あらすじ
昭和史研究の第一人者・半藤一利が、最後に日本人に伝え残したかったこととは――。太平洋戦争を理解する上で欠かせない「名言」の意味とその背景を、著者ならではの平易な文体で解説し、「戦争とはどのようなものか」を浮き彫りにした珠玉の一冊。「戦争の残虐さ、空しさに、どんな衝撃を受けたとしても、受けすぎるということはありません。破壊力の無制限の大きさ、非情さについて、いくらでも語りつづけたほうがいい。いまはそう思うのです。九十歳の爺さんがこれから語ろうとするのは、そんな非人間的な戦争下においてわずかに発せられた人間的ないい言葉ということになります。いや、全部が全部そうではなく、名言とはいえないものもまじりますが、それでもそこから将来のための教訓を読みとることができるでありましょう。むしろ許しがたい言葉にこそ日本人にとって教訓がつまっている。そういう意味で〈戦時下の名言〉と裏返していえるのではないかと思うのです」――本書「まえがき」より抜粋
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Posted by ブクログ
ノモンハンの夏を読み終わった直後に読んだ。
最近色々勉強して日本の戦争はやむを得ななかったという認識を持ち始めてる自分に対して、ガツンとやられた気がする。
お前は本当に戦争の悲惨さがわかってるのかと。
Posted by ブクログ
企画の段階では、37の「名言」を取り上げる予定だったが、2021年1月に著者が亡くなり、14の「名言」となったそう。残り23の言葉についても、著者の説明と共に知りたかったです。
学生時代には、戦争のことを学ぶ機会もあり、修学旅行などで、原爆資料館などを訪れることもあり、戦争の悲惨さを知り、憲法9条の問題なども、もう少し、日ごろから考えることがあったように思う。
しかし、社会人になり、日々の生活に追われるようになると、いつの間にか、戦争のことを正面から考える機会が無くなっていく。
徐々に、戦争だけは絶対にいけない、そんな上っ面な言葉だけが自分の中に残りつつも、戦争とはなんだったのか、新たに知ることも、知っていることを改めて見つめることも、積極的にはしなくなってきた。
そこへきて、昨年からの新型コロナ、オリンピック。心なしか、これまでよりも戦争について取り上げているメディアが少なかったように思うのだ。そしてそれを、まあ仕方ないよなあ、こんなご時世じゃなあ、なんて思っている自分がどこかにいた。
しかし、この本を、8月は積読にしたまま過ごしてしまい、9月に入って読み始めた途端、はっとした。そう。本当に、はっとしたのだ。自分の戦争のことを考えなくても仕方ない、戦争はしちゃだめだってわかってるから大丈夫、みたいな気持ちを、心底浅はかだと思った。
この本は、名言を軸に、戦争と言うものがどういうものだったのか、そこから何を感じ学ぶべきなのかを、平易な言葉で綴ってくださっている。でもだからこそ、難しい資料を読むよりも、胸に迫ってくるものがある。
言葉って怖い。その言葉によって、思い込んだり、思想として叩き込んだりすることで、社会が間違えた方向に向かっていくのが怖い。
そして、著者がこう記している。
『悲しい事実は現代にもつづいています。6月23日の沖縄全戦没者追悼式のときに、歴代の首相は挨拶のなかで、きまって「県民の心に寄り添って」といいます。そして美辞麗句で哀悼の意を表しますが、ついぞ国家としての謝罪をのべたことはないのではないか。わたくしはそう思うのです。しかも、いまの自民党政権たるや工事費一兆円をかけて辺野古の米軍新基地の建設を、沖縄の人びとの心のうちを無視して強行しているのです』
『三枝昴之といういま活躍している歌人がいます(略)彼がじつに見事に、いまの悲しい事実を三十一文字にまとめています。「沖縄県民斯ク戦ヘリ」「リ」は完了にならず県民はいまも戦う』
私は特に右でも左でもないし、自民党政権を全否定する立場でもない。それでも思う。安倍政権から続く現政権も、戦没者追悼式に限らず、著者の言う「美辞麗句」が多すぎやしませんか?オリンピック開催にあたって繰り返された、安心・安全と言う言葉。菅首相は、戦没者追悼式で読み飛ばしもしました。人はミスを犯すものではある。けれども、上っ面じゃない、心からの哀悼の気持ちがあったら、原稿をただ読むだけ、だから読み飛ばしも起きてしまう、と言うことは無いのではないか。
Posted by ブクログ
はじめて手にした半藤一利さんの本が遺作になってしまったことが悔しいです。
もっと続きを読みたかったです。
後半、特に沖縄のところは胸に迫るものがありました。「県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」と残して自決された司令官の大田実少将の電文に心打たれました。
こんなふうに沖縄の人々に寄り添った人もいたのだと胸が熱くなりました。
奥様(エッセイスト)の解説とお孫さん(編集者)の編集後記にも感動しました。
著者本人の企画書のとおり、まさに“孫に知ってほしい”戦争の名言の数々、
若い方こそ読むべき本ではないかと思います。
知りたい事はまだまだあるので、今後も戦争関連の本は読んでいきたいと思っています。
本書も定期的に再読したい本です。
Posted by ブクログ
半藤一利さんは特に近現代史の研究家として第一人者であろう。しかし、安倍前首相や、その取り巻き達からは嫌われていた。第2次大戦における後世に伝えたい言葉を紹介したこの本は、半藤さん最後の著書である。
まずは山本五十六。真珠湾奇襲にあたり指揮官だけの会議において「日米交渉が成立したら、例え攻撃機発進後でも直ちに帰投せよ」と指示したところ、機動部隊司令長官南雲中将は「実際問題として実行不可能」と発言。山本長官は「兵を養うは、一に国家の平和を守らんがためである。これができない指揮官は即刻辞表を出せ!」と叱責。各指揮官は全員シュンとなったという。司馬遼太郎は当時の日本について「現実の日本は、アメリカに絹織物や雑貨を売って細々と暮らしている国で、機械については他国に売るほどの製品はなかった。陸軍の装備は日露戦争時に毛の生えた程度の古ぼけたもの(主力小銃は三八式歩兵銃、主力戦車はブリキと揶揄された)で、海軍は連合艦隊が1ヶ月も走れる石油はなく、その石油もアメリカから買っていた。大戦争など起こせるはずもなかった。」と書いている。自称保守派連中でも、この現実を理解していない者が多すぎる。
半藤さんは、昭和20年までの教訓で第一のものは「国民的熱狂を作ってはいけない」ということだという。
また、アジア解放を掲げアジアの人々のために戦争に向き合っていた日本人もいることはいた。しかし残念ながら殆どの日本人はアジア緒民族を軽蔑しきっており、それらの国を欧米の代わりに日本が支配するというものだった。もし当時の日本人に岡倉天心や高村光太郎のように、苦しんでいるアジアの民を自分の苦しみとしていたならば、後々まで憎悪されるような圧政はなかったのではないかと書いている。
沖縄戦において大田少将は大本営宛に「沖縄県民斯く戦へり。県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」と電報を打った。しかし米軍基地問題等、沖縄の人々の心の内を無視して強行しているとも書かれている。実際このような考えは上だけでなく、例えば本土から来た警察の機動隊員が現地の人を「この土人が!」と呼び蔑んでいることを見ると、行政の末端に至るまで浸透していると感じる。
参謀次長河辺中将手記には戦争末期、北の国境にソ連軍の大群が集結しているのを確認しておきながら、攻めては来ないと結論付け、ソ連の日本侵攻の報に接し「ソは遂に起ちたり。予の判断は外れたり」と書いた。そのお人好しさに滑稽感があるばかりとして、軍上層部の情報収集能力や国際感覚のなさを指摘する。これは株をやっている人にもお馴染みの、自分の都合のよい判断をする「正常性バイアス」というものだ。
著者の企画メモにはこの本に記載されたもの以外にも、政治家や軍人らの有名な言葉が書かれている。それらに対する半藤さんの考えも読んでみたかったのだが残念である。
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半藤一利さんが「歴史探偵」と呼ばれる所以に納得の本書であった。「戦争は国家を豹変させる。歴史を学ぶ意味はそこにある」深く胸に刺さった。もっと半藤さんの話を聞きたかった。合掌。
Posted by ブクログ
半藤一利の著作を最後に読んだのはいつだっけ?
と思いながら、書店の平積みにあるこの本を手に取った。
その時亡くなっていることに気がつき、惜しい人を亡くしたなと感じた。
半藤一利といえば私の中では『昭和史』。
大学生の時に、なぜかわからないが読んだ。
戦争の悲惨さ、民衆の心の動き、政府の未熟さ。
どれをとっても悲しみと怒り。
沖縄に行けば、否応なく感じるその苦しさ。
それを気がつかせてくれたのも、この人だったと思う。
今の現代人が歴史に興味をもてないのは悲しい。
著者は
「人間の眼は、歴史を学ぶことで、はじめて開くものである。」
という。
歴史を伝える立場にある以上、この言葉を胸に刻みたい。
合掌。
Posted by ブクログ
名を知りながら読んだことのなかった半藤一利さんの本をはじめて読みました。平易でわかりやすい書きぶりでページも少ないのに胸がいっぱいになりました。
「沖縄県民斯く戦へり」の章はいつまでも私のこころに残るでしょう。
ありがとうございました。
Posted by ブクログ
今年の1月に亡くなった「歴史探偵」・半藤一利氏の最後の仕事です。太平洋戦争を各世界の人々の名言から読み解くとても貴重な作品です4.巻末の解説は半藤氏の奥様・半藤末利子さん(文豪・夏目漱石の孫)が書かれています。更に、編集後記は半藤氏の孫・PHP研究所 北村淳子氏が書かれています。
Posted by ブクログ
やっと、半藤さんに会えました。ずっとずっとお話を聞きたくその時を待っていましたが、私もなかなか忙しく、今日に至った次第です。
ドラマぐらいしかわからない戦争の話を、いくつかの言葉に載せて、私たちのこれからの幸せとは、平和とは何かを考えるきっかけを与えてくれました。
また、これからも直々お話を聞かせてもらいます。
Posted by ブクログ
歴史の入り口としては、すごく良い本でした。
またしても、半藤さんの最初の言葉とあとがきにやられた。
これからは半藤さんの本で歴史を見ていきたいと思った。
Posted by ブクログ
戦争や歴史に関する書籍を数多く残し、歴史探偵と呼ばれた半藤一利さんの最後の著作。
自らは出征という形では経験してないものの、空襲体験として実際の戦争を経験した、おそらく最後の世代となるであろう。
数多く著してきた歴史的な著作、インタビュー、調査した文献の中から、子孫に伝えていきたい特徴的な言葉を、エッセンスとしてまとめたのがこの著作である。
ある程度歴史に戦争に興味を持っている読書家にとっては、非常にわかりやすい書籍なのかなと思う。
戦争をよく知らない人にとっては、この本がきっかけになって戦争を勉強するきっかけになってほしい。発言がどのようなバックグラウンドによってもたらされたかを知ることは、この戦争全体を知ることになるからだ。
絶筆になったのは非常に残念だが、まだまだ半藤一利さんの本を読み知識を深めたい。
Posted by ブクログ
戦争体験者が語る戦時中の市井の人々の思考、軍人の言葉など、当時の戦況とともに語られている。巻末の著者の夫人の解説、編集者したお孫さんの編集後記をあわせて一冊の本になっている印象。半藤一利という人に興味が出た。他の著書も読んでみよう。
ウクライナの戦争を止められないだろうか。この本に書いてあるような事がいま起こっているか
と思うと胸がザワザワしている。
Posted by ブクログ
半藤一利が亡くなって1年になる。昭和史、特に終戦までの20年間について書かれた本を何冊か読んだが、「日本の一番長い日」を含め、克明かつ臨場感のある描写が多い。そして、軍部と戦争への批判。本書は、そんな著者の最後の著作として、幾つかの名言を基に太平洋戦争について語るという彼らしい内容になっている。
Posted by ブクログ
内容としては第二次世界大戦について、名言と共に優しく書いてある。
濃い内容ではないがページ数も少なく、タイトル通り「戦争というもの」を知るきっかけには丁度良いかも。
自分の中で昭和や戦争というものは常に白黒の世界で、本や動画を見てもなかなか色はつかない。遠い世界の話に思える。
著者は戦争経験者の様で、当時の事を思い出と共に書いてあった。経験者の言葉は色を感じさせてくれる。
本作が遺作になってしまったのは非常に残念だが、著者の名前は本屋でよく見かけるので、もっと深い事を書いてある本も読んでみたいと思った。
Posted by ブクログ
ーえっ? 日本が昔 アメリカと闘っていた?
という言葉を この耳で聞いたことがあります
まだ10代の若者であったとは言え…
なんとも いえない 嫌な気持ちになったことは
今でも 覚えています
ー八月や 六日九日十五日
俳句の世界ではすこぶる有名なんだよ
(本文より)
私は(周知のことであるとは)知りませんでした
ー十二月八日
のことを 全く知らない若者には
何人も出逢いました
最後の方に
「戦争は
国家を豹変させる
歴史を学ぶ意味は
そこにある。
半藤一利 」
の手描き(鉛筆)の文字が
心に迫ってきます
そんな今だからこそ
読まれて欲しい 一冊です
そんな今だから
手にしてほして 一冊です
Posted by ブクログ
今年の1月に90歳で亡くなった昭和史研究の第一人者「歴史探偵」の半藤一利さんの遺作です。「孫に知ってほしい太平洋戦争の名言」をエピソードとともに書いてあります。80年前、日本はなぜアメリカとの開戦に踏み切り、膨大な犠牲者が出てもなお戦い続けたのか…。この本を読めばわかります。この本には、沖縄での悲劇に代表される戦争の悲惨さ、当時の政治家、軍部などの無能さが詰まっています。文章も柔らかく、若い世代向きに書かれています。二度と戦争をしないためにも、すべての人が読むべき本だと思います。
Posted by ブクログ
毎年8月は極力戦争に関する本を読むようにしています。戦争を知らない私が、日本とは?日本人とは?という問いに向き合うときに戦争を知らなくていいのか?という想いがあるからです。戦争に触れれば触れるほど、平和な今の時代に戦争を知らないことの怖さを感じます。
Posted by ブクログ
ぼくの地元は土崎空襲の地域でした。空襲は終戦の前夜。あと1日降伏が早ければ。。。そんな話をひたすら聞かされ、小学校の学芸会では空襲を題材にした劇を演じました。
また、ぼくの祖父母は子どもの頃に戦争を経験した世代。だから、食卓の会話として戦争の話が出てくることがふつうにありました。でも、もう少し年齢が下がると、祖父母も戦争経験がないということになります。だから、本書にある「最近のひとは戦争を知らない」という話は、ぼくが持っている印象よりもリアルなんだろうなと。
さて、本書は、戦時下の「名言」とそれにまつわるエピソードをとりあげ、そこから教訓を学んでいくという構成になっています。ぼくがいちばん印象に残った名言を紹介しましょう。
太平洋戦争末期、アメリカにボコボコにされてもはや死に体の日本でしたが、そこに追い討ちをかけるように、8/9、ソ連が満州に攻め入ります。この時、参謀次長河辺虎四郎中将の名言(?)が「蘇は遂に起ちたり! 予の判断は外れたり」 であります。実は、ソ連の侵攻というのは、日本軍には寝耳に水でした。半藤さん(著者)は以下のように分析しています。
・当時の日本陸軍の戦争指導層の大半が楽観していたのは、正確にいうと、ソ連がでてきたら太平洋戦争における今後の全作戦構想(本土決戦)は壊滅する、であるから、ソ連にはでてきてほしくはない。こうした強烈な「来たらざるを恃む」願望が、〝でてこないのではないか〟という期待可能性に通じ、さらにそれが〝ソ連軍は当然でてこない〟となった。つまり、起ってほしくないことはゼッタイに起らないという、根拠のない確信になっていったのです。
原爆の映像とかを見せて、戦争はこんなに悲惨なんだ、だから絶対にしてはいけない。こんな論調も多いと思いますが、これだけでは、さっきのソ連と同じで、「戦争は嫌だ→戦争はゼッタイに起きない」という思考回路にハマってしまわないでしょうか。今のひとに戦時中を想像しろというのは難しい話ではあるけれど、当時がどういう状況で、その中にいる人がどんな判断をして、結果どうなったか。これをひとつひとつ読み解いて、教訓を得ていくというのが、同じようなことを繰り返さないために必要なことだと思います。
最後に、半藤さんの奥さまが長岡空襲を遠くから見たとき、「息をのむほどに美しい眺めだった」という形容をされていますが、ぼくの亡くなった祖父も、同じようなことを言っていました。それを聞くたびに、じぶんは空襲を受けなかったからといって、なんて呑気な、と思っていましたが、実際の空襲は現実離れしすぎていて、そういうように感じてしまうものだったのかもしれません。
Posted by ブクログ
半藤さんの最後の著作ということで読んでみました。
内容としては、戦争が身近に感じられて、その分恐怖を
覚える内容だと思いました。
内容よりも最後の、奥さんと、編集者であるお孫さんの
後記が胸にぐっとくる部分がありました。
Posted by ブクログ
現在、ウクライナの惨状を見てもわかるようにいくら文明が進んでも、戦争はなくならない。こんなひどい目に合わなくてすむように、何が過去の大戦に向かわせたのか。戦勝国の一方的な裁きでなく、ちゃんと歴史と向き合って総括しておくことが必要だったと思った。