澤田瞳子のレビュー一覧
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人里離れた尼寺を舞台に高貴な方々の日常とそこに関わる市井の人々の人間模様を描いた作品。書名の「駆け入りの寺」から受けた印象とは少々異なる内容でしたが、それぞれの物語にそれぞれの「駆け入り」がありました。
過去の事情から、自分を捨て他人ばかりおもんばかる老尼公と、恩人を捨て置いたという自責の念にさいなまれる青侍の二人の主人公。尼寺へ駆け入るが如く持ち込まれる問題に向き合う二人の主人公を通じて"過ちは真正面から向き合ってこそ新たな道が開ける"と言ったメッセージを受けた気がします。
尼公が発する御所ことばと周囲が発する市井の言葉が相まって、舞台となる尼寺の雅でありながらも人間臭い独特な世界観が醸し出されています。
また、各物語の冒頭にさらっと並べられた季節感溢れる語句が五感を刺激して、情景とともに物語りの中へと誘われます。
お恥ずかしながら人名が覚えきれず、語句の意味が分からずで、本に貼り付けた付箋紙に単語を拾い、読みや意味を追記して、時折参照しながら読み進めました。受験勉強のようでしたが楽しく読ませていただきました。
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菅原道真が太宰府に左遷されたあとの物語。
家柄に合わぬ出世(右大臣)をした道真は、貴族からの反発され左遷されるに至った。京への未練と恨みで塞ぎ込んでいた道真のもとに来たのは、「うたたね殿」こと保積と、美貌の歌人小野括子。
道真の人生って、すごくドラマチックだったんだな。
私は歴史ドラマとか全然見ないんだけど、もし道真が主人公のドラマや映画があったら見てみたい!どうやらまだ大河ドラマにもなっていない模様。こんなに有名人なのに、映像化しにくい人なのかなぁ。
物語序盤、文句ばかり言っている道真にちょっとイライラしたけど、括子が道真の能力(美術や文献への知識が豊富で目利きができる)に気付いて、唐品を扱う店に行くようになってからは話全体が生き生きしてきて面白かったな~。
廃寺を守る僧が、道真と知らずに道真の歌を批判した出来事から、道真はもっと太宰府の中に入っていきたい、この土地の力になりたい、と思ったのではないかしら。
ラスト、京からわざわざ道真の哀れな姿を見に来た藤原氏のために、みんなでドタバタと部屋を地味にして道真を隠そうとしていたのが良かったですね。
道真、太宰府に馴染んだなーって、読んでいて嬉しくなった。
括子はラストは出羽国に行ってしまったけど、まさか彼女があの有名な小野小町だったとは。
古典も歴史も疎くて、はっきり書かれるまで全然気付かなかったよ。小野小町って世界三大美女とされていて「高嶺の花で近づきにくい人」っていうイメージだったんだけど、この本の中では、とても先進的で素敵な女性でした! -
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流謫の身である菅原道真の”その後”を描く、第二弾。
この巻では太宰少弐である小野葛根の眼から、献上されるべき唐物のすり替え事件の顛末が描かれる。
序盤で丁寧に状況や人間関係を描いていくのは、澤田さんのいつものやりかた。
読者にとってはありがたい一方、人によっては、もうちょっとテンポよく!と思う人もいるかも。
でも、本作は物語上必要な内容がしっかり描かれている。
必要があってそれだけの紙数が費やされるのだということが、読者にもよくわかる。
しかも最後も駆け込みで終わっていくのではなく(他の作品ではその気味があるものも、残念ながらあるが)、しっかり満足感が味わえ、なおかつ少ししっとりした終わり方でよかった。
俊蔭という人物が出てくる。
(つい、宇津保の彼を思い出す。)
唐物史として都から使わされる一本気な官吏である。
この人物の「忠義」と、道真の潰えた「忠義」、そして葛根の叔父への「恩義」が対比されている。
読者としてはいろいろと考えさせられるところだ。
のちの東風となる小野葛絃の次男阿紀と、道真の娘紅姫などかわいらしいカップル(?)も登場した。
続編が書かれるなら、また会いたい子たちだった。 -
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ネタバレ螺旋プロジェクト第2弾。
この「月人荘士」も最初は苦戦しました。人名・地名と役職名が難しかった。ので、フリガナが書いてある所まで、何回も戻ってっていうのをやって。苦戦でした。
でも、この「月人荘士」の世界観になじめると案外読めるようになって。また、おもしろく感じれるようになりました。
主人公は首(おびと)天皇(聖武天皇)。ただ、物語はこの首が崩御されたところから始まります。この首のご遺詔を探し求め、その過程で主人公の首の人間像に迫る、っていう形で進んでいきます。インタビュー形式で物語が進んでいくんですが、新鮮な感じがしました。
螺旋プロジェクトのテーマには「超越的な存在」の出現がありますが、最初は山族たる皇族の血と海族たる藤原家の血を併せ持った首天皇がこの物語の「超越的な存在」かと思ったんですが、そうではなかった。
首は、全き天皇であろうとするのに、自分の中の藤原家の血を憎んでいる。ただ自分が天皇になれたのは藤原家の血があったからこそ、っていう葛藤とか、親族への愛憎などの矛盾を一人で抱え、苦悩していた。日本古来の日輪の裔である天皇でありながら、外国から渡来した仏教に傾倒していったのも矛盾に満ちていたんだと思う。
螺旋プロジェクトは海族と山族の対立が大きなテーマですが、この「月人荘士」は直接的な対立ではなく、首天皇の内なる海と山の対立が描かれていました。
このストーリーの「超越的な存在」は首天皇その人ではなく、佐伯今毛人(さえきのいまえみし)という、一介の地方官吏。ただこの佐伯今毛人は「ウナノハテノガタ」のウェレカセリと同じような身体的特徴を持っていました。
佐伯今毛人はすごいことをやってのけたのではないけど、東大寺周辺の自然のバランスを図らずともやっていたのがなるほど、と思いました。その近くに大日女(おおひるめ)という猟師の少女がいたのが印象的。大日女とは天照大神の別称なんだそう。「超越的な存在」と天照大神を並べて描くって巧いなぁと感心しました。ただ、ここに出てくる大日女と天照大神の関係はないはずなんですが、もしかしたら・・・?って思う何かを感じた気がしました。実際、この佐伯今毛人の章だけ、他の章と雰囲気が違っていたような。
この「月人荘士」も、最初は読み進めるのに苦労しましたが、「ウナノハテノガタ」同様、慣れれば割と読めるようになったし、世界観を楽しめるようになりました。
面白かったです。
螺旋プロジェクト、続けて読んでいきます。