あらすじ
歴史小説家・澤田瞳子が月刊『なごみ』で2年間にわたって連載した小説『能楽ものがたり』を単行本化。能の名曲を下敷きに創作した8編を収録。
1「やま巡り―《山姥》」/2「小狐の剣―《小鍛冶》」/3「稚児桜―《花月》」/4「鮎―《国栖》/5「猟師とその妻―《善知鳥》」/6「大臣の娘―《雲雀山》」/7「秋の扇―《班女》」/8「照日の鏡―《葵上》」。
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直木賞作家の作品ということで読んだ。時代小説のため、言い回しや漢字表記に馴染みがなかったが、そんなことが気にならないくらい、それぞれの人間模様に引き込まれた。他の作品も読んでみたい。
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能の名曲を元にした短編作品。
元の作品をあまり知らないものが多かったので調べながら読んだが、元の作品よりこちらの物語の方が良いと感じてしまう。とても好き。
能に興味が出てきたので見に行きたくなった。
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能を題材にした短編八話。奈良時代、平安時代あたりか。不安な運命に生まれながらも、逞しく生きる決意を書いたものや、転んでもタダでは起きない女の底力、嫉妬を書いた物など、どれも30ページ程にも関わらず、グイグイ引き込まれる。最後の光源氏の妻、葵の上を書いた話などはとても印象的。能楽が元という先入観もあるかもしれないけど、とても味わい深い短編集でした。
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時代が明記されていない作品もあるものの、おおむね古代~平安時代あたりが舞台でしょうか。
能楽の名曲からインスパイアされた作品が並ぶ短編集です。
もちろん元ネタは知らないものばかりでしたが、能楽の名曲が基底にあるとはいえ、どれも絶妙なひねりを加えている印象を受けました。
本書は貧しい立場に置かれた人々が主人公となっているものが多いです。
例えば表題作はかつて貧しさゆえに親から売られた少年たちの物語です。
稚児という立場を受け入れ、したたかに日々を生きる少年と、稚児という立場に馴染めず、周囲からいじめをうけている少年。
ある日前者の少年の元に、自分を捨てた父親を名乗る男が7年ぶりに会いにくるのですが・・・。
少年のとった行動から、人間の持つ矜持といったものをしっかりと見せてくれるあたり、うまいなあと思いました。
一方で、「大臣の娘」や「秋の扇」などは、ミステリー小説のような意外性のある展開で、お約束的な勧善懲悪の展開にもっていきたくなりそうなところを、あえてそうしなかったあたり、とても良かったと思います。
読む前は地味な作品なんじゃないかと危惧していたのですが、どうしてどうして、どの作品も30ページほどの分量の中でキレッキレの輝きを放っており、一編一編を堪能できました。
これだけのレベルの作品を短編で惜しげもなく魅せてくれるのはさすがとしか言いようがありません。
贅沢な一冊だと思います。
今回の候補作5冊の中で、もっとも楽しめたのは本作でした。
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(2023/10/19 1.5 h)
能の曲目8 つを下敷きにした短編集
話のすべてが毒の効いた繋がりの物語
能楽の知識がなくても楽しめる上に
基になった作品にも関心のもてる良作
「鮎」(国栖)
「照日の鏡」(葵上)
の2 作が特に好き
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元になった能の解説や、さらにその元になった史実や伝説と合わせて読むと面白い。
能の世界って(理解できると)こんなに彩り豊かなのね~と思った…
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能の曲目を題材とした短編集。小説のタイトルだけでなく、能の曲目が記載されているので、時代小説などを読んだことがない人は、あらかじめ曲目で検索して、あらすじを確認してから読んだ方が良い。小説は完全に曲目と一緒ではないので、あらすじを読んでいてもネタバレにはならない。
作品としては、身分の差や貧富の差、様々な立場の中で人が生きている中、富める者が幸せか、貴族は幸せなのか、教訓めいたものも示してくれる。人の優しさを感じる表題作の「稚児桜」、人の強さを感じる「猟師とその妻」、人の怖さを感じる「秋の扇」、人の執念を感じる「照日の鏡」など、様々な角度で読者を楽しませてくれる。
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すっごくドロドロした人間関係の短編集なのに、幻想的な感じ(^^)能が下敷きになっていると思って読んでいたからかな?(^^;)一番印象に残っているのはタイトルにもなっている「稚児桜」♪短編も良いけれど、長編でガッツリ読んでみたいな~(^-^)
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能の曲目に題材をとった短編集ということで、サブタイトルに、元になった曲目が添えられている。
生で能を観たことが無いけれど、興味はあって、少し本など読んだことはある。
個人的に能のイメージは、途中で世界が一転するということ。
目の前の老婆がいきなり美女の霊になったり、人が精霊の姿を現して舞ったりする。
現実が、いきなり夢幻の世界に変わる。
もともと、美しい能面の下はおじさんの顔だったりして、外と中身は違う世界なのだ。
この本の物語も、そういった、“変わる”"本性を現す"瞬間がある。
時代を映してか、親子別れの話も多い。
子育てに向かない女、夫には向かない男、稚児にむかない美少年、スパイに向かない女。
ひたすら狩りをする美しき野生の女。
継母と、捨てられた娘。
「後で迎えに来る」という男と、同姓の同僚は信頼してはならない。
物の怪は貴人たちの心の中に棲む?
「稚児桜」と「照日の鏡」の意外な落としどころが良かった。
・やま巡り――山姥(やまんば)
・子狐の剣(こぎつねのつるぎ)――小鍛冶(こかじ)
・稚児桜(ちござくら)――花月(かげつ)
・鮎――国栖(くず)
・猟師とその妻――善知鳥(うとう)
・大臣(おとど)の娘――雲雀山(ひばりやま)
・秋の扇――班女(はんじょ)
・照日(てるひ)の鏡――葵上(あおいのうえ)
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時代を超えて不変なもの。人の心の醜さ、おぞましさ、それを乗り越える強さ。生臭坊主や平安貴族の時代は、それでも未知のものへの畏れがあったが…現代社会は…
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能楽を元にした時代小説短編集。
「やま巡り」『山姥』
「小狐の剣」『小鍛冶』
「稚児桜」『花月』
「鮎」『国栖』
「猟師とその妻」『善知鳥』
「大臣の娘」『雲雀山』
「秋の扇」『班女』
「照日の鏡」『葵上』
の8編収録。
元の能楽が示されているので、能を知らない自分も検索してあらすじを見ました。
幽玄的なイメージのある能ですが、本作では人間ドラマとして再構成されています。
登場人物や設定などは元のモチーフに沿っているのですが、解釈が現代的という感じです。
能楽ものがたりは続編シリーズ化もありではないでしょうか。
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能を下敷きにした短編集。
表題作の「稚児桜」はくしくもこないだ読んだ「じんかん」に出てくる”衆道”の話でした。主人公の一人である稚児の花月という名前はどうしても大阪の劇場を連想してしまうのだが、思えば、花月園とか花月嵐とかいろいろなところで使われていて風流なようでちょっと俗っぽい不思議なワードです。
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能の名曲を題材に書かれた8編の時代小説集。
遊女が雪山で怪しげな老婆と出会う話
「やま巡り」から始まる。
恐ろしくも逞しく生きる者を描いた「猟師とその妻」は
読み応えありだが、
卑賤(ひせん)であれ、上つ方(うえつがた)であれ、その道を行くしかない悲しみが胸に迫る「照日の鏡」が良かった。
生霊に取り憑かれた光源氏の妻・葵上(あおいのうえ)の苦しみとは。
能の演目としてどのように舞うのか気になるところ。
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第163回直木賞候補となっている澤田瞳子さんの作品。日本の伝統芸能である「能」にインスパイアを受けて生み出した8篇の時代小説。「能」についてあまり詳しくなかった為、「山姥、小鍛冶、花月、国栖、善知鳥、雲雀山、班女、葵上」ら8つの「能」をyoutube等で調べつつ、小説と照らし合わせて読んでみた。全体的に人の業というか、人間の弱さを描いた作品が多く、文章に独特の怪しい雰囲気があって面白かった。
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「能の名曲からインスパイアされた8編の物語」──らしい。そう言われても、能なんて一度も観たことがないし、まったくの無知だ。まあ、元ネタは知らなくても、なんだか面白い短編集を読んだなあ……という気にはなった。逆に元ネタがどんなふうに演じられるのか知りたくなった。
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お能の曲目を下敷きにした8話短編集。
能とは全く別物になっているが、これはこれでおもしろい。元話より人間の欲望が前面に出ていて、ゾッとする。
お能の幽玄さや哀れ、幻想的な感じを言葉だけで表現するのは不可能かもしれない。だからこそ意欲的な挑戦作。