柳沢由実子のレビュー一覧
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クルト・ヴァランダーのシリーズ第8弾、後半。
タクシー運転手から金を奪った少女が脱走した事件。
別件に関連があるとわかり、しかもヴァランダーは苦手なコンピュータが重要な糸口を握っている。
ヴァランダーは、ハッカーとして釈放されたばかりの少年ローベルト・モディーンを頼ることに。
一方、孤独な生活が長くなったヴァランダーは、広告を出して交際相手を求め、魅力的な中年女性エルヴィアに巡り合う。
(ほかのスウェーデン・ミステリにもこういう交際は登場していましたね)
スウェーデンは犯罪増加に警察が対応しきれない状態である様子。
イースタは小さな町なので人員も少なく、のめりこみ型のヴァランダーは一人で暴走することにもなりがち。
部下の女性で信頼しているアン=ブリット・フーグルンドから思わぬ話を聞かされて、ショックを受けることに。
署内での問題に内憂外患といった趣だけど、娘のリンダが将来を決めたと報告してくる喜びも。
リンダ中心の作品も出るのかな? -
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スウェーデンの警察もの。
刑事クルト・ヴァランダーのシリーズ第8弾。
仕事は有能だが、数年前に離婚し、世話がかかった父をなくし、恋人バイバには去られ、糖尿病を抱える50男ヴァランダー。
かっての親友ステンも、牧場を売って遠くへ行こうとしている。
娘のリンダとはうまく行っているが、遠くに住んでいて忙しい。
付き合う相手を求めたらどうだというリンダの勧めで、迷いつつも広告を出すことに。
19歳と14歳の少女がタクシー運転手を襲って金を奪い、怪我させたのがもとで死なせてしまう事件が起こる。
罪悪感がなくふてぶてしい二人の様子にショックを受ける大人たち。
ただ金が欲しかったというのは嘘だと直感するクルトだが‥
14歳のエヴァが母親に何度も殴りかかるのをとめたクルトは、エヴァを殴ったところを写真に取られ、新聞に報道されてしまう。
母親はエヴァが殴ったことを否定。問題となったため署長に疑われ、クルトは苛立つ。
19歳のソニャは署内から脱走してしまい、後に変電所で死体となって発見される。自殺か他殺か?事件は奇怪な様相に。
中年の男性ファルクがATMの前で倒れていたという事件も起きる。
ファルクはITコンサルタントで、当初は心臓発作かと思われたが、不審な点があり、しかも遺体が盗まれる。
かわりに、変電所にかかわるものが置かれていた。
ファルクの遺したコンピュータは異常に警備が厳重で、クルトらはハッカーの若者を頼ることになる。
コンピュータ犯罪がテロリズムに悪用されるという現代的なテーマ。
国際的なスケールになっていくと、作者の独壇場ともいうべきペースに。
アフリカに住んでいたこともあるマンケル。
今回はルアンダでの出来事が事件の背景に。
原著は1998年ですが、古さは感じません。
コンピュータに詳しかったら、やや古いのかな?
2012年翻訳発行。
あと2作で完結だそうです。
その前にシリーズ外作品が発行されるとか。
それも楽しみ。 -
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ネタバレシリーズものと知らずに読んでしまった。
頭の中ですごく映像化しやすくて、
時節柄ヴァランダーは007のダニエル・クレイグを
思い浮かべながら読んだ。
そういえばハリウッド超大作!って最近少ないような
気がするけど、スパイものとかで正当防衛のために
相手を殺すシーンってやたらたくさん出て来てた記憶があり、
だからヴァランダーが1年以上も休職し、
あてもなく浜辺をさまよう姿を想像して
職業で拳銃を持っている人の命に対する思いは
本来こういうものではないかと感じた。
まだその時ではない 作品中何度か出てくるフレーズは
見えない事件を一刻も早く解決したいという焦りを
ふっと落ち着かせる効果的な言葉で、
日ごろあわてものの私に教訓めいた言葉でもあった。 -
Posted by ブクログ
スウェーデンのミステリ。
クルト・ヴァランダー警部のシリーズ4作目。
「殺人者の顔」「リガの犬たち」「白い雌ライオン」に続く真ん中へんですが、順番めちゃくちゃに読んだので、これが最後になりました。
(…あ、もう新作出てます!)
前作で正当防衛ながら人を殺したことにショックを受け、1年も休職していたクルト。
ついに仕事を辞めると決意したとき、友人の弁護士が保養先に訪れます。
父が事故死したのだが、その様子に不審な点があるので、調べて欲しいと。
クルトは断るのですが、その友人が殺されたと聞き…
アン=ブリット・フールグンドがここで初登場していました。
イースタ署では初めてだという紅一点の新米刑事なので、最初は同僚に評価されないでいます。
でも子どもが二人いるしっかりした女性。
クルトは素質を見抜き、新時代の警官になるだろうと思うのです。
弁護士トーステンソンの父親は、取引先から帰る途中で事故にあった。
取引先とは、ファーンホルム城に住む富豪のアルフレッド・ハーデルベリ。
署長が気を遣うほどの名士で、世界を飛び回っているため、面会することすら難しい。
強引に約束してクルトが聴取に出向いたハーデルベリは、笑顔を絶やさないカリスマ性のある男でした。
クルトは子どもの頃に、画家の父親の絵を買っていた大金持ちのことを思い出します。
絹の服を着て高価な車に乗っていた彼らはどこか、怖かった。
父親が卑屈にふるまう顧客を、幼いクルトはシルクライダーと呼んでいたのです。
城の様子を探るため、旧友にも協力を頼むクルト。
弁護士の女性秘書までが狙われ、事態は急迫してきます。
癖のある古手の警官達と付き合いながらの捜査。
一番変わっているのはクルトかも知れないけど。
休養の後なので、珍しく健康らしいけど、捜査に熱中して、ひげを剃らないまま事情聴取に行ったり。
鑑識のニーベリは有能で、検事のオーケソンは冷静に協力し、フールグンドも期待通り活躍します。
国際的な富豪が相手とは、小さな町の警官達で解決出来るのかと思いますが~ここは頑張るんです。
それどころか、クルト一人でも解決しそうな勢い~単独行動が多いのでね。
「クルトが元気になるには、ちゃんとした事件が必要なんだ」と同僚に評されます。
アクションシーンをまじえて、さくさくと進む警察物で、このシリーズにしては標準的な読み応えかな。
手紙を出していた美しい未亡人バイバには、会って貰えそう? -
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「背後の足音(上下)」
夏至前夜、三人の若者が公園でパーティーを開いていた。18世紀の服装、料理、ワイン。彼らをうかがう目があるとも知らず・・・。ある日イースタ警察署に夏至前夜に友人と出かけて以来行方不明の娘を捜してくれという母親の訴えが出された。その捜査会議に刑事のひとりが無断で欠席する。几帳面な人物がなぜ?不審に思ってアパートを訪ねたヴァランダーの目の前に信じられない光景が広がっていた。(上のあらすじ)
作者はへニング・マンケル。現在63歳の大ベテラン、スウェーデン出身(私が出会った初のスウェーデン人作家です)。彼はクルト・ヴァランダー警部を主人公にした作品を書き続けているようで、この「背後の足音Steget efter」は1997年に発表されたヴァランダーシリーズ(現在最新作は「Den orolige mannen」(2009))です。
昔の作品ですが、当時の時代の空気を感じさせない作風になっています。魅力は推理小説の醍醐味の1つである犯人追求の過程です。ヴァランダーにくっついて行く私がいました。また犯人にも感じる点があります。90年代のはずなんですけどね、なるほど63歳恐るべし。
しかし、ちょっとヴァランダー警部シリーズ第1作目「殺人者の顔」を本気で読みたくなりましたね、これはw。また、この作品をきっかけに他の大ベテランの作家達の作品を読んでみたいと考えるようにもなりました。
63歳クラスの作家は誰がおりましたでしょうか?うーーん、ぱっと出てこない自分が悲しいw -
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数年前に逮捕した被疑者の葬儀に出席するシーンから始まる。そんな事件あったかしらと記憶を呼び起こし愕然とする。このシリーズにハマるきっかけとなった傑作なのに、犯人の名前すら忘れかけているとは。他にも過去事件の断片がちらちらと顔を出し、いよいよフィナーレが近いことをイヤでも認識させられる。
今回の事件はコンピュータ犯罪。前作で犯罪の多様化にスポットを当ててみせたが、ますます複雑で、しかも高等なスキルを要する犯罪の本質に作者は警鐘を鳴らしている。だが読み終えてみると、メインは事件ではなくヴァランダーなのだという印象が強い。
組織内で孤立し、友は去り、新しいタイプの犯罪に焦燥する彼の姿は、いつにも増して疲れているように見える。過去にとらわれるあまり、現在で足踏みしてしまっている諸々の状況が、悲しくもあり可笑しくもあり。フィナーレを迎えるのは必然なのかな。でもこれだけのキャラクターなのに、異常な肩入れをせずに、シリーズ内でちゃんと成熟させている作者のスタンスには毎回感心させられる。
事件の解決と主人公の苦悩──作中でふたつのストーリーが同時進行しているように見えたが、結局はひとつの物語として終結するから不思議。キレイにまとまってないところが逆に現実っぽくて私は好きです。壁を撃ち破ったヴァランダーの決意が気になるところだが、あとがきを読むに、第九弾は数年先かな。 -
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ネタバレカーリン・アルヴテーゲンは、1965年スウェーデン生まれ。
二作目の『喪失』で、北欧推理小説賞を受賞。サイコサスペンスの女王ともいえる存在の作家らしいです。
邦訳は四冊あり、本書は邦訳で一番新しい書物です。
私は本書以前の三冊、『罪』『喪失』『裏切り』は読んでおらず、はじめてのカーリン・アルヴテーゲンです。
主人公といえるのは、ふたりの女性。
ひとりは、38歳の女医。仕事で成功し何不自由ない生活を送っているように思えるが、兄の死がいつまでも心から離れずトラウマになっている。
もうひとりは、異常に太りすぎ部屋から出ることもできない犬と暮らす50代の女性。彼女を手助けしようとしてくれる人たちを辛辣な言葉で傷つける。
この全く違う女性ふたりの女性のことが交互に綴られる。
異なる人生を歩むふたりのことを知るにつけ、彼女たちの共通のキーワードが浮かび上がってくる仕掛けになっている。
でも、彼女たちの人生は容易には交差しない。
彼女たちの人生に登場する脇役もすごい。
家族を殺し、終身刑を受け刑務所で過ごしている肥満女性の幼友達。
彼女のことなどすっかり忘れていた日常に届いた一通の手紙。その手紙を受け取った時から肥満女性の人生に変化が訪れる。
皮肉を並べ、悪口をいい、傷つけてヘルパーを追い出すことに生きがいを見出していた肥満女性だが、
彼女の前に現れたヘルパーの女の子今までにないタイプの子。
そのヘルパーの女の子の母親と女医は知り合いで、また女医の人生を変えてゆく出来事が起こる。
人生の成功とは何か。捉われていることは果たして捉われるべきことだったのか。
毎日の積み重ねの小さな出来事は未来に関連性があるといういわれてみれば当たり前のことが、過去と未来の自らの剣の先をつき合わせなければ気付かないこともある。
過食で人の手を借りなければ生活できない中年女性、頑張り続け社会的地位や経済的成功を手に入れ、それでも不安と孤独のなかで頑張り続ける女医。
現代に生きているふたりの女性は、とても身近に感じられる。焙りだされる心の闇に、私たちも現生活を振り返り、何かかんじなければならないのかもしれない。