ノモンハンの夏

ノモンハンの夏

小説・文芸
743円 (税込)

3pt

「絶対悪」が、背広をきてソファに座っている……著者が辻政信に初めて会った感慨である。師団によっては76%という絶望的な損耗率のノモンハン事件を扇動しながら、狂いもせず、戦後は国会議員となった男。この戦いを可能にしてしまったのは、いったい何だったのか? 参謀本部作戦課と関東軍作戦課、二つのエリート集団が齟齬をきたし、満蒙国境の悲劇がはじまった。モスクワのスターリン、ベルリンのヒトラーの野望、中国の動静を交えて雄壮に描く、ノモンハン事件の決定版。

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ノモンハンの夏 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    今更読んだが、非常に良かった。さすが半藤さん。幅広い記述(局所的な戦闘から独ソの交渉まで)を自由自在に行き来しながら、月ごとにイベントを辿る形式は頭に入りやすかった。淡々としすぎず、ときに半藤さんの抑えきれない怒りが記述されているのも良かった。

    特に印象的な箇所 (p363):
    「ドイツ国防軍の将星のほとんどが、長いあいだのヒトラーへの阿諛追従や無抵抗従順になれきってしまっており、まともな判断力を喪失していたかのように思われる。強力な独裁者のもとでは良識や常識は不必要であり、必要なのはいつでも保身のための判断停止という手続きなのである。」
    政治家や官僚に対しても同じことが言える国が、多くあるように思う。

    0
    2026年03月02日

    Posted by ブクログ

    2024.08.18〜10.04

    自分が賢いと思っている奴ほど哀れな奴はいない。
    そんな奴らに踊らされてしまう奴らも、また哀れである。
    都合の悪いことはひた隠し、言葉を巧みに操って誤魔化す。
    そんな最低のことをして、日本を苦しめたにも関わらず、戦後、のうのうと生き、しかも国会議員にまでなる。どんな神経をしているのか、疑ってしまう。立候補するのも凄いが、そいつを選んだ国民も凄い。
    今の世の中って、そんな歴史の上にたっているんだ、と思うと、納得する部分もある。綺麗事では済まないことも多いかと思う。しかし、それを良しとしまうのは間違いだよね?私の考えは、甘いのだろうか。
    本当に戦時中の人間の心はわからない。

    0
    2024年10月05日

    Posted by ブクログ

    半藤さんの辻政信に対する怒りが切々と伝わってくる名著。それにしても今の日本の官僚機構がかなりダブって見える。

    0
    2021年07月21日

    Posted by ブクログ

    ノモンハンでの凄惨な戦闘と、それを生起させた要因について精緻に、分かりやすい筆致で語りかけてくれる。
    しかし、そもそも満州国を建国するとなればソ連と長大な国境を接すること、日中戦争を進めるためにはその手当をしながらでなければならないこと、南進すれば北にも相応の兵力を残置しなければならず、米国からの石油輸入も止められることを想定しなければならないこと・・歴史の結果を知っている我々は何故日中戦争、ノモンハンの事変、太平洋戦争へと突き進んでいったのか理解に苦しむのであるが、その時の時間軸にいた人々はそのようなことは見えない。歴史の本質なのかもしれない、と思う一方、我々は歴史から学び、今この時間軸から未来にかけてより平和な世の中にしていく責務があるのだと実感。

    0
    2021年07月04日

    Posted by ブクログ

    参謀本部と関東軍そして前線の将官・参謀達の行動を経糸に、日ソ英独の外交戦を緯糸にして描かれる昭和14年の夏。
    著者がヒトラーやスターリンと並べて(スケールは小さいが)「絶対悪」とまで呼ぶ辻政信の人間離れした独善と好戦性には読みながらも吐き気を禁じえない。
    そんな一部の特殊な構成員に引きずられ意思決定を誤り続ける陸軍中枢エリートに著者の筆は当然に厳しいが、対象的にもみえる昭和天皇の評価には、生粋の戦後民主主義者の本懐が伺える。

    0
    2021年02月25日

    Posted by ブクログ

    筆者は極力冷静になろうと努めていますが、それでも怒りを隠しきれていません。それがこの事件の酷さを物語っています。

    情報の軽視、自軍に対する根拠なき過信、命令の曖昧さ、現地軍の暴走とそれを止められない中央の無能さ、責任の所在の曖昧さ、自重論を悪と見なす風潮、太平洋戦争の敗因がノモンハンで既に現れていたといえるでしょう。そして、そこから全く何も教訓を得ていないことに愕然とします。

    当時の軍部の病理を知る上でも非常に価値のある本だと思います。

    0
    2021年01月30日

    購入済み

    まずはお勧めしたい一冊

    先頃亡くなられた半藤氏の渾身の一作です。当時の陸軍(関東軍)の首脳部がいかに堕落した組織だったかよくわかります。
    関東軍が統帥権という彼らにとっての絶対的なコンプライアンスを無視して、自分達の利益(見栄や権威も)を追求する事に夢中になっているという事が詳細に書かれています(その一方で敵対する者達には「統帥権干犯!」とヒステリックに騒ぐ)。
    そして際立つのは辻政信という怪人の存在。彼だけに全責任を負わせる事は出来ませんが、間違いなく渦の中心にいた人物です。
    そういった事変の表と裏について解り易く書かれています。ノモンハン事変について知りたいならば是非お勧めしたい一冊です。

    0
    2021年01月26日

    Posted by ブクログ

    満蒙国境事変であるノモンハン事件を、国家間の駆け引きから、連隊レベルの動きまで幅広く記述。
    当時の国際政治も興味深いが、やはり、上級司令部の断固たる指導、統制の欠如とか、幕僚の本分とか、そういうところが反面教師的に勉強になった。

    0
    2019年08月15日

    Posted by ブクログ

    必至に頑張る現場と、腐りきった上役。空虚な楽観で現実を直視せず、犯した失敗を教訓に出来ない能天気ぶり……。悲惨極まるノモンハン事件には、大日本帝国の、ひいては現代日本にも根を張る、日本人のウィーク・ポイントが凝縮されていると思った。

    0
    2018年01月08日

    Posted by ブクログ

    まさに、著者渾身の作品である。著者が、当時の日記や史料を引き写しながら、地団駄を踏み、鉛筆の芯を折りつつ書く作品というのは私はこれまであまり聞いたことがないが、著者が思わず地団駄を踏まざるを得ないほど、あるいは、鉛筆を折りたくなるほど陸軍参謀本部作戦課、関東軍作戦課のエリートたちが無能であったということだろう。
    その指導部の優柔不断、無責任体制ゆえに、関東軍の暴走を許すこととなり、亡くならなくても良かった多くの兵士の命を奪い、結果的にソ蒙軍に惨敗を喫したとすれば、その指導部に対する「お前ら何をやっていたんだ!?」という著者の憤懣やる方ない気持ちも理解できる。果たして、この著作1冊を書き上げるまでに、半藤氏は何本鉛筆を折ったのだろうか。

    「ノモンハン事件」は、私は高校の頃、山川『詳説日本史』で歴史用語として覚えた記憶があって、名称や極めて大まかな概要は知っていた。しかし具体的にどんな戦闘が繰り広げられたのか、どんな人たちがそこに関わっていて、どんな命令系統があり、どんな力関係があり、どんな作戦があったのかといったことはまるで知らなかったから、著者の膨大な取材と、膨大な資料に裏打ちされた(と思わせる、いや、ある1行を読むとその1行の背後に膨大な史料・資料の影が立ち現れてくるのだ!)丁寧な記述に、まさに目を開かされた。加えて、ヒトラー、スターリンらの動向を並行して描きながら、目まぐるしく動く国際情勢の中で翻弄されていく我が国の姿を克明に描いている点も優れた記述であると感じた。

    今年(2025年)は戦後80年だ。テレビや新聞などでは戦後80年の特集や、第二次世界大戦の特集が組まれているが、その多くはヒロシマ、ナガサキの原爆、日本各地の大空襲、敗戦(終戦)というところにフォーカスされているようである。確かに、1945年からカウントして80年目なのだから、原爆や敗戦(8月15日)に目が向かうのは当然である。しかし戦後80年と言って第二次世界大戦という大きな戦争を考える時、1939年(昭和14年)という敗戦から6年も前の段階で、極東の田舎で満州事変に慢心し、西欧諸国間の微妙なかけひきに翻弄され(それが平沼騏一郎の複雑怪奇発言だろう)、崖を踏み外して既に敗戦への暗い道を我が国が歩み始めていたことを知るのは、重要であるように思われる。

    半藤氏の渾身の本書は、それゆえに文庫で450ページを超える大著であり、登場人物も多く、聞き慣れない軍事用語なども多々出てきて時に迷子になり、途中、このままどうなるんだろう?と果てしなき砂漠で途方に暮れて挫折しそうにもなったが、8月の章に入った頃から、ぐんと読むスピードが上がり読破することができた。人気小説のような「一気読み!」という本ではないが、現在にあっても、また今後も本書は重要な歴史書(歴史的文献)であり続けるだろう(特に、本書では軍隊の軍旗に対する姿勢についての記述があり、私は目を開かれた。こうした事実は本書のような歴史書に当たらねばなかなか知ることは難しいように思われる)。同時に、現在の政治、社会、世界情勢を、冷静な視点で見すえるとき、大切な視座を与えてくれる一冊である。その意味で、何度挫折してもいいから一度は読んでおく一冊だろうと思っている。

    0
    2025年11月17日

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