柳沢由実子のレビュー一覧
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クルト・ヴァランダーのシリーズ第8弾、後半。
タクシー運転手から金を奪った少女が脱走した事件。
別件に関連があるとわかり、しかもヴァランダーは苦手なコンピュータが重要な糸口を握っている。
ヴァランダーは、ハッカーとして釈放されたばかりの少年ローベルト・モディーンを頼ることに。
一方、孤独な生活が長くなったヴァランダーは、広告を出して交際相手を求め、魅力的な中年女性エルヴィアに巡り合う。
(ほかのスウェーデン・ミステリにもこういう交際は登場していましたね)
スウェーデンは犯罪増加に警察が対応しきれない状態である様子。
イースタは小さな町なので人員も少なく、のめりこみ型のヴァランダーは一人で -
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スウェーデンの警察もの。
刑事クルト・ヴァランダーのシリーズ第8弾。
仕事は有能だが、数年前に離婚し、世話がかかった父をなくし、恋人バイバには去られ、糖尿病を抱える50男ヴァランダー。
かっての親友ステンも、牧場を売って遠くへ行こうとしている。
娘のリンダとはうまく行っているが、遠くに住んでいて忙しい。
付き合う相手を求めたらどうだというリンダの勧めで、迷いつつも広告を出すことに。
19歳と14歳の少女がタクシー運転手を襲って金を奪い、怪我させたのがもとで死なせてしまう事件が起こる。
罪悪感がなくふてぶてしい二人の様子にショックを受ける大人たち。
ただ金が欲しかったというのは嘘だと直感する -
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ネタバレシリーズものと知らずに読んでしまった。
頭の中ですごく映像化しやすくて、
時節柄ヴァランダーは007のダニエル・クレイグを
思い浮かべながら読んだ。
そういえばハリウッド超大作!って最近少ないような
気がするけど、スパイものとかで正当防衛のために
相手を殺すシーンってやたらたくさん出て来てた記憶があり、
だからヴァランダーが1年以上も休職し、
あてもなく浜辺をさまよう姿を想像して
職業で拳銃を持っている人の命に対する思いは
本来こういうものではないかと感じた。
まだその時ではない 作品中何度か出てくるフレーズは
見えない事件を一刻も早く解決したいという焦りを
ふっと落ち着かせる効果的な言葉で、 -
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スウェーデンのミステリ。
クルト・ヴァランダー警部のシリーズ4作目。
「殺人者の顔」「リガの犬たち」「白い雌ライオン」に続く真ん中へんですが、順番めちゃくちゃに読んだので、これが最後になりました。
(…あ、もう新作出てます!)
前作で正当防衛ながら人を殺したことにショックを受け、1年も休職していたクルト。
ついに仕事を辞めると決意したとき、友人の弁護士が保養先に訪れます。
父が事故死したのだが、その様子に不審な点があるので、調べて欲しいと。
クルトは断るのですが、その友人が殺されたと聞き…
アン=ブリット・フールグンドがここで初登場していました。
イースタ署では初めてだという紅一点の新米刑 -
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「背後の足音(上下)」
夏至前夜、三人の若者が公園でパーティーを開いていた。18世紀の服装、料理、ワイン。彼らをうかがう目があるとも知らず・・・。ある日イースタ警察署に夏至前夜に友人と出かけて以来行方不明の娘を捜してくれという母親の訴えが出された。その捜査会議に刑事のひとりが無断で欠席する。几帳面な人物がなぜ?不審に思ってアパートを訪ねたヴァランダーの目の前に信じられない光景が広がっていた。(上のあらすじ)
作者はへニング・マンケル。現在63歳の大ベテラン、スウェーデン出身(私が出会った初のスウェーデン人作家です)。彼はクルト・ヴァランダー警部を主人公にした作品を書き続けているようで、この -
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数年前に逮捕した被疑者の葬儀に出席するシーンから始まる。そんな事件あったかしらと記憶を呼び起こし愕然とする。このシリーズにハマるきっかけとなった傑作なのに、犯人の名前すら忘れかけているとは。他にも過去事件の断片がちらちらと顔を出し、いよいよフィナーレが近いことをイヤでも認識させられる。
今回の事件はコンピュータ犯罪。前作で犯罪の多様化にスポットを当ててみせたが、ますます複雑で、しかも高等なスキルを要する犯罪の本質に作者は警鐘を鳴らしている。だが読み終えてみると、メインは事件ではなくヴァランダーなのだという印象が強い。
組織内で孤立し、友は去り、新しいタイプの犯罪に焦燥する彼の姿は、いつにも -
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ネタバレカーリン・アルヴテーゲンは、1965年スウェーデン生まれ。
二作目の『喪失』で、北欧推理小説賞を受賞。サイコサスペンスの女王ともいえる存在の作家らしいです。
邦訳は四冊あり、本書は邦訳で一番新しい書物です。
私は本書以前の三冊、『罪』『喪失』『裏切り』は読んでおらず、はじめてのカーリン・アルヴテーゲンです。
主人公といえるのは、ふたりの女性。
ひとりは、38歳の女医。仕事で成功し何不自由ない生活を送っているように思えるが、兄の死がいつまでも心から離れずトラウマになっている。
もうひとりは、異常に太りすぎ部屋から出ることもできない犬と暮らす50代の女性。彼女を手助けしようとしてくれる人た -
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スウェーデンのミステリ。
警部クルト・ヴァランダーが主人公のシリーズ3作目。
ここから分厚くなってます。
イースタはスウェーデン南端の田舎町だが、交通の要衝にあるため、国際的な事件も起きうる。
思いも寄らぬ南アフリカの陰謀に巻き込まれる。
南アフリカでの人種問題をさかのぼるプロローグから、重厚に書き込まれています。
国際的なベストセラーになった理由がわかる気がしました。
ヴァランダー個人は妻に出て行かれたのはもう諦めたが、次の一歩は踏み出せず、落ち着かない精神状態。
ストックホルムに住む娘のリンダが心配でいつも会いたがっているのだが、なかなか上手くいかない。
捜査のためにストックホルムに出 -
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スウェーデンの警察ものミステリのシリーズ2作目。
田舎町イースタの警部クルト・ヴァランダーが主人公。
妻に去られ、それなりに落ちついては来たが、警察の仕事に疲れて、転職を考えているのだったが…
今回は、ラトヴィアという異国が主な舞台に。
バルト三国の一つで、ソ連解体の時期に大揺れとなって、荒廃していた。
スウェーデンはそう遠くはないのだが、体制が違うため行き来は滅多にない。
救命ボートで流れ着いた死体は二人が抱き合うように乗せられ、高級なスーツを着ていた。
何の印もないボートがじつはラトヴィアの物だったようなので、合同で捜査することになるのだったが…
たった一人で訪れた警官リエパ中佐は、言葉 -
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シビラは、道端にいるわけではないが、ホームレス同様の暮らし。
18歳で家を飛び出して以来、ずっと身元を隠し、ストックホルムの無料で入れる所や似たり寄ったりの知り合いの住処を点々としていた。
時には古着のブランド物を着て、ホテルのバーで裕福な男を引っかけ、財布を落としたと騒いだりして夕食をおごらせていた。
街全体に影響力を持つ会社を経営しているフォーセンストルム家の社長令嬢だったのだが。
高慢で横暴な母親と無関心な父親に、ひどい生活を強いられていたのだ。
ある時、食事をおごらせただけで別れた男性が同じホテルの別室で惨殺される。
翌朝、警察の声にとっさに逃げたシビラは、犯人にされてしまう。
しか -
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50歳目前にして糖尿病になったりと、老いを感じさせる描写がちらほら。本シリーズは単独として読んでももちろん面白いが、登場人物たちの成長や変化は、シリーズを通してじっくりゆっくり描かれる。そんな捜査チームのひとりが悲劇に見舞われるというのが事件の発端。
寝る間なし手掛かりなしというスタイルは今回も同じだが、被害者とヴァランダーとの距離感が根底にあるため、心理的な苦しさや葛藤がやや前面に出ている気がする。仲間を失った自分、老いていく自分、事件を解決できない自分──内面にくすぶる苦悩と対峙できないまま、混乱の中で必死に手掛かりを追うヴァランダーに、不思議なくらい感情移入してしまう。
国内情勢を反