半藤一利のレビュー一覧
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能條純一『昭和天皇物語 (9)』小学館。
昭和という激動の時代に若くして天皇となった裕仁の苦悩が描かれる。時代と共に皇室の形は大きく変わったが、国民の模範であろうとする天皇は変わることが無いようだ。天皇、政府、陸軍とそれぞれが相容れない願望と信念で異なる道を模索する。若き天皇の下した決断は……
昭和6年。中国大陸で日本の陸軍『関東軍』が暴走し、溥儀を担ぎ上げ、満州国の建国を画策する。陸軍の暴走を食い止めようと決断を下した天皇だったが……
最近の皇族の結婚騒動を見ると、皇室というよりも宮内庁のインテリジェンスの質の低下が招いた騒動であるように見える。皇族の結婚相手の本質も見極められない宮内庁の体たらくぶりには呆れ返るばかりだ。
定価750円
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著者の半藤一利さんの著作は、今までも何冊も読んでいますが、今回の著作は扱っているテーマがちょっと毛色が異なっていたので気になって手に取ってみました。
ご存じのとおり「墨子」は、中国戦国時代、諸子百家の墨家の開祖で平和主義・博愛主義を説いたと言われています。
本書では、この墨子の論をまさに半藤流の語り口で縦横無尽に解説していきます。ところどころでの確信犯的な脱線のトピックも楽しいですね。
ただ、この著作で高らかにうたわれている半藤さんのメッセージ、「非戦」への決意はとても大切な志だと思います。巻末の中村哲さんとの対話の内容も併せて思うに、お二人ともとても素晴らしい方だったと本当に残念でなりません。 -
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企画の段階では、37の「名言」を取り上げる予定だったが、2021年1月に著者が亡くなり、14の「名言」となったそう。残り23の言葉についても、著者の説明と共に知りたかったです。
学生時代には、戦争のことを学ぶ機会もあり、修学旅行などで、原爆資料館などを訪れることもあり、戦争の悲惨さを知り、憲法9条の問題なども、もう少し、日ごろから考えることがあったように思う。
しかし、社会人になり、日々の生活に追われるようになると、いつの間にか、戦争のことを正面から考える機会が無くなっていく。
徐々に、戦争だけは絶対にいけない、そんな上っ面な言葉だけが自分の中に残りつつも、戦争とはなんだったのか、新たに知ることも、知っていることを改めて見つめることも、積極的にはしなくなってきた。
そこへきて、昨年からの新型コロナ、オリンピック。心なしか、これまでよりも戦争について取り上げているメディアが少なかったように思うのだ。そしてそれを、まあ仕方ないよなあ、こんなご時世じゃなあ、なんて思っている自分がどこかにいた。
しかし、この本を、8月は積読にしたまま過ごしてしまい、9月に入って読み始めた途端、はっとした。そう。本当に、はっとしたのだ。自分の戦争のことを考えなくても仕方ない、戦争はしちゃだめだってわかってるから大丈夫、みたいな気持ちを、心底浅はかだと思った。
この本は、名言を軸に、戦争と言うものがどういうものだったのか、そこから何を感じ学ぶべきなのかを、平易な言葉で綴ってくださっている。でもだからこそ、難しい資料を読むよりも、胸に迫ってくるものがある。
言葉って怖い。その言葉によって、思い込んだり、思想として叩き込んだりすることで、社会が間違えた方向に向かっていくのが怖い。
そして、著者がこう記している。
『悲しい事実は現代にもつづいています。6月23日の沖縄全戦没者追悼式のときに、歴代の首相は挨拶のなかで、きまって「県民の心に寄り添って」といいます。そして美辞麗句で哀悼の意を表しますが、ついぞ国家としての謝罪をのべたことはないのではないか。わたくしはそう思うのです。しかも、いまの自民党政権たるや工事費一兆円をかけて辺野古の米軍新基地の建設を、沖縄の人びとの心のうちを無視して強行しているのです』
『三枝昴之といういま活躍している歌人がいます(略)彼がじつに見事に、いまの悲しい事実を三十一文字にまとめています。「沖縄県民斯ク戦ヘリ」「リ」は完了にならず県民はいまも戦う』
私は特に右でも左でもないし、自民党政権を全否定する立場でもない。それでも思う。安倍政権から続く現政権も、戦没者追悼式に限らず、著者の言う「美辞麗句」が多すぎやしませんか?オリンピック開催にあたって繰り返された、安心・安全と言う言葉。菅首相は、戦没者追悼式で読み飛ばしもしました。人はミスを犯すものではある。けれども、上っ面じゃない、心からの哀悼の気持ちがあったら、原稿をただ読むだけ、だから読み飛ばしも起きてしまう、と言うことは無いのではないか。 -
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はじめて手にした半藤一利さんの本が遺作になってしまったことが悔しいです。
もっと続きを読みたかったです。
後半、特に沖縄のところは胸に迫るものがありました。「県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」と残して自決された司令官の大田実少将の電文に心打たれました。
こんなふうに沖縄の人々に寄り添った人もいたのだと胸が熱くなりました。
奥様(エッセイスト)の解説とお孫さん(編集者)の編集後記にも感動しました。
著者本人の企画書のとおり、まさに“孫に知ってほしい”戦争の名言の数々、
若い方こそ読むべき本ではないかと思います。
知りたい事はまだまだあるので、今後も戦争関連の本は読んでいきたいと思っています。
本書も定期的に再読したい本です。
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やるせない。ヒトラーのように信念や狂気で開戦を決意したのならまだ諦めもつくが、単に無能な指導者たちが流れや空気で何となく戦争を始めてしまうのは本当にやるせない。しかしここに出てくる旧参謀たちは、いくら戦後の回想とは言え、どうしてこうも他人事で無責任な言いようなのだろう。おまけに戦略眼が米軍に比べて子供レベル。なんだかもう一度戦争が始まってもおかしくないように思える。
そうならないために半藤氏らが正確な歴史を紐解き、後世にこういうバカ者たちがいたことを残してくれた。半藤氏の反戦、平和への貢献は極めて大きい。心よりご冥福をお祈りいたします。 -
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半藤一利さんは特に近現代史の研究家として第一人者であろう。しかし、安倍前首相や、その取り巻き達からは嫌われていた。第2次大戦における後世に伝えたい言葉を紹介したこの本は、半藤さん最後の著書である。
まずは山本五十六。真珠湾奇襲にあたり指揮官だけの会議において「日米交渉が成立したら、例え攻撃機発進後でも直ちに帰投せよ」と指示したところ、機動部隊司令長官南雲中将は「実際問題として実行不可能」と発言。山本長官は「兵を養うは、一に国家の平和を守らんがためである。これができない指揮官は即刻辞表を出せ!」と叱責。各指揮官は全員シュンとなったという。司馬遼太郎は当時の日本について「現実の日本は、アメリカに絹織物や雑貨を売って細々と暮らしている国で、機械については他国に売るほどの製品はなかった。陸軍の装備は日露戦争時に毛の生えた程度の古ぼけたもの(主力小銃は三八式歩兵銃、主力戦車はブリキと揶揄された)で、海軍は連合艦隊が1ヶ月も走れる石油はなく、その石油もアメリカから買っていた。大戦争など起こせるはずもなかった。」と書いている。自称保守派連中でも、この現実を理解していない者が多すぎる。
半藤さんは、昭和20年までの教訓で第一のものは「国民的熱狂を作ってはいけない」ということだという。
また、アジア解放を掲げアジアの人々のために戦争に向き合っていた日本人もいることはいた。しかし残念ながら殆どの日本人はアジア緒民族を軽蔑しきっており、それらの国を欧米の代わりに日本が支配するというものだった。もし当時の日本人に岡倉天心や高村光太郎のように、苦しんでいるアジアの民を自分の苦しみとしていたならば、後々まで憎悪されるような圧政はなかったのではないかと書いている。
沖縄戦において大田少将は大本営宛に「沖縄県民斯く戦へり。県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」と電報を打った。しかし米軍基地問題等、沖縄の人々の心の内を無視して強行しているとも書かれている。実際このような考えは上だけでなく、例えば本土から来た警察の機動隊員が現地の人を「この土人が!」と呼び蔑んでいることを見ると、行政の末端に至るまで浸透していると感じる。
参謀次長河辺中将手記には戦争末期、北の国境にソ連軍の大群が集結しているのを確認しておきながら、攻めては来ないと結論付け、ソ連の日本侵攻の報に接し「ソは遂に起ちたり。予の判断は外れたり」と書いた。そのお人好しさに滑稽感があるばかりとして、軍上層部の情報収集能力や国際感覚のなさを指摘する。これは株をやっている人にもお馴染みの、自分の都合のよい判断をする「正常性バイアス」というものだ。
著者の企画メモにはこの本に記載されたもの以外にも、政治家や軍人らの有名な言葉が書かれている。それらに対する半藤さんの考えも読んでみたかったのだが残念である。 -
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半藤一利の著作を最後に読んだのはいつだっけ?
と思いながら、書店の平積みにあるこの本を手に取った。
その時亡くなっていることに気がつき、惜しい人を亡くしたなと感じた。
半藤一利といえば私の中では『昭和史』。
大学生の時に、なぜかわからないが読んだ。
戦争の悲惨さ、民衆の心の動き、政府の未熟さ。
どれをとっても悲しみと怒り。
沖縄に行けば、否応なく感じるその苦しさ。
それを気がつかせてくれたのも、この人だったと思う。
今の現代人が歴史に興味をもてないのは悲しい。
著者は
「人間の眼は、歴史を学ぶことで、はじめて開くものである。」
という。
歴史を伝える立場にある以上、この言葉を胸に刻みたい。
合掌。
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ノモンハンでの凄惨な戦闘と、それを生起させた要因について精緻に、分かりやすい筆致で語りかけてくれる。
しかし、そもそも満州国を建国するとなればソ連と長大な国境を接すること、日中戦争を進めるためにはその手当をしながらでなければならないこと、南進すれば北にも相応の兵力を残置しなければならず、米国からの石油輸入も止められることを想定しなければならないこと・・歴史の結果を知っている我々は何故日中戦争、ノモンハンの事変、太平洋戦争へと突き進んでいったのか理解に苦しむのであるが、その時の時間軸にいた人々はそのようなことは見えない。歴史の本質なのかもしれない、と思う一方、我々は歴史から学び、今この時間軸から未来にかけてより平和な世の中にしていく責務があるのだと実感。 -
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PodcastのCoten Radioで紹介されている参考図書の一つ。
いまいち幕末とかイメージがあやふやだったりしていたけど(徳川慶喜と薩長土肥はどういった立場で対立したの?などなど)、丁寧に且つ講談的な味のある語り口でとってものめり込みながら理解を深めることができた。
ただ歴史の教科書で列挙された人物たちと出来事が、人間臭いドラマといて捉えることができたのは、歴史の面白さってこうやって感じるのだなーと今更ながらの気づき。何であんなに学校の歴史はつまんないのだろうの裏返し。
特に印象深いのは、勝海舟の偉人感と慶喜の無機質さ。慶喜は天皇への忠義を誰よりも深く持ってたはずなのに賊軍との扱いを受けて、ほろろな立場よね。
著者の「昭和史」もぜひ挑戦してみたい。楽しみ。