澤田瞳子のレビュー一覧

  • 関越えの夜 東海道浮世がたり

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    ネタバレ

    【収録作品】忠助の銭/通夜の支度/やらずの雪/関越えの夜/死神の松/恵比寿のくれた嫁御寮/「なるみ屋」の客/池田村川留噺/痛むか、与茂吉/竹柱の先/二寸の傷/床の椿

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    2021年07月15日
  • 若冲

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    澤田瞳子さんの作品を初めて読んでみた。
    作風は重厚。内面世界を深く掘り下げて描いている。

    若冲の作画解釈が独特で、私自身の感覚とはかなり乖離があった。
    「若冲にとって、生きることは描くこと、描くことは生きること。」(333ページ)
    その渇望の源として澤田さんが描いた世界は、歓びではなく哀しみに満ちていた。

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    2021年06月15日
  • 秋萩の散る

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    遣唐使。学生。役人。そして道鏡。

    奈良の時代に生きた人たちの
    国を思う人生を描いた作品。

    争い、裏切り、裏切られ
    それでも治世の安寧を願った男達。

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    2021年06月05日
  • 若冲

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    ネタバレ

    連作短編集の形式で、謎に満ちた絵師・若冲の生涯を描く。

    京都の青物問屋・桝源の跡取り息子でありながら家業を顧みず、一室に籠ってひたすら絵を描く源左衛門(若冲)。
    同じく家の中で妾腹の子として疎んじられ、ひっそりと若冲の身の回りの世話をする妹・志乃。
    そして、若冲の妻・お三輪が自死したのは、桝源の人々のいじめのせいと考え、絵に没入してお三輪を庇うこともしなかった若冲にも深い恨みを抱えている義弟・源蔵。

    独自の奇抜な画題や技法を突き詰めながら絵を描き続ける若冲と、贋作を描くことで若冲を貶めるために絵師となった源蔵(君圭)は、作品を通じて互いの存在を強烈に意識し合い、心をたぎらせ合う。


    澤田

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    2021年05月28日
  • 火定

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    感染症に関する小説を探してたどり着きました。それは、教科書にもでてくるお話。時は天平。奈良のみやこを疫病(天然痘)が襲う。藤原不比等の子供たち、藤原四兄弟までもが次々と亡くなったという、パンデミックが題材です。

    天然痘に対し、施薬院の人たちは自分を危険に晒しても治療にあたります。一方で、自分の生い立ちから人を憎み、病気に苦しむ人を怪しげな護符で扇動し、施薬院を襲わせる人もいます。また、過去の冤罪から医師であることを放棄しながらも、やっぱり目の前の人を救ってしまう人もいます。

    死に直面する中、人は生きる意味を問われます。さまざまな葛藤を真正面から力強く書きあげた作品です。

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    2021年04月18日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    能にインスパイアされた短編ということで、そのものではない…と思う。どこか物悲しいような、やりきれないような気持ちになる。
    2021/4/1

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    2021年04月01日
  • 腐れ梅

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    北野天神の始まりを描いた物語.神社の始まりとは得てしてこういう私利利欲にかられたものだったのかもしれない.二人の似非巫女の菅原家を巻き込んでの神社創立のあれよこれよの手練手管,そのたくましさに唖然としました.

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    2021年02月22日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    時代を超えて不変なもの。人の心の醜さ、おぞましさ、それを乗り越える強さ。生臭坊主や平安貴族の時代は、それでも未知のものへの畏れがあったが…現代社会は…

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    2021年01月31日
  • 日輪の賦

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    歴史初心者には、とても難しかったですが、とても興味深く面白く読めました。

    遥か昔から、平安に生きることを願いながら、大きな流れの中で自分のできる事に命を燃やしてきた人の思いが、少しずつ繋がって今ここにあるのかもしれないと、感じます。

    ずっと、続けていくことや、継承していくことはとても難しいことですが、今出来る自分を懸命に生きられたら良いなと思いました。

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    2020年11月29日
  • 火定

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    目に見えない疫病の恐怖。そして死と破滅が隣り合わせの中、人は何を見出すのか。奈良時代の平城京を舞台にパンデミックを描いた歴史小説です。

    庶民相手に多忙を極める施薬院の仕事に嫌気が差していた官人の名代は、同僚と薬の買い付けに向かった市で、高熱で倒れる若い男を見かける。そしてその男を看病した、諸男という男には、前歴があるらしいが……
    その後、高熱が続いた後、一端熱が下がる病が、都のあちこちで発生。それはかつて国を恐慌に陥れた天然痘の流行の始まりだった。

    ストーリーの運び方がとにかく上手だった。静かに始まった異変が徐々に広がり、都を地獄に変えていく。その過程で容赦なく描かれる人々の運命の末路。発

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    2020年11月28日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    能楽を元にした時代小説短編集。

    「やま巡り」『山姥』
    「小狐の剣」『小鍛冶』
    「稚児桜」『花月』
    「鮎」『国栖』
    「猟師とその妻」『善知鳥』
    「大臣の娘」『雲雀山』
    「秋の扇」『班女』
    「照日の鏡」『葵上』
    の8編収録。
    元の能楽が示されているので、能を知らない自分も検索してあらすじを見ました。
    幽玄的なイメージのある能ですが、本作では人間ドラマとして再構成されています。
    登場人物や設定などは元のモチーフに沿っているのですが、解釈が現代的という感じです。
    能楽ものがたりは続編シリーズ化もありではないでしょうか。

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    2020年11月15日
  • 夢も定かに

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    1300年前の奈良時代に後宮があって当たり前、なのに今更ながらの認識で恥ずかしい。政治の頂点が聖武天皇にあり、その生活を円滑に進めるための官僚集団みたいな部署が後宮には12司あった。そこで働くワーキングガール3人の女官の物語だ。女官は地方豪族出身の采女(うねめ)と中央貴族の子女である氏女(うじめ)で構成されていて役職も付いた。主人公となる3人は采女で地方出身者。畿内を中心にして形成された古代国家は各地域を征服していく中で、地方の豪族たちからその子女を差し出させている。女性は采女、男性は兵衛として天皇に仕えた。武芸に巧みな兵衛に対し、采女の推薦条件は13歳以上30歳未満で形容端正の容貌が重視され

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    2020年10月05日
  • 火定

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    京内の病人収容、治療を行う施薬院に勤める名代と帝の侍医職を追われた諸男を中心に物語が展開する。
     疫病が蔓延、市井の人々が薬を渇望しても、その値が吊り上げられる。そんな人々は「常世常虫」なる神を頼り、怪しげなまじない札を買い求める。 
     「責められるべきは京の衆ではない。まことは疫病の流行に迅速な手を打てぬ官ではないか」
     「病とは恐ろしいものだ、と名代は思う。それは人を病ませ、命を奪うばかりではない、人と人との縁や信頼、理性をすら破壊し、遂には人の世の秩序までも、いとも簡単に打ち砕いてしまう。」
     どの時代においても、繰り広げられる事象は同じだ。 

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    2020年08月30日
  • 火定

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    天平年間、平城京における裳瘡(天然痘)の流行を扱った医療時代小説である。天然痘はウイルスが原因だ。古代何度もパンデミックが起きている。現代は根絶しているが、我々世代は何れかの肩に昔のワクチンの痕(あと)が必ず微かに残っている。しかし、古代は天然痘で生き残った者には一生痘痕面(あばたずら)がついて回った。

    天平9年(737年)、京内の病人の収容・治療を行う公的施設、施薬院では、天然痘の発生から忽ち大パニックに陥る。いわゆる医療崩壊である。何しろまともな医師が1人しかいない。庶民は怪しげなまじない札を高価格で買い、フェクニュースに踊らされて外国人襲撃を始める。現代でも起こりそうな事を上手いこと時

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    2020年08月30日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    能を下敷きにした短編集。

    表題作の「稚児桜」はくしくもこないだ読んだ「じんかん」に出てくる”衆道”の話でした。主人公の一人である稚児の花月という名前はどうしても大阪の劇場を連想してしまうのだが、思えば、花月園とか花月嵐とかいろいろなところで使われていて風流なようでちょっと俗っぽい不思議なワードです。

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    2020年08月15日
  • 夢も定かに

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    読みやすいライトノベル風。
    若い人に平安時代のドロドロの入り口に
    なればいいね。楽しいよ。
    藤原4兄弟の粛清の嵐スタンバイ時代。
    あのオチは優し過ぎないか?

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    2020年08月09日
  • 火定

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    この世の地獄はどこにある。

    天然痘の流行する奈良の都の様子を描いた作品。施薬院に配属された名代、濡れ衣で侍医から一時は罪人にまで身を落した諸男、この2人を軸に話が進んでいく。医師の道とは何なのか。絶望と恐怖の中でどのように生きるのか。それはいつの時代でも不変の問い。

    効果のないまじないが流行し、それに大金を払う人が出たり、とにかく自分だけは助かりたいと、閉じこもって食料などは届けてもらったり、病は海外からもたらされたものだと、異国の人を攻撃したり、新型コロナウイルスの感染が拡大する今の様子と通じるところもある。

    医師の姿に自分の答えを見つけた名代の独白がいい。全員を救うことはできず、人を

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    2020年07月13日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    能の名曲を題材に書かれた8編の時代小説集。

    遊女が雪山で怪しげな老婆と出会う話
    「やま巡り」から始まる。
    恐ろしくも逞しく生きる者を描いた「猟師とその妻」は
    読み応えありだが、
    卑賤(ひせん)であれ、上つ方(うえつがた)であれ、その道を行くしかない悲しみが胸に迫る「照日の鏡」が良かった。
    生霊に取り憑かれた光源氏の妻・葵上(あおいのうえ)の苦しみとは。
    能の演目としてどのように舞うのか気になるところ。

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    2020年07月09日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    第163回直木賞候補となっている澤田瞳子さんの作品。日本の伝統芸能である「能」にインスパイアを受けて生み出した8篇の時代小説。「能」についてあまり詳しくなかった為、「山姥、小鍛冶、花月、国栖、善知鳥、雲雀山、班女、葵上」ら8つの「能」をyoutube等で調べつつ、小説と照らし合わせて読んでみた。全体的に人の業というか、人間の弱さを描いた作品が多く、文章に独特の怪しい雰囲気があって面白かった。

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    2020年07月07日
  • 能楽ものがたり 稚児桜

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    「能の名曲からインスパイアされた8編の物語」──らしい。そう言われても、能なんて一度も観たことがないし、まったくの無知だ。まあ、元ネタは知らなくても、なんだか面白い短編集を読んだなあ……という気にはなった。逆に元ネタがどんなふうに演じられるのか知りたくなった。

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    2020年06月29日