ミステリ(謎)自体はそんなに複雑なものではない。その前後に見え隠れする時代の特殊性、過酷な環境などが物語を盛り立ていると思う。蝦夷の乙虫の登場は奥州好きにとって嬉しかあったが、外つ者の宿命で悲しい話となってしまうのは何とも言えない感情である。

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    2021年01月09日
  • 腐れ梅

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    幕末よりもっと昔の平安時代とかの歴史小説の方が好きかも
    まぁこの小説はピカレスクロマン(ダークヒーローもの)だったからかもしれないけど。

    とにかく読みやすくて面白かった。
    登場人物が全員クズなんだけど(唯一康明だけは光だったかな)

    女の人怖いよ〜

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    2020年12月05日
  • 火定

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    2015年に雑誌連載された作品らしいがテーマは実にタイムリー。
    裳瘡(天然痘)が大流行し夥しい人々が亡くなりパニックに陥っていく寧楽(なら)の都を、施薬院で働く蜂田名代(はちだのなしろ)と冤罪により投獄されたことにより世を怨む元侍医の猪名部諸男(いなべのもろお)の視点を通して描く。

    『病とは恐ろしいものだ、と名代は思う。それは人を病ませ、命を奪うばかりではない。人と人の縁や信頼、理性すら破壊し、遂には人の世の秩序までも、いとも簡単に打ち砕いてしまう』

    正に今のご時世を表現している。時代が移り変わり医学や科学、技術の進歩があり手段は変わっても人の心の不安定さは変わらないのか。
    出世コースから

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    2020年12月04日
  • 火定

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    ネタバレ

    藤原氏の大きな危機を招いた天平の天然痘の大流行を描いた作品である。
    単行本から文庫化するのを待っていたのだ、まさか、コロナという新たな病のパンデミィック下で読むことになろうとは皮肉なものである。

    舞台は二つ。一つは貧しい人々を受けいれ治療している施薬院で不満を抱えながら働く下級役人名代の行く道のり。
    もう一つはかつて侍医として帝に仕えていた医師である諸男の選ぶ道のり。

    二人を囲む病は暴力や詐欺を生み出して、病以上に人々を苦しめる。

    現代も奈良時代も変わらない人の浅ましさ。だか、それ以上の気高いものもある。

    今、火定にある世界も同じように、大事なものを見失わないことを切に思う。

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    2020年11月19日
  • 泣くな道真 大宰府の詩

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    ナツイチのノベルティ欲しさで買った一冊でしたが、本当に面白かったです。
    徹底的に史料を読み込まれた裏付けによって書かれた物語は映像化して、もっと多くの人達に知って貰いたい位です。(道真は野村萬斎さんかな。ただ、平安時代はヒットしないか。)
    いつの時代にも通じるテーマで、読後感もすっきりでした。
    他の作品も読んでみます。

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    2020年11月06日
  • 夢も定かに

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    奈良時代の女官たちの働きぶり。
    キャラ設定がわかりやすい歴史小説です。

    1300年前の平城京、聖武天皇の御世。
    宮廷を支える後宮には、多くの女性たちが働いていた。
    表紙のイラストのようなキャラ設定で、読みやすい。
    おっとりした若子が上京し、しっかり者の笠女、色っぽく可愛い春世と同室に。
    3人とも10代後半で、地方の出身。
    若子は出仕するはずだった妹の代わりに急遽仕事に就いたため、覚悟も準備も出来ていなかったが…

    後宮には12の司(部署)があり、13歳から30歳までの女性が登用される。
    地方の豪族出身だと采女(うねめ)になり、畿内の貴族出身の氏女(うじめ)とは身分の差があった。
    総合職と一般

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    2020年10月08日
  • 日輪の賦

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    ネタバレ

    持統天皇の治世、律令制の確立に奔走する者たちを描いた壮大な物語。概略だけを見れば地味なテーマではあるが、過去の遺産を捨てきれない古い勢力による反抗により話は国家を揺るがす大きな事件を生み出す。

    主人公の廣手たちの行動が律令国家の未来への希望を原動力としている点が非常に気持ち良い。制度は作るだけでは不十分であり、その中で動く人間がよく理解し、柔軟に対応してこそ本当の価値を生み出す(413p)。今に通じるものもある。

    ハイライトは廣手が兄の仇である大麻呂と対峙するシーン。諦観と後悔から自分を殺してみろと挑発する大麻呂に対し、廣手は兄の首を取るより国家に尽くすよう懇願する道を選ぶ(p403)。そ

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    2020年09月20日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    ネタバレ

    元になった能の解説や、さらにその元になった史実や伝説と合わせて読むと面白い。
    能の世界って(理解できると)こんなに彩り豊かなのね~と思った…

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    2020年07月19日
  • 日輪の賦

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    ネタバレ

    主人公をはじめとした何人かの架空の人物、および『日本書紀』、『続日本紀』、『万葉集』、『懐風藻』に登場する(多分)実在の多数の人物(ただし、それらに名前しか出てこない人物も多い)が登場し(架空の人物もそれぞれの出自が史実や古代史の説などに基づいてます)、書紀や続紀などに記された史実を巧みに読み替えて想像した(つまり、史実の裏に別の真実があったという、史書のトリックを大胆に想像してます)、非常によくできた飛鳥時代末期が舞台の物語で、史実にはほとんど表れていない、ある3極の対立構造を想定して手に汗握る展開に持ち込みます(飛鳥時代にかなり知識がある方は「そうきたか!」とちょっと唸るかも)。

    この作

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    2020年07月04日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    能の曲目を題材とした短編集。小説のタイトルだけでなく、能の曲目が記載されているので、時代小説などを読んだことがない人は、あらかじめ曲目で検索して、あらすじを確認してから読んだ方が良い。小説は完全に曲目と一緒ではないので、あらすじを読んでいてもネタバレにはならない。

    作品としては、身分の差や貧富の差、様々な立場の中で人が生きている中、富める者が幸せか、貴族は幸せなのか、教訓めいたものも示してくれる。人の優しさを感じる表題作の「稚児桜」、人の強さを感じる「猟師とその妻」、人の怖さを感じる「秋の扇」、人の執念を感じる「照日の鏡」など、様々な角度で読者を楽しませてくれる。

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    2020年07月01日
  • 若冲

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    各章ごとに主題となる絵が存在する。
    その一つ一つの作品が放つ印象に、物語を創造していく作業は、小説家ならでは。

    金に糸目をつけず、惜しげもなく色彩を際立たせる若冲の作品は、同時代の主力「狩野派」とは、素人目でも異質と感じる。

    単なる金持ちの道楽か、アバンギャルドな目立ちたがりやか…

    立場は違えど、お志乃と弁蔵の絡みが、結果的に絵画を分かり易く解説してくれる。

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    2020年05月07日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    すっごくドロドロした人間関係の短編集なのに、幻想的な感じ(^^)能が下敷きになっていると思って読んでいたからかな?(^^;)一番印象に残っているのはタイトルにもなっている「稚児桜」♪短編も良いけれど、長編でガッツリ読んでみたいな~(^-^)

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    2020年04月29日
  • 火定

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    平城京を襲う天然痘の発生から収束までを2つの目線から描いた物語。1,300年前の話なのに今と同じ現象が起きていたという点は学術的にも歴史的にも面白い。また、名代・師男の「医師」という職業に対する認識の変化や成長が、グロテスクで地獄絵図の環境下で爽やかに描かれている。

    ★現代との共通点
    ①変な噂やデマが流行る。
    →物語では黄虫信仰、現代ではトイレットペーパー騒動やライオン脱走など。
    ②誰かが隠すことでパンデミックに繋がる。
    →物語では新羅からの使節が隠したせいで一気に広がった。
    ③恐怖に駆られた異常行為
    →物語では異国人の排除、現代でも国際政争に走りがち。

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    2020年04月25日
  • 日輪の賦

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    「7世紀末。迫り来る唐・新羅に立ち向かう女王がいた。」という帯に惹かれ手に取った。なるほど歴史の教科書に何度も出てきた大化の改新や大宝律令等も、このような深遠な意味があったのかと驚いた。しかも、令和で一躍脚光を浴びた梅花の宴の作者で万葉集の編集に大きく関わった大伴旅人・家持親子が、「倭国」「大王」に代わる「日本」「天皇」という表現を使い始めたという。天智・天武からの改革を受け継ぎ外敵に立ち向かえる日本国の礎を完成に導いた持統天皇と腹心の忍裳という二人の女性の真摯な生き方にスポットを当て、遥か遠い古代日本の壮大なロマンが描かれていて楽しい1冊でした。この一連の事件こそが所謂「大国主の国譲り」「日

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    2020年04月15日